主人公(DQⅤ)

登録日:2010/02/12 Fri 02:22:35
更新日:2024/04/03 Wed 15:46:58
所要時間:約 7 分で読めます







CV:堀川りょう(青年期)、吉田小南美(少年期)(CDシアター)、佐藤健(ユアストーリー・青年期)、大西利空(少年期・ユアストーリー)


ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁』の主人公。
デフォルトネームはないが、小説「リュカ」や公式キャプ画の「アベル」が一応の公式扱いをされることが多い。
ヨシヒコ」? それは別人である。
映画版ドラクエⅤである「DRAGONQUESTYOURSTOЯY」においても小説同様「リュカ」なのだが……(詳しくは後述)

白い布の服に青紫のターバンとマント、そして手には杖という、
どことなく砂漠とラクダが似合いそうな恰好で、見た目的にはそれまでのDQシリーズの勇者たちとは一線を画している。
ちなみに恐ろしいことに、少年時代の衣装と青年時代の衣装は同一のものという説明がゲーム中にある。
服に使われている布の色が変わっているし、マントのサイズが明らかに変わっているのでターバンだけとは思うが…

公式認定されたイケメン主人公であり、作中でもモテモテ。
ヒロイン候補たちは元より、モブキャラの女性たちも主人公に見惚れる描写が多い。
特にその「瞳」が人も妖精も魔物も惹き付ける魅力を持っているらしい。ある意味魔性の人物。

ストーリー進行によって少年から青年へと成長し、
さらに結婚して子どもまでできるという、DQの主人公としては非常に珍しい経歴を辿る。
言うなれば、DQⅤというゲーム自体が、彼の人生を描くゲームなのである。


能力は主人公らしく平均的に成長。
みのまもりが低いことが弱点だが、専用装備はメタキン装備に次ぐ防御と、
それ以上に優秀な耐性を持っており、終盤で怖い息系攻撃や全体魔法なども十分に防ぐことができる。
尤も、RTAの主流チャートでは育ちが足りないのでモンスターや他の人間キャラに戦闘を任せて彼自身は積極的に捨てに行くプレイングを取られることもしばしば。

また、シリーズ初の「魔物使い」であり、中盤以降様々なモンスターを従えることが可能となる。
「○○は仲間になりたそうにこちらを見ている」はDQVが元祖。


が、覚える呪文は正直不遇。
主人公初のバギ系習得者であり、攻撃呪文はこれ一本。
バギ系はダメージが安定しない呪文であり、例としてバギクロスは耐性なし相手だと90~160と非常に振れ幅が大きい。

回復系は割りと充実しているのも踏まえると、勇者より僧侶に近い。
イベントで覚えるルーラとパルプンテも、後になど覚えるキャラが登場。
とはいえそれまでは専用といっていい魔法なのだが。

まあ、専用武器のドラゴンの杖がやっぱりメタキンの次に強い(メタキン>杖=鉄球>天空)ため、素直にたたかうで殴った方がいい。
というか5は物理寄りゲーなので(クリア後は特に)、下手に呪文を使うべきではない。

防具が優秀な一方、攻撃面では吹雪の剣隼の剣を装備できないがのが難点。
人間キャラ最強の座はやはり勇者である息子に譲ることになるだろう。

攻撃呪文はバギ系、回復呪文はザオリク抜きで両極端の二つとそこはかとなく某占い師を彷彿させる。


彼の不幸さは、なによりもその人生。
ドラクエ史上最も不幸ともいえるその人生は、
後半生のリア充ぶりを度外視すればタメを張れるキャラはまずいない。

その人生をストーリー順に追っていこう。

以下、ネタバレ注意。















グランバニア王パパスと王妃マーサの息子として生まれるも、パパスがつけようとした名前はあろうことか「トンヌラ」。
幸いマーサのおかげで事なきを得るが、その夜に彼女は魔物によって連れ去られてしまう。

母のぬくもりも愛情も知らないまま、パパスに連れられ、家臣サンチョと共にマーサを探す旅に出ることになる。
一応、パパスは城に置いて行こうとしたが、赤子ながらにそれを察知したか主人公が泣きやまなくなった為に連れて行くことになった。

6歳になってからは、ビアンカやサンチョなど周りの人間にも恵まれて育っていく。
レヌール城の幽霊騒動を解決して褒められ、かわいいペットをゲットしたりと、たぶんこの辺が人生で一番穏やかな時期。

ラインハットではヘンリー王子に子分扱いされ、
さらにヘンリーがさらわれたのを救出したと思ったら、突然現れたゲマに嬲られ、さらに助けに来たパパスまでも目の前で殺されてしまう。


そして連れ去られた先に待っていたのは、奴隷としての日々……。
苛酷な毎日で唯一の希望となったのは、パパスが言い残した「母は生きている」との言葉だけであった。


その期間、実に10年(SFCでは10数年となっていたが、リメイク版では10年と明言されている)。

ヘンリーと一緒だったのが救いとはいえ、多感な青少年時代を10年以上も棒に振ることとなる。
ちなみにこの期間も何度か脱走しようとしており、それだけ生きて自由になり、母を探すことを望んでいたことがわかる。
なお奴隷の間では「アニキ」と慕われていた。



そしてついにマリア(後のヘンリーの妻)の兄・ヨシュアの手でどう考えてもこれ死ぬだろって方法で脱走し、サンタローズに帰郷…と思ったら壊滅していた。
しかもその大義名分は「パパスがヘンリーをさらった」などという酷い汚名*1であり、
自身だけでなく無二の親友であるヘンリーの心をも酷く傷つけることになってしまった。あとこのせいでサンチョがヘンリーに逆恨みに近い感情を抱いている。

アルカパにもビアンカはもうおらず、どこかへ引っ越してしまっていたとのこと。

洞窟の奥で見つけたパパスの手紙には、母の力について、
そして伝説の勇者を探せと書かれており、ここから伝説の勇者を探す旅が始まった。

更に、一緒にあった天空の剣を手に入れてヒャッホゥイとか思ったらなんと装備できない。
多くのプレイヤーが「どうせ主人公が勇者なんだろうなー」と思ったらコレ。勇者ではなかったのだ。

魔物使いという特別な才能がある(母親の血筋によるもの)とはいえ、
ドラクエ主人公としては良くも悪くもかなり異例の待遇なのは間違い無い。
…考えてみれば、息子が勇者ならとっくに目的を果たしていたなんてマヌケなことになるし、
第一最強クラスの剣がこんな序盤に装備できるわけがないというのもある。
メタルキングの剣?何のことやら…

その後は自分がいなくなった後のラインハットの横暴に我慢できなくなったヘンリーに付き合い、ラインハット解放に尽力する。

ラインハット解放後は国に残る事になったヘンリーと別れ、ゲレゲレと再会するも、カボチ村の村人からはペテン師扱いされ、罵倒されてしまう。
一応、村長の家の2階にいるおばさんなど真実に気づいてくれた人はいるのだが……。
(リメイクでは青年期前半に解決した場合、後半で「あの旅人は本当に救ってくれた」
「よく考えたらバケモノも村人だけは襲わなかった」と誤解が解けており、さらに旅人大歓迎な村へと変わっている)。


若干16歳にして、既にかなり辛い人生経験をしている。
苦楽を共にしたヘンリーには主人公が自ら不幸になりに行っているようにすら見えたらしく、
「天空の勇者を探すのもいいが、自分の幸せを考えるのもいいのではないか」「お前の母親もお前の幸せを望んでいるはず」と諭している。

このヘンリーの言葉に思うところがあったのか、ここから勇者を探す傍らで自分の幸せも模索するようになる。
じいさんからのルーラ伝授などを経て、そんでついに結婚!

ここが彼の最大のモテ期である。

幼なじみの姉さん女房を選ぶも良し、
清楚でおしとやかなお嬢様を選ぶも良し、
黒髪とスベスベのお肌が素敵なツンデレ(リメイク版のみ)を選ぶも良し。
剥げた頭が素敵ダンディーなルドマンを選ぶも良し、熟女好きならメイドさんを選ぶも良し

結婚後は妻と共に旅をつづけ、砂漠の国で父が国王だったことを知らされる。

そしてついに故郷に辿り着くと、何と妻が妊娠していた。
王の帰還と後継ぎ(しかも双子)の誕生に、国をあげての宴となる。
この時点で大体歴代主人公たちと同年代。なんだ幸せになってるじゃん。
IV主人公VI主人公なんてこの辺りで嫁候補失ってんだぞ。


――そう、ここが彼の人生の絶頂期なのであった。






……しかし苦難の中でもがき続け、ようやく掴んだはずの幸せの絶頂は脆くも崩れ去る。


大臣の裏切りで妻はさらわれてしまい、しかもその状況は10数年前母がさらわれた時と全く同じ。
妻の行方を追ってたどり着いた塔の最奥にいたのはなんと父の仇の一人ジャミ

そして妻が天空人の血筋であったこと、
さらに生まれてくる子(ジャミ(リメイクではゲマ)はすでに生まれていることを知らない)が勇者となるだろうことが明かされる。

SFCではジャミが死に際の抵抗で(小説版では殺すつもりでかけた呪文が失敗した)、
リメイク版ではゲマの「石のまま世界の終わりを見るのも愉快でしょう」という理由で妻ともども石像にされてしまう。

今度は石像のまま8年の歳月である。

奴隷時代と合わせて20年近く人生を棒に振っている。
不幸人生、ここに極まれり。他のシリーズ主人公達ならとっくにED迎えているぞこれ。

石像にされた途端に塔に侵入した盗賊兄弟によって回収され、オークションで売りに出される。
ちなみにSFCではなんとたった2000G。……はがねの剣と同じ値段ってあんた。
流石にツッコまれたせいか、リメイクでは十倍の20000Gに跳ね上がった。この価格は最後の町であるジャハンナでもそうそう無い。

その過程で妻とも離れ離れになり、金持ちの家では守り神の像として大切にされていたが、その家の一人息子が魔物にさらわれてしまう。
目の前で子供がさらわれているのに、何も出来なかった心情は察するに余る(石像にされても意識があることは前述のゲマの発言でもわかる)。

しかし、成長した我が子とサンチョによってとうとう石像から元の肉体に戻り、
どこかへ持ち出されてしまった妻の石像、およびマーサの行方を探す旅が再び始まった。
…外に放置されっぱだったとは言え、8年間よく風化しなかったな。拐われた時のジージョの年齢は推定3歳。長くても5年間ずっと手入れされてなかったことを考えると尚更である。

紆余曲折ありながらも、息子が勇者だったことが判明し、ついに妻も取り戻す。

さらに、母の止める言葉も聞かず、すべての元凶たるゲマ(ついでにミルドラース)が待ち受ける魔界へと乗り込む。


そして、ついに……ついに母マーサにめぐり合う……!!


「ああ……○○……○○ですね……。母はどんなにかあなたに会いたかったことでしょう……」


……この時すでに、主人公誕生から二十数年。
マーサは、こうして出会えただけで、もう思い残すことはないと言う。

命に代えて大魔王ミルドラースの魔力を封じようと、祈りを捧げるマーサ。

しかし、直後いかずちに打たれ、マーサは倒れてしまう……!


ようやく会えたのに……まだ何も話せていないのに……。


……パパスの声が響く。

「マーサ、もうよい、お前は十分によくやった」

子供たちの未来は子供たちに託そうではないか、と言うパパスと共に、マーサは闇へと消えていった……。

愛しき我が子に、世界を託して……。



……こうして、父と同じように母も目の前で殺されてしまった。



それでも彼は愛する妻と子供達と共に前に進み、ミルドラースを打倒。世界を救うのであった。



以上のように、とんだ不幸な人生を送っており、その不幸度はドラクエ史上でも屈指のものとされている。
これはステータスにも反映されており、なんとレベル11まではうんのよさの上昇値は0。レベル15になってやっと2ケタになる。
なおレベル11は普通にプレイした場合、大体幼年期終わりごろのレベル。恐らく意図的なものであろう。
5の運の良さはステータス異常にかかる確率計算に使われるため、
頻繁に、とまではいかないが他のキャラより状態異常にかかる可能性が高いのだ。
ただ、状態異常素通しの仲間モンスターに比べればまだかかりにくいのだが。


とはいえ最後はミルドラースを倒したことで世界は平和になり、これ以上不幸になることはないだろうと思われる。
ちなみに、小説版ではビアンカが失った8年(主に子供の成長を見守りたかったということ)を埋めたいと言い出し、
祝賀パーティの前にヤっているらしき描写がある(かなり絞られた模様)。

その善政により、後世では「慈愛王」と号されたようだが、歴史学上ではそれ以前の彼を「虜囚王」「探究王」と称している。
ちなみにパパスの称号は「不在王」。そのものズバリである。





【本当にDQ主人公最不幸なのか?】

上記ではDQ史上で最も不幸な主人公と書いたが、もちろんこれには異論がある。
DQ4主人公の方が不幸なのではないか?という説である。

DQ5主人公はかなりの紆余曲折があったが、最終的には自身の家族と居場所を手に入れ、平和で幸せな暮らしを手に入れている。
一方でDQ4主人公は青年期までは愛情を受け恵まれた生活を送ってきたものの、ある日突然全てを奪われ、信頼できる仲間は得たが元々持っていたものは何ひとつ取り戻せないまま終わった
どちらが不幸なのかは一概に断じる事はできないだろう。



【余談】
一応、ゲーム中のデフォルトの名前は「アベル」らしく、説明書の画像やDS版6で登場した際にはこの名前が使用されている。
しかし、小説版の影響が大きいのか、小説版の「リュカ」をデフォルトネームと思っている人もいるとか。

「トンヌラ」と実際に名前を設定するとパパスが提案する名前は「サトチー」になる。
……どういうセンスなんだ。

なお、SFCでは名前を「パパス」にすることが可能だったため、
息子は天空の兜を手に入れなければ「パパスの息子」と幼年期主人公と同じ肩書にすることが可能だった。
(リメイクではパパスなどのゲーム中登場するキャラの名前を付けることは不可能。ルドマンやダンカン等も)

さらに余談だが彼を女体化させた「りゅか」なる二次設定キャラがいつしか誕生しており、やる夫界隈などではそのAAが多用されている。
特に彼の場合赤ん坊時代から始まるため、パパスの娘だったことにすれば簡単に女体化できるのも一因だろう。
婿候補?知らんがな。

ユアストーリーにおいての彼はDQⅤとは異なり、天空人であるとされたり息子しか産まれなかったりするがそれは序の口。
ブオーンを仲間にした彼はついに嫁であるビアンカを助け、そしてマーサも助けようとするもそこでゲマと交戦。
そのまま息子であるアルスと共にゲマを撃退するも彼はミルドラース復活の儀式を行っており、
儀式で開いたゲートに天空の剣を投げ込むものの……
ミルドラースはそれでも倒せず、衝撃的な事実を打ち明ける。
それは『DRAGONQUESTYOURSTOЯY』の舞台がいわゆる仮想現実であり、
『リュカ』とされていた人物は記憶を封じDQⅤの主人公になりきっていた『プレイヤー』だったのだ。
(『プレイヤー』である男性の名前は役者の名前から『タケル』と呼称されることもあるが不明である)
そしてミルドラースは『プレイヤー』に自らが仮想現実を破壊するべく送られたウイルスであり、
『大人になれ』という言葉と共に『プレイヤー』の心を打ち砕こうとする。
だが『プレイヤー』はいう。『子供の頃からずっと……僕にとってゲームの世界は決して嘘じゃなかった!』と。
そしてアンチウイルスプログラムであったスラりんは用意していたロトの剣の形状のワクチンにより、
仮想現実の世界を破壊せんとしたミルドラースは滅ぼされる。
そうして『プレイヤー』は自分がしていたことは決して噓ではなく、自分が勇者だったと認識するのだった……
とまあどこかの没プロットビアンカフローラ論争の極地みたいなことを、
尺不足であったにもかかわらずやってしまったためユアストーリーは否寄りの賛否両論が巻き起こったのである。
ついでに実は小説版の作者に「リュカ」の名前を使う事の許可を取っていなかったため、訴えられた。

追記・修正お願いします。

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最終更新:2024年04月03日 15:46

*1 なお、パパスはヘンリーを救出に行く際に「誘拐された事は誰にも言うな」と主人公に口止めしており、結果的に大義名分を作らせてしまう失態を犯している。救出できていれば問題なかったのではあるが…。ノベライズ版では逆にパパスがラインハット王に伝えるよう主人公に頼むのだが、結局主人公は誰にも言わずに来てしまった。