カワハギ(魚類)

登録日:2012/03/07 Wed 10:58:34
更新日:2023/09/03 Sun 08:02:27
所要時間:約 4 分で読めます




カワハギとは、

1.フグ目(Tetraodontiformes)モンガラカワハギ亜目(Balistoidei)カワハギ科(Monoacanthidae)の魚類の総称。
 世界に32属約100種、日本には約30種が棲息する。

2.特に標準和名カワハギのこと。学名はStephanolepis cirrhifer(仮名転写:ステパノレピス・キリフェル)

この項目では特に2に付いて述べる。
窄めたような口と極端に扁平な体、丈夫で厚い皮が特徴。

名前の由来は「食べる際に硬い皮を剥いで食べるから」もしくは「皮が剥ぎやすい魚であるから」など、いずれも「皮剥ぎ」に由来するという説が有力。
漢字表記も「皮剥」「鮍*1」とトコトン「皮」を意識したネーミングになっている。

日本各地に分布しており水深100mよりも浅い岩礁帯等に棲息。
全国に分布している為マルハゲバクチウチ等様々な地方名を持っている。

皮は厚いだけでなくザラザラしていて紙やすりのようになっている。
実際に乾燥させて紙やすりとして使っていた地域もあり、故に英名は「Filefish」(鑢(ヤスリ)魚の意味)。

この皮の丈夫さはかなりのもので、一時期大量発生したエチゼンクラゲの針を無効化しつつ捕食するという例も確認された。
普段は口から出す水鉄砲で砂や泥を吹き飛ばし、その下に潜り込んでいた生物(貝とかゴカイとか)を捕食する。
また、口にはペンチの様な頑丈な歯があり、カニやエビ、フジツボ等の硬い殻をも砕いて食べることができる。
ちなみに釣ろうとしても餌だけ持って行ってしまうことが多く、釣り人泣かせ(ロマンともいう)である。


■食材としてのカワハギ

分類学上ではカワハギはフグの親戚ということになるが、その味も、ぷりぷりで歯ごたえのある白身で、フグにも引けをとらない。もちろん毒は無い。

また、地引き網や底引き網等の沿岸漁業でそれなりの数が採れるため、価格も割と廉価。

市販の物は大抵皮が剥いであるが、未処理の物も尾に包丁を入れて引っ剥がせば割合簡単に取れる。

しかしカワハギの真価はにある。
滑らかな舌触りと濃厚な風味を持つ肝は絶品で、まさに海のフォアグラと呼ぶに相応しい。
美味しんぼ』では「黒い刺身」の記憶から、山岡がカワハギの肝と言い当てる作品がある。

旬についてだが7月~8月にかけては身に弾力があり、11月~12月にかけては肝が大きくなる。
夏と冬、どちらのカワハギを選ぶかはお好みで。


新鮮なカワハギを手に入れたらぜひ刺身で頂きたい。
蒸した肝を裏ごしして醤油に溶いた肝醤油で食べると、身のぷりっとした歯ごたえと濃厚な肝の風味が絶妙に絡み合う。
刺身に使った肝醤油が余った時はご飯にかけて食べるのも美味しい。
肝と薬味と共に和えたものを醤油やポン酢で食べるのもまた美味。

  • 干物
カワハギの身は脂肪が少ない為干物に最適。
少し炙ってから噛みしめると口の中にじんわりと旨味が広がっていく。

  • 塩焼き
シンプルイズベスト。身離れがよく食べやすい。
お好みで大根おろしを添えて。

  • ムニエル
油っ気がない魚なのでバターをたっぷり使ったムニエルも良い。
表面をカリッとするまで焼いて頂こう。

カワハギの淡白な身と濃厚な肝は鍋にも良く合う。
肝のコクと野菜の優しい風味の出汁が混ざって素晴らしい味になる。
最後は雑炊等にしてカワハギの旨味を余さず堪能しよう。

  • 煮つけ
ふんわりとした白身と滑らかな肝に煮汁が染み込んだ一品。
ほかほかのご飯と一緒に掻き込もう。
卵のオススメの食べ方。

  • 肝丼
文字通り肝をご飯に乗せた丼で、こってりとした肝とご飯との相性は抜群。
何匹もカワハギが釣れた時にはぜひ試したい。

淡白な味の魚には鉄板の調理方法。
鶏ほどの食べ応えはないが、唐揚げとは思えない繊細な味わい。

身、肝、あら、全ての旨みを味わえる。
青ネギを入れると彩りがいい。

カワハギの肝で白レバー(鶏の脂肪肝)を漬け込んだものに、名古屋コーチンを丸ごと一羽煮詰めたスープと紅酢で割ったタレをかけたもの。
さらに豚の背脂を加えてコクを与えている。
海と陸の2つのレバーが互いを補い合うことで力強い風味を生み出している逸品。
ただ、配合が微妙で僅かでもズレると美味しくなくなる。


■近縁種

◆ウマヅラハギ(馬面剥)
カワハギの近縁種。スーパーなどでもよく並ぶが、カワハギとは異なる。
味もわりと差があり、カワハギよりは一段下と見なされている。カワハギや真鯛釣りのハズレ枠として扱われることも。
ただ、カワハギ自体が非常に美味なので、一段落ちたとは言っても十分に旨い魚である。
調理方法はカワハギとほぼ同じ。肝も旨い。
???にやるなんて病的な愛犬家のすることです」

◆ソウシハギ(草紙剥)
こちらもカワハギの近縁種だが、内臓にフグの何十倍もの猛毒があり、食べちゃダメな魚である。
身には無いのできちんと処理して身だけ食するケースもあるが、さほど旨くはないらしい。

2018年にスーパーで間違って販売され、鍋で食べてしまった方が出た。
幸い、ソウシハギの毒は餌に由来するため個体差があり、食べた方は特に体を壊さなかったようである。
特にカワハギ釣りをする方はソウシハギとの判別に注意。




追記・修正はカワハギの肝を食べた人がお願いします。

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最終更新:2023年09月03日 08:02

*1 「魚へん」に「皮」。非常用漢字、かつ環境依存文字である。