ウルトラマンパワード

登録日:2010/02/23 Tue 20:32:04
更新日:2024/03/06 Wed 18:05:11
所要時間:約 11 分で読めます






「怪獣」出現!


地球を守れるのは彼だけだ!



ウルトラマンパワードとは、円谷プロダクション制作の特撮作品『ウルトラマンパワード』(原題は『ULTRAMAN THE ULTIMATE HERO』)に登場するウルトラ戦士。
アメリカ合衆国で製作・放映された、いわゆる「海外ウルトラマン」の一つ。海外産のウルトラマンとしてはウルトラマングレートと並んで人気・知名度が高い。
ここでは主に、キャラクターとしてのウルトラマンパワードについて述べる。


出典:『ウルトラマンパワード』第1話「銀色の追跡者」より(全13話)
© 円谷プロ


【プロフィール】

身長:55m
体重:5万8千t
パンチ力:1億t(通常時)
キック力:2億t(通常時)
ジャンプ力:ひととび1800m(1G重力下)
走行速度:マッハ9.99(1G重力下)
飛行速度:マッハ27
水中速度:120kt
年齢:1万5000歳
出身:M78星雲・光の国

【デザイナー・俳優】

●キャラクターデザイン
  • 前田真宏

CV
※日本語吹替版では初代ウルトラマンの掛け声があてられているが、原語版では別の声である。(担当者は不明)

●スーツアクター

【概要】

光の国における宇宙警備隊員の一人だが、ウルトラマングレート同様他のウルトラシリーズとの関係は曖昧である。

バルタン星人を追って地球に飛来し、地球で戦うためにW.I.N.Rの隊員ジライヤケンイチ・カイ(演:ケイン・コスギ / 吹替え:森川智之)と一体化した。

カイが「フラッシュプリズム」と呼ばれるアイテムを使用することでパワードに変身する。
フラッシュプリズムは原語版では初代『ウルトラマン』と同じく"ベーター・カプセル"とパワードがカイに説明している。
形状は、カラータイマーに似た緑の水晶を中心として、赤と銀の色が螺旋を描くステッキ状。

パワード本人が言葉を発したのは第1話と最終話のみ。いずれもカイとの対話である。
そのためやたらと電波なやり取りをするグレートに比べて本人の性格描写は少なめだが、かなりまじめで落ち着いた人物であることははっきりしている。

最初のカイとの接触では彼からの詰問にも丁寧に答えており(カイは衛星を撃墜したパワードを侵略宇宙人と誤解していて、はっきりと敵意をぶつけていた)、
同化を求めた時にも「私の体はこの星での活動に向いていない」と必要性を訴えたうえで、
「決して君の心に立ち入ったりはしない」と頼み込んでいた。初代は事故った挙句の「ヘッヘッヘ……シンパイスルコトハナイ」だったのに
最終的には己の見通しの甘さでカイにまで傷が反映されたことから責任を感じ、あえて別れを告げて立ち去るなど、律義な人物である。


史上初にして(あちらは水色に近いが)ウルトラマンジード以前は唯一の、青い目かつ感情が昂ぶると目が赤く染まるウルトラマンだった。
カラータイマーにはランプを囲う「みなぎりメーター」という器官があり、これが光っている時に光線を使うと威力があがる。
この他、前腕にヒレ(パワード・スタビライザー)がある事を除くと、基本デザインは初代ウルトラマンを踏襲しているが、
彫りの深さやスマートながらも筋肉なボディ等の違いにより、初代ウルトラマンとはシルエットがだいぶ異なる。
客演などで他のウルトラマンと並んだ場合も、同僚たちとの調和がとれていながらもはっきりと区別できる、いい意味で目立つデザインとなっている。


なお、設定上は「ウルトラマンパワード」が名前で、客演時等は「パワード」と呼ばれることが多いが、
これまたグレート同様に、劇中では単に「ウルトラマン」としか呼ばれていなかった。


【戦闘スタイル】

パワードの特徴といえば、鈍い、もとい重量感溢れる戦い方。
オープンセット撮影による映像もあり、何処か不思議なリアリティを感じさせる。
これは『子供が真似しないように』というアメリカの暴力規制(コミックス・コード参照)により、殴る蹴るという描写がほとんどできなかったためで、
劇中のパワードは相手を押したりビームを撃ったりする戦い方が基本。

怪獣と対峙したらとりあえず押す。効果があるのか疑問だがまず押す。何はともあれ押す
ウルトラマン、怪獣ともにかなり気合の入った造形がなされているのだが、こうした事情のためにアクションは悲しいくらいにしょっぱい。

今でこそ『パワーレンジャーシリーズ』ではスピーディーなアクションが見られるが、彼らのアクションに至るにはこうした苦労があった事を忘れてはならない。

ただしそれは第1話から第3話までの話。第4話以降は殴る蹴るといった技も増えた。
テレスドン戦やアボラスバニラ戦ではそこそこ動いていた(テレスドンの顔面をグーでぶん殴り、アボラスを蹴りつけてすぐさまバニラの顔面に裏拳→腹キック)し、
ジャミラ戦では一押しでかなりの距離をぶっ飛ばして背中から地面に叩きつけていた。
ダダ戦のように光弾を連発する場合もある。
また終盤の作品であるドラコゼットン(前後編二作で最終回を描いた)の評価は今なお高い。

設定としては、手に「気」を集中することによって絶大なパワーと衝撃を生み出す、というもの。

パワードが受けた傷がカイにも反映されるため、最終話ではカイの身を心配したパワードが彼と分離し、単身ゼットンとの決戦に臨んでいる。
パワードは「これほど完璧に同化できるとは思っていなかった、許してほしい」と言っており、パワード当人としても自分の傷がカイに反映されるほど同化したことは想定外だった様子。
ちなみにカイ自身は、責任を取って離れようとするパワードを止めようとしていた。


【番組として】

日本ではビデオのみだったので今は結構マイナーだが、テレビシリーズが途絶えていた当時は最新ウルトラマンとして児童誌等で熱心にプッシュされており、
変身アイテムやサウンドバトラーという玩具シリーズ、3DOのゲーム等も発売された。
そして2017年、DVDをすっ飛ばして『グレート』共々Blu-ray BOXが販売。
これまで『パワード』という作品を知らなかったという人も、この機会に触れてみてはいかがだろうか。

ちなみに、『パワード』の製作当時、円谷プロとTBSは『ウルトラマン80』における対立が原因で冷戦状態にあった。
しかし、日本でのビデオ制作およびテレビ放送に当たり、プロジェクトに参加していたバンダイ(当時)や読売広告が放送枠の獲得に協力。
結果、実現した『パワード』の放送は、後の『ウルトラマンティガ』に始まる新世代ウルトラマンへ至る起爆剤となった。


【能力】

客演時にはベリアルに一蹴されているものの、OPの歌詞にある「無敵のヒーロー」の謳い文句は伊達ではなく、スペックは非常に高い。
温度と威力には直接相関関係はないとはいえ、一億度の必殺光線、切れ味が異常な手刀切断技
打撃力だけで一億トン、完全反射バリアー、と出来ることが地味に凄まじく、下手をするとゼロとも真っ向から張り合えるレベルで強い。
劇中の戦績も、ドラコ戦で一時撤退した以外は実質負けなしであり、カイと分離して弱体化した状態でパワードゼットンを真っ向から撃破している。
さらにゼットン戦では、消耗しながらも相手の能力を分析し、スペシウム光線を反射させて相手の弱点を引き出しており、戦術眼にも長ける。

本人も強いが出てくる敵も同じくらい強い、という意味では『ウルトラマンマックス』の先駆けだったと言えなくもない。


【技】

◆メガ・スペシウム光線
十字に組んだ両腕から放つパワードの必殺光線。右手だけではなく両腕全体から光線が出るため、光線も十字状になる。
溜め撃ちバージョンもあり、『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』ではバルタン星人戦で光線発射前に見せたポーズとエフェクトが溜め動作として使われている。
初代ウルトラマン達が使う通常のスペシウム光線の5倍もの威力を誇る。メガって100万倍って意味なんだけどな!
『新世紀ウルトラマン伝説』での設定を考えれば、パワードも最初にスぺシウム光線を取得してさらにこの技に発展させたことになる。
前述した通り、みなぎりメーターが光っている時に使うと威力が強化され、これでバルタン星人を倒している。
光線そのものの熱量は百万度。瞬間的な温度は一億度にも達し、迂闊に攻撃すると核爆発を引き起こすガボラを爆発前に蒸発させた事もある。
ゾフィー兄さんのアイデンティティだったM87光線の記録(「奇跡」の87万度)をあっさりと更新した。
しかも最終回ではあのゼットンすらこの技で倒している。
しかし、地球の守護神であるザンボラーや、光線技にめっぽう強いドラコには効かなかった。
ちなみに、スペシウム光線や他の系列技と異なり右手が顔の正面に来るため、前から見ると組んだ腕がカタカナの「ナ」に見える。


◆パワードスラッシュ
のこぎり状の円形カッター。
八つ裂き光輪に当たる技だがサイズはかなり小さい(手のひらから少しはみ出る程度)。
設定上は鉄塔を数十本まとめて叩き斬る威力があるらしい。しかし使った相手がよりにもよってドラコとゼットンだったため、弾かれたり吸収されたりして全く効かなかった。


◆エナジーナックル
球状の光線を掌から放つ技。
ダダ戦にて使用。
連射してダダにダメージを与えたが、データ生命体で簡単に「再起動」するダダ相手には決め手となっていない。


◆エナジーリバース
敵の攻撃のエネルギーを受け止め、圧縮して撃ち返す技。いわばマグナムシュートの下位互換。
バルタン戦ではエネルギー弾を打ち返して見事撃墜した……かに見えたが、変わり身の術で復活されている。
ダダ戦では大いによろめかせ、その隙に「電源」を破壊した。


◆ハンドシャットアウト
突き出した両腕から念動力を放ち、攻撃を遮断する。
ペスター火炎を防ぐために使われたので、しばしば火炎反射能力とも表記される。
ちなみにこのペスターのシーン、火炎放射器でリアルに迫る炎の前にスーツ状態のまま直接手をかざしたという、危険極まりない撮影で収録されている。
距離を計算したとはいえ、下手をすると役者の両手が、溶けたスーツで大惨事となっていたかもしれない。


◆ボディリバウンド
体を張って攻撃を防ぐ。所謂大胸筋バリア。
傍目には唯のやせ我慢だが、アボラスの溶解液(腹にちょっとかかっただけでバニラの全身をドロドロに溶かした)を完璧に防いだので、
もしかしたら身体の表面にバリアでも張っているのかもしれない。


◆テレパシー
パワードは怪獣にテレパシーを送って説得し、おとなしくさせるという事もできる。
ウルトラマンガイアウルトラマンコスモスの先駆けのような技だが、
日本的要素なのか両手を合わせて念を送る上にエフェクトの類も一切無いため、
傍目から見るとパワードが怪獣を拝み倒して帰ってもらったようにしか見えない。すごくシュール。



【シリーズでの活躍】


特になし。
同時上映の全員集合で踊っている程度しか出番がない。
…が2009年、M78星雲出身なのでパラレル設定ながら映画参戦が確定した。

この設定から、パワードの別宇宙での活躍を描いたものが『パワード』本編とも解釈できる*1


◆『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE

ウルトラマンベリアル襲来を他のウルトラ戦士達と共に迎え撃つ。

ハッキリ言うとベリアルに倒される噛ませの一人なのだが、本編よりスピーディーに動く上、他キャラを差し置いて光線技を撃たせてもらえる良待遇。

……と思われたが、ベリアルがウルトラウーマンベスをに使ったために、メガスペシウム光線がベスに直撃した。
スペシウムの5倍だぞ5倍。

その後は当然のごとくコテンパンにされ、終盤のウルトラマンキングの演説シーンでようやく再登場。

◆『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀

約10年ぶりに日本の映像作品に登場。何気に映像作品内で「ウルトラマンパワード」と呼ばれたのは初。
今回は日本語版ではケンイチ・カイの吹き替えを担当した森川氏、そして英語版ではケンイチ・カイ役を務めたケイン・コスギ氏が演じている。
英語版キャストでのケイン・コスギ起用はepisode1配信当日まで伏せられており、サプライズとなったのは言うまでもない。

かつてウルトラマンゼロウルトラマンレオのもとで特訓したK76星にてグレートとともにウルトラマンリブットを鍛え上げる。
その後、ウルトラマンマックスの救出に向かった際はヘルベロスと対峙。
原典初期の押す戦い方を『超闘士激伝』同様に拳法としてアレンジし、映像技術の進歩と共に見映えのあるアクションに昇華させた。
最後はメガ・スペシウム光線を命中させ、見事に撃破した。この時、みなぎりメーターも光っており、英語版では技名を叫んでいた。


【デザイン】

グレートやネオス同様、初代を強く意識した造形になっている。
コンセプトとしては、「仮面」のイメージで造形された初代ウルトラマンの顔を「そういう生物の顔」として捉えてリデザインしたもので、エイリアンとしての生物感を狙って作られている。
「ヒーロー」のイメージや「侵略宇宙人・怪獣と戦う」という設定から忘れられがちだが、「ウルトラマン」も「光の国から来た異星人」なので、エイリアンに該当するのだ。


【戦った怪獣について】

彼が戦った怪獣は同じように「パワード」と付いた初代ウルトラマン出典の人気怪獣たち。
レッドキングやバルタン星人たちがより生物なアレンジで登場している。
特にテレスドンは銀色になりやたらカッコいい。
ジャミラも宇宙服を着たようなデザインになっている。
加えて、暗殺者としての風格と文句なしの強さを放つドラコはとくに有名(原作ではウルトラマンと戦ったことのない脇役怪獣のドラコが有名なのは大体こいつのおかげ)。
バルタンの尖兵としてサイボーグのようにアレンジされたゼットンも、パワードの動きを完璧に先読みするという演出を含めて評価が高い。

しかしこれらのデザインは円谷プロの上層部には不評だったらしく、
特にバルタン星人は円谷英明氏の暴露本で「アメンボみたいで弱々しい」「バルタン星人本来の迫力が無い」と散々に叩かれていた。
バルタンはもともとセミでしかもあんまり強くなかっただろうが
なお、同書にて「パワードの怪獣は現地スタッフが勝手にデザインを変えた」と書かれているが、実際はバンダイの要請で日本のデザイナーがデザインしている。
……そもそも当の円谷英明氏の著書は刊行当時こそ局地的に話題になったものの、現在の観点から見ればほぼトンデモ本と言っても過言でない内容であることが明白となっており、
英明氏自身の問題発言もあってか資料としての信憑性・価値はほぼ絶無になり果てたと評して間違いないだろう。

スーツの都合や同名の初代ウルトラマン怪獣の方がどうしても優先されるためか、ショーや漫画媒体はともかく、公式の映像作品での『パワード』版デザインの怪獣の再登場は長年なかった。
しかし令和に入った近年になり『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』にてパワードダダが当時のスーツをそのまま流用するという斜め上の方法で再登場を果たし、話題となった。

【世界観について】

ケムラーが現れた時は『27年前にアジアで大暴れした』と記録されているので、初代と同じ世界観とされる事もあるが、
このケムラーは1976年に中国雲南省に出現したという設定*2なので、初代とは別物である。


【余談】

一時期、朝のテレビでピグモンと組んで英語を教えたりもしていた。

テレビマガジンが制作した『ウルトラマンネオス』のPVではマン、グレートと共にネオスとセブン21に自分の戦歴を紹介していた。
マン以外は今でこそ微妙な知名度の4人だが、当時は皆押しも押されもせぬ最新ウルトラマン達であった。
わかりやすく言えばウルティメイトフォースゼロウルトラマンギンガウルトラマンビクトリーに戦いをレクチャーしているような感じだと思えばいい。

ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』の朽ち果てた巨人の中にウルトラマンパワードそっくりな石像が存在する。

海外との権利問題のために『ウルトラマン列伝』では紹介されない*3と思われていたが、
『新ウルトラマン列伝』最終回で『新世紀ウルトラマン伝説』の使い回しとはいえようやく取り上げられた他、公式カウントウルトラマン全員が登場する新撮映像の中にも含まれた。
その後も『ウルトラマンオーブ直前スペシャル』のOPにもちゃんと写っており、『ウルトラマン クロニクルZ ヒーローズオデッセイ』第1話ではカイも晴れて歴代変身者の一人として紹介された。

またウェブ配信番組『声優と夜あそび』2021年1月29日放送回にて、同番組金曜日レギュラーの関智一森久保祥太郎、そしてゲストの森川智之が一堂に会したことで、
「パワード・グレート(『大いなる陰謀』版:関)・タロウ(『大いなる陰謀』版:森久保)の前でトークする」という夢の光景が実現している。




誰の心にも光はある。



目を開いて周りを見れば、きっと私が見える。








ツイキ、シュウセイ、コレサエデキレバ perfect body!

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最終更新:2024年03月06日 18:05
添付ファイル

*1 別の宇宙へ旅立つには、光の国の全エネルギーを使っても一人が限度なため、客演がなくても不自然ではない

*2 実際、このシーンのデータベースにもそう書いてある。

*3 静止画であれば第93話でゼロが紹介した歴代バルタン星人の中にパワードバルタン星人が含まれているが。