黒騎士物語

登録日:2011/11/22(火) 22:27:08
更新日:2024/03/18 Mon 22:33:59
所要時間:約 6 分で読めます




「私と共に祖国ドイツと兄弟肉親の為に死ね!犬死はさせん」



黒騎士物語は小林源文が執筆した戦争劇画であり氏の出世作でもある


それまでの戦争作品では敵役として描かれることの多かったドイツ軍の機甲中隊にスポットをあって、戦争中期から敗戦までの彼らの戦いの軌跡が描かれる

戦争劇画のため登場人物は全て精悍な中年の男たちである… 何、萌えだと?バカモン!!俺のケツでも舐めろ

「Cat Shit One」とともに源文の代表作でありその後も他の作品でゲストとして登場している

後にウサギにもなった


ここでは「ウサギの黒騎士物語」も併せて紹介する


[あらすじ]
1943年秋、東部戦線のロシア南部の名も無い村はずれに居た第8中隊からこの物語は始まる
ドイツ軍の夏期攻勢「チタデレ」戦後、戦局は悪化するばかりだった…

補充兵としてこの中隊に配属されたクルツ・ウェーバーはこの中隊の指揮官であるエルンスト・バウアー中尉の指揮の下、過酷な東部戦線を転戦していくことになる…


[登場人物]

  • 黒騎士中隊
エルンスト・バウアーの指揮する戦車第8中隊
常に最前線に投入されそのたびに大きな損害を被りながらも東部戦線を転戦した歴戦の中隊

数々の軍紀違反を犯しつつもそのたびに多くの戦友を救い、将兵からは守護天使のごとく崇められている
後に第12装甲軍司令部直属の部隊となる

イワンからは仇敵のごとく憎まれ五万ルーブルの懸賞金までかけられているが本物の戦士として敵味方問わず敬意を持たれている

  • ウサギの黒騎士中隊
ウサギのバウアーたちの戦車中隊
バウアーがしょっちゅう逃げ出そうとするため友軍からは全く信用されておらず

  • 逃げ出さないように「味方の」対戦車砲に狙われる
  • 救援が黒騎士中隊と聞いた部隊の指揮官が自殺しようとする

など完全に疫病神扱いされてしまっている

戦闘中、指揮官のバウアーは大抵恐怖で失神してしまっているため「恰好がつくように」戦車のハッチに縛り付けられ、クルツのイワンとの取引(!)でなんとか勝たせてもらっている。
それでいいのか!?

  • エルンスト・フォン・バウアー

本作の(実質的)主人公
黒騎士中隊中隊長であり階級は中尉、後に大尉に昇進

常にかぶっている軍帽と右目の眼帯がトレードマーク
常に最前線で指揮を執り続け決して部下を見捨てないことから部下からの信頼は厚い
軍紀違反の常習犯であり分かっているだけでも2度軍法会議にかけられ1度などは懲罰大隊に編入されもしている

これまでの戦いで多くの戦友の命を救っており彼の騎士十字章授与式ではその場に居合わせた多くの兵士から祝福されている

最終話において、5月9日(まさに対独戦終結の時期)のベルリン攻防戦にて戦死。
最期はティーガーⅡをクルツ車の盾とし、砲弾を引き受けて死亡。クルツを戦後も生き延びさせるべくの行動であった。

  • ウサギのバウアー

ウサギとなったバウアー中尉、なのだがこちらは原作と打って変わって士官学校ではカンニングが見つかり親が呼び出され、戦場では泣き叫び、戦闘中に仮病を使って逃げ出そうとしたり、恐怖で失神するなどダメ中尉になってしまっている…どうしてこうなった

ちなみに右目の眼帯は単なるファッション

  • クルツ・ウェーバー

第8中隊に配属された補充兵
本作の(一応の)主人公
東部戦線を転戦する中で彼が一人前の兵士になっていく物語、なのだがバウアーのせいで完全に脇役と化してしまっている

バウアーになかば戦後を託されたこともあり、WW2を生き延びた。
本編シリーズの最後はクルツがバウアーの墓参りをするシーンで終わる。


  • ウサギのクルツ

ウサギとなったクルツ
ただの空気

  • オットー・シュルツ

階級は軍曹、のちに准尉
最古参の中隊員でバウアーとも少尉時代からの付き合いであり、最後まで彼を補佐し続ける
部下には厳しいが、面倒見も良い親分肌の中年男

45年早春ごろ戦死。

  • ウサギのシュルツ

ウサギとなったシュルツ
ダメ中尉のバウアーの世話に手を焼かされている
仇敵のイワンとは仲良しで夜な夜な彼等とポーカーに興じているがそこで賭けているものが双方の占領地という東部戦線のドイツ軍の運命を握る大物となっている


  • エミール・フォン・バウアー
ドイツ第12装甲軍司令、階級は大将

名前の通りバウアーの親父で2人の息子を失い最後の跡取りとなったエルンストを気にかけている
ドイツ敗戦後米軍占領地に将兵を逃がすため息子に苦渋の命令を下すこととなる

息子を軍司令権限で軍法会議から連れ出すなど「この息子にしてこの親あり」な軍紀違反の常習犯
バウアーの部下のためにクリスマスプレゼントと称して御馳走を振る舞うなど粋な計らいをする
バウアーを生き延びさせようとの行動も見られた(具体的には後方の部隊への異動を提案している)が、先述のようにバウアーはベルリン攻防戦で戦死。空軍の長男・陸軍工兵隊の三男と合わせ息子全てを喪ってしまった。
クルツの項でも少し触れたが、バウアーの墓前で彼がクルツと再会したところで『黒騎士物語』本編シリーズは完結する。

  • ウサギのエミール
ウサギとなったエミール
ボンクラ息子に頭を悩まされる毎日、老けてるのはたぶんそのせい
クルツに息子の面倒を頼んでいる

[黒騎士中隊の装備]

Ⅳ号戦車
序盤の中隊の軍馬、この軍馬でバウアーは負傷し右目を負傷する。設定上は短砲身型・長砲身型両方を装備したことがあるようだが、本編シリーズでは基本的に長砲身型が登場(コンビニコミックスの解説によればH型)。

Ⅴ号戦車パンタ―
中盤からの軍馬、最後まで中隊の軍馬として働き続けた。
A型(初期型)、G型(後期型)を運用。G型は防盾改良前・改良後*1両方いる?

Ⅲ号突撃砲
中盤からの軍馬、戦車の補充が追いつかなくなった中隊に配備される。
時期設定のこともあり、長砲身型のみ登場。

ヘッツァー駆逐戦車
終盤からの軍馬、乗員からは「火葬付きの棺桶」と揶揄される。

ティーゲルⅡ
最後の戦いでヘンシェル砲塔タイプが登場。わずか1台となった中隊に配備されその威力をいかんなく発揮した。

[黒騎士物語の名台詞]

  • 「お客さんだ!パーティーが始まるぞ!」

  • 「ちっ、空気までイワン臭くなりやがった」

  • 「バカモン!!俺のケツを舐めろ」

  • 「お前たちの行くヴァルハラはないぞ、ロシア人」

  • 「情無用!ファイア!」

  • 「何を言っているんだ。俺が一人でも見捨てたことがあったか。祖国に帰れるんだ」

  • 「黒騎士1より全車、任務が終わったら野戦レストランで俺がたらふくおごってやるぞ」

  • 「俺は病気なんだ、ここから出してくれ!」
  • 「黙れ、俺もお前も戦争という名の病気だ。お前の病名は装填手、そしてお前がいないと俺たちは戦争をできないんだぞ」

  • 「非常スイッチ!」
  • 「諸君、茶番は終わりだ、イワンがそこまで来ているんだ。ここの偉いさんは戦う相手を間違えているらしい・・・」
  • 「畜生めっ!!」
  • 「俺のケツでも舐めろ…」

  • 私は敗北主義者です

  • 「俺がヴァルハラヘ送ってやるぞ」

  • 「黙れ!優れた戦車兵は優れた兵器に勝るんだ!」

  • 「ガキ共イワンはこんなに甘くはないぞ!武器を置いて家へ帰れ」

  • 「連中勝った気でいるな、ならば教育してやろう」

  • 「お前たちは十分に義務を果たした、古いドイツのために死ぬべきではない!新しいドイツのために生きろ、ジークハイル!」


ちなみに「俺のケツをなめろ」の意味はドイツでは「消え失せろ!」という意味で古くから使われている。
念のために言うが別に「アッー!」な意味で使う言葉ではない。

  • カードゲーム「俺のケツをなめろ!」
アナログゲームブランド「天下布武」から発売されたカードゲーム(いわゆるTCGではない)
黒騎士物語をベースに、プレイヤーは栄光のドイツ軍将校としてイワンどもに囚われた同胞を救出する、というもの。
しかしそこはゲンブンワールド、プレイヤー同士は決して味方ではなく、自分の手柄のためにそれぞれの足を引っ張り合うのがゲームの肝。
戦車カードを場に出し、各種イベントカードで援護したり妨害しあいながら、最終的な得点を競い合う。
万能カウンターカードに『俺のケツをなめろ!』というタイトルと同じカード名が冠されており、発動の際にはカード名を大きな声で読み上げることが推奨されている。

平野耕太の漫画「以下略」の第一話冒頭でヒラノ達がプレイしていたのがこれ。
発売から20年近くが経過しており、プレミア価格で取引されていた。

その後、ゲンブンゲームズより復刻版が発売されたことで手に取りやすくなっている。
追加カードを収録した「俺のケツを拡張パック」も発売されている。

また、戦車&美少女アニメガールズ&パンツァーとコラボしたバージョンも発売されており、各種カードがガルパン仕様になっている。
例:「俺のケツをなめろ!」→「パンツァー・フォー!」
しかし敵はカチューシャと同じ帽子を被ったソ連兵のままなのでなんともシュール。


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最終更新:2024年03月18日 22:33

*1 いわゆる「アゴが設けられた」タイプ