橘敬介(AIR)

登録日:2012/06/14(木) 09:19:48
更新日:2023/12/07 Thu 12:18:25
所要時間:約 8 分で読めます




\ヴィスヅゥーーーー!!/


アンタはザヨゴォでも呼んでろ。











「あれ、もう終わりかい」


AIR」に登場するサブキャラクターの1人。
中の人は狙い撃ったり乱れ撃ったりする人だが、京アニ版のみ嫁が白龍の社長である。


商店街で人形劇をしていた往人の前に現れた若い男で作中の舞台である田舎町とは不釣り合いなスーツ姿である。
往人の法術の力に感心し素直に褒め称えていた。
(が、そういう経験が町に来てから殆ど無かった往人は彼の風貌も合わせて疑ってかかり自分を捕まえて実験台にしようとしている学者かなにかと勘違いしていた。


同時に往人の人形劇に対し「いくらすごいことをやっていたとしても、楽しくなかったらそれは興味の対象じゃない」とアドバイスをする。
そして人形劇を見せてくれたお礼にと往人にケーキの入った箱を渡してその場を後にしていった。


以下、重要なネタバレ含む。



















最終章であるAIR編にて明かされるその正体はなんと観鈴の実父。
神尾晴子の下に預けていた娘を引き取る為に彼女の下を訪ねに来ていたのだ。妻は晴子の姉、郁子であり既に死別している。
子供の頃は泣き虫で、何かある度に晴子に泣かされては郁子に泣きついていたらしい。


彼のことを率直に言い表すなら。


あらゆる意味でタイミングが悪すぎた男


これに尽きるかもしれない。



知っての通りAIR編では晴子が観鈴と共に歩き始めると改めて誓い合った2人の絆が描かれていた真っ最中であり、
そんなタイミングで現れた敬介はその感動に水を差すような邪魔者でしかなかったかもしれない。
晴子も再会直後は自分勝手な都合で観鈴を押し付けておきながら今更引き取りに来た彼に対して明らかな敵意を向けていた。
敬介も敬介で、晴子には今まで観鈴を見てくれたことを感謝しつつも、晴子が観鈴を自分の娘にしようと実家に談判に来ていた件に対して、

「留守の間に実家に押しかけて、僕の親に無理矢理承諾を得て帰った」

「家の前に、一週間以上も居座られて、そのままじゃあなたが倒れると思ったから、その場しのぎで親が承諾した」

「それは僕の承諾じゃない」


こう反論。改めてその辺りの詳しい話をするために晴子の下に訪れたとのだという。
正論ではあれどその自分勝手な意見に晴子は我慢ならなくなりその時は敬介の下を立ち去ってしまう。


しかしまたしてもタイミング悪く、その数日後に観鈴は翼人の記憶伝承の影響で記憶喪失になり晴子のことを忘れてしまう。
敬介はそのタイミングで再び2人の前に姿を現す。
プレイヤーの誰もが思ったであろう、タイミングが悪すぎると…


車イスに座りまともに歩くことさえ出来ず、晴子の事をおばさんと他人行儀な呼び方をし、更には自分の事さえわからない観鈴の姿を見て敬介は唖然とする。


「あなたも知っているように、この子は、大勢の人の中にいることが出来ない」

「僕の住む街は、人が多すぎて、そんな病気を持つこの子には合わなかった」

「この静かな田舎町なら、外で遊び回れるし、友達もたくさんできてこの子のためになるんじゃないかと考えた」

「この町なら、健やかに育ってくれると思っていたんだ」


晴子に預けた理由を一所語り、観鈴がこうなった責任について晴子は全く咎めず今まで放任していた自分に非があると認める。
そしてその上で、だからこそまだ間に合うと思い自分が連れて帰ってちゃんとした病院で診てもらうと晴子と観鈴を引き離そうとする。


しかし晴子は敬介の…いや、大人である自分達の都合で観鈴を振り回したくない、観鈴とずっと一緒にいたいと敬介に懇願。
3日間だけ時間が欲しいと頼みその上で観鈴の意志を聞きたいと言う。敬介もそれを承諾しその時はその場を後にする。


そして3日後、記憶喪失の観鈴と一緒にいる内に改めて親というものの大変さを思い知らされた晴子は、
観鈴の意志を聞くことなく寝ている間に敬介に連れて行ってほしいと頼む。
敬介自身も自分に非があることを認めていた故にそれでいいのかと?晴子に尋ね直すが晴子の思いは変わらずそれを受け入れる。

…後は知っての通り晴子の最後の願いとして観鈴を海へ連れて行き、そこでAIR編の涙腺崩壊シーンの1つである海岸での抱擁シーンが繰り広げられる。
晴子の事をママと呼ぶ観鈴の姿を見て敬介は観鈴の気持ちを知り、寂しそうな表情を浮かべながらも自分は身を引くべきだと思い姿を消した。











…さて、ここまで聞くと「上辺だけで反省した気になっている身勝手な父親」みたいに感じるプレイヤーもいることだろう。
それも決して間違った意見ではないが本編での彼の姿をもう少し掘り下げて考えると、彼ばかりが責められるのは少し可哀想かもしれない。


確かに上辺に聞こえるかもしれないが彼は作中で決して自分は悪くないなどと身勝手な素振りは見せず、観鈴を放任していた自分の責任を認めていた。
観鈴の謎の癇癪も知っており、人の多い都会ではその癇癪の所為で奇異の目で見られていじめに遭ってしまうと考え、
人目につかない田舎町にいる晴子に預けたのかもしれない。
彼自身仕事で多忙な身の上であるようだし、妻を失った男手一つの身の上では観鈴に寂しい思いをさせてしまうといった現実的な観点も持ち合わせていたのだろう。
晴子から観鈴を引き取ろうとした時も突き放すような態度ではなく、いつでも会いに来てくれたらいいと優しく言葉をかけていた。
観鈴をちゃんとした病院で診せてやりたいというのも観鈴の身を案じていたからこそであり、自分がほったらかしにして晴子に押し付けてしまったからこそ、
今度こそ娘を自分の手で救ってやりたいと思うのは親としてはある意味必然であろう。彼もまた晴子と同じで娘を愛していたのだ。


「…僕もここまで放任していた。あなたを責めるつもりも今更ない」

「だけど、この子が苦しいと思うようなことだけは強いたくない」


そして一番重要なのは海岸での抱擁シーンの後での晴子とのやり取り。この時は晴子も敬介の苦労を理解しこのような言葉を発している。


「うち、今やったら、わかるんや」

「この子置いて、どこぞへ逃げてしまったあんたの気持ち

「あんた、愛してる人失ったんやもんな…」

「大好きな人や。たくさんの想い出と一緒に、ふたりで生きてきた人や」

「それを失ったあんたのあの時の気持ちわかるねん」

愛していた人間との突然の別れ…その悲しみに押し潰され逃げ出してしまった弱い心…その果てに子供を押し付けてしまう…
鍵っ子の中にはもしかしたらのことを連想した人もいるかもしれない。
晴子の会話内容から考えるに彼自身決して強い人間ではなかったらしいし、
悲しみに押し潰されて逃げ出してしまったその姿はある意味でとても「人間らしい」と言えるかもしれない。
だからといって自分の子供と向き合おうとせずに逃げるなんて最低であると言われてしまえばそれまでかもしれないが。


そんな弱い自分の事を理解していたからこそ晴子の方が親として相応しいと想い、素直に身を引くことが出来たのだろう。
彼もまた不器用でやり方が間違っていたとしても観鈴のことを愛していた「親」であったと言える。


「この観鈴とここまでこれたあなただ。僕とは違うよ」

「もう、あなたは母親だから…」

身を引いた後も事情を他言しない信用できる医者に観鈴を診せてやりたいと観鈴の身を案じ続けていた。
残念なことにそれが叶う前に観鈴は空へと旅立ってしまったが…


父親という立場を失い娘の最期にすら居合わせることが出来なかった彼の悲しみもまた晴子と同様に計り知れない物だったかもしれない。
後日談で晴子と仲良く家族という存在の大きさを語り合った後、彼は神尾の家を後にする。
その哀愁漂う表情の裏に隠された感情は果たした如何様なものだったのであろうか…


  • 余談
ここまで擁護しておいてアレだがアニメ版では尺の関係上彼に関する描写の殆どが省かれてしまっているので、
本当に「ただの身勝手なKY」にしか見えないかもしれない。
前述のように彼は観鈴のことを思いやっているいい父親なのでアニメ版しか見てない人にはぜひ原作のプレイをオススメする。割とマジで。
因みに劇場版ではより身勝手さが強調された性格となっており、行方不明となった観鈴を置いて仕事に戻ろうとした所往人から鉄拳制裁を食らっている。


「長い休み」

「僕の休暇も終わりだ」

「元気で…」






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最終更新:2023年12月07日 12:18