ヴァッシュ・ザ・スタンピード

登録日:2012/09/20(木) 18:26:36
更新日:2023/08/06 Sun 14:13:09
所要時間:約 5 分で読めます





僕が撃ったら、『彼女』は本当に死んでしまう―――――




概要

逆立てた金髪と真紅のコートがトレードマークの、見た目20台半ばの青年。
かつて大都市ひとつを消滅させた「ロスト・ジュライ」と呼ばれる事件を引き起こし、彼が現れる所に騒動は尽きず、人間台風(ヒューマノイド・タイフーン)と恐れられた600億$$の賞金首。

…だったが、人類初の局地災害指定を受けたことにより賞金は失効*1
お目付役として派遣された保険会社のOL2人、砂漠で出会った巡回牧師らとの珍道中の最中、
彼の目的とその胸に秘めた決意が徐々に明らかになる……


人物

飄々とした言動と柔らかい笑顔が印象的で、子供からも好かれる穏やかな性格の持ち主。

天然とも思える発言も多く、バカだと思われる事もしばしば。
一人称は「僕」だが後半にかけては「俺」となっている。
またアニメ版とは裏設定を含めかなり違いがある。

銀色のリボルバー拳銃を自在に操る超絶技量のガンマンだが、実はとんでもない平和主義者
どんな悪党でも、たとえ自分を殺しに来た者でも、「殺す」ことを良しとせず、その信条に従って生きてきた代償に彼の身体には無数の消えない傷跡が刻まれている。








※以下ネタバレ













その正体は「プラント」と呼ばれるありとあらゆるもの生産する装置が自立した存在。
150年以上もの年月を変わらない姿で生き続け、とある理由により双子の兄ナイブズの手から、そして人間同士の争い、大墜落を生き延びた人類とその子孫を守るため「人間」として世界中を渡り歩いている。
不老ではある*2が決して不死ではなく、不殺の枷を自らに架してのあまりにも無茶な生き方の代償として、決して浅くない傷が体中に刻まれている。


プラントとは

プラントの外形は巨大な電球に酷似しており、フィラメントに相当する場所に天使のような有機体が存在している。これに二酸化炭素や熱・光が供給されることで、あらゆる生産活動を行う。
作中のノーマンズランドの人類は過酷な自然環境で生き抜くためプラントを専ら
  • エネルギーや物の生産
  • 環境操作
のために用いている。

ホーム側の人類は次元・時空の操作をするくらいだが、原理はプランク的な不確定性を法則を無視して操作、更に因果律の崩壊やそれによる創造が可能でその力はあらゆる時間軸、多元的宇宙、更に高次元にまで及ぶ。
大元のプラントのような何かはすべての次元を超えて「全て」の始まりそのものとされている。
最終盤におけるヴァッシュやナイブズはプラントの力の全てを使いこなせ全能の力とされるが、性格的な意味も含め全てを「台無し」にする程のことはしないという。
またこのプラントはノーマンズランドではロストテクノロジーとされており、完全に原理が分かったうえで運用をしていない。

その為に舞台となる作中ではサイボーグや兵器類がいびつな発展を遂げているが、人類の生活面では惑星環境、人類の技術不足もあって、西部劇、開拓時代のような時代背景になっている。
ただし隠れ里の人類やプラント崇拝系の教団はプラント技術に精通しているため、外の世界とは比べ物にはならない。
劇中に銃器・火器、兵器やサイボーグのマテリアルはプラントのプログラミングで生み出され、現実の物と比べられない初速や威力等を持っており、サイボーグの装甲は戦車を遥かに超え、作中最高レベルの兵器*3の砲弾は、戦車砲とは桁違いの弾速で、威力・貫通力はバンカーバスターを軽く超えるとまでされる。


ヴァッシュはそのプラントの突然変異種で自立・自我を持った個体。
地球側からは自立型はインディペンデンツと呼ばれている。
つまり人間ではなく人外。年齢も見た目通りではなく約150歳程。本編より60年後の公式外伝では210歳程。

プラント種としての能力、人外の身体能力、150年の研鑽を持ち合わせ、兄ナイブズには「人類で倒せるわけがない」と言われている。
人類最強のレガート・ブルーサマーズは下記の超光速の尖翼を見切り、その速度を超え動き、数千トンの巨大鉄球を操るが、不殺を解いたヴァッシュはそのレガートを一瞬にして倒してしまっている。
純粋にガンマンとしての技量も桁外れで、知覚出来ないほど細くされたナイブズのプラントの触腕を数キロ先から短銃で撃ち切り、
超光速の展開・攻撃速度を持つナイブズのエンジェルアームを見切り、さらには、その技量と身体能力による抜撃ちは展開されるエンジェルアームをプラントの力を形にした弾で撃ち抜き、重宇宙戦闘艦の超光速の主砲や小型砲※を見切るナイブズさえ知覚出来ない程
上空、数百mから跳んで着地(ナイブズは数キロ上空から)のような事もしている。


エインジェル・アーム(A・ARM)

ヴァッシュとナイブズがプラントとしての力を使用した場合に腕が変化することについて名づけられた呼称。
上記のとおりプラントの力そのものを利用しているため、比喩ではなく因果律だろうと時間、概念なんだろうと「全て」を崩壊することが可能。※
作中においてはその力は「(ゲート)」と言われている。
初期はヴァッシュがナイブズによって強制的に共鳴させられたときには右手が銃あるいは大砲と言えるものとなって発動した。
物語開始以前の不完全な状態で暴走、発射され遥か上空で力が発生しただけで大都市を消し去るほどの威力を出し、地球よりも遥かに巨大な月には肉眼ではっきりと確認できるほどの巨大な大穴を穿った※
最終決戦時にはプラントの力を弾丸の形にして銃撃と組み合わせた使用法を見せた。
ヴァッシュ、ナイブズ共にA・ARMの速度は発生を含めた全ての速度が超光速(実際は制限なし)※、尖翼とばれる能力や上記の力を弾の形にした弾丸もほぼ同様の速さを誇る※
力が発動したさいにはその破壊力そのものの衝撃波や力場といった形で噴出し、リヴィオやエレンディラといった者達でも近づけなくなっていた。
最終盤の決戦時の力の流れがあればナイブズ、ヴァッシュはプラントの力を一点に集中すれば僅かな消費で一瞬で多元的宇宙、更に高次元を巻き込んで崩壊させることも可能、融合体ならば更に巨大な力を振るえるが、当然二人ともそんなことをする気はない。※
プラントは力を使うほど消耗し、死を早めるがナイブズとの最終決戦で一度倒れたのは限界まで蓄積されてた肉体のダメージ、ただの一度もミスれない桁外れの緊張などの要因が大きかったため※*4



※Multiple Bullets、BBS、ブログ,まんがの森より


作中から150年以上前、地球からの移民船団の中で双子の兄のナイブズと共に生まれ、母親代わりの地球人女性レムらと共に新天地を目指していた。


・・・が、一年程後にある事実が発覚したことにより、彼の兄の凶行と彼の苦難に満ちた彷徨が始まる…






活躍

「トライガン」

本編第一話にて、前述の通り局地災害指定を受け、賞金首から解放される。

行く先々で様々なトラブルに見舞われつつ、己の半身でもある宿敵ナイブズと再会。
しかし、ナイブズの手により「ロスト・ジュライ」事件の原因ともなった「A・ARM」の暴走が再び引き起こされ、
5つの月の一つに大穴を穿つ「フィフス・ムーン」事件が発生。行方不明となる。

「トライガン・マキシマム」

「フィフス・ムーン」事件より3年後。大勢の命を奪いかねなかった己の力を嫌悪した彼は、「エリクス」と名前を偽り、とある街にて老婦人とその孫娘と暮らしていた。
しかしそこにウルフウッドが現れ、ナイブズが再び暗躍し始めている事を告げる。
なぜウルフウッドがナイブズの事を知っているのか?彼の目的は?
訝しく思いつつも、伝説のガンマンは再び真紅のコートを身に纏う…

台詞抜粋

「頼む、後生だから、撃たせないでくれ」


「死なせるな、裏切るな、幸せを掴め、夢を語れ!!」

「未来への切符は…いつも白紙なんだ」


「ひとりたすければ、ひとりうまれたことになるのか。そのいのちは、よいいのちか」


「僕が消してしまったあの人たちは…優しかったんだ…」


「大丈夫。もう大丈夫だよ」


「もしもそうなったら、僕は急いで逃げよう」

「そしてまたほとぼりが冷めたら」

「静かに寄りそうよ」


「旅が終わるーーだけど日々は終わらない。俺が愛したこのタフで優しい日々は…」


「ひみつ 暴れるのやめたら教えてやるよ」


「過ぎた力なんだナイブズ。この星の未来に俺たちは必要ない」


「無知のままただ…引き鉄を引く傲慢さを…俺は断じて許さない」


「大事なのは良いとか悪いとかじゃない、伝えること、伝わること、相手が隣で息をして存在していると…知ることだ」


「約束…今まで俺、こういう約束ってした事なかったけどさ」

「…今日はしてみるよ」

「…必ず戻る。待っててくれ」



関連する人物


○ミリオンズ・ナイブズ
ヴァッシュと同じプラントの自立種で、双子の兄と呼べる存在。
かつてはヴァッシュ以上に人間と分かり合えると思っていたが、
テスラに対する非道から人間を憎むようになり、大墜落を引き起こした。
その後も生き残った人間を抹殺すべく、その最強の力と能力を持って暗躍する。
以前と比べかなり冷酷な性格になっているが、人間の為に心身を傷つけるヴァッシュを案じたり、
前述のテスラに関する行動など、同族に対しての愛情は純粋で深い。


○レム・セイブレム
移民船団の乗組員。長い黒髪が特徴の妙齢の女性。「アレックス」という恋人がいたが、死別したらしい事が語られる。
ヴァッシュの人格形成に多大な影響を及ぼした人物であり、彼にとって母親とも姉とも慕う存在だったが、「大墜落」にて船団の全滅を防ぐためにその命を散らした。
ヴァッシュが纏う真紅のコートは、彼女が好きだった赤いゼラニウムの花に由来する。その花言葉は「決意」――――


ニコラス・D・ウルフウッド
当該項目を参照されたし。


○メリル・ストライフ
保険協会から派遣されたお目付役。ショートの黒髪が特徴の小柄な女性。背中のマントには大量のデリンジャーが隠しこまれている。
最初はヴァッシュを「人騒がせな厄介者」と見ていたが、彼の旅に同行するうちに良き理解者の一人となる。

アニメ版では彼女の危機を救うためにヴァッシュが(やむを得ずとも言えるが)不殺の信念を破ったり、
彼女にレムの面影を見る場面があるなど、実質ヒロイン的な立場と言える。
17年にアニメでの担当声優の鶴ひろみが死去してしまい、作者の内藤泰弘は悲しみに暮れた・・・


「俺の名はヴァーッシュ・ザ・スタンピドォォ!!」
「勝手だが今から俺的追記修正タイムに入る!!」

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最終更新:2023年08月06日 14:13

*1 これは台風や地震などに賞金は掛けられない、と言う理屈

*2 作者インタビューでは、長い時間をかけてゆっくりと老いていくことは示唆されている。

*3 パニッシャー、ネイルカノンや巨大鉄球ゲルニカ等

*4 本編終了以降はその力の流れる門も弱まり切っているので不可能だが決戦時に使用した力を形にした弾が数発があるためそれを使い宇宙を飲み込む事くらいは可能、あるいは他のプラントの力を借りるなど※公式外伝においてこの設定を若干流用したように非自立プラントの体内に存在するプラントの胎児が宇宙を消してしまう状態になっていた※