自衛隊

登録日:2012/10/29 Mon 10:21:37
更新日:2024/03/20 Wed 11:47:48
所要時間:約 21 分で読めます




「私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、
事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。」
自衛隊宣誓文より 一部中略



自衛隊は日本国が保有する「自衛のための必要最小限度の」「矛盾を抱えた」軍事組織である。

約25万人の陸・海・空自衛隊によって構成され、海洋国家のため海・空に重点が置くその総兵力はアメリカ軍との連携によって最大の能力が発揮できるように戦略が立てられている。

文民統制(シビリアンコントロール)*1により、最高司令官は内閣総理大臣

前座【憲法9条について】

ご存知の方がほとんどだろうが、日本は憲法で明確に軍隊の保持を禁じている。
これを記しているのが「憲法9条」と一般には呼ばれる日本国憲法第9条である。

第二章 戦争の放棄
第九条 
①日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

違憲合憲について詳しくするととんでもない記述量になってしまうが、政府は国家主権たる自衛権は放棄しておらず、自衛戦争の為の戦力に至らない程度の実力を保持することは合憲としている。
2021年世界の軍事力ランキングで5位になるくらい強力な自衛隊も歴代政権もこの解釈が苦しいのは理解しているはずだが、憲法を守るために国土・国民を守らないというのは本末転倒である

制定以来改正されたことがない憲法改正には衆参各議員の3分の2、国民の過半数の賛成というハードルに加え、解釈によって侵略戦争が可能になってしまうのではないかという懸念もあり、改正には至っていない*2

要は憲法を変えるか、自衛隊を変えるか

2022年現在、与党第一党は改憲を目指す自由民主党であり、憲法に自衛隊を明記しようというのが主流だが、世界平和に向けて日本が率先して段階的軍縮を行うことでこの金食い虫*3を軍縮する旗振り役となろうという意見にも正当性がある。


【歴史】

「戦争と軍備の放棄」(日本国憲法9条)を制定した日本に対し、朝鮮戦争の勃発と『トルーマン・ドクトリン*4』における防衛軍備の必要性に気づいた米政府が半ば強引に1950年に「国内の治安維持」を名目にした警察予備隊を創設。
同年に保安隊を経由し、1954年に改編されて現在に至る。

平和維持活動やアメリカの戦争にも参加することなく、戦後50年にわたり実戦を一度も経験していない世界的に見て稀有な自衛隊の状態は永遠に続くものと思われていた…。


しかし湾岸戦争終結後、情勢が激変。


資金援助のため増税によって130億ドルを捻出した日本政府を各国は「安全を金で買っている」「一国だけの平和主義」と痛烈に批判し、アメリカを中心とした多国籍軍11か国の国旗に加えて合計30の国名を新聞広告に載せたクウェートは日本を載せなかった*5

金は確かに重要だが、 軍人という高度な技術を持つ人材を 捨てる 代金としては安くはない ということだろう。

ペルシャ湾掃海中、「日本のタンカーを守るため、何故合衆国や他国の若者が危険に身を晒さなければならないのか」と本音を漏らした米軍高官に当時の司令官落合畯1等海佐*6は「日本国民一人当たり1万円ずつ払って立派に国際貢献している」と反論したが、

「100ドル*7払えばペルシャ湾に来なくていいのだったら、俺は今ここで100ドル払ってやるよ」

と返されて何も言えなくなった事があったらしい。

そのアメリカも第一次世界大戦の時には「戦争の決着が付いてからノコノコ来やがって日本の方がずっと仕事してたぞ」とイギリスにボロクソ言われ、権益はあまり得られなかったという過去があった。 遅かったとはいえ兵の血を流したにもかかわらずである。

日本外しがトラウマになった日本はこれ以降、PKOなどに積極的に参加。

2003年には戦地であるイラクへと自衛隊に派遣し、2020年現在もソマリアの海賊対策のためアデン湾やジブチに陸・海・空自衛隊を派遣している。

そして近年は中国の脅威に対抗するために再び方針転換。

今まで優先されていた空・海のみならず、後回しにされた陸にも多くの新装備や部隊を配備・編成。
実効性の是非や政治的問題から敵基地攻撃能力の保有こそ盛り込まれなかったが、島嶼防衛にも力を入れて世界的な潮流の兵器開発・配備にも乗り出している。

しかし、どう戦力を増大させても太平洋戦争によって戦争国民が死ぬのだけは御免」と強烈極まる戦争アレルギーが根付いた日本国民にそれを発動することは難しい


【軍事組織】

【予算】

自衛隊の予算は日本経済の不調や、少子高齢化に伴う社会保障費の累乗倍での増額予測もあって減少か横ばいと考えられていたが、中国への対抗が火急の課題となり、僅かながら増えつつある。
対GDP比2%まで増額することを目標にしている。

その年間予算は2021年度で世界第9位の約6兆9300億円*8と世界でも高額だが、対GDP比でみればNATO基準の算定だと1.24%*9で、世界最低水準


【装備】


2014年まで、所謂「武器輸出三原則」によって兵器の輸出を事実上していなかったため、「自衛隊専用の国産装備」の割合が非常に多く、ミリヲタ的にはなかなか見てて楽しい。
現在では武器輸出は事実上解禁されているのだが、何しろ実戦経験がない軍隊であり、兵器も当然コンバットプルーヴン(実戦でその性能を証明すること)が一切皆無なため、実績が重んじられがちな兵器業界ではいまだ苦戦気味。

輸入orライセンス生産している兵器は原則としてアメリカやEU製であり、兵器の規格等も含めて、いわゆる「西側」の装備体形に属していると言える。

独自装備に関しては日本の技術力がフル活用されており、カタログ上の性能は西側諸国でも有数のレベルにある。なんで調達した軽機関銃がどいつもこいつも欠陥品なんですか?
一方で輸出を前提としていない歴史が長く、また防衛産業全体が小さいこともあって、コストパフォーマンスはお世辞にも高いとは言えない傾向がある。

また正面装備、特に戦車や航空機、艦船などの大型兵器では質・量ともに豪華な反面、個人装備や衛生・輸送などの支援装備が軽んじられがちな欠点も指摘されている。
防衛器材の高騰化に伴って整備維持費も増額しているが、佐藤茂樹議員が「装備品の稼働率は5割強くらいしかない」と言及する程に状況が悪化していて、弾薬不足の件も含めて継戦能力の改善が今後の課題になっている。


[陸上自衛隊 / Japan Ground Self-Defense Force:JGSDF]

キャッチフレーズは「用意周到、動脈硬化」。

自衛隊最大の約16万人を抱える陸上組織。
海上・航空では既に廃止された「自衛隊生徒」制度を唯一維持しており、中卒の男子が入学出来る「高等工科学校」(旧称少年工科学校)を持つ。
警察予備隊は旧内務官僚らが主導権を握っていたが、東西冷戦の激化により「軍隊」の性格がより一層求められるようになると中佐以下の旧陸軍将校が多数入隊。
旧陸軍出身者が幹部の大半を占めるようになった陸上自衛隊には旧陸軍の伝統や戦略・戦術思想が継承された*10
ソ連の侵攻に備えて、北方機動特別演習や北転事業を実施するなど、北海道での対着上陸作戦を重視した冷戦時代は島国でありながら戦車1200両及び迫撃砲・無反動砲を除く火砲1000門/両(ただし旧式器材込みで額面上程強力では無い)保有と、機甲科(戦車・偵察)や特科(砲兵)に努力を払ってきた。
しかし、冷戦終結後は島嶼防衛やゲリラコマンド対策を主軸に、南西方面への緊急展開作戦や対テロ作戦及び市街戦へ傾倒し、現在は普通科(歩兵)や化学科(NBC対処)の装備改善を図っている。





10式戦車
自衛隊の最新鋭戦車。
世界的に珍しい完全新規設計の戦車であり、世界最高水準の性能を誇る。
しかし、予算の関係もあって十分な数が配備されるかどうか危惧されている。
現行の防衛大綱では戦車を300両まで削減する事が目標となったため、今後は16式機動戦闘車と並行配備される模様である。
なお周辺諸国の関係による配置転換によって10式戦車は北海道・九州に集中配備される予定。

●16式機動戦闘車
平成28年度(2016年度)に制式化される装輪式の装甲戦闘車両。
ゲリラコマンドや主力戦車を除く装甲戦闘車両に対抗する目的で開発された。
74式戦車の実質的な後継として、主に機動師団・機動旅団の即応機動連隊や地域配備師団・地域配備旅団の偵察戦闘大隊へ配備される。
26中期防(2014年~2018年)で99両の調達を予定していたが87両に留まり、31中期防(2019年~2023年)で134両が整備されることになった。

●野外炊具
おそらく陸上自衛隊で一番実戦を経験している装備品。
屋外でも温かい食事を提供できる車両型の調理器で、灯油バーナーを使った炊飯器、同じく灯油バーナーを使用したかまどで煮物や味噌汁などを調理できる。
ただし灯油バーナーの火力調節が難しく、焼き物に関しては実質無理らしい。
とあるサイトでは一時期使用経験のある自衛官と思しき解説で細かく欠点が記述されていたことがある。
非常時でも米にこだわるあたり、日本人らしいと言えばらしい。
イベントで自衛隊が参加する場合展示されることも多く好評、青島から立体化もされている。

●野外入浴セット
野外炊具と並んで実戦経験が多い装備品。
諸説あるが日本航空123便墜落事故で製造元が自衛隊に提供したところ好評だったことから正式採用されたともいわれている。
ライフラインが途絶した環境下でも温かい風呂へ入ることができる。大災害の際に被災地へ派遣されることが多く、その時には所属元の駐屯地に因んだ暖簾が入り口にかけられる。

●浄水セット
野外入浴セットとはセットで運用されることが多い装備。
派遣先では水不足になっていることも多くこの装備では淡水を真水に変えることが出来る。
しかし真水は日本の基準ではそのまま飲料水にはできないことから入浴セットの水として使われることが多い。
近年では淡水だけでなく汚水を真水に変える浄水セットⅡ型も登場し配備が進んでいる。


[海上自衛隊 / Japan Maritime Self-Defense Force:JMSDF]

キャッチフレーズは「伝統墨守、唯我独尊」
約4万5千人。
旧日本海軍の伝統を引き継いだ後継組織であり、米海軍との連携で最大限の能力を発揮できるように整備された対潜・機雷掃海の練度は世界有数。
また、イージス艦の保有数は世界第2位となる8隻。


いずも型護衛艦
ひゅうが型を上回るヘリコプター搭載護衛艦(DDH)。
その大きさと拡張性を生かし艦隊旗艦や輸送艦、病院艦などマルチに対応できるようになっている。
その一環として日本海軍以来の艦上戦闘機運用可能にする準備が進められている。

そうりゅう型潜水艦
2,900トン型とも称される。
自衛隊初のAIP搭載型潜水艦であり、世界最大の通常動力型潜水艦。
SS-511(11番艦)以降はAIPではなく、リチウム・イオン蓄電池を採用している。


[航空自衛隊 / Japan Air Self-Defense Force:JASDF]

約4万5千人。
キャッチフレーズは「勇猛果敢、支離滅裂」
かつて戦闘機部隊は要撃(FI)と支援(FS)に分かれていたが、現在は区分を解消している。
空自の元となる新空軍構想は旧陸軍航空関係者たちによって計画され、空海軍構想の一部も合流する形で組織された。
憲法上の問題から防空・要撃に特化した装備体系であり、早期警戒機はベレンコ中尉亡命事件後、空中給油機に至っては2000年代に入るまで導入されず、戦闘爆撃機は「支援戦闘機」として国内開発を行っていた。

2023年頃に他国でも重要視されている宇宙も視野に入れた【航空宇宙自衛隊】に改変予定。


F-15J/DJ
第4世代ジェット戦闘機。F-15C/Dの空自仕様で、調達数は世界第一位のアメリカ空軍に次ぐ213機。
冷戦後の戦闘機部隊の削減に伴い一部は教育部隊へ配置転換されたため、ある意味すごく贅沢な運用をしていると言える。
近代化改修により今後も第一線を担う模様だが、1985年以前に生産された約100機については次期F-Xへの更新が検討されていた。
偵察機仕様に改修して第501飛行隊のRF-4E/EJを置き換える計画もあったが、要求性能を満たせずに頓挫した結果、
同飛行隊が解隊される代わりに、RQ-4グローバルホークを運用する臨時滞空型無人機航空隊が発足されることになった。

●F-35A
統合打撃戦闘機計画に基づいて開発された第5世代ジェット戦闘機。
F-4EJ改の後継としてA型が採用され当初42機の配備を計画、価格に応じて調達数を増やす可能性も示していた。
航空自衛隊における初期作戦能力の獲得は2020年以降になると見られており、2020年までF-4を酷使していた。
なお短距離/垂直離着陸可能なB型の導入検討が報道されたが、小野寺五典防衛大臣は記者会見で「検討の事実はない」と否定していた*11
後にいずも型に搭載する艦載機としてB型42機の導入が確定、また改修が施されないF-15も追加調達される63機のF-35Aに置き換えることが確定した。
導入予定は147機となっているが、すでに墜落事故で一機を喪失している。*12

F-2A/B
対艦攻撃を主な任務とする第4世代ジェット戦闘機。
以前は「支援戦闘機」という区分で開発前はFS-Xと称していたが、前述の通り、現在は区分が解消されている。
日本で独自開発する予定であったが、日本の工業力ではエンジンの要求性能を満たせなかったこと、
アメリカとの貿易摩擦解消など、様々な要因でF-16をベースに日米共同開発する形になった。
対艦ミサイルを四発積むことが可能。
2020年の時点では後継として、三菱重工とロッキード・マーチンと技術提携して次期戦闘機の国内開発が予定されていたが、
2022年5月にはロッキード・マーチンの協力は限定的となる事*13新たに日英共同開発*14の方向で調整されているとの報道がなされた。
そして2022年12月に、日米間での協力は「次期戦闘機を始めとした装備を補完し得るautonomous systems─自律型システムに関する連携をする」ことで一致し、新たに日英伊共同開発となる事が正式に発表された。


【災害派遣】

日本国が世界でも有数の災害大国であることを反映してか自衛隊は世界最多の災害救助・復興活動を行っている。
航空自衛隊の救難隊は民間での救助活動が困難場合救援要請を受けることも多い。
海上自衛隊の救難隊は更にUS-2などの装備も保有していることから海難事故では「最後の砦」とも呼ばれている。
第224飛行隊は担当地区に多くの離島を抱えることもあり最も出動回数が多い部隊でもある。

2011年に発生した東日本大震災においては延べ10万人もの自衛官が派遣され多くの人命が救われた。
この活動は国民の自衛隊への理解・好感へと繋がっている。



【自衛官になるには】

採用区分は多数あるが、体力と根性に覚えのある者はとりあえずお近くの自衛隊地方協力本部(地本)で聞いてみることをおすすめする。
日本国籍を持ち、それぞれの採用区分に合った年齢と身体的条件であれば試験を受けてみよう。
昔は任期制なら結構簡単に入れた時代もあったが、最近は民間の不景気により公務員志向が高まり、それに反して予算上採用人数が絞られたため難易度が上がっている。


様々な採用区分により難易度は差があるが、自衛隊の学校から入るコースは基本全寮制 *15で、数年間厳しい上下関係に耐え抜く根性が必要となる。
幹部自衛官を目指す防衛大学校および防衛医科大学校はかなりの高偏差値。
特に普通の私立医大なら高額な学費のかかる医学部の中、学費がタダの防衛医科大学は人気も高く合格者はほとんど偏差値70以上のトップ高校からばかりであるが、
医学科は6年間に及ぶ缶詰生活でビシビシしごかれながら送るためドロップアウトして普通の国立大医学部に逃げる者も定期的にでる。
看護学院は4年制の防衛大学校看護科に改変され、こちらも卒業後は幹部となる。
防衛医大は卒業後9年の年季があり、これより前に退官すると経費を返還しないといけない。
女性及び海上・航空の採用は高卒年齢以上からのみ。高卒以上で受験できる航空学校もある。
男子は陸上自衛隊にのみ高等工科学校(旧称少年工科学校)という中卒受験可能な枠が存在し、ここでは高卒資格が取れて卒業後は下士官相当の曹からのスタートになる。これも少年工科学校時代よりは減ったとはいえ在学中から給料が出る。
(かつては航空、海上にもあったがなくなった)
また大卒後から幹部候補生学校に入る道もある。
3年以内くらいで一区切りの「任期制自衛官」は一番ヒラからのスタートである。

なお、本人の意思に関係なく国民を兵にする徴兵制度は日本では取られていない。
徴兵制度は憲法18条で禁じられている「意に反する苦役」にあたり、導入は憲法違反に当たるというのが政府見解である。
また、仮に憲法を改正したとしても
  • 軍事のハイテク化が進む現在、徴兵で無理矢理集めた自衛官が軍事の現場で役に立つ可能性は乏しい。逆に熱意ある自衛官の足を引っ張りかねない。
  • 徴兵にも給金や衣食住・武器などの供給が必要であり、むやみに兵を抱え込む予算はない。
  • 若い働き手を軍事に奪うことになるので、国家経済そのものを傾かせかねない。
という視点から、現在の日本での徴兵制は少なくとも合理的な軍事政策とはみなされていない。
他方、国防に関与させることで国民意識を高めるために徴兵が必要だ!という意見は一部にある。自衛隊の仕事がそういうものであるかは別として



【余談】

  • 「自衛隊は軍隊であるのか?」
自衛隊創設以来、現在に至るまで議論され続けられている問題であり、そのため常に微妙な立場に立たされている
ただし自分たちが戦後日本における軍隊であると自覚している節も散見され、隊員経験者らの中には自分が元『職業軍人』であると自覚し、公言するケースもある。
また、吉田茂元首相も政府答弁で「自衛隊は戦力なき軍隊である」と答えていたため、
設立当時の政府関係者も実質的には『GHQ指令に則って再建された日本軍』と認識していたのがうかがえる。
一言でいうなら「紛れもなく軍隊だが政治的な都合で他国軍より枷を多く填められた軍隊」というのが事実上のところである。
枷自体は程度の差こそあれ他の国にもあるしそう説明すれば大抵の外国人は納得する。
ちなみに国際人道法(戦時国際法)上、自衛隊は軍隊として扱われる。
他国の政府や軍に関しても自衛隊は日本の正規軍と見なされている他、自衛隊側が軍を名乗る例*16もある。

  • 軍法と軍法会議
軍隊というのは殺人や破壊活動が通常業務に入っている組織なので、問題を起こした時に一般の刑法や裁判所で裁くのには無理がある。
このため軍用の刑法と裁判所として軍法および軍法会議が置かれているが、自衛隊は前述の軍隊アレルギーや軍への忌避からそれが置かれていない。
(一応は自衛隊法が事実上の軍法代わりなのだが権限的には ゼロ と言ってもいいレベル)
死ぬ危険があるからと軍人が任務から逃亡されたら意味がないので、軍法で能動的な命令無視はとりあえず死刑にしとく?と居酒屋での生ビール感覚で死刑から審議スタートする。
諸外国では 一般の刑法では 死刑を廃止しても軍人の逃亡や怠慢はガンガン死刑にしているが
軍法が無い自衛隊では最高でも懲役止まりなのでヤバい任務は逃げた方がマシになってしまう。
今後自衛隊を正式な軍隊に近づけようとするならばこの辺の法整備も求められるだろう。


  • 創作活動への協力
自衛隊は装備の喪失を非常に気にする組織であり、それは映画撮影の協力にも表れている。主に洒落にならない航空自衛隊が気にしやすい。
平成ガメラの撮影時、監督は怪獣によるF-15の撃墜を撮影しようとしたが航空自衛隊は「それはちょっと…」と言い難色を示したため、
監督は脚本の書き直しを余儀なくされたことがあり、その結果怪獣に相対する人間の組織としては異例の強さを発揮することとなった。
陸戦装備以上に撃墜=死である航空装備では架空のものであっても縁起が悪すぎるので仕方がない面がある。
ゴジラの出現や戦国時代へのワープは現実ではまず起きないが、航空機の墜落は現実に起きており空自はそれで 仲間も、守るべき国民も殺しているのだ
ただし必ずしも協力しないわけではなく救難隊が主役となったアニメ『よみがえる空 -Rescue Wings-』ではF-15が墜落・殉職者も出ている。*17

基本的に陸海空を問わず、自衛隊は映画制作等には「かなり協力的」とされている。
無論どこの軍隊でもその手の活動に対しては(絶好の広報機会なので)基本協力的*18なのだが、自衛隊の場合は「通常訓練の一環として、『訓練活動などの撮影を許可している』」という形なので、なんと原則無料で協力してくれるのだ。
例えばこれがアメリカなどだときっちり実費を持っていかれるので、航空機やヘリを飛ばしたりするとストレートに製作費に跳ね返ってきてしまうのだが、自衛隊の場合はそういう心配はない。

逆にそのためか協力自体のハードルがちと高めで、特に「内容を事前精査し、積極的に口出しする」「折り合わない場合は協力を拒否する(途中キャンセルもある)」などといった点から、全面協力された映画は意外と少ない。
特に有名なのは「バトル・ロワイアル」シリーズと「皇帝のいない八月」などで、これらは一切の撮影協力が拒否されたことで知られている。
前者は作品内容が自衛隊のあり方とは真逆(国民に銃を向けた上、あまつさえ殺し合いを強制する)であるため*19、後者は自衛隊の一部過激分子が右翼大物政治家などと組んでクーデターを起こす内容のため当然といえば当然である*20

また映画版『戦国自衛隊』では「出演者を体験入隊させる」所までは協力を得られたものの、「自衛隊が戦争をする」・「途中で勝手に抜ける隊員が登場する」・「時代が違うとはいえ同じ日本人に銃を、それも積極的に向ける」等の描写が問題視されたため、戦車から迷彩服に至るまで一切を自主調達するハメになっている。
その結果生まれたレプリカの「61式戦車」、通称『角川61式』は映画ファンには有名な逸品となり、後に『ぼくらの七日間戦争』や2003年のドラマ『さとうきび畑の唄』に流用された。

またゴジラシリーズは平成の『ゴジラVSビオランテ』以来自衛隊とはラブラブの中だったが、それでも『ゴジラ2000 ミレニアム』では無断で改造戦車を出したために、しばらく自衛隊の協力が得られくなってしまったことがある。

  • Wargame: Red Dragon
冷戦期軍事RTSゲーム「Wargame: Red Dragon」では自衛隊が登場し勢力として使用可能。90年代の自衛隊の装備や編成がそのまま登場している。
特殊作戦群がまだ編成されていない時期なので、特殊部隊枠はKUTEIこと第一空挺団が務めている。
なお自衛隊自体が開発に協力しているわけではないようでスタッフは資料探しに苦心したとか。細かい間違いがあっても広い心で見るべきだろう。
また海外ゲーながら日本(自衛隊)ユニットにはちゃんとした日本語ボイスが用意されている。真偽は不明だがこのボイスには元自衛官が協力しているらしい。

デッキとしては必要なものは一通り揃っているが所々…というよりは割と色んな所に無視できない穴がある、といった感じ。偵察ヘリのような光る部分もあるが航空戦と歩兵がかなり深刻。砲兵も微妙。
しかし日韓連合デッキの「BlueDragon」は韓国が優秀な歩兵や砲兵や航空機などを持っているため、両者の穴を上手く埋めたバランスの良いデッキとなっている。
キャンペーンシナリオでは日本列島が舞台で自衛隊が登場する「ナロードナヤ山登れ」があり、その内容は「北方領土問題にしびれを切らしたソ連が日本に侵攻。大阪から東がソ連に占領され、自衛隊(と米軍と韓国海軍)が西日本で抵抗を続ける」というもの。
これだけでもかなりIF要素が強いが、プレイヤーはソ連側であり自衛隊を叩き潰して日本を占領するのが目的という(日本人にとっては特に)衝撃的なシナリオとなっている。
ゴジラシリーズ以外で自衛隊が敵のゲームはかなりレアかもしれない。
残念ながらこのシナリオでは自衛隊側ではプレイできないが、シナリオ「第二次朝鮮戦争」では韓国側の援軍として自衛隊の第一空挺団が登場し、使用できる。



追記・修正は彼ら自衛隊が血を流す日が来ないことを願いながらお願いします

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最終更新:2024年03月20日 11:47

*1 戦中はトップが天皇であり、実質的に政治による軍の掌握は機能していなかった。

*2 自衛隊は専守防衛であり、反撃しか許されていない。これが先制攻撃によって敵の攻撃を阻止することを防衛とみなすことも憲法上は不可能ではなくなることは有り得る。ただし、基本的に反撃しか許されないという方針は国際法で規定された内容でもある為、憲法上でどうこうというだけの話でもなかったりする

*3 各装備品を製造している企業はどうするという意見もあるが、日本の軍事産業はどちらかというと各企業の足を引っ張っている部門である。常に予算をかけ続ける必要があるのだが、市場が小さいためリターンが乏しい。もっとも技術が後退してしまうのは事実である。

*4 アメリカの共産主義封じ込め政策。名称は当時のアメリカ大統領「ハリー・S・トルーマン」に因む。それまで孤立主義的だったアメリカが、南北アメリカ大陸以外の諸地域への積極的介入と世界の紛争に介入することを世界に宣言した。

*5 なおクウェートは東日本大震災の際に原油500万バレル(約450億円相当)の無償提供を表明している。広告での日本外しについては主導権を持っていたアメリカの指示だった(アメリカが作った下書きをそのまま載せた)という説や、日本政府自身が海外派遣をしやすくする為の自作自演という陰謀論などが存在するが、真相はハッキリしていない。ただ前述の支援を考えればクウェートが日本に感謝していたことは疑いようが無いだろう。

*6 最終階級は海将補

*7 当時の日本円で1万円相当

*8 第1位はアメリカの約102兆6000億円で、仮想敵国である第2位の中国は約37兆5000億円、第5位のロシアは約8兆4400億円となっている。

*9 補正予算その他を含まない防衛費のみで算定した場合は約0.95%。

*10 旧陸軍将校の親睦団体「偕行社」は陸上自衛隊元幹部の親睦団体となっている

*11 閣議等で正式決定するまで、たとえ事実であろうと否定するのが政治家や官僚

*12 これは全世界初のA型による事故であり、パイロットも亡くなっている

*13 米国の次世代戦闘機と日本の次期戦闘機の開発・運用開始時期が折り合わなかった可能性が指摘されている

*14 英国は次世代戦闘機「テンペスト」(ユーロファイター・タイフーンの後継機)を開発中であった

*15 防衛医大看護科の技官コースのみ自宅通学可能。ただし自衛官の扱いではなく給料は自衛官コースより低くなる

*16 2018年に韓国海軍が自衛隊のP-1哨戒機に対して火器管制レーダーを照射した事件の際、自衛隊が公開した動画において、韓国海軍に対してP-1のクルーが「This is JAPAN NAVY」と名乗っている場面がある

*17 ただし実在機とは登録番号や部隊のコールサインが異なるなどあくまで架空扱いはしている

*18 例えば米海軍で、『トップガン』の公開後に一気に志願者が増えたのは有名な話である

*19 ただし2作目は終盤テロ組織に加担した元生徒たちを相手にしているので国民相手とは言い難い

*20 ちなみに「亡国のイージス」も「護衛艦が諸外国の工作員と内通して日本政府に反乱を起こす」という内容のため一時は「皇帝のいない八月」と同様の事例になりかけたが、こちらは脚本の修正など数々の折衝を重ねた結果自衛隊の撮影協力を得ることができた。

*21 なお主人公機は実在しない680号だったため僚機として登場機会が多く実在する320号機に施す気合の入れようだった