ほしのゆめみ(planetarian)

登録日:2012/09/02 (日) 11:08:03
更新日:2023/07/01 Sat 17:19:35
所要時間:約 8 分で読めます




-プラネタリウムはいかがでしょう?-

-どんな時も決して消えることのない、美しい無窮のきらめき-

-満天の星々が、みなさまをお待ちしています-


CV:すずきけいこ



ほしのゆめみとはkey制作のゲーム「planetarian」に登場するキャラクターである。
本作の実質的なメインヒロイン…というよりもこのゲームの世界観はkey作品としては珍しいガチガチのSFものとなっており、
実質的な登場人物は主人公である屑屋の青年と彼女しかいなかったりする。


以下、ネタバレも交えた解説




















30年間続いた戦争によりあらゆる物が破壊しつくされ止まない雨が降り続ける死の世界。
その中にある細菌兵器が撃ち込まれて壊滅した封印都市と呼ばれる街。
その街の「花菱デパート本店屋上プラネタリウム館」の解説員コンパニオンロボットとして働いてるのがほしのゆめみである。
ひょんなことからその場所へと足を踏み入れた主人公とゆめみが出会うところから本作品が始まる。


屑屋によるとゆめみは彼女を管理していたスタッフが記憶装置と物理電源をそのままにしていたことに加え、
廃墟と化したデパートの非常用電力供給が生きていたことが重なり、彼女自身にプログラミングされた行動…
8760時間周期の168時間の間だけ停止状態から目覚め、時間通りに目覚めて受付の扉を開け来ない客を待ち続け、
時間通りに施錠をしスリープモードになるのを繰り返し、
そして168時間が経った後は充電ケーブルをつなぎ、8592時間の眠りへと戻るということを30年間ずっと繰り返していた。
その稼働中の168時間の間に偶然にも屑屋がやってきたということなのである。


ゆめみは30年間の間に起きた戦争や世界の現状を全く知らず、屑屋のことを久方ぶりのお客様と信じて疑わずにプラネタリウムの上映へと誘う。
スタッフが自分以外いないことに関しても「自分以外のスタッフは旅行に出かけている」と、説明するのみである。


この世界のロボットというのは大戦前の主要輸出産業の一つで、人間のことを考え人間の為に働く存在である。
また、一見して人間と区別がつかない非常に精巧な作りとなっている。
初見のプレイヤーも、彼女の言動は一見するとロボットというより人間に近いと錯覚してしまうことであろう。

ちなみにゆめみはプラネタリウムが購入した「廉価版」で、幾つかの機能がオミットされている。
特に、本人曰く「先代高級モデルに実装された涙を流す機能は廉価版の自分には無い」とのことで、それに憧れるような素振りを見せている。

しかし、常に死と隣り合わせの生活をしている屑屋には彼女に構う余裕などなく、当初はかなりキツい態度でゆめみに当たっている。
でもそんな屑屋の反応を見てもゆめみは屑屋の不平不満をスルーしたり都合の良い解釈をしたりで、屑屋のことを客だと信じて疑わなかった。
ゆめみ自身はそんな自分の事を「すこしだけ、こわれている」と説明している。


しかしあくまでも彼女はロボットであり、屑屋から世界の現状を説明されても「サポートセンターに該当情報が無い」という理由で理解しなかったり、
廃墟と化したデパートの施設説明や廃品となっている土産物の説明を献身的に行ったり、生花売り場に誰も居なかったのでマイクやバネなどのスクラップで作った花束を屑屋に渡したりと、所々で人間とは違う認識の行動を垣間見せる。


それでも明るい笑顔を振り撒き自分に対して真摯に接してくれるゆめみに屑屋も段々と情が芽生え、
壊れてしまったプラネタリウムの投影装置を修理し、彼女の上映を見ることにする。


死の世界の中、止まない雨によって星空など見たことなかった屑屋は投影されたプラネタリウムの映像と、
プログラミングされた行動とはいえ万能の語り部として熱心に星空の事を語るゆめみの姿に感動する。


しかし、投影機という膨大な電力を消費する物を動かした結果、今まで続いていたデパートの電力供給が途絶えてしまう。
せっかくの久方ぶりのお客様なのにこれでは投影が続けられないと途方に暮れるゆめみに対し、
屑屋は暗闇の中「ゆめみの解説だけでいいから続けてほしい」と頼み、30年振りの上映会は無事に終了した。


「お客さまは、本当に星のことがお好きなんですね」


久しぶりの上映を無事に終えることが出来たのも屑屋のおかげだといい、ゆめみは屑屋に対して誠心誠意を込めた礼を言い続けていた。


上映終了後もいつもと同じように次の上映に向けた準備を進めるゆめみであったが、
屑屋は先程の上映でデパートの電力供給の大元が途絶えてしまい、ゆめみに新たな充電を施すことが出来ない。
つまり現状の168時間の行動が終われば、ゆめみは二度と動かなくなるということを悟ってしまう。


気持ちの整理がつかないまま屑屋はこの街から去ることを説明し、それに対してゆめみは自分がお車の場所まで付き添うと言い出す。
屑屋は煮え切らない思いのままその申し出を承諾する。
また、その道中でパッケージにも記されている彼女の夢も語られている。


-天国をふたつにわけないでください-


人間の役に立つのが生きがいである彼女は、天国の門が人間とロボットとに分かれていたら困ると語っていた。


以下、さらなるネタバレ





















旧式のロボットであるのに加え、30年という時の流れで所々ガタがきているゆめみを連れた移動は困難を極めたものの、
何とか街の唯一の出入口である封印都市の防壁の崩壊部分に辿り着く。
が、その唯一の出入口には来た時にはいなかった自動式の戦闘機械が鎮座していた。
周辺を高い防壁に囲まれている封印都市の脱出口はその部分しかなく、つまりはその戦闘機械をどうにかしなければ外には出られない状況になってしまう。


腹を括った屑屋は側にいるゆめみに「自分の命が大切だと思うなら、戻ってくるまで決して動かず声も上げるな」と厳命。
ゆめみも重要命令としてそれを認識する。




そして屑屋は戦闘機械と激戦を繰り広げ敵の脚部を破壊することに成功するも、30年間で敵の戦闘機械もまたこわれており、
思いもしなかったタイミングの攻撃によって屑屋は致命傷を受けてしまう。一歩も動けない状態の中、狂ったように攻撃を続ける戦闘機械が眼前に迫る。
全てをあきらめ、恐る恐る視界を開いた屑屋の視界に写ったのは










その後の数秒間、咄嗟の判断で屑屋は最後の榴弾を投擲し、それに我に返るかのように戦闘機械も機銃を発射する。
屑屋の放った榴弾よりも早く戦闘機械の放った機銃弾が屑屋の前にいたゆめみの身体に赤い蛇の如く襲い掛かり…








戦闘機械の破壊を確認した後、屑屋はすぐにゆめみへと駆け寄る。何故自分の命令を無視してここへと来たという問いかけに対しゆめみは答える。


「暴走状態にあると思われる未登録機体に、強制停止信号を発信しましたが、受行されませんでした」
「信号出力が弱い、もしくは受信側に問題が発生していると判断し、物理操作での緊急停止を試みましたが、失敗しました」


それは彼女であって彼女でない声色で発せられたもの。
屑屋の厳命よりも優先すべき事柄として、プログラミングに従って行動にしたにすぎないということであった。
それはロボット工学三原則の第一条であり最優先項目、
「ロボットは人間に危害を加えてはならない。人間に危害が加えられるのを看過してはならない」というもの。ロボットである彼女の最初の約束であった。


見るに耐えない姿になり、その光景を前に悲しみに暮れる屑屋に対しても普段の明るい口調で会話を行い、そして自分のレンズに在りし日の思い出を投影し始める。


プラネタリウムを見に来た誰もが彼女に礼を言い、彼女に笑いかけていた。
誰もが必ずまた来ると心から彼女に約束していた。
その末に映し出されたのがゆめみとスタッフたちの別れの映像。
戦争が本格化する直前のもの。
スタッフたちは旅行に出かけてくると嘘を吐き、必ず全員で戻ってくると約束する。
そんな彼らをゆめみは満面の笑みで送り出す。


…しかし映像が終わった後、ゆめみは流れる時の中でスタッフやお客様がもう来ないのではないかという結論を導き出してしまったことを語る。
かつての同僚たちの言葉と現在自分が置かれている状況の矛盾。

その果てに辿り着いた思考が

-わたしは、すこしこわれている-

というものであった。

それでも最後まで人間のために尽くそうという気持ちだけは忘れないゆめみにいたたまれなくなった屑屋は、
実は旅行へ行くと言って出て行ったスタッフは別の場所でプラネタリウムを作っていて、
いよいよ準備が整ったためゆめみを連れてくるように頼まれたのだという嘘をつく。
それならばとゆめみは、大きく損傷してしまったボディは交換すればよく、自分の中の記憶装置を新しい職場に届けてほしいと屑屋に託す。
そして声も絶え絶えな中、いつもの言葉を呟きながらその機能を完全に停止するのであった…


「プラネタリウムは…いかがでしょう?…」

「どんな時も…決して…」

「消える…」

「ことの、ない………」

「美しい……」



+ 星の人/系譜
ゆめみの願いを受け継いだ屑屋――いや、「星屋」となった男は、彼女を蘇らせるため、
そして人々に星の素晴らしさを伝える旅に出た。

数十年にも渡る旅の果て、滅びゆく世界で「星の人」と呼ばれるその男は、ある集落で星を知らない子供たちに出会う。
「星の人」が見せ、語り聞かせた星の世界に憧れる彼らは、自分たちが新たな星の人となることを決意する。
そんな彼らに男は「宝物」であり「星の人」の証と語る、ゆめみの記憶装置を託す。
だが既に、老いた男の身体は限界を迎えていた。

「"あの門"は1つなのか?」
「2つなら……おれは行かないぞ」

彼を看取る自動人形にそうつぶやくと、男は永遠の眠りについた。



そして彼はいつかのプラネタリウムに似た門の前にたどり着いた。
そこには投影装置が、それを補佐するスタッフたちが、投影を心待ちにする満員の観客が、花束を抱えたゆめみが待っていた。

「天国」でならロボットの願いも人の願いも叶う。
涙を流せるようになったゆめみは、自分に代わり人々に星の素晴らしさを伝え続けてきた男に、労りの言葉をかける。
その言葉で人生のすべてを報われた「星の人」は、宣言した。


「さあ、投影を始めよう――」



-プラネタリウムはいかがでしょう?-

-どんな時も決して消えることのない、美しい無窮のきらめき-

-満天の星々が、みなさまをお待ちしています-

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最終更新:2023年07月01日 17:19