早すぎた埋葬

登録日:2011/02/02(水) 13:12:38
更新日:2024/04/14 Sun 19:32:13
所要時間:約 4 分で読めます





《早すぎた埋葬》
装備魔法
(1):800LPを払い、自分の墓地のモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。
そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する。
このカードが破壊された時にそのモンスターは破壊される。


遊戯王オフィシャルカードゲームに登場した汎用蘇生カード。
初登場はCurse of Anubis-アヌビスの呪い-と17年前に登場したので歴史は古い。。
イラストに描かれている墓下から這い出ている人はどことなく社長に似ていることでも有名。
後年になってイラストを担当した人物*1の発言により、本当に海馬がモデルだった事が判明した

登場当初、既に《死者蘇生》と言う強力な蘇生カードが存在したため、このカードはその下位互換な印象が強かった。
同時期には《リビングデッドの呼び声》《浅すぎた墓穴》のような、当時強烈すぎた蘇生カードの調整版のようなカードがいくつか登場しており、
そういったノーリスク蘇生の調整版だと思われていたのである。


《死者蘇生》に比べると

  • ライフコストが必要
  • 装備カードになったこいつが破壊されるとモンスターも破壊
  • 相手の墓地から蘇生は出来ない
  • 守備表示で特殊召喚出来ない

といったデメリットがあった




のだが…………………
このカードの一文、

このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する。

これがなかなかの曲者。と言うのも、このカードをバウンス(手札に戻す)、除外した場合は装備モンスターが破壊されないのだ。


これは登場当初から注目されていたことで、
「《ハリケーン》でこいつをバウンスすりゃあ、もう一回蘇生出来る上に、敵の伏せカードも除去出来るじゃん!!」
と言った使い方により、エンドカードとしても幅広く使われた。
ちなみにこのコンボはアニメで城之内も使用している。

そう言った理由で、登場して間もなく制限カード化。
同じく《死者蘇生》の調整版といえる《リビングデッドの呼び声》と共に貴重な汎用蘇生カードとして数多のデュエリストに重宝されてきた。
当時の《リビングデッドの呼び声》と比較した相違点は以下のようなところ。

《早すぎた埋葬》 《リビングデッドの呼び声》
即効性 引いてすぐに使える 罠なので伏せなければいけない
発動タイミング 自分ターンにしか発動できない バトルフェイズ中や相手ターンにも発動できる
対象モンスターの破壊条件 《早すぎた埋葬》の破壊のみ どんな方法でも場を離れたら破壊
自身の破壊条件 どんな形でも装備モンスターが場を離れたら破壊される 生け贄や融合素材など、破壊以外で場を離れた場合に場に残る
コスト ライフコストあり ノーコストで使える

この頃は使い勝手については一長一短、規制が進むにつれて、片方が禁止の時にもう片方が制限といった感じのローテーションを組み、数年の間はそれが安定していた。
どちらにしたって結局《サイクロン》で破壊されるというデメリットは、《死者蘇生》はおろか《サイクロン》ですらオーバーパワーだった時期にはちょうどいい塩梅だった。
この2枚が同時に制限カードとして使えた時代は、特殊召喚の手段が本当にこれくらいしかなかったのでたびたび用いられ、
そして《サイクロン》《大嵐》《王宮のお触れ》などで対処されて悶絶したのである。今となっては考えられないレベルで弱い

このカードが良質な蘇生魔法という認識だった頃は、儀式モンスターのみに限定された《契約の履行》や、融合モンスターのみに限定された《再融合》という派生カードも出た。
しかし《早すぎた埋葬》は強いと言えば強いがそこまでオーバーパワーというわけではないという時代。
「あんなのの完全下位互換なんてあるわけがない」と、蘇生制限を無視できるに違いないと考えた人も多かった。当時はそんな、のどかな時代だったのである。
また、蘇生に厳しい条件を持つ《継承の印》なんて派生カードもあったが、特殊召喚自体が本当の意味でスペシャルだった時期ではまともに扱えなかった。

オーバーパワーで無いとは言えほぼ全てのデッキで使われると言うのはカードゲームとしてあまり褒められた事では無いのだが、当時はデッキの半分近くが制限カードで埋まったデッキが当たり前のように見られたため、《早すぎた埋葬》も「お互い使って同然だから平等」と無茶苦茶な理論の元制限カードの群れの一員としてそこまで気にされていなかった。




………………………




……これだけならよかった
だが…奴は現れた…

青きバウンス!






こいつの凶悪さ、KYさは該当ページを参照してもらうとして、
まあ、このバウンス龍のお陰で、このカードのお手軽セルフバウンスが可能になったわけだ。

その結果


と言った悪事を働くデュエリスト多数。
《早すぎた埋葬》が悪いんじゃない。バウンス龍のせい。

特に上述のにゃあ戦術が鬼畜


@《レスキューキャット》召喚!

A《氷結界の龍 ブリューナク》シンクロ召喚!

B《早すぎた埋葬》発動!

C《レスキューキャット》蘇生!

D《氷結界の龍 ブリューナク》のバウンス効果により、手札1枚をコストに、《早すぎた埋葬》バウンス!

E《レスキューキャット》効果発動!Lv6シンクロ!

Bに戻る


要は、800ライフ+手札1枚が強力なシンクロモンスターに生まれ変わるということ。
ゴヨウ・ガーディアン》とかにね!!


ぬこが悪いんじゃない、全ては憎きバウンスさんのせい。
だが、思い出して欲しい。このカードはバウンス龍登場時から制限カードである。

なーんだ、じゃあ、《早すぎた埋葬》が手札に来なければ問題無いね!!





通常魔法
このカードを発動するターン、自分は通常召喚できない。
(1):デッキの一番上のカードを墓地へ送って発動できる。
自分のデッキ・墓地から装備魔法カード1枚を選んで手札に加える。


面倒だから説明は端折らせてもらった。

まさかの装備魔法サーチカード。
これにより、制限カードである《早すぎた埋葬》を容易く手札に持ってこれるようになった。
通常召喚権は失うが、次のターン1kill出来ると思えば安い代償。
……いや、「次のターン」など必要無い。特殊召喚に制限が掛からないため、そのターンでのkillなど楽勝だったのだから。




ドグマブレード
そう。《早すぎた埋葬》は《アームズ・ホール》の登場により、《氷結界の龍 ブリューナク》が登場する前からサーチ・再利用が問題として認識されていたのだ。
《氷結界の龍 ブリューナク》登場前に一度制限改訂があったのだが、《早すぎた埋葬》はその時「何故か生きたまま」
ついでに言うとこのタイミングで何故か《死者蘇生》が制限復帰。蘇生と《早すぎた埋葬》が同居という異常事態になっていた。

とここでコンマイもようやくドグマブレードの存在に気付いたようで

次の制限改訂で…………






《早すぎた埋葬》禁止化




こうして長年デュエリストたちを支えてきた汎用蘇生カードが私たちの前から消え去った。

憎きバウンス龍が禁止カードとなり消えて、後にエラッタによって自分の場のカードをバウンス出来なくなった今もこのカードは禁止カードである。
現在はファルコンとか、エーリアンの砦とか、相性抜群なカードが増えてしまったため、復帰は難しいのだ。
さらに上記の《アームズ・ホール》以外にもみんな大好き《パワー・ツール・ドラゴン》も存在するため復帰は不可能と言っても過言ではないだろう。
下位互換の《継承の印》*2すら強すぎるといった理由で制限カードになっているわけだし。
(継承の印にはライフコストが存在しないため完全下位互換ではない。《早すぎた埋葬》のライフコスト800なんてハナクソのようなものだが)

そして現在、上位互換と思われていた《死者蘇生》は制限カードとして定着。
《死者蘇生》は通常魔法なためにサーチがあちらほど容易ではなく(《左腕の代償》など、無いわけではないが)、またテーマデッキ全盛の現在は回す邪魔なので蘇生も採用しないことも多い。
では《早すぎた埋葬》も許されるのでは?と思うかもしれないが、《早すぎた埋葬》はサーチが豊富で欲しい時に簡単に持ってこれる、あるいは再利用のギミックを組み込めるという時点で《死者蘇生》とはまるで状況が異なっている。

一方でサーチ手段が多い《継承の印》は、コンボパーツとして長らく規制がかけられていた。それだけ「サーチと再利用が簡単な蘇生手段」というのは危ないということなのだ。
主な悪用先にエラッタや準制限がかけられたこともあり、2021年4月にようやく完全な制限解除と相成った。
絶対に戻ってこれないと言われていたオーバーパワーカード《死者蘇生》が制限に定着、
一方で《早すぎた埋葬》をさらに弱体化したようなカードですら規制をかけられ数枚のカードのエラッタに関連したというのは、
シンクロ召喚の登場以降に完全に遊戯王のゲーム性が変わったことを示す絶好の例である。


なお、かつて対となっていた罠カード・《リビングデッドの呼び声》は無制限。
サーチも殆どない、引いてもすぐに使えない、シンクロ素材などにすると無駄に場に残り続ける、と使いづらさが年々目立つようになっていったためである。
現在は相互互換が増えており、永続罠であるという最大の弱点も響いて採用率は全盛期とは比べ物にならないほど低い。




……そして2017年7月に発売された「CIRCUIT BREAK」にてこのカードのパロディカードが収録された。





《やりすぎた埋葬》

装備魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):手札からモンスター1体を捨て、
捨てたモンスターより元々のレベルが低い自分の墓地のモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。
そのモンスターを特殊召喚し、このカードを装備する。
(2):装備モンスターの効果は無効化される。

イラストはあまりに豪華な墓に埋葬されてしまって出づらくなった社長似の人が困り果てているもの。

本家と比較してみると、

  • 発動回数は1ターンに1回と、明らかに公式が「悪用するな」と言わんばかりに釘を刺してきている。
  • コストが800のライフポイントから手札のモンスター1体に変更。(しかも特殊召喚するのは捨てたモンスターのレベル「未満」のレベルのモンスターなのでレベル1モンスターはコストに使えない。)
  • レベルを参照する為、エクシーズモンスターリンクモンスターはそもそも対象に選べない
  • 更に上記の通り、捨てたモンスターのレベル「未満」のレベルのモンスターを対象とするので、レベル12のモンスターもまた選ぶことが出来ない。
  • 特殊召喚したモンスターには効果無効のデメリットがつく。(ただし、このカードが場から離れれば制約は解除される。)


と様々な制約が課せられており、確かに「やりすぎた」感じになっている。え?やりすぎたのは環境で利用されまくった本家の方だって?


その一方で、

  • 守備表示でも蘇生可能。
  • このカードが破壊を含め、どんな方法で場から離れてもモンスターは場に残る。

と言う本家にないメリットがある。
そしてターンをまたぐ必要があるがこのカードも使い回し自体は可能な為、ある意味いい調整をされたと言える存在で、可能性を秘めたカードであると言えるだろう。

さらに2018年にはこんなカードも登場。

《リビング・フォッシル》
装備魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分の墓地のレベル4以下のモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。そのモンスターを特殊召喚し、このカードを装備する。この効果で特殊召喚したモンスターは、フィールドから離れた場合に除外される。このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは除外される。
(2):装備モンスターの攻撃力・守備力は1000ダウンし、効果は無効化される。

アニメGXで三沢剣山が使用した、《やりすぎた埋葬》の先輩にあたる調整版。
蘇生できるのは下級のみ、除外強制+効果無効+ステータスダウンとかなり制約が厳しい。
しかし、世の中には《地獄の暴走召喚》というカードがある。
蘇生したモンスターのステータスダウンがポイントである。
これにより、本来暴走召喚の対象外であるモンスターを強引に巻き込み、大量展開に繋げることが出来るのだ。
そして、除外デメリットは「フィールドを離れた場合」、つまりオーバーレイユニットにしてしまえばクリアできる。
光天使セプター》や《アステル・ドローン》など、エクシーズ召喚向きのモンスターとコンボするのが鉄板だろう。

さらに、除外を逆手に取って不知火などの除外テーマに入れるのも手。
墓地に落ちている不知火を蘇生して各種素材やコストに使い、除外により効果を発動してアドバンテージを取る、という流れができる。

余談だが、エラッタ祭りの影響&上記の調整版から「カード名での1ターン度指定、自壊デメリットを「フィールドから離れた時」にすれば戻ってこれそう」との声がある。そもそも禁止行きの原因が「セルフバウンスによる使い回し」のため、それをできなくすればよさそうではあるが・・・。


余談

「早すぎた埋葬」という名前の元ネタはエドガー・アラン・ポーの小説「The Premature Burial(邦題:早すぎた埋葬、早すぎる埋葬)」から。
生きたまま棺桶に閉じ込められる恐怖を描いたもので、閉所恐怖症の人が読むとトラウマものである。

「《死者蘇生》は通常魔法カードなのに、どうしてこれは装備魔法なんだろう?」という疑問を抱いた人は……遊戯王のプレイヤー層には意外と少なそうだ。
これは遊戯王(マジック&ウィザーズ)の元ネタであるマジック・ザ・ギャザリングの最初期にあった似たようなコンセプトのカード《動く死体》が元ネタだから。
こちらは要は「ゾンビ化の魔法をかけてよみがえらせる。魔法そのものを対処するとゾンビは死体に戻る」というフレーバーで作られたカードで、動きやデメリットとしてはほぼ遊戯王における初期の《早すぎた埋葬》と同じである。
しかしこれが遊戯王では「装備魔法(あるいは永続罠)になっている」「バウンスなどでデメリットを抜けるテクニックが頻繁に使われる」「魔法や罠への対処手段が、遊戯王の場合は風と強く関連付けられている」となってしまったせいで、フレーバーがものすごくちぐはぐになってしまった、というわけ。
《早すぎた埋葬》の場合、《魔法解除》と関連付けると分かりやすいかもしれない。
ただしフレーバー面を重視しすぎたあちらはテキストがめちゃくちゃ複雑になってしまい、派生カードが20年以上出ていない。そう考えると、フレーバー重視も良し悪しである。



追記、修正は800ライフを支払ってからでお願いします

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最終更新:2024年04月14日 19:32

*1 本業イラストレーターではなく、当時の開発されていたゲームのグラフィック担当で、その縁でOCGイラストを描く事になったとか。他には《人造人間-サイコ・ショッカー》を担当。

*2 同名カード3枚が墓地にある場合のみ使える《早すぎた埋葬》。