ソニックブーム

登録日: 2010/02/17(水) 01:12:04
更新日:2022/04/04 Mon 19:01:18
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①飛行機が音速より速く飛行した時に発生する大音響のこと。
かつてこの記事では衝撃波と書かれていたが、その衝撃波が生み出す「大爆音のこと」である。
一時期これが音ではなく衝撃波だという風説が、主にサブカル界隈を中心に流布していた。

流体力学自体が物理学の中でもものすごく難しい領域で、特撮やゲームはこれを非常に簡略化してさらにイメージ的に派手にするのだから間違うのも仕方がない。
よく登場する「マッハ」という単位も、我々はなんとなく音速と考えているが実際の定義はかなり複雑である。
……といってもそもそもこの記事、初版を見ると⑦のオチのために作られてるのが分かるから間違ったことが掲載されてるのも仕方ないんだけどね。
筆者は聴いたことないが、聞くのではなく「体で感じるもの」だとか。

正確には物質が音速以上の速度で動いたときに発生する衝撃波が減衰してソニックブームとなり、さらに減衰すると音波になる。
ちなみに音速は気温によって異なり、331.5+0.6t(tは気温)で求めることができる。気温が15度Cであれば、音速は341(m/s)となる。

音速を越えなくとも衝撃波は(一応)出ているが、まさしく音速に「音の壁」が存在し、物体がその壁を突き破ろうとして衝撃波になる、といった感じ。
ピンと張ったビニールを突き破ろうとする感じである。

そのため、世間一般で言われる超音速で空気中を物体が動いた時に発生する大きな破壊力を発生させる衝撃波は実はソニックブームではない。
ソニックブーム自体は大きな音ではあるものの大した破壊力はないのだ。
いっぽうソニックブームではなく衝撃波のほうは5000mの高空でも地上の窓ガラスを十分破壊出来る、21000mの上空を飛んでも地上に到達する事があるなど、伝播性が非常に高く減衰しない。
このことが技術的には可能な超音速旅客機の実用化への高いハードルとなった。つまりジェット機なんて目じゃないレベルの騒音公害を解決できないのである。
こういった理由から超音速旅客機のコンコルドは洋上でのみしか飛行できず、それでも洋上の船に騒音公害をかけたという話が残っている。
この制限に加え、操縦の難しさや人件費・燃料費なども相俟ってまったく採算が取れないまま運用され続け、そして2000年7月25日に墜落事故を起こして信頼を損なって消えた。
心理学や投資に興味のある人は「コンコルド効果」なんて言葉も聞いたことがあるだろうが、この遠因になっているのがソニックブーム(正確にはソニックブームになる前の超音速の衝撃波)ってわけ。
「音の壁」は何も、物理学だけの話ではないのだ。


落雷において、ぴかっと光る稲光が見えてからごろごろという雷鳴が聞こえるまでに時間がかかるように、
音の伝達速度と言うのは光に比べて非常に遅い。そしてソニックブームの発生源は音よりも早く動き回っている。
そのため航空機や隕石の出すソニックブームは「突然大爆音が聞こえたが発生源らしきものが何もない」という原因不明の怪現象のように扱われることがあり、
オカルト界隈では「アポカリプティックサウンド(世界が終わるときに立てるといわれている音)」だという主張が出てくるなど、新しい迷信の源にもなっている。
「発展しすぎた科学は魔法と同じ」なんて言葉があるが、超音速の世界でも同じような現象が起きているのである。


ソニックブームが自然災害になることもある。
たとえば2013年にロシアに降ってきた隕石では、このソニックブームによって日本円にして30億円相当の被害が出たことで世界的なニュースになった。
まさか空から何かが降ってきてそれが光ったと思ったら「数分後に」ガラスがことごとく突然割れるなんて誰も思わないだろう*1
さらに諸外国においては「隕石の災害では保険が降りるのか?」という部分でも話題になった。世知辛い話ではあるが、降りない保険に加入する意味なんてないのだから仕方ない。


一方でソニックブームは、そこまで珍しい現象というわけではない。
たとえばムチは「ピシッ」と鋭い音を放つが、あれも衝撃波が減衰された音で、ムチの先端が瞬間的に音速を越えるために衝撃波が発生する。
打ち上げ花火が「ドン」と聞こえるのも、同じ理屈である。


衝撃波の形は簡単に作図できる。
半径1の円を描き、そこからマッハ数に応じて直線を円の中心から伸ばし、その先端から円の接線を二本引くだけである。この形からマッハコーンとも呼ばれる。
なお爆発などには衝撃波が付き物で、高速度カメラなどで撮影すると「衝撃波」を視覚情報として見ることもできる。
実際の爆発を見ても衝撃波は見えることは見えるが、一瞬しか見えない。


アメリカのテレビ番組「MythBusters(怪しい伝説)」では2009年、ソニックブームでガラスは割れるのかをブルーエンジェルズF/A-18を2機も使用して実験した。
はじめは高度2000m近くからマッハ1程度で飛行したが、窓ガラスは割れなかった。その後、高度を下げ、速度も上げて実験するが割れるには至らなかった。
が、ブルーエンジェルズが本気を出し、法律ギリギリの高度60mをマッハ2で飛行し、やっとガラスが割れた。
この際、F/A-18の2機は、2機同時に飛行したのではなく、1機ずつ立て続けに飛行した。つまりソニックブームを連続的に当ててガラスを割ったのである。


新・巨人の星で星飛雄馬が投手として復活(右投手)した時に参考にした。
何故か投げた後にボールが加速しソニックブーム現象をおこし分身するというトンデモ魔球である。
また新魔球の名前は大リーグボール右一号となっている。
因みに弱点はボールは分身しても影があるため影を見てば打てる。

真実(ボール)はいつも一つ
と言うことなのだろう。



ポケットモンスターシリーズの技の一つ。

タイプ:ノーマル
威力:-
命中:90
PP:20

衝撃波を放ち相手に固定20ダメージを与える技。
習得するのはコイルなどのマシーン型ポケモンが多い。

ぶっちゃけ固定40ダメージかつ命中率100の「りゅうのいかり」の劣化だし、
レベル21以上の場合はレベル分の固定ダメージを与える「ナイトヘッド」や「ちきゅうなげ」にも劣る。
50レベル戦が主な今、実戦で使われる機会はまずない技だろう。ソード・シールドでも使用不可。
しかしストーリー序盤~中盤での効果はかなり大きく、何よりも耐性に関係なく一定のダメージを与えられる点が強く、
ジムリーダー戦等でこの技に助けられたトレーナーも多いことだろう。

最大HPがかなり低くなる低レベル・低種族値で固定されるルールの場合は猛威を振るう。
レベル5のポケモン達で戦う「リトルカップ」ルールを採用する場合は「りゅうのいかり」ともども禁止というのはよく知られた話だが、
ポケスタ2のイエローカップファンシーカップでは「りゅうのいかり」ほどは強くなく、使用できるポケモンの技習得の都合*2なども相俟ってほとんど使われない。

実はこの技、ファイアレッド・リーフグリーンに登場する「トレーナータワー」では猛威を振るう。
この施設はカードeリーダーによって階層を増やすことができ、この階層を最大まで増やして指定された時間以内にクリアすると貴重なアイテムを入手できるというやりこみ施設。
相手のポケモンのレベルはこちらの手持ちの最大レベルに合わせられるのだが、レベルの下限がないのだ。
当時はタマゴから生まれるポケモンのレベルが5だったのだが、グレンタウンにてNPC交換で入手できるマルマインの「デンマル」が入手できる最低レベルが3。
しかも素早さ種族値が140かつ敵のポケモンが理想個体ではないので、どんな相手にも絶対に先手が取れる。そのためこのLv3デンマルと適当なポケモンを連れていき、
先制ソニックブームで相手のレベル3ポケモンたちをなぎ倒して制限時間以内に確実にクリアする、あるいは周回速度を早めるというわけ。

ただしこの方法にも弱点はあり、命中率が90と不安定。
さらにダブルバトルでは相方となるLv3ポケモンがコラッタだのポッポだのしかいないのでどうしても事故が怖い。
結局Lv5ドーブルに「りゅうのいかり」を覚えさせてそちらをメインにした方が安定してしまい、下位互換という評価は結局返上できないままだった。

ちなみに「音のわざ」扱いではなので、「ぼうおん」で防げなかったり「みがわり」を貫通しなかったりする。
上述の「聞くのではなく体で感じるもの」というあたりが由来だろうか。


坂本真綾の楽曲「SONIC BOOM」の日本語表記。


ロックマンエグゼシリーズに登場する技のひとつ。

バトルチップ、バリアブルソードでコマンド入力することで発動する。

←B→B:ソニックブーム
縦3マス範囲の衝撃波を3回(2、3)または1回(4以降)飛ばす。エリア中央で出すと回避不能のソード属性攻撃が相手に襲い掛かる。
2と3では3回というのがミソで、敵陣のストーンキューブを破壊したり、ウイルスのドリームオーラや対戦のファーストバリアなどを剥がしながら第二波で続けざまに攻撃可能。
強すぎたせいで4以降は弱体化した。

敵ナビのブルースも使用。縦2マス分の衝撃波を上・下マスを高速で移動しながら放ってくる。
遠距離戦が不得意なイメージのあるソード系の弱点を補う、代表的な攻撃である。
いくつか派生技があり、中でもソニックブームを4回生当てできる「エレメントソニック」は語り草。


ガイルたちが使うストリートファイターシリーズの必殺技。詳細はソニックブーム(ストリートファイター)を参照。
特に対戦格闘ゲームの元祖であるストリートファイターIIの「ガイル同士の戦い」ではこのソニックブームがひっきりなしに乱れ飛びながら相殺する。
やっている当人ややったことのある人だと手に汗握る戦いなのだが、格ゲーを観て楽しむ層にはかなり笑いを誘う……らしい。
アニッブーン!アニッブーン!

ソニックブームは音ではなく衝撃波のことだという風説は、一説によるとガイルのソニックブームの印象が強すぎたからなのだとか。


⑥Web小説ニンジャスレイヤーに登場するキャラクター、ソニックブーム
詳細は項目で。


➆ポケモンブームや双子芸能人ブームのように、“ソニック”がブームになる、一世を風靡すること。


ただ、“ソニック”の筆頭である「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」シリーズも、ブームと言えるほどの流行を博したことはない。

爆走兄弟レッツ&ゴー!!のマシン「ソニックセイバー」系も、流行ったのはむしろエアロマシンブーム。
どちらかというとマグナムのが人気だし。

阪神の久保康友なんかは、人気だのブームだの以前に“ソニック”という愛称がまず知られていない。

バンプの藤原や直井が使ってるギターのメーカーがソニックだとか、そもそも知ってる方がおかしい。


一番知られている“ブーム”でありながら、決して来ることのなさそうな“ブーム”、
それが「ソニックブーム」である。


ソニックがブームになったことがないという論説が話題に出たので、ちょっとゲハ臭い話題になってしまうが少し横道に。
日本では湯川専務のCMみたいな扱いがお似合いのセガだが、米国ではメガドライブ(セガ・ジェネシス)が任天堂のゲーム機スーパーファミコン(SNES)を超えるほどのメガヒットを見せていた。
当然ソニックのファンも多いわけで、⑦の用法に乗っ取れば立派な「ソニックブーム」を起こしている。
たとえば分子生物学には「ソニック・ヘッジホッグ遺伝子」という立派な学術用語が存在するが、これは発見者がメガドライブのファンだったことに由来する*3
F-ZERO GX」や「大乱闘スマッシュブラザーズX」などでセガと任天堂がコラボしたというのは、海外のゲームナードたちの間では「あの不倶戴天の敵同士が!?」とすさまじいショックだったんだとか。F-ZEROの新作はよ出せや
ゲハの話題なんて編集合戦誘うだけなんでこの辺で。こういう話もあるんだよ、程度に見てもらえればいい。そもそもこの中で一番新しい話題であるスマブラXすらもう2008年、13年も前の話だし。


超音速旅客機もソニック・ザ・ヘッジホッグもアメリカが本場だし、ニンジャスレイヤーの作者もアメリカ人だし、ガイルもアメリカ人。
「ソニックブーム」の本場は、案外アメリカなのかもしれない。というかむしろ、日本こそソニックブームに乗り遅れているのかもしれないね。




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最終更新:2022年04月04日 19:01

*1 アメリカのテレビ番組「怪しい伝説」のせいでソニックブームでガラスが割れるのは都市伝説という風潮があったのだが、ロシアの隕石がこれを覆した。あの番組がやっているのは「超音速航空機のソニックブーム」だからという言い訳は立つのだが、多額の金をかけての検証が無料で覆されるというのは皮肉にも「一方ロシアは鉛筆を使った」のジョークのような結果を産んでしまっている。

*2 ソニックブームはレベル技だが、「りゅうのいかり」はわざマシンで覚えられる。

*3 ポケモン絡みにもがんを引き起こす遺伝子「POKEMON(後に「訴訟も辞さない」と怒られたために名称変更)」や、マウスの実験で発見された動体視力に関する遺伝子「ピカチュリン」なども存在するが、ソニックの方は1990年代前半、つまりポケモンが出る前に命名されている。