ビオランテ

登録日:2010/01/16(土) 23:55:47
更新日:2024/04/06 Sat 00:46:07
所要時間:約 5 分で読めます







あの植物には、人間の心が宿っている。




ビオランテとは映画『ゴジラVSビオランテ』に登場する怪獣。
平成ゴジラシリーズにおいては初となるゴジラの対戦相手となる怪獣。



【概要】

生物学者の白神源壱郎博士が生み出してしまったバイオ怪獣で、北欧神話に登場する植物の精霊の名から命名された。
実際の北欧神話にビオランテと言う精霊はいないけどな!


ゴジラが三原山に封印された後、廃墟と化した新宿では密かにゴジラ皮膚片などが回収されていた。
その一つは当時白神博士が働いていたサラジア共和国の研究施設に持ち込まれたが、
ゴジラ細胞を葬り去ろうとする勢力が実行した爆弾テロにより白神博士はその時施設の中に居た娘の英理加(演:沢口靖子)を喪う。

博士は娘の細胞だけでも生き長らえさせようと、薔薇に娘の細胞を融合させ育成を試みた。
しかし不幸は重なるもので、偶然発生した地震によりその薔薇を保管していた温室が破損、薔薇は瀕死の状態に陥ってしまう。

そこに抗核エネルギーバクテリアの開発依頼が舞い込み、
博士はゴジラ細胞の自己再生能力を持った遺伝子に目を付け、「一週間のゴジラ細胞の貸与」を条件にこれを引き受ける。

ゴジラ細胞を薔薇に更に融合させ、永遠の命を持つ植物を作った……つもりだった。
こうして誕生してしまったのがビオランテである。


設定上の命名は前述の通りだが、実際はストーリー原案者の小林晋一郎が『ヴィオロン(ヴァイオリン)』の末尾に、
それまで怪獣の名前に使われることのなかった『テ』を付け、

「ヴィオロンテ→ビオランテ

としたもので、バイオテクノロジーを示唆するかのような名前になったのは偶然とのこと。
また、英語圏での発音は『バイオランテ(Biollante)』。



【ビオランテの形態】

◆花獸形態



文字通りの分身だ。同じ細胞で一方は動物、一方は植物。


体長:85m
重量:6~10万t


最初期こそ普通の薔薇だったが、すぐにゴジラ細胞の影響が現れ急成長。

抗核バクテリアの情報を得ようと白神博士の研究施設に忍び込んだ、
バイオメジャーのエージェントとサラジア共和国のエージェントの銃撃戦の最中、
バイオメジャー側の一人を触手(蔦、或いは根?)で締め上げて殺害。壁を突き破り、外に飛び出して行方知れずとなる。

その後、芦ノ湖に巨大な薔薇となったビオランテが姿を現し、ゴジラの存在に感応し鳴き声をあげるなどしつつ静かに佇んでいた。
が、残されていた英理加の心は徐々に失われていき、触手で桟橋を破壊するなど凶暴性が増していく。

一方のゴジラもまたビオランテの存在に感応したのか、やがて芦ノ湖に現れ、同一の細胞を持つ「分身同士」が相見えることになる。


蔦でゴジラを締めつけ戦うが、見ての通りくさタイプなビオランテはに弱く、さらに地面に根を張って動くことができないため、
放射熱線で遠距離攻撃ができるゴジラにとってはただの的でしかなく、あえなく熱線が直撃。
だが、ダメージを受けて尚も活動が活発化しているビオランテの様子を見て、白神博士は「ゴジラの熱線を受けて、細胞分裂が異常に刺激されたかもしれない」と語っている。

その後触手から溶解液を放ちゴジラを苦しめるが、二発目の熱線を食らい中心核が破裂して身体は炎上。
燃え盛る炎の中、苦しむような鳴き声をあげ、遂に光の粒子となって消えてしまった。
しかし消える直前、一瞬獣のような姿の何かが咆哮を上げていた……。


消えた後に三枝美希が宇宙に薔薇の花を描いており、博士も「永遠の植物が死ぬはずがない」と語っていて、ビオランテの生存を示唆していた。
そして物語後半、「サンダービーム作戦」の作戦中に案の定「それ」は現れて……




◆植獣形態



ビオランテが……進化している……。


体長:120m
重量:20万t


光の粒子となり空に昇っていったビオランテが進化し、再び地上に現れた姿。
メディア展開で登場するときも大体こっちの形態。

先の戦いで細胞分裂が異常に刺激された影響なのか、はたまた打倒ゴジラの為に自己進化を遂げたのかは定かでは無いが、体重は花獣形態の倍、身長はゴジラよりも巨大な超弩級怪獣へと進化を遂げた。
ゴジラ細胞の影響が色濃く出ていて、巨大な体躯とワニのような口に牙、舌に相当するものはなく、口蓋も全て牙状の棘に覆われている。
物悲しさがあった鳴き声も少々変わり、獣の唸りのような声が追加されている。

しかもこの形態、動くのである。ゴジラもこれには驚いている。
何せ身長差1.5倍。体重差では4倍もある敵が口のついた触手を振り乱して地響きと共に突進してくるのだから……。劇場の大スクリーンなら恐怖倍増である。


蔦はゴジラの掌を貫通するだけの強度を有し、口からは強力な強酸性の「放射樹液」を放つ。
抗核バクテリアで力の出ないゴジラを苦しめるが、体力は多くても防御力が足りてないのか打たれ弱さは相変わらずだったようで、
ゴジラの熱線で触手は悉く蹴散らされ、口を開いたところに喉から熱線を叩き込まれて後頭部が貫通して吹っ飛ぶ大ダメージを受ける。

しかしゴジラは抗核バクテリアの効果で昏倒、ビオランテも何故か心を取り戻し、最期は自らの意志で再び光の粒子となり、英理加の顔のイメージと共に天に昇り宇宙へと消えた。




ゴジラとビオランテの戦闘後、白神博士は「私はもう抗核バクテリアもビオランテも作らない」と決め、



ゴジラでもビオランテでもない。本当の怪獣はそれを作った人間です。


と語った。

その思いも虚しく、これ以上抗核バクテリアを日本に作らせまいとするサラジア共和国はエージェントに命じて博士を殺害。
エージェントも、黒木特佐の操作したM6000TCシステムで蒸発した。

エンドロールには三枝美希が描いたような、宇宙に咲く薔薇が描かれ、まるでビオランテが宇宙から地球を見守っているかのようである。




ゴジラは海へ


ビオランテは空へ





【余談&裏話】

造形はビルドアップが担当。
花獣形態の着ぐるみは、ゴジラの熱線により倒されるシーンの撮影で実際に燃やされ、現存していない。

植獣形態のスーツも巨大かつ触手の分複雑で3メートルにもおよび、操演には32本のピアノ線を使用。
キングギドラの5〜6人を遥かに上回る、20人あまりのスタッフが動員され、大変だったと川北特技監督は語っている。
特に例の突進シーンは当初予定はなく、撮影も最後近くになって川北氏が思いついたアイデアであった。

動かないままでは迫力が足りないということで撮影したシーンであったが、スタッフも驚いていたらしく、
DVDに収録されたメイキング映像ではスタッフ達の「すげー」という笑い声が聞こえる。

当然あの巨大な造形物を動かすのだからスタッフも総動員で投入されたが、それでも人手が足りず、見学者にも手伝ってもらったという逸話がある。


立風書房「ゴジラvsビオランテ大百科」など一部の書籍では
「ビオランテの弱点は、地上を動けないことだ。植物のように根をおろしているからだ。」と記述されているほか、
後年のテレビ東京系放映冒険!ゴジランドでゴジラ博士が「ビオランテは動けないのが弱点」と発言し、
動いている映像が流れた際、出演者から「動いているじゃないですか」と指摘され、返答に困る場面があった。


植獣形態のビオランテのデザインが難航したため、
漫画家の西川伸司が助っ人として呼ばれ、大まかなデザインを描き上げている。(以降も機龍のデザインなど、東宝特撮に度々関わる)
没デザインには口が花の様に四方に開くものなどがあったが、最終的に 超ゴジラ を意識した現在のデザインが採用された。


ビオランテがゴジラの前に現れたのは『ゴジラと同化しようとしていた』と川北氏が語っている。
当初は「アニメーションでビオランテの最期を描写し、ゴジラを飲み込んだ後空に消えていく」予定だった。
が、アニメを見たスタッフのほぼ全員が唖然としてしまい、ガッカリした川北氏は現在の形に修正したという。
その没になった実際のアニメ映像はDVDの特典映像として視聴することが可能だが……感想は各自でお願い致します。


映画公開から2年後にバンダイからソフビ人形が発売されるが、何とも微妙な出来になった上に、
そのバンダイから『今度は人形にしやすいデザインにしてね』と言われたらしい。


ビオランテの口許の伸びた皮にはコンドームが使われている。



【その後のシリーズでのビオランテ】

ゴジラVSスペースゴジラ

スペースゴジラ誕生の要因として、宇宙に消えていったビオランテの細胞が可能性として挙げられ、食獣形態がライブフィルムで登場。
その根拠はスペースゴジラの口許とビオランテの口許が非常に似ているためである。

だが『ゴジラVSキングギドラ』で未来人の手により三代目ゴジラの存在はなかったことになったはずなので、
その三代目ゴジラの細胞から作られたビオランテの存在もなくなるはずだが……?
まぁ、XⅢや結城さんやら劇中ではまったく消えた様子がないし、宇宙へ飛び立ったコイツが原因だった可能性もある。

企画書『怪獣二十六号

樋口真嗣氏が企画していたバラゴンの変種と人類の攻防を描いた作品。作中の芦ノ湖にビオランテと思われる植物怪獣が出現していたことが語られており、そちらへの対応で自衛隊が十分な人員をこちらに割けないという事態となったため、主人公たちは改造した建設重機や、携行していた銃火器で怪獣に対処しなければならなくなった。

小説『GODZILLA 怪獣黙示録』

2054年にノルマンディーを縄張りにしていた*1
花獣形態で現れ溶解液とツタ攻撃で極東連合軍を苦しめたが、スーパーXで足止めし、マーカライトファープを直撃させるも、植獣形態に再生した。
戦闘データの分析により、根元の空洞部に中枢があることが判明し、爆薬を搭載した特殊戦車モゲラ試作型
クスリは注射が一番だぜ!」とばかりに中枢部に突っ込まされ、最後は四方からメーサー光線を浴びせられ完全に焼死した。
その圧倒的な再生能力はゴジラを連想させ、近似種ではないかとの説も流れている。


アニメ『ちびゴジラの逆襲』

SDで愛らしい「ちびビオランテ」が登場。CVは沢城みゆき*2
原典で女性の遺伝子を組み込まれていた事と沢口靖子が大阪出身からか女性的で関西弁口調となっており、舞台となる怪獣島にあるスナックのママを務めている。
スナックといっても店内で売っているのはおかきやスルメといった乾き物オンリーであり、飲み物は外の自販機で買う必要がある。




どうした、追記・修正するんだ白神くん!


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最終更新:2024年04月06日 00:46

*1 周辺に怪獣が寄り付かず一見すると平穏に思える状況を作り出しており、かつてのゴジラの出現時の状況を人々に連想させている

*2 ちなみに沢城女史は沢口女史主演の『科捜研の女』に顔出しで出たことがある。