フィリップ・ミゼール(都市シリーズ)

登録日:2011/08/28(日) 23:17:56
更新日:2020/07/24 Fri 15:42:40
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全ては行動で証明するのみだ



フィリップ・ミゼールとは川上稔著〈都市シリーズ〉『閉鎖都市 巴里』の登場人物。


元『巴里守護騎師(シュバリエ・デ・パリ)』、剣の家紋(シーニャ・デ・オレイル)を持つ家系であり、レジスタンスと独逸軍名誉将校の二重生活を送る青年。
主人公ベレッタ・マグワイルドとは恋人同士であり、物語開始時点でキスを済ませた仲。
情に厚く、熱血男。ベレッタが重騎師として戦えるが故に危険に近づいてしまうことを良いとは思っておらず、重騎師を辞めさせたがっている。
また少々抜けたところがあり、すでに恋人関係にあるベレッタに『俺が勝ったら付き合え』と言って総ツッコミを喰らった。

時代に取り残され、延々と第二次世界大戦を繰り返す『閉鎖都市 巴里』では1944年8月1日のレジスタンス一斉蜂起時にハインツ・ベルゲとその重騎“赤獅子”に討たれ戦死し、ミゼール家も絶えることが確定している。(『全てを知っている』ベレッタとの付き合いが中々発展しなかったのはそのため。)


○重騎師として
第一次大戦にてその勇名を馳せた元『巴里守護騎師』の名は伊達ではなく、振る剣先は音速超過の波を引き、独逸軍内での五度の模擬戦を速攻勝利するなど高い実力を持つ。
『ソルボンヌ大学大学祭にて行う重騎戦に二名選出せよ』と通知されたハインツ・ベルゲが『自分とフィリップを出せば全て解決すると』即答したほど。(曰わく「民間人に傷を負わせる騎師道に恥じる行為や余裕のない戦いはせぬと判断」)

○重騎
彼の駆る漆黒の雄型重騎“剣将(エクスペール・デ・オレイル)”は十年前にフィリップ自身がその脚を砕いてから細々と修復を重ねた騎体。
修復直後は使っていたシリンダー系が噛み合っていないため速攻戦しか行えない弱点があり、ソルボンヌ大学での模擬戦では全力駆動の負荷に耐えきれずに全身から油を噴き出して戦闘不能となってしまった。

《凌駕紋章》は『炎舞(フラーム・バル)』。
展開時は炎が個体化し、鎧となった炎は如何なる攻撃も燃やし尽くして気化させ、その四肢は炎が揺らめくが如く常に動き続けることを望む。
さらに燃やしたものをも炎へと変え己の力とし、劇中ではミゼール家に伝わる神形具『第三炎帝』を併用し全長30ヤードの炎の大剣を作り上げた。
ちなみに、本作より後に執筆され本作より過去の時代を描いた『神々のいない星で』にて、武神“戦勝女帝(アテナ・エク・メカーネス)”が技として「第一炎帝」を行使しており、恐らく2作の間の時代で「第二炎帝」が存在したものと思われる。




以下、本編ネタバレに付き注意




下巻冒頭にて、ブルゴーニュへと旅立とうとするベレッタとベッドインする。そして…






○1944年7月28日


来ないのかよ?不感症のオッサン


使用される騎(カバリエ)合計13騎。全て出力規制を外した完全武装。
3騎を陽動、残りを2騎一つの隊としたレジスタンス蜂起開始。

事故を装い、自ら工作機械に腕を突っ込み、“治療”と称し右腕を義体化させたフィリップ・ミゼールはその日を迎える。

戦場は凱旋門広場。そこで“最強の重騎師”ハインツ・ベルゲが駆る“赤獅子”との戦闘に突入。『炎舞』と待機させておいた他の騎体が携帯していた大型燃料貯槽を用いて広場全体を炎熱地獄へと変貌させる。

そうして“赤獅子”の出力倍加を封じ、ついには視界の右半分・聴覚全てを奪い“赤獅子”を追い詰め、決定打として凱旋門ごと“赤獅子”を両断しようと渾身の一撃を放つも、しかしそれは左腕を犠牲に回避され、着地の衝撃で両足を破損。

さらに胴体を裁断され、致命傷を追ったフィリップは残った上半身だけで“赤獅子”に組み付き、レジスタンス全軍に向けて最期の電信を打つ。


撃て――!!


その死は予定通り訪れる。
だが人として重騎を操り“最強”を敗北寸前まで追い込んだその意志は、ベレッタ・マグワイルドは元より、敵であるハインツ・ベルゲにも深い影響を与えることになる。



《誰か 誰でもいいからアイツに伝えてくれ 闘い続けてく――》



ちなみに「本来の歴史」ではこの時ベレッタ(本編での「女剣士」)がフィリップの死に立ち会い、彼の末期の台詞(本編とは異なる)を「そのままに捉えてしまい」巴里閉鎖前に帰国。彼女に老いてもなお消えぬ傷を残した。
だが本編ではベレッタ(未来から来た「女剣士」の孫)が巴里に帰ろうとした所で諸事情により独逸軍に拘束され、しかもそのせいでハインツが巴里帰還を早めたためフィリップの死が本来の「8月1日」から「7月28日」に前倒しされた
結果ベレッタは釈放後帰途に就こうとして予想外の訃報を聞き卒倒。目覚めて錯乱するも「母」から「妊娠(相手は確実にフィリップ)」告知を受け治療を受けた後、共にいたロゼッタの基で泣き崩れるのだった。


そして本編終盤、戦いと巴里や「女剣士」をも救う覚悟、そしてフィリップの子を産みこの時代に残る決心を抱き巴里に帰還したベレッタは、ミゼール家でフィリップの父に孫妊娠報告と共に彼の遺した手紙を託される。
奇しくも重騎に残った彼の末期の叫びにも似たメッセージが綴られたそれの末尾には、ベレッタのために残した力の在りかへの道しるべが記され、そこには強化改造されたと、父が彼の死後回収した第三炎帝が残されていた…。






…時は流れ、「巴里が閉鎖されていた」という歴史が世界から消滅し、それが記された資料も歴史の影に埋もれた2002年。
巴里から創雅都市S.F救援のため派遣された隻眼の女重騎師の名は「フォレット・ミゼール」…ミゼール家の末裔にしてロゼッタの教え子であった。
彼女とフィリップの詳細な関係性は不明だが、ミゼールの血は耐えることなく後代へと受け継がれていたのだった。











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最終更新:2020年07月24日 15:42