クレヨンしんちゃん 超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁

登録日:2010/07/13(火) 22:31:59
更新日:2024/03/15 Fri 00:08:52
所要時間:約 9 分で読めます






オラ、ケッコンします


2010年に放映された映画クレヨンしんちゃんの第18作品目。キャッチフレーズは「オラ、ケッコンします」。


原作者の臼井儀人没後の第1作、かつ先生が制作に関わった最後の劇場版作品。
図らずも「臼井儀人最後の劇しん」となってしまった事を受け、エンディングスタッフロールの最後には先生への感謝のメッセージが掲げられた。

アニメ・映画では理想ではなく、実際に大人になったしんのすけ達が登場し、成長したマサオ達の顔が描かれている。
舞台が廃墟になった未来で激しい貧富の差が描かれており、全体的に暗くシリアスな雰囲気が漂っている*1が、タミコと未来のしんのすけとの愛や、時が経っても変わらない家族の絆、大人になっても続く友との友情など、さまざまな関わりが描かれている。
暗黒期と呼ばれていたこの時期の数年間のクレヨンしんちゃんの映画の中では比較的高い評価をされている*2

公開2日目で動員23万8831人、興収2億7086万8100円になり、映画観客動員ランキングでは初登場で第4位になった。
公開5週目には動員が100万人を突破した。


◆あらすじ


公園で遊んでいたカスカベ防衛隊の前にタミコと名乗る女性が突如現れる。
タミコは未来からやって来たしんのすけの婚約者だと言い、危機に晒されている未来のしんのすけを助ける為に、五歳のしんのすけが必要だと言う。
カスカベ防衛隊はタミコを不審に思いしんのすけを止めるが、なんやかんやあってみんな揃ってしんのすけ・タミコの二人と未来へ行ってしまう。
未来のカスカベは隕石の衝突の影響で街が廃墟と化し、空も分厚い雲が覆って日光も差さない世界となっていた。
未来のしんのすけは「ネオトキオ」と呼ばれる街を支配する「金有電気」社長でタミコの父親でもある金有増蔵に逆らって捕らえられていた。
しんのすけは未来の自分を助け出せるのか?


◆登場人物


野原しんのすけ
声:矢島晶子
お馴染み最強の5歳児。未来のしんのすけ(=未来の自分)を助ける為にタミコに未来へ連れていかれる。
今回は序盤以外にあまりギャグやボケをしない。終盤は「オトナ帝国」並みのマジモードになる。

〇風間トオル
声:真柴摩利
ある意味未来の自分と理想が合致していた。終盤、未来のカスカベ防衛隊や野原家と金有電気に乗り込む。

〇佐藤マサオ
声:一龍斎貞友
未来の自分の堕落を見て絶望する。終盤、未来の防衛隊や野原家と金有電気に乗り込む。

〇桜田ネネ
声:林玉緒
マサオ君と同じく、未来の自分に絶望する。終盤、未来の防衛隊や野原家と金有電気に(ry。

〇ボーちゃん
声:佐藤智恵
未来の自分とは一番シンクロしていた。終盤、未来の防衛隊や野原家と(ry。

〇金有タミコ
声:釘宮理恵
ヒロイン。未来のしんのすけの婚約者。捕らえられたしんのすけを助ける為に、5歳のしんのすけを連れてくる。
父親に未来の風間君と政略結婚させられそうになるが、5歳のしんのすけによって免れる。

〇未来のひろし
声:藤原啓治
過去から来たしんのすけ達を匿う。加齢の為か、髪と体力が減っている。しかし、足の匂いは衰えていない。
金有電気の策略で双葉商事が倒産して、無職になった。しんのすけ曰く、「儲けが無いだけにもう毛が無い」。
5歳のしんのすけを即座に「自分たちの息子」と判断したのは流石父親である。
終盤、みさえ、未来のカスカベ防衛隊と共に(ry。

〇未来のみさえ
声:ならはしみき
過去から来たしんのすけ達を匿う。貧乏太り中年太りでメタボ体型になっている。やはり加齢で体力が落ちている。
終盤、ひろしや未来のカスカベ防衛隊と(ry。

〇未来のひまわり
声:こおろぎさとみ
ある意味当然ながら大人になっており、就職して家を出ている(野原家に匿われるシーンにいない)。当然きちんと話せるが、笑い方は変わらない。*3
警察官(それも国際警察)になったらしく、しんのすけ達の危機にバイクで登場。最後は増蔵をその場で述べられないほどたくさんの罪状で逮捕した。
原作漫画の番外編北与野博士シリーズで描かれた大人のひまわりとは容姿が異なる。こちらの方が可愛いか。
3DS版の『映画スターズ』でも映画世界の住人として登場、この次の作品では悪の組織の一員であるアイドル娘の声を演じた。

〇未来の風間君
声:真柴摩利
金有電気に勤めているエリート社員。タミコと政略結婚させられそうになるが、乱入してきた未来の仲間達と共にしんのすけ達に協力し、増蔵に反目する。
原作漫画の番外編(及びそのアニメ放送)*4で描かれた大人の風間と、容姿が全く同じ。

〇未来のマサオ君
声:一龍斎貞友
廃墟になったカスカベのコンビニの店員をしているが特に店に客は来ないので他の漫画にケチを付けまくっており、だいぶガラが悪くなってしまっているが、本来の優しさは変わっていない。髪が長くなっている。
漫画家として3週間で打ち切りにされた「仮面マッサオW」の元ネタは本作と同時期に放送されていた『仮面ライダーW』。
終盤、未来の仲間達と共に過去と未来のしんのすけを助ける為に駆けつける。その時に過去の自分と和解する。

〇未来のネネちゃん
声:林玉緒
ふたば幼稚園の職員をしているがマサオくんと同様に一人称が「あっし」になってたりと、こちらも柄が悪い。顔がママであるもえこに似ている。
終盤、未来の仲間達と共に過去と未来のしんのすけを助ける為に駆けつける。
現代のネネちゃんに現実の厳しさを教えた。

〇未来のボーちゃん
声:佐藤智恵
発明家になった。髪が長く、眼鏡を掛け、トレードマークの鼻水はなくなっている。しかし、「仲間想いでお茶目」「カスカベ防衛隊のブレーン役」といった根本的な所は変わっていない。
終盤、やや遅れて未来の仲間達の元に駆けつけ、*5自身の作ったロボットで増蔵のロボットに対抗する。

〇金有増蔵
声:内海賢二
金有電気の社長でタミコの父親。
度を過ぎた守銭奴で金儲けだけを考えており、自分に従わない部下や儲けにならない支社を簡単に切り捨てる(ひろしが勤めていた双葉商事すらも倒産させた)という、冷酷非道っぷり。娘のタミコに対しても愛情は無く、会社の商品程度にしか思っていない*6
自分の協力を断った未来のしんのすけを捕らえ、彼を人質にタミコを脅し、未来の風間と政略結婚をさせようとした。
しんのすけ達の介入によってタミコが自身に反旗を翻すと、未来のしんのすけを殺害しようとするなど、クレヨンしんちゃんの映画でも数少ない、根っからの極悪人である。
最後は大人ひまわりに逮捕される。ひまわりの言い渡した罪状(誘拐、汚職、賄賂、脅迫、色んな罪)や今回の犯行(未来のしんのすけに対しての殺人未遂)に加え、過去に犯した数々の悪行がうかがえるので長い刑務所行きは逃れられないだろう。

〇花嫁(希望)軍団
声:白石涼子/神田朱未/近藤春菜(ハリセンボン)/黒沢かずこ(森三中)/はるな愛/いとうあさこ/椿鬼奴
増蔵がタミコを連れ戻す為に放った刺客。全員が未婚で、ウエディングドレスや白無垢を来ている。
独身男性の名刺の取り合いで仲間割れをしたりと詰めが甘い。*7
今作のゲスト芸能人担当。

〇シロ太、シロ吉、シロ子、シロ美、シロ太郎、シロ次郎、シロ丸、シローネ、シローン、シロット
声:真柴摩利
シロそっくりの仔犬。十中八九シロの子孫と思われる。シロの小屋で暮らしており、10匹いる。5歳のしんのすけにもなついている。
犬の寿命を考えるとシロは既にいなくなっていると思われるが、彼らも幼児のしんのすけに何かを感じ取ったようだ。

〇未来のしんのすけ
声:神奈延年
まさかの大人しんのすけ。ある目的から金有電気の塔に登っていたが、増蔵に捕らえられ、タミコに5歳のしんのすけを連れてくるように言う。
タイムマシンを発明した*8のも、(ボーちゃんと協力していたとはいえ)世界を救う方法を考えたのも、彼である。
心身とても成長しているが、5歳のしんのすけと変わらない部分も所々垣間見える。
職業は明確には明かされてないが行動などから革命家や発明家と思われる。また、金有電機の入社を断っていた描写があり、かなり優秀な人物だったと思われる。

しぎのあきら監督は臼井儀人先生から「顔出さなければいいよ」とOKをもらい大人しんのすけを出した。そのため、未来のしんのすけの顔は最後まで描かれない(アクション仮面のスーツを着ているためマスクで見えない、鼻から上が何かに隠れている、逆光でいわゆるメカクレになっている、など)が、顔の輪郭は父親・ひろしに近いのが確認できる*9。しぎの監督は最初は大人しんのすけの声優は矢島でいこうと思っていたが、録音監督から「(大人しんのすけを同じ声優にするのは)流石に無理だろう」との意見が出たため、新規に神奈氏がキャスティングされた*10

◆舞台・用語

〇ネオトキオ
本作の舞台となる未来の春日部。隕石群の衝突により地殻変動と海面上昇が起き、現代には存在しない海が発生している。
隕石衝突によって起きた粉塵により空は一日中真っ暗であり、「時計を見ても朝だか夜だか分からない」有様である。
またそのために寒冷化が進んでおり、住人は皆厚着をしているかポンチョのような防寒着を着用している。当然、植物もまともに育たない。
中心部は金有電機の力である種毒々しさのある発展を遂げているが、郊外は旧市街の廃墟が残るスラム街となっている。
物価の上昇も酷く、チョコビ一箱が1800円もするなど、ある種古典的なサイバーパンクめいた世界観となっている。
なお、埼玉にもかかわらず「ネオトキオ(東京)」なのは、前述の災害で東京や横浜などの湾岸都市が壊滅したため、埼玉に首都機能を移管したためと思われる。

〇金有電機
ネオトキオを支配する巨大企業。いわゆる暗黒メガコーポと言うヤツである。
現代の時点でアクション仮面のスポンサー企業の一つとして存在していたようだが、隕石衝突後にどんどん力を付けたようである。
ネオトキオ内は金有の広告と、スポンサーを務めるアクション仮面の映像や立体物だらけであり、その力の強さがうかがえる。



◆コミカライズ版


上映と同年の12月にコミカライズ版が発売。執筆は高田ミレイ先生。
漫画では、未来の世界は2030年だと明言されている。つまり舞台となっているのは20年後の世界であり(本作は2010年公開・単行本発売)、大人のしんのすけたちは25歳となる。
増蔵の人間性が若干ながら父親としての良心がある人間に変更されており、最後にタミコと大人しんのすけからの増蔵への思いを語るシーンが追加されているなど、例によって雰囲気を崩さない程度にアレンジが加えられているため映画を観ていても新たな発見がある作りになっている。


◆余談

  • 酢乙女あいや大原ななこのような「現在のしんのすけと恋愛関係にある女性」は現在・未来ともに登場しない。特にあいについては「(しんのすけにとってはともかく、「お相手」から見れば)現在のしんのすけと恋仲である人物なのだから、何らかの形で触れるべきだったのでは」とする意見も割とあるようだ。
  • ラストシーン、TVの音声をよく聴くと 「未来の春日部」の海面異常・気候異常の原因になった(と思われる)隕石の事を話しており、地球を逸れて無事に飛んでいった事を伝えている。このため この映画における「未来」は一種のパラレルワールドであるという事になる
  • これは「未来は何が起きるか分からない。だからこそ好きなように生きろ」という視聴者へのメッセージであると言える。

追記、修正は自分の未来を見据えてからお願いします。





臼井義人先生に感謝をこめて




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最終更新:2024年03月15日 00:08

*1 ゼロではないが、実際ギャグシーンは少なめになっている。

*2 大人のしんのすけ達というテーマを扱った以上、高い評価の作品にならなければおかしい、高い評価の作品を作れなければおかしい、という見方もできる。

*3 ただし、大人に成長したことに伴い正面向きに目を隠さずに笑顔になる場面もある。

*4 『ターミネーターシリーズ』のパロディ作品。偶然にも「未来と現在、それぞれのしんのすけが事件のキーパーソン」「未来からしんのすけの知人がタイムスリップしてくるところからお話が始まる」と本作と共通している要素も多いが、こちらはギャグ重視。初登場シーンが「焼肉してる鉄板の上に着地」の風間トオル(大人)とか

*5 ただし、未来のしんのすけの無事をみんなに知らせたこととコミカライズ版で風間君が「ボーちゃん博士のタイムマシン」と発言していたところから、前々からしんのすけと協力していたと思われる

*6 コミカライズ版でのみ、ある程度「父親」らしい面も描かれている。後述

*7 ネネちゃんによれば、「恋愛の前に女の友情は儚いもの」だとされる。

*8 ただし「リストバンドに何か機械がくっついており、ボタンが『みらい』『いま』『むかし』の3つだけ」という、大変わかりやすいUIではあるが頼りない代物。「オラが捕まる前に飛んで先に手を打とう(意訳)」と提案した5歳のしんのすけにも呆れられた

*9 5歳児のしんのすけはひろしの父親である銀之助と顔の輪郭が同じであるため、この辺りはもともと父親側の遺伝子が強いと思われる

*10 ただし、この時点で既に『雲黒斎の野望』などに矢島氏が「大人になったしんのすけ」を演じているシーンが存在する