カボチャ

登録日:2012/03/24 Sat 15:52:55
更新日:2024/02/16 Fri 21:18:19
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カボチャとはウリ科カボチャ属の野菜。




■概要

粘膜を丈夫にするカロテンや抵抗力をつけるビタミンなど栄養豊かであり、江戸時代から冬至の日に南瓜を食べると風邪にかからないといわれてきた。
また丸ごとの状態なら室温でも長期保存ができることが特徴。
身の他に、種も乾燥させて皮をむけば食べることが可能である。

原産地は中南米で、新大陸発見後にヨーロッパに持ち込まれ、大航海時代に世界中に広まった。
日本へは16世紀中頃ポルトガル船によってカンボジアからもたらされことから、カンボジアが訛って「かぼちゃ」と呼ばれるようになった。
ジャガイモがジャカルタから来たので…と似た由来。
漢字で「南瓜」と書くのは南方から、あるいは南蛮貿易によって伝わった瓜という意味。中国語の南瓜(ナングァ)に由来するとも言われる。
また「唐茄子(とうなす)」とも呼ばれる。こちらは茄子という言葉から解るように細長いペポ種を指す。
いつの間にか統合され「南瓜」が関西、「唐茄子」が関東の呼び方になっていった。

生産量は北海道がダントツで多く、他は茨城長崎鹿児島宮崎などで広く栽培されている。


■栽培特性

野菜類では最も低温に耐えられ夜温が7~8℃あれば生育でき、また高温にも耐える。
土壌病害に対しても強く連作も可能で育てやすい。
ただし葉や茎、実に発生する疫病には弱く、多湿地では多発することもあるので畑の排水を良くして栽培することが必要。
また、つるが良く伸びるので生育前期の整枝、誘引を入念に行うことも大事である。
また単為結果性(受精しなくても果実ができる性質)は低いので、早期に咲いた花は人工授粉をすること。 
受粉からおよそ一ヶ月後に果実が成長し、収穫することができる。
西洋種は果梗(蔕)がコルク状になり縦横に浅いヒビが入って果実表面の艶がなくなったとき、日本種やペポ種(ズッキーニは除く)は果梗が木質化した時が収穫時である。なお、日本種は熟すと果実表面に蝋質の粉を吹くがペポ種にはそうした特徴はない。

■品種

大きく分けて日本種、西洋種、ペポ種がある。

・日本種

日本に古くからある会津早生、宮崎早生、白皮の白菊種、京都の伝統野菜の一種で瓢箪型の鹿ヶ谷や欧米の品種でじわじわと人気の出ているバターナッツなど。
食生活が洋風化していくとともに姿を消し、今では後述する西洋種が主流である。
ねっとりとした肉質が特徴で醤油との相性が良く煮物などの日本料理に向いている。バターナッツは煮物には向かずスープやローストに用いられる。

・西洋種

栗カボチャとも呼ばれる。
現在の主要品種であり、えびす、黒皮栗、近成芳香などはいずれも西洋種から改良されたもの。源流は明治ごろに北海道に土着したハッバードというまさかりでないと割ることができないほど果皮の硬い品種である。
石川県の打木赤皮甘栗は皮色が赤い。
近年では核家族化に伴い果実の小さい「坊ちゃん」「ほっこり姫」「栗坊」などの品種が登場しておりこちらはいずれも栄養素がえびすカボチャの5倍多く含まれており、味も濃い。
甘みが強く粉質でほくほくした味わいで日本種よりも調理の幅が広い。
プリンやパイ、ポタージュスープなどに向いている。

・ペポ種

ズッキーニや素麺南瓜など。全体的に淡白な味わいが特徴。
ズッキーニは形状から胡瓜の仲間だと思われがちだがれっきとした南瓜の一種(尤も名前を見ればわかるがどちらもウリ科の植物なのだが)。
ビタミンA・Cが多く含まれ他の南瓜と比べて低カロリー。
花も食用に使われ、そのまま茹でたりひき肉などを詰めたりして食べる。
素麺南瓜は茹でてから冷水の中で果肉を取り出すと、まるでそうめんのように糸状にほぐれる。
シャキシャキした歯ごたえで、そうめんのようにめん汁で食べたり酢の物にして食べると美味しい。
また、おもちゃかぼちゃと呼ばれる手のひらサイズの色彩や形の様々である品種がありこちらは硬いため食用にせず観賞用として楽しみお盆のお供えやハロウィンの飾り付けに用いられる。
また、アメリカにはいわゆるパンプキンと呼ばれるオレンジ色の大玉スイカほどのサイズのカボチャがありこちらは普通くりぬいてハロウィンの提灯にするが果肉をスープにしたり(コンソメスープに入っているニンジンを思い浮かべていただきたい)、パイに調理する。
ちなみに、かのアガサ・クリスティが生み出した名探偵エルキュール・ポアロは『アクロイド殺し』等で一時期カボチャ(一般的に想像されるようなカボチャ型というよりは冬瓜に近い形状)の品種改良に乗り出そうとしていたが、それは西洋種ではなくこのペポ種系だとされている(英文ではmarrowと呼ばれており、欧米諸国で古くから栽培されてきた品種である)。
古くはナタウリと呼ばれており、成熟した果実はナタでないと割ることが難しいほどコチコチに硬くなるためこの名がある。

架空の品種

・火星種(火星カボチャ)

ゲーム『アストロノーカ』に登場する、その名の通り火星で品種改良された南瓜。
経済的危機に陥っていた火星コロニーが事態を打開するために新しい名産品として作ったのが始まりである。
火星のイメージを出すために派手な改良した結果、美しい模様を持った南瓜となった。
その派手な見た目が受けて全宇宙で栽培されるようになる。
味の方は地球産ほど甘くないものの、目の詰まった肉質で滑らかな口当たり。
固くなくて非常にバランスの取れた風味のため食材としての用途は地球産のものよりもさらに広くなっている。 


■調理法

調理法や盛り付けによっては中身をくりぬいた南瓜を器代わりに使うこともあり、食卓に彩りを添えるほか、器の南瓜も調理すればまるごと食べられる。

・煮物

南瓜料理の定番。
ほっくりとした優しい味わい。
挽肉と共に煮たそぼろ煮(そぼろにトロミをつけたそぼろ餡掛けも)、小豆と共に似たいとこ煮もある。
また茎の部分はフキのような感覚で煮て食べられる。

天ぷら

揚げることによって南瓜の甘さがさらに引き立つ。
しょっぱめのつゆで頂くとさらに美味。
ズッキーニは花も天ぷらにして食べられる。

・サラダ

ポテトサラダと同じくマッシュしてマヨネーズで和える系サラダ。ポテサラと違って緑黄色野菜だから罪悪感ナシ!
そのまま、パンやクラッカーにのせて、サンドイッチに挟んで、余ったらコロッケやグラタンにアレンジしても楽しめる。
レーズンを入れると良いアクセントになるが、好みが別れるので要注意。

ローストした薄切り南瓜をリーフ類やナッツと和えてドレッシングをかけたお洒落なタイプもあり、海外ではこちらが主流。

・パイ

皆ご存知パンプキンパイ。
クリーミーな南瓜のフィリングとサクサクのパイが絶妙なハーモニーを奏でる。
手のひらサイズの小ぶりなパイと重量感たっぷりの大きなパイ、あなたはどちら派?

・ミートパイ

パイはスイーツだけではない。
南瓜と挽肉とタマネギを炒めたフィリングを詰めたパンプキンミートパイは立派なおかず。
甘さとしょっぱさの塩梅が絶妙。

・プリン

控えめな甘さと滑らかな舌触りが嬉しい一品。
野菜嫌いなお子様にもオススメ。

スープ

濃厚で滑らかな口当たりのポタージュはプリン同様、南瓜が苦手な人でも美味しく頂ける。
冷やして冷製スープにしても良い。

カレー

ナスやレンコンパプリカなどと一緒に素揚げしてカレーに添える。
もちろん素揚げせずにルーと一緒に煮込んでも美味しい。

南インドでは南瓜と豆のカレーは定番料理。

クリームシチュー

秋冬に食べたい、クリーミーな黄色いシチュー。
ソーセージやベーコンを入れれば手軽な上に塩気と南瓜の甘味が互いを引き立てあう。

グラタン

シチューがありならグラタンも!
ホワイトソースは勿論、ミートソースでも美味しい。
よりシンプルにチーズ焼きにしてもいいだろう。

コロッケ

さくさく感と南瓜の甘味がたまらない。はふはふしながら頂きたい。

・肉詰め

中身をくりぬいた小さい南瓜に挽肉とみじん切り野菜の肉だねを詰めて鍋やオーブンで加熱。
和風なら仕上げに餡掛け、洋風ならチーズをのせても美味しい。
見た目の豪快さに心も踊る。

・ロースト

オーブンやフライパンでじっくり加熱した南瓜は甘味がいっそう引き立っている。
スペインのバルセロナでは横半分に切ってオーブン焼きした「カラバサ・アサーダ」が秋になると八百屋やスーパー、パン屋に並んでいる。

また、捨ててしまいがちな南瓜のもローストすれば殻が剥けて美味しく食べられるようになる。

・炒め物

醤油ベースの甘辛、スパイシーなカレー味、コクのある味噌バターなどで味付けすることが多い。
シンプルにきんぴらもいいが、ゴボウやピーマン等の野菜、肉や塩気のあるベーコン、お手軽なツナ缶と組み合わせても。

ベトナムでは南瓜とニンニクはセット扱いであり、実のみならず葉、茎、花も其々ニンニクと炒めて食べる。

・和菓子

饅頭、あんぱん、茶巾、あん団子、大福、練りきり…
甘い甘い南瓜のあんこは小豆のあんことはまた一味違う美味さ。
南瓜あんで南瓜の形に成形できる遊び心も楽しい。

・酒

地元の特産品の活用、秋の限定商品などで各地で南瓜の酒が作られている。
ビールは欧米のクラフトビール界隈では秋の定番商品。

焼酎はスッキリした中にほのかな甘味で料理に合う。
南瓜は甘くてどうしても酒に合わねえな…と思っている辛党さんに。

リキュールは南瓜の甘味が全面出しており、甘いお酒が好きな方に。おすすめはミルク割りやアフォガード。

・ジュース

魔法界では定番の飲料。
スカイピアでは新たな名物。

ニシンとカボチャの包み焼き

私このパイ、キライなのよね。 


■ジャック・オ・ランタン

ハロウィンに使うカボチャのちょうちんの由来はアイルランドの民話から。
ジャックというアル中が死後、天国から追放された挙げ句、悪魔にも嫌われて地獄からも締め出されてしまう。
そこで魂の安住の地を求めジャックは、「蕪」のランプを片手に永遠に世界中を彷徨うことに。
そのランプがアメリカに伝わった際、現地で親しみ深かった「南瓜」に変わり、ハロウィンで死者の魂を導くシンボルとなり現在に至る。
作るときにはオレンジ色のカボチャを使うのが決まり。


■冬至とカボチャ

保存のきくカボチャは昔から冬の貴重な栄養源であり、風邪や中風の予防にも食べられていた。
更に冬至の日には「ん」のつくものを食べると「運」を呼び込めるという縁担ぎがあり、カボチャすなわち南瓜(なんきん)もその一つ。
滋養効果も相俟って冬至の代表野菜となった。
また、流石のカボチャも冬至を過ぎると傷んでくるので年内に食べておけという意味の「冬至南瓜に年取らせるな」という言葉もある。
冬至にカボチャというのは色々な意味が込められているのだ。


■でかいカボチャを競う大会

世界各地で行われる文字通り、カボチャの大きさ(重さ)を競うイベント。
日本でも村おこし等の一環として行われる。
食用に向かないカボチャ(アトランティックジャイアントという品種)をひたすらでかく育てる農家の意地を賭けたパンプキンウォーズである。
500キロ近い化物カボチャは圧巻の一言。コンテストが終わった後は砕いて家畜の飼料にするという。

大きさだけでなく、見た目重視の観賞用かぼちゃ(おもちゃかぼちゃ、前述)もある。



■カボチャやジャック・オ・ランタンを題材にした作品・キャラクター



■カボチャにまつわる言葉

  • 芝居蒟蒻芋南瓜(しばいこんにゃくいもかぼちゃ)、芝居浄瑠璃芋蛸南瓜(しばいじょうるりいもたこなんきん)
江戸時代に「女性の好きなもの」として挙げられた。ここで言う芋とは里芋のこと。
特に後者から転じた芋蛸南瓜は語呂の良さも相まってこの3つの煮物の盛り合わせが日本料理の献立名として採用されている。

  • カボチャ頭、カボチャ野郎
醜い顔を罵倒する言葉。日本に伝来した頃のカボチャはデコボコしていて見た目が綺麗じゃなかったことが由来。
女性相手にも用いられ、醜女の結婚が続くことを「カボチャの当たり年」と呼ぶことも。
ジャック・オ・ランタンが有名になった現在ではこちらの意味で使われることはもうないであろう。

  • 医者坊主南瓜、医者と唐茄子は古きに限る
医者も(坊主も)カボチャも古いもの(ベテラン)の方が良いという言葉。

  • 西瓜は土で作れ南瓜は手で作れ
スイカ作りはまず肥料で土作りをしてやるのが大事、カボチャ作りは手を入れて蔓を整理してやるのが大事。
このことから物や状況に合わせた対応や教育が大切という意味。

  • カボチャを被って豚小屋に入る
韓国版『飛んで火に入る夏の虫』。
豚の好物であるカボチャを被って豚の元にいく、すなわち自ら危険に身を晒すことの例え。


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最終更新:2024年02月16日 21:18