漬け物

登録日:2011/11/10 Thu 19:52:27
更新日:2024/02/25 Sun 15:08:24
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■漬け物とは

漬け物とは、、砂糖、醤油、味噌、米糠、酢など様々な調味料に材料を漬け込んだ食べ物である。
材料は大根やきゅうりなどの野菜が一般的だが、肉や魚などもある。

調味料により空気と素材とを遮断したり、pH値を下げる、塩分濃度を上げる、水分を抜く等して保存性を高める意味合いでも作られるが、
現在は主に食事の際の副菜としての常備菜や甘味処・茶席で出される口直しの意味合いが強い。

また、乳酸菌による発酵を伴うものもあるが、千枚漬けに代表される甘酢漬け、福神漬けなど、
種類によっては必ずしもその限りでは無いので漬け物=発酵食品と言う認識は誤りである。

香りの強いものが多いので、お新香、香の物と呼ばれることもある。

ご飯のオカズが漬け物だけだったりするとかなりガッカリするが、
それでも少し醤油を垂らしたお漬け物でご飯をかきこめば至福の味わいが口の中に広がる筈である。

白米を至上のものとしていた江戸っ子は、たっぷりの白飯(もしくは白粥)に少量の香の物を食事とするのが粋と尊ばれていた。
だが、この食事だと玄米や野菜に多く含まれるビタミンB1が摂取出来ない為、脚気(江戸患い)の原因となった。

また物が少ない時代の田舎では、茶菓子代わりに御茶請けとして出されていた。

日本だけでなく世界でも漬け物は多い。
代表的なのはドイツのザウワークラウト、中国のザーサイ、韓国のキムチ、インドのチャツネなど。
ピクルスも立派な漬け物である。


■主な漬け物


◆沢庵漬け
黄色くて憎いあいつ。皆をたちまち虜にしてしまう。
天日干しした大根を糠漬けにしたもの。
甘口と徹底的に大根を干して塩を多く使用した長期保存用の辛口が存在する。
しかし、現在の我々の知る黄色さは実は着色料によるもので、本物はベッコウ色になる。
沢庵和尚が考案したと言う俗説があるがこれは誤りらしい。
比叡山延暦寺で作られている定心房という漬け物が元になったという説がある。
秋田名物のいぶりがっこも沢庵漬けの一種で、こちらは煙で燻して乾燥させた大根を漬ける。

◆梅干し
沢庵が漬け物界の甘味王なら、こちらは辛味王(と言うか酸味王)。江戸時代に一般に広まった。
熟した梅を干してから赤しそと共に塩漬けする。
名前を聞いただけで、ホラ、ヨダレが出てきた人、恥ずかしがらずに挙手(≧×≦)ノ
干す作業を省いたものは厳密には梅漬けとなる。また塩だけで漬けた白干し梅もある。
おにぎりの具としても大人気。

◆糠漬け
米糠に大根、胡瓜、茄子等を漬け込んで作られる。
醤油を少し垂らすと堪らない。
糠床は管理が難しく、熟練の技術を持つおばあちゃんの味である事が多い。
じっくり漬けた古漬け派か、新鮮な風味の浅漬け派かは貴方次第。
ちなみに「ぬか床は素手で混ぜるべし」とよく言われるが、稀にぬか床を腐らせてしまう体質の人もいるらしい。
これは皮膚常在菌の種類によるものらしく、衛生管理が完璧でも関係ないとか。
なお地域によっては保存食として、さんまなどの魚類を漬けることもある。

◆白菜漬け
白菜を醤油、酒、塩、酢等の合わせ調味料に漬けたもの。
勘違いされやすいが、糠漬けではない。白菜は水分が多い為、糠漬けにすると糠床が痛み易いので白菜の糠漬けはあまり作られない(存在はする)。
軽く醤油をかけて海苔の如くご飯にかけて食べると…。
∞にご飯がお腹に入るかもしれない。

◆粕漬け
下漬けで野菜から水分を抜いてから、熟成させた酒粕に漬けたもの。
主な物としては奈良漬や守口漬けなど。
アルコールの香り漂う大人向きの味わい。

◆柴漬け
茄子や胡瓜などの野菜を刻み、紫蘇の葉と塩で漬けたもの。
沢庵と並び定食やお弁当などの定番。

◆西京漬け
からしを少し入れた味噌に漬けたもの。
主にや鱈などの魚を漬け込む。

◆近江漬け
葉物を細かく刻んで漬けたもの。
近江とあるが滋賀県の漬け物ではなく東北地方の漬け物。
東北の代表的な漬け物である青菜漬けの余りの葉っぱが投げ捨てられていたのを、
もったいなく思った近江の商人がそれを拾い集めて刻んで漬けたのを知った住民に広まったと言われる。

◆ピクルス
野菜を醗酵させたり酢等に漬け込んだりして作る西洋の漬物。古代エジプトが発祥。
ハンバーガーやホットドッグでは胡瓜のピクルスがトッピングされていることが多いため、
ピクルスといえば胡瓜を連想する人は多いのではないだろうか。
胡瓜の他にも人参玉葱プチトマト・ナス等のピクルスがある。

◆三五八漬け
出羽地方や福島の名物で、漬け床に使用する塩・麹・米の比率が3:5:8だったことに由来する。
塩麴との違いは材料の比率で、三五八漬けは米を多く使用することから甘みが強くなる。
野菜とは別の容器を用意する必要はあるが、肉や魚を漬け込むのにも使える。

野沢菜
野沢菜の葉と茎を漬けた信州(長野県)の特産品。白米と一緒に食べると、野沢菜の酸味と仄かな苦味が合わさって食がいくらでも進む。
詳しく知りたい人は当該項目を読んでくれ。
ちなみに【野沢菜】を漬けたものであるため本来は【野沢菜漬け】と呼ぶのが正しいのだが基本的に野沢菜で全国どこでも通じる。

◆すんき漬け
長野県木曽地方名物の無塩乳酸発酵食品で、暑さに弱い特徴がある。高冷地ではないと上手く漬からず、食感も食味も良くない。
主な菌種は、ラクトバチルス・キソネンシス、ラクトバチルス・オータキエンシス、ラクトバチルス・ラピ、ラクトバチルス・スンキイで、約50種類の乳酸菌が検出されている。
伝統的な手順は、沸騰したお湯に潜らせた赤蕪菜と冬季に干して自然乾燥させた前年の余り(すんき干し)を合わせて数日間寝かせた物を漬け種(すんき種)とし、
湯通しした赤蕪(開田蕪、王滝蕪、三岳黒瀬蕪、細島蕪、吉野蕪、芦島蕪)*1の葉や茎と交互に重ねて落し蓋を被せて密封し、漬込量の二倍となる重石をして半月くらい待つと完成する。
現在は、主な菌種を粉末にした素、冷凍したすんき漬け、冷蔵した漬け汁を漬け種にすることが多く、すんき干しを使用したり、ズミ及びヤマブドウの果実を添加する機会は減少している。
香の物として出す以外には、温かい麺類や汁物に添える事が多い。清酒と同様にコハク酸を多く含有しており、にも似た旨味を持っている。
独特の癖があるため、木曽菜漬けと違って他方出身者には勧めづらい。醤油や鰹節を加えた和え物にすると、旨味が増して食べやすくなる。

◆地漬(ジージキ)
沖縄県名物の黒砂糖漬。甘い味わいが特徴で、主にお茶うけとして食される(※ニンニクの地漬は薬食もされていた)。
電気冷蔵庫の大衆化前は気候・風土の問題で塩漬が長期保存できず、また製糖盛んな地で黒糖が手に入りやすい事から、昔はよく作られていた。
漬物の実はラッキョウ、ニンニク、ナス、ゴーヤ、キュウリ、シマウリ、白瓜、大根、島大根など。作り方は食材によって差もあるため、割愛。

◆ラッキョウの甘酢漬け
塩漬けにしたラッキョウを甘酢に漬けたもの。

◆浅漬け
野菜を一日ほど漬けた物。サラダ感覚で食べられる。
水分の抜けが甘いのでカビやすい。

◆福神漬け
カレーライスによく添えられる調味液漬けで、調味液は隠し味として用いられる場合もある。
大根、刀豆、茄子、蓮根、胡瓜、生姜、紫蘇の実、白胡麻ら様々な野菜に下処理を施してから醤油・味醂などで甘く仕上げた調味液に漬けたもの。
起源は諸説ある模様。

◆キムチ
皆さんご存知、朝鮮半島の辛い漬物。唐辛子は中南米原産なので今の形のキムチの歴史はそれほど深くはない。
白菜を漬けたものが基本だが大根やキュウリ、イカなどの海鮮を漬けたものもある。
韓国では国民食といえるもので、外食に出れば付け合わせとして好きなだけ食べられる店が多い。
日本と違って一般家庭でキムチを漬けるのが風物詩であり、姑が嫁のキムチの漬け方がなっていないといじめる光景が多々あるらしい。日本でいうみそ汁の作り方みたいものだろうか
日本では健康食品ブーム*2や韓国ブームによって消費量が増え、すっかり定着した。
漬物でランキングを取れば上位3指常連レベルであり、漬物といえばキムチという人も増えた。
日本の国民食納豆と和えて「納豆キムチ」にして食べるのが好きな人もいる。

ただ寄生虫事件などの影響もあり、近年は韓国産ではなく国産のキムチが主流。
2020年には中国がキムチは泡菜*3の一種(要約)としたことで争いが勃発。韓国の国民食といえるものなので大騒動となりまだ決着はついていない。
※追記募集


■余談

近年は、漬け物を家庭で作ると言う習慣がすっかり廃れ、だいたいの家庭が出来合いの既製品を買っているのが現状である。
だが、これらの商品には凄まじい量の添加物や化学調味料が入っていて(漬け物程添加物が加えられている食品は他に無い)、
我々は天然自然の味を忘れているのも現実である。
これは食嗜好の変化や高血圧対策の社会的要請に伴って漬物メーカーが低塩化・減塩に取り組んだ結果で、1965年頃は15%近くあった塩分濃度が1990年頃に5%前後まで減少している。

しかし、古くから漬け物は各自による創意工夫の元、それぞれの家庭に素晴らしい味わいがあった筈である。
21世紀の今、この素晴らしい日本文化が絶えないで存続していく事を切に願う。
そして、いつの日かまた日本人が自然の味わいの素晴らしさを取り戻せる事を…。


なお漬け物は大量の塩分が含まれており、食べすぎはあなたの体に腎不全などの深刻な被害を及ぼします。
実際に人工透析を導入される方には農家などの漬け物をよく食べる習慣のある方が多いので、日頃から漬け物を嗜む方はなるべく一日一食を目安に控えましょう。
全日本漬物協同組合連合会が漬物の食塩含有量と食塩1gで食べられる量の目安を公開しているので、参考にされると良いかもしれない。


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最終更新:2024年02月25日 15:08

*1 木曽菜(岩郷菜)や野沢菜など、他の蕪菜を代用する場合もある。

*2 乳酸菌は豊富だがカプサイシンや塩分によってそこまで健康にいいわけではない。ついでに言えば乳酸菌の豊富な漬物は他にも有る(糠漬けなど)

*3 キムチとよく似た四川省の漬物