ヘドラ

登録日:2012/01/26 Thu 21:01:39
更新日:2024/02/21 Wed 23:14:07
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ヘドラとは『ゴジラシリーズ』の一作『ゴジラヘドラ』に登場する怪獣。
肩書きは「公害怪獣」だが、『ゴジラ対ヘドラ』劇場予告編のテロップでは何故か「忍者怪獣」だった。煙を吐いて変身するからね……。

【概要】

宇宙から来た隕石に含まれていた宇宙鉱石ヘドリュウムが、駿河湾の産業廃棄物ヘドロと結合して誕生した鉱物生命体……というが、「生命反応自体が存在しない」とある資料も。
このヘドリュウムは触媒作用を持ち、ヘドロに含まれる硫黄成分を硫酸に変える。

昭和シリーズの怪獣達の中では、ガイガンメカゴジラと並んで強敵だったと言える怪獣で、映画自体のインパクトの強さや残酷(『残虐』とは違う)シーンの多さも手伝い、人気もそれなりにある。


【『ゴジラ対ヘドラ』のヘドラ】

最初の頃はオタマジャクシのような姿で漁師に発見、捕獲される。
「ヘドロから発見されたからヘドラ」いう安直な理由で棒読み少年に命名された。

合体を繰り返して20メートル前後に成長し、その後はタンカーを襲って石油を飲み、四本足で移動する程度に進化。

工場から出る有害な黒煙をおいしそうに体へ取り込むようになる。
この時、ゴジラと初めて戦闘。ジャイアントスイングをかまされ、猛毒のヘドロを周囲に振りまきつつへ逃走した。

それから数日で進化を遂げ、体内で核爆発を起こして発生させたエネルギーを利用した飛行能力を得る。

前述の煙を吸う姿から公害を吸収する益獣になるかと思われたが、凶悪な有毒ガスと硫酸ミスト*1*2を撒き散らして移動するため、死傷者と発病者の合計は1000万以上を記録。日本全土を一気に破滅の渕へと追いやる。
この被害者数は後述の『怪獣黙示録』系列を除けば歴代ゴジラシリーズトップクラス。人間が溶かされるシーンはトラウマになった子もいたであろう。

そして再びゴジラと戦闘、ゴジラは右腕を溶かされてしまう。

最終的に体長60メートル・体重4万8000トンにまで成長し、二本足で活動するようになった。
この頃の主な武器はヘドロ弾と眼から放つヘドリュウム光線。
他にも飛行可能・全身がドロドロなので物理攻撃無効・接触すると硫酸でやけど・ゴジラの放射熱線無効など、尋常じゃなくハイスペックな能力を得た。

そして再度ゴジラと戦闘を行い、前述の能力にゴジラは手も足も出ず、一時は瀕死のヘドロ漬けにまで追い込まれてしまう。
しかし、身体の大半が水分でできているため、乾燥に非常に弱いという弱点を人類側に見抜かれており、自衛隊が用意した巨大な電極板によって高熱を発生させ倒す作戦が組まれたが、大乱闘で電線が切れて大ピンチ

しかし、ゴジラが放射熱線を電極板に放った事で表面を乾燥させられたヘドラは為す術もなく、ついには核を抜き取られた。
それでもなお残った部分が飛んで逃走を試みるも、放射熱線でまさかのロケットダイブしたゴジラに捕まる。
乾燥作戦で四本足形態にまで弱体化していたこともあって、思い切りボコられた末に再び放射熱線ロケットで電極板までお持ち帰り
自衛隊は修復完了した電極板を作動させるも「ヒューズが飛ぶ」というアクシデントで不発に終わったため、結局ゴジラが放射熱線で電極板を再起動。世話が焼ける……。

ゴジラは「同じ轍は踏むまい」とばかりに、今度はヘドラの体がバラバラになるまで引きちぎった上で、破片にまで念入りに電極板の熱を浴びせる。
最後までしぶとさを見せたヘドラであったが、今度こそ完全にガビガビに乾燥させられ、活動を停止。ようやくゴジラの勝利となった。

人々はヘドラの撃破に歓喜するが、彼らを見つめるゴジラの目には公害とその原因を作った人間への怒りが込められていた。
彼とて、水爆実験という史上最悪の環境破壊から生まれた事に変わりはないからだ。



そして もう一ぴき?



……その頃海では、人間の目を逃れたヘドリュウムが新たなヘドラへと成長していた。



【『ゴジラ FINAL WARS』のヘドラ】

長い沈黙を破り、シリーズ50周年記念作品に登場が決定。
あれだけゴジラを苦しめた怪獣の復活にファンは大きく期待を寄せた。

本編ではまずラドンアンギラスカマキラスクモンガ、キングシーサー、エビラ、ついでにジラ(ローランド・エメリッヒ版ゴジラ)といった往年の怪獣達が全世界を蹂躙する。
しかし、その中にヘドラの姿は無い。
これはもっと重要な局面での活躍が期待されるのではないかと思われていた。

しかし、復活したゴジラに怪獣軍団が襲いかかっても一向に出てこない。

ようやくゴジラが東京湾に到達した時、観客が見たのは海から塵のように吹き飛ばされたヘドラの姿だった。
ビルに叩きつけられたヘドラは続いて吹っ飛ばされたエビラが顔面に突き刺さった上に、ダメ押しの如く放射熱線でまとめて木端微塵にされてしまうのだった。
この間、ものの数分……これなら出さなくても良かったのではないか?
昔に比べて環境問題がある程度改善されて大幅に弱体化してしまったんだろうか?

ちなみに北村龍平監督は今作のオーディオコメンタリーにおいて、「ヘドラをお台場に出現させてレインボーブリッジを破壊させ、『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』のパロディを行うはずだった」と語っており、当初の構想ではもっと活躍するはずだった事がうかがえる。
だが、これらの展開が富山省吾プロデューサーによって却下された事で結果的に出番が少なくなる事態となり、北村監督も「こんなに短くなくてもいいんじゃないの?」と不満を洩らしている。

他にも『ゴジラVS柳田理科雄』において、柳田氏は「かつてのトラウマ*3がこんな扱いなのは納得できん!」と述懐している。
また、映画評論家の町山智浩・柳下毅一郎両氏も「ファビュラス・バーカー・ボーイズ」名義で出版した漫才風映画レビュー本『映画欠席裁判3』の中でヘドラのこの扱いを論い、「ヘドラはゴジラ史上最強の怪獣だろ!何でも溶かすし、潰してもちぎっても死なねーんだから」「北村はわかってない」と散々にこき下ろしているが……とりあえず、監督の名誉のためにもそれは違うと付け加えておこう。

一応、スタッフクレジットの映像にて街を破壊するシーンが見られるが、『超全集』によるとこれは所謂没カットの類ではなく、ヘドラの扱いが悪すぎると考えたスタッフ諸氏が声を挙げた結果、わざわざED用に新撮されたものであるとのこと。
その他、雑誌スチール用に本編中では実現しなかったゴジラVSヘドラの特写も、特殊技術担当の浅田英一氏の計らいによって撮影されている。
余談だが、本ポスタービジュアルに描かれているヘドラは昭和版の上陸期風になっている。

そして2021年11月3日、ネット配信番組として開催された『ゴジラ・フェス2021』にて、FW版ヘドラ並びにFW版ゴジラの現存している着ぐるみを修繕した上で撮影された短編特撮映画『ゴジラVSヘドラ』が上映。
FW版ヘドラの不遇極まりなかった扱いに、実に17年ぶりの決着をつけたのである。


【『GODZILLA 怪獣黙示録』のヘドラ】

アニメ映画『GODZILLA』3部作の前史に相当する小説作品。

こちらでのヘドラは当初、中国・河北省の廃鉱山において水銀、コバルト、カドミウム、鉛、硫酸、オキシダンなどの水中に存在する化学物質を食らう微生物の集合体として発見された。

発見時点では鉱毒によって汚染され、死の土地と化していた河北省の廃鉱山付近一帯の河川を浄化した後、
廃鉱山内にある地底湖でヘドロの沼の様な状態で静止し目立った活動をしていなかったらしい。
この時すでに防護服が無ければ近寄ることさえできないほどの汚染物質を溜め込んでいた。

すぐにその性質に着目した人民解放軍*4が回収し、独自に研究を進めることになった。「ヘドラ」という名称は人民解放軍がつけたものとされている。
当初は「環境汚染問題を改善する有益な微生物」として研究されていたが、怪獣災害の脅威に対抗するためかそれとも対外優位性を確保するための手段としてか、「対怪獣用の新型生物化学兵器」として転用される。
そして完成後の2005年、中国付近にラドンとアンギラスが出現して北京に迫ってきた際、国外向けのプロパガンダを兼ねて「ヘドラ作戦」として河北省の万里の長城付近で解放、ラドンとアンギラスの駆除に成功すると言う驚異的な成果を挙げた(目撃証言によれば、2匹を引き裂き、目をえぐり、絞め殺したらしい)。

……ここまでは良かった。

2匹を倒した直後にヘドラは制御不能となり、あろうことか進路を首都・北京に向けてしまい*5北京に加えて天津を一夜にして壊滅させ、死者820万人超(この数値すら情報操作が疑われており、実際の犠牲者はこの2倍から3倍に及ぶという説もある)の大惨事を引き起こした。
なお、両都市の壊滅後にヘドラはいずこかへ姿を消し、以後発見されていない。

このヘドラの北京襲撃で上層部を一夜にして失った中国は統治機構を失い、各地で軍閥が勃興。
立て直しも試みられたが最終的に内乱に突入し、自国内で核兵器まで用いた末に中国という国家自体が消滅への道を歩んでいった……。

このような中国全土の混乱と、ヘドラの存在自体が人民解放軍の機密であったことも手伝い作戦の詳細やヘドラの情報は闇の中へと消え去り、中国で使用されたヘドラについては「強力な生物化学兵器」等のあやふやな記録が残るばかりであったらしい
後の2042年、統一政権に移行した人類が対ゴジラ兵器としてヘドラを使えないかと研究を再開しようとしたが、悲劇を繰り返してはならないと決心した発見者である楊弘徹の妨害により失敗している。

妨害工作が発覚し「人類存続を脅かした罪」に問われた楊は死刑になったが、
楊が最後まで悔いていたのは「研究の妨害によって人類の存続を脅かした事」ではなく、「自身の祖国を滅ぼしてしまった事」であった*6
最終的にヘドラは溜め込んでいた汚染物質を使い切って力尽きたものと見られているが、これも楊の推測に過ぎず、死んだのか眠っているだけなのかは不明となっている。



【ヘドラこぼれ話】

  • 昭和ヘドラのデザイナーは井上泰幸氏が担当し、3形態分全てを手掛けた。ちなみに飛行期のモチーフはカブトガニ

  • 劇中で登場した幼体だが、実際の撮影ではドジョウにバルサ材とコンドームをかぶせる特殊メイクが施されたものが使われており、水槽内に電気を通して動かしていたという。
    ……今の時代であれば間違いなく動物虐待で訴えられそうなものだが。

  • 鳴き声は初代『ウルトラマン』に登場したケムラーの流用で、奇しくも両者ともに毒ガスを扱うという共通点が見られる。

  • 昭和ヘドラのスーツアクターは後に平成VSシリーズでゴジラを演じた薩摩剣八郎氏(当時は「中山剣吾」名義)。
    撮影用スーツは塗り直しが重なった結果、重量がかなり増え、相当なパワーが無いと着こなせなかったらしい。
    煙突に張り付いて煙を吸うシーンが一番きつかったとのこと。ちょうどヘドラの「口」が薩摩氏の顔面に位置していたため、煙をまともに喰らったらしい。
    「今考えるとなんとも無茶なことで、どうして酸素マスクをつけなかったのか不思議だ。たぶん、調子のよい僕が、大丈夫、酸素マスクなんていりません、なんて言ったようだった」……とは『ゴジラVSメカゴジラ』時点での薩摩氏の自伝による。


  • ヘドロがモチーフなのは名前の通りだが、実は裏モチーフは女性だと言われている。
    柔らかそうな丸みを帯びたフォルム、目の形は性器、白い物を吹き出す棒をくわえている……等々。
    ……言われてみれば分からなくもないが、こんな評を書いた書物がある事も書いたライターがいる事もビックリである。

  • 地球や人類にとって最悪な存在のヘドラなのだが、なんと愛好家が存在しており、俳優の永山瑛太氏もその一人。
    バラエティ番組『櫻井・有吉 THE夜会』(2017年7月13日放送回)ではサプライズとして登場してゲストの瑛太氏を感激させた他、共に記念写真まで撮影。
    おまけに瑛太氏は感激のあまり東宝に対して感謝のみならず、『ゴジラ対ヘドラ2』を制作して自分を出演させてほしい」とまで発言した。


少年時代トラウマになった人や、サイケで電波な主題歌に洗脳された人は追及・修正してください!

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最終更新:2024年02月21日 23:14

*1 実際の撮影ではフロンガスを使っていた。

*2 イメージソング「ヘドラをやっつけろ」でも高らかに歌われているヘドラの必殺技……という訳ではなく、スモッグ中に含まれる霧状の硫酸という、実在する現象の事だったりする。

*3 柳田氏は小学生のころ見に行った『ゴジラ対ヘドラ』が怖すぎて翌日熱を出し、「俺が大人になったら科学者になって公害をなくす!」と思い立ったらしい。

*4 中国人民解放軍。中国=中華人民共和国において事実上の一党独裁体制を敷いている中国共産党の軍事部門で、同時に中国の正規軍でもある組織。

*5 『GODZILLA』3部作の世界観では、多くの怪獣には大都市などの人口密集地に引き寄せられるという習性が共通して備わっている。

*6 楊の主張を要約すると「ゴジラを倒しても地球に住めなくなったら同じこと」「怪獣に怯えながら細々と暮らすことはできる。ヘドラを使えばそれすら不可能になってしまう」という。