ビール

登録日:2011/07/09 Sat 17:30:45
更新日:2024/04/08 Mon 12:23:16
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ビールとは、世界中で愛されている麦を原料とする醸造酒である*1


概要

発音表記にはブレがあり、英語だと「beer」と書いて「ビア」と発音する。漢字表記なら「麦酒*2」。
飲み会などで「とりあえず生!」など最初に頼むメニューとしても有名。
なお日本では「口当たりと喉越しがよく、いきなり飲んでも楽な冷たい飲み物」と認識されている……が、
これはピルスナーの普及率が90%…というかビアギークのみピルスナー以外を知っているというレベルの日本での話であり、実は世界ではご当地でさまざまな飲まれ方をしている。

他の酒もピンきりあるように、ビールにもピンきりがある。
クラフトビール愛好家等の趣味でビールを嗜む人には「とりあえずという名前のビールは無い」と言われる。
ものによっては、いきなり飲むと「え、何だこれは?」と思うほども違うので、興味を持った人は地ビールのホールへ出向いてみてほしい。
2020年代に発達したクラフトビールブームのお陰で、スーパーマーケット辺りならピルスナー以外を売っている店も多くなったので、とりあえず1本普段と違う奴を買ってみてはいかがだろう。
ただし中にはアルコール分16.8%という日本酒に匹敵する物もあるので、そういうのをとりあえずの勢いで飲むとの危険があります。気を付けて。


歴史

麦を原料とした醸造酒の歴史は古く、シュメール人によって作られた古代メソポタミア文明のころにまで遡る。
シュメール人によってオリエントで生まれたビールは、時代をかけエジプトに製法が伝わった後、北方のゲルマン人やケルト人、ローマ人などに伝わった。
だが、ワイン醸造が盛んだったローマにおいて、ビールは「野蛮なもの」とされてしまい、多くは飲まれなかった*3

ところが5世紀になり、ゲルマン人系のフランク王朝が成立すると、ヨーロッパではビールが盛んに作られるようになった。
また、キリスト教が普及してくると、修道院は自給と巡礼者に振る舞うためにビールを醸造するようになり、技術の発展に多大な影響を及ぼした。

初めビールは「大麦+水」で作られていたが、ヨーロッパに伝わるようになったこの頃には、各種ハーブを調合したグルートを入れるようになった。
ただ、このグルートは領主によって管理され、醸造業者は購入しなけばならなかったため、今では残っていない

11世紀、ドイツの修道院がグルートに代わりホップを初めて用いた。
これには独特の爽やかさと雑菌抑制効果があり、グルートと違い領主に納金しなくとも良いため、国内で流行。15世紀にはドイツの主流となった。
だが、イギリスでは領主である王侯貴族の権力が強かったため、ホップによるビールの隆盛は、17世紀まで待たなければならなかった。

1516年、バイエルン王国では、粗悪なビール*4の流通やパンなどの食用である小麦がビールの原料に転用される事による飢餓を防ぐためにビール純粋令を発令し、
原料として麦芽以外にはホップと水しか使わないよう命じた。
ただ、ビール純粋令は現在のドイツでも効力を有していたが、EUとの関係から有名無実化しているらしい。


日本においてのビール

日本には明治時代に開国とともに入ってきた。神奈川県横浜市は日本のビール発祥の地で、そのことを示す記念碑が立っているほか、現在でもキリンビールの工場が絶賛操業中。

現代では「庶民が集う酒場のポピュラーな醸造酒」として普及している。
味の好みはかなり分かれるが、最初の乾杯の一杯はビールが文化として定着している感触は強い。
そしてビヤホールやビヤガーデンでワイワイやるのが夏の夜の大人のお楽しみの一つだろう。
蒸し暑い夜、キンキンに冷えたのを仕事終わりにグイっと……はい、優勝
(未成年は「こどもびぃる」を飲みながら大人になる日を待ってね。)

また、我が国では「酒税法」によって「純粋なビール」には高い税が掛かるため、ビールに似た味の「発泡酒」や、さらに税軽減を図った「第三のビール」等を低価格で生産している(でもこっちも税率が上昇気味)
あとビールより発泡酒の方が「年間これ以上の本数を作らなくちゃ駄目」という基準値が低いので、クラフトビール業界では「ちょろっとだけ香料やスパイスを混ぜて発泡酒扱い」にしている物もある。
ただしホップ量の問題で税率はビールのお値段なので、「発泡酒だから安物」という訳ではない。


○スタイル

  • ラガー(下面発酵ビール)
低温で貯蔵され酵母が上面に浮かび上がらずにタンクの下部で発酵が進むため下面発酵ビールと呼ばれる。発酵温度は比較的低温で熱成される。
この方式は大規模な設備を必要とするが、大量生産に向いていて現在では世界のビールメーカーの主流醸造方式。
ex.デュンケル、ピルスナー、ボック、アメリカン

  • エール(上面発酵ビール)
発酵が進むと発酵液の表面上に浮かび上がってくる酵母を使用することから上面発酵ビールとよばれる。
発酵温度は12~20度の常温に近い温度で短期間の発酵を行う。
日本でよく飲まれるピルスナーを始めとしたラガーと異なり、 適温は常温か少し冷やした程度。
このため日本人が飲むと「ぬるい」と感じる事が多いという。
ex.ヴァイツェン、IPA、トラピスト、ケルシュ

  • 自然発酵ビール
発酵時に酵母を添加せずに、醸造所内の空気中の酵母や他の微生物により常温で発酵させたビール。
ex.ランビック、クリーク、フルーツ


○種類

日本で酒飲みでない人には馴染みが薄いが、ビールは歴史の長い飲み物で、その製法と種類は多種多様。知らない人がいきなり飲めば、同じ飲み物とは思えないだろうほどの別モンも普通にいる。

  • ピルスナー
皆さんお馴染みピルスナー!日本のビールは大抵がコレ。
ホップの香りと苦み、麦芽の甘さと香ばしさ、そして極めつけのグラスに輝く黄金色、そんな世界一飲まれているビール。
ボヘミアンピルスナーやヨーロピアンピルスナー、ジャーマンピルスナーなど種類は色々あるが日本はボヘミアンです。
二次元で云うならアイドルキャラ

  • ヴァイツェン
バイエルン地方発祥の小麦麦芽ビール。バナナのようなフルーティーさとナツメグのようなスパイシーさを併せ持つ個性的な香りが特徴。口に含むと焼き立てのパンを思わせる小麦の優しい香りが鼻を抜けてゆく。
苦みが少なく、サッパリと飲みやすいので普通のビールに飽きた方は是非!なお、ドイツ南部以外で作られるとヴァイツェンではなくヴァイスと呼ぶ。
二次元で云うなら転校生キャラ

  • アメリカン
飲み口も色合いも軽いビール。飲み口を軽くする為にコーンや米、その他穀類の副原料がよく使われる。ホップの香りや苦みはほとんどない。
オススメの飲み方は夏の暑い日に外で汗をダラダラかきながら良く冷えてるのを飲む!このタイプで有名なのはバドワイザーやコロナ
二次元で云うなら運動部キャラ

  • デュンケル
黒ビールのドイツでの呼称。大麦をローストして使うので抽出液が黒くなる。
焼けたパンに似た香りと爽やかな苦みが特徴。
黒ビールは他にもミュンヘンで生まれたミュンヒナー、生のブナを燃やして乾燥燻蒸させた麦芽を使用したラオホ、デュンケルより濃い色だが口当たりが軽いシュバルツと多岐に分かれる。
二次元で云うなら褐色毒舌ヒロイン

  • ボック
香りがとても強く、その割には苦味の少ない非常に強いビール。ドッペルボック(二倍のボック)やトリプルボック(三倍のボック)という濃厚なビールもある。
二次元で云うなら芯が強い文科系な子

  • ケルシュ
ドイツのケルン地方発祥のビールで大麦と小麦から作られる。ピルスナーのような淡色でエールに似たフルーティーな香りを持つビール。
二次元で云うなら委員長キャラ

  • IPA
IPAとはインディア・ペールエールの略。イソプロピルアルコールの略ではない。
18世紀イギリスの植民地になったインドに多くのイギリス人が移り住んだが、現地の飲み水の衛生状態は悪く彼らは安全な飲料の確保に困難した。
そのため本国はビールを現地に送ったが、インドに送る間に劣化してしまった。
そこで殺菌成分の強いホップを通常の4倍、アルコール度数を9度まで高めたビールを造った。
するとこれが現地で大人気となり、イギリスでも売り出すためにアルコール度数と苦みを少なくしたものが現地のIPAの元になっている。ヤッホー・ブルーイングのインドの青鬼などが有名。
ただでさえ多いホップを更に増量したダブル/トリプルIPAというのも存在する。
苦味の基準値であるIBUという数字があるが、ピルスナーが20とかそこらの中、トリプルIPAは100に達する物も存在するほど。
苦味を味わうビールと言っても過言ではない。

ちなみにこれらの苦い系IPAはアメリカ西海岸を中心に発展した為に「ウエストコーストIPA」というサブジャンルで分類される。
これらのカウンターカルチャーでホップを後入れすることで苦味を抑えて濁りを出した「ヘイジーIPA(イーストコーストUPA)」なる物もある。
他にもアルコール分と苦味分を共に控えめにしたセッションIPA等、サブジャンルがかなり多岐に渡っているので、色々試してほしい所。
二次元で云うならお局キャラ

  • トラピスト
ベルギーとオランダの修道院で醸造されているエールビール。
法律でトラピストと呼べる修道院は決まっており、オルヴァル・シメイ・ロシュフォール・ウェストマール・アヘル・ラトラッペの7つのみ。
これら以外の修道院がビールを作るとアビービールとなる。色はダークだがフルーティーで甘みがありアルコール度数が高いモノが多い。
二次元で云うなら修道女キャラ

  • ランビック
野生酵母を使用した自然発酵ビールの総称。
一般的な飲み方としては炭酸の弱い長期熟成と炭酸の強い若いワンビックをブレンドし瓶詰めし二次発酵を行ったグースというスタイルになる。
二次元で云うならBBAキャラ

  • クリーク
ランビックにチェリーを加えて瓶詰め、二次発酵を行ったもの。味はチェリーを主体としたカクテルのようになり非常にフルーティーで飲みやすく女性に人気。
二次元で云うならロリババアキャラ

  • フルーツ
ランビックで熟成させたビールに各種フルーツを半年浸したものや、ビールに果汁を添加したカクテルビールがあり、フルーツの色合いや味わいを楽しむ。
モンゴゾバナナやリンデマンペシェなどが有名。
二次元で云うならカタコト外国人キャラ

  • スタウト
黒くなるまで焙煎した大麦を素材にした上面発酵ビール。そのため褐色を通り越してほぼ真っ黒。
いわゆる「黒ビール」と呼ばれてるのは大概これ。
デュンケルに似ているがあちらは下面発酵ビールである点が異なっている。
度数はやや高め、強めの苦味・キレのある酸味と同時にチョコレートやコーヒーを思わせる、時に甘さすら感じさせるロースティな香りが特徴で濃厚な味わいが舌に残る。またオーツ麦を使いまろやかさを出した「オートミールスタウト」や、乳糖を加えることでまるでカフェオレのような甘みを引き出した「ミルクスタウト」等があることからも分かる通り非常に複雑で多様な側面を見せるビールでもある。
輸出用に作られた「インペリアルスタウト」は、腐らないように度数がかなり強めになっているため、飲み方にはご用心。下記バーレーワインと並んで2大ちびちび系ビール。
二次元で云うならダークなヤンデレ系キャラ。

  • ポーター
スタウト同様に暗褐色の強いビール。
元々ロンドンはテムズ川を行き来する郵便の運ちゃんの間で飲まれていたビールで、ポーターの中でも特に度数の高い物を「スタウト・ポーター」と呼び、次第に一ジャンルとして独立したものがかのスタウトである。
有名なギネスビールのエクストラ・スタウトも元々は「エクストラ・スペリオール・ポーター」という名前だった。

  • バーレーワイン
バーレー(麦の)ワインの名の通り、長期(6ヶ月~年単位)熟成させてから出荷される。長期熟成故に工場内のスペースを取るため、あまり生産数を増やせず少量限定発売となることもしばしば。
長期熟成される関係で発酵が進み、ワイン並みの度数8%オーバーの物がメイン。中には15%を超える物も。
一応エール系なのであまり冷やさずに飲む。冷やして一気とかやったらほんと死人が出かねない濃度なので、ワイングラスでちびちびやって、麦の香りを楽しむビール。
二次元で云うなら確実にロリババァ。


○余談

かつて日本のビール会社では、消費アップを狙って水着のキャンペーンガールが設定されていた*5
現在も芸能界で活躍する人には、ここから羽ばたいた人も数多い。プールや海岸をバックに水着姿で大きなジョッキを持った女性のポスターを居酒屋で見たことある人もいるのでは。
現在も個人経営の居酒屋や料理店では、かつてのポスターがそのまま貼られていることがあるので、興味のある人はお宝写真的な感覚で探してみてはいかがだろうか。

上記の様に数多くの種類と、様々な楽しみ方が存在する飲み物がビールというもの。
だが、情報の溢れた現代においても未だに「ピルスナー以外のビールを知らない(或いは興味がない)」という人々も数多く存在する。
そんなビール界の憂いを払拭するために立ち上がった男がかつていたことを、皆さんはご存じだろうか?
その男の名は「Michael Jackson」。そう、世間から「King of Hop」といわれたあの人である。
……え?「King of Pop」の間違いじゃないかって?違います。「King of Hop」です。
ばらしてしまうと、こちらのJackson氏はイギリスのライターであり、あのマイコーとは何の関係も無い方だが。
上記の称号も、勿論たまたま名前が同じであった事をネタにしたものである。いわゆる同姓同名の典型例。
しかし此方、ビールのマイケル・ジャクソンもまた並みの人物ではなかった。

「彼の存在によりビールのルネサンスが始まった」と言われたり、
ビールのスタイル・テイストの具体的な分類法の根幹を作ったのは彼だったり、
ベルギービール普及の貢献度から、ベルギー政府から勲章をもらっていたり

と、ビール業界においてはそれはもうシャレにならないレベルのビッグネームなのだ。
正に「二重の意味で」ビール界のマイケル・ジャクソンと呼ぶことができるだろう。



最後に、今更言うまでもないが……


当記事は飲酒を勧める物ではありません!!
また、20歳未満の飲酒は法律で禁じられています。



追記・修正、そしてお酒は二十歳になってから楽しみましょう。

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最終更新:2024年04月08日 12:23

*1 余談だが、この麦からつくった醸造酒を蒸留して「ニューポット」という無色透明のお酒を作る。これを木の樽に詰めて熟成すると……そう、「ウヰスキー」になるのだ。

*2 昔のビール会社はこの表記を社名に使っていた。

*3 バビロニア王国では「ハンブラビ法典」にビールに関する法律があり、エジプトではピラミッドの石に「早く帰ってビールを飲みたい」と書かれた跡があるぐらい一般化していた。

*4 「味が悪い」だけでなく、発酵具合によっては死んでしまう人までいたと言われている。

*5 ビール以外でも化粧品や水着メーカー、航空会社等で同様の設定があったが、女性の社会進出が増えた状況もあり、2000年代以降は各社とも大幅に削減された。