ハインツ・ベルゲ(都市シリーズ)

登録日:2011/08/28 Sun 01:10:38
更新日:2024/01/09 Tue 17:28:25
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もはや、……もはや

青い大気も、赤い土も、

も、も、


嘆きもいらぬ――



ハインツ・ベルゲとは、川上稔著〈都市シリーズ〉『閉鎖都市 巴里』の登場人物。
独逸陸軍中尉(実質権限は将官級)。

58歳(1944年当時)という老兵でありながらP計画によって全身を義体化、感情喪失機構を装着し“最強”の称号を得た重騎師。

独逸陸軍中尉となったことで戦闘に関すること以外の一切の記憶を失い、感情も封印されたため会話及び記述は実務一点張り。
あるのはただ『最強であり続けねばならない』という意志のみ。
巴里での駐屯中に過去の記憶に触発され、P計画よりもさらに昔にフランスで行われていた“最強の騎を作り出す計画”A(アティゾール)計画と己の過去を追う。
その過程で奇しくも同じくA計画を追っていた主人公ベレッタ・マクワイルドと同時期ブルゴーニュへと渡り、結果ベレッタが途中で計画まで頭が回らなくなったのと対照的に、計画の真相へとたどり着くことになる。
だが本編ではロゼッタ・バルロワのミスからベレッタの存在に気づき彼女を一時拘束、巴里帰還を早めた。
結果「フィリップ・ミゼールの死」「モルバンへの黒龍襲来」が元の歴史より数日だが前倒しされ、意図せずしてベレッタが歴史を変える覚悟を決めた切っ掛けとなっている。



重騎師としての実力は高く、機甲騎師となってからは本編ラストの“庇護女帝”との戦闘を除いて無敗。

巴里守護騎師の末裔、フィリップ・ミゼールの駆る雄型重騎“剣将(エクスペール・デ・オレイル)”と戦闘の時は、“赤獅子”が高機動時には必ず使う排熱を『辺り一面を炎の海にする』ことで封じるという罠にはまり、音速機動が使えないままであったにもかかわらず、凌駕紋章“炎舞(フラーム・バル)”を発動させた“剣将”に勝利している。



余談:『機甲都市 伯林1943』では独逸G機関五大頂“鋼鉄騎師(アイゼン・リッター)”カール・シュミットが“世界で二番目の男”との戦闘があることを予見した際「政軍の“赤獅子”が東に赴いておらねば、な」とハインツ・ベルゲの不在を痛手に感じていた。





《悲鳴がなぜか耳に残っている。》




彼が記憶を封じてまで最強を求めた理由……それはかつてモルバン山岳部にてA計画被験者の搭乗した重騎と交戦、仲間が次々と屠られていく中、自身も負傷し“悲鳴をあげた”からである。
相手の暴走によりからくも勝利するが、仲間を失い、圧倒的な力に怯え、ついには愛しい家族すら亡くした彼はP計画被験者となることで“悲鳴”を失い、そして“最強”となった。


――だがフィリップ・ミゼールとの一戦を終えた彼の中に疑問が生まれる。

悲鳴を持ったままの男が、何故悲鳴を捨てた自身を追い込むことが出来たのか。



感情を消して闘う自分に、感情を持ったままの人間が追い付いてきた。
勝利出来たのはフィリップ・ミゼール最後の一撃を戦闘経験から予測しただけであり、『悲鳴』の有無は無関係だ。



――真の最強とは何なのだ?



その疑問を抱えたまま、彼は全ての決着をつけにいく。
自身の始まり、最強を望んだ理由。それを作り出したA計画最後の被験者の元へ。


1944年8月6日
ブーローニュの森にてベレッタ・マクワイルドの雌型重騎“快(グラッチェ)”と交戦。これを圧倒し撃破寸前まで追い込むも加勢に現れた雌型重騎“庇護女帝(プロテクテイツド・エンプレス)”に阻まれ、そのまま連戦へ。

その最中、“快”との戦闘中に転倒したことで感情喪失機構が破損し、記憶が蘇生。
感情と意志を取り戻したベルゲは、過去のやり直しを始める。
即ち、A計画によって生み出された“最強の重騎”との再戦を。

互いに重騎の全力を引き出した決戦の果て――ハインツ・ベルゲは敗北した。


泣いているかのように朝露に濡れた視覚素子で自らを破った相手を見て彼は何を思ったのか。それは本編には記されていない。
だが、彼が最後に謳った一節に、その答えがあるのかも知れない。




二度と誰かが嘆かぬよう

果て無くつかめぬものよ

広く大きく抱けぬものよ

我は汝と共にあらんとす


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最終更新:2024年01月09日 17:28