京極夏彦

登録日:2012/02/05(日) 20:09:01
更新日:2024/04/06 Sat 20:39:06
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■京極夏彦

「京極夏彦(きょうごくなつひこ)」は日本の小説家、意匠家。
他にも主に妖怪が絡むと様々なジャンルに顔を出す、出版界発の稀代のエンターティナーである。

1963年(昭和38年)3月26日生まれ。
北海道小樽市生まれ。
倶知安高校を卒業。
現在は関東に在住。
大沢オフィス所属。

幼い頃に水木しげるの啓示を受け、
作家となってからも師と仰いだ水木や、博物学者、作家の荒俣宏と共に所謂妖怪ブームの火付け役となった。


1994年に『姑獲鳥の夏』でデビュー。
『魍魎の匣』で推理作家協会長編賞受賞。
『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、『覘き小平次』で山本周五朗賞、
『後巷説百物語』で直木賞、『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞の各賞を受賞。


【略歴】

桑沢デザイン研究所を経て広告代理店に勤務したのち、デザイン会社に勤務(設立と書かれてる場合もある)。
周りがみぃんな残業している中、自分だけ仕事をしていないのを気に病み、
ワープロで10年程前に漫画として構想しながら断念したネタを手慰みに小説として書き始めたのがデビュー作『姑獲鳥の夏』であった。
あれよあれよと一千枚にも達し、何処の文学賞にも出せないそれを、
目の前にあった講談社ノベルズの某本の奥付けにて目にした連絡先に電話を入れ、分厚い原稿を送付した事が京極夏彦の誕生と相成った。

……因みに、この時点で幾つもの伝説を生んでおり、

●作者自身は小説を書くのが初めてだったので、相手にされない事を期待していた。
●読めるか解らないと返答しつつ、ハマってしまい2日で読了した編集者が著名作家の手の込んだ悪戯と疑った。
●第二、第三の京極夏彦の登場に備え、ページ数の制限を無くした文学賞「メフィスト賞」が設立される。

……と良く知られている物だけでも、如何に京極夏彦の登場が衝撃的だったのかが解る。

因みに、京極夏彦の作家名は仲間が付けたもので、
出されたアイディアの中でも「最も自分に馴染みが薄い名前」だったのが採用の理由であったとの事。

主な著書にデビュー作から始まる昭和初期を舞台にした一大ミステリー(?)の「妖怪シリーズ」。

師・水木しげるの呼び掛けに応え、荒俣宏と共に設立した『』誌から誕生した妖怪版必殺シリーズとも呼ぶべき「巷説百物語シリーズ」。

『巷説百物語』を生んだ、江戸時代の巷説怪談に題材を求めた「幽霊小説シリーズ」。

本格的ギャグ小説を目指すとの企画から描かれた『どすこい。』、更なるスピンオフの『南極。』。

妖怪研究と物語を両立させた冒険小説「豆腐小僧シリーズ」。

一般公募により集められたアイディアを元に描かれた近未来SF「ルー=ガルーシリーズ」……等々が知られている。

……この他、妖怪研究や対談本、水木しげる研究の本も手掛けている他、
不条理な世界観の現代小説数編も残しており、寧ろファンにはギャグ小説以上に珍しく感じられる所であろう。

著名作家でもあるにもかかわらず、現代小説『死ねばいいのに』を通常出版と同時にiPad用の電子ブックで早速出版する等、
常に先進的な行動をする事でも知られており、
ルー=ガルー2インクブス&スクブス』の発刊の際には、段階を置かずにいきなり4形態での同時出版と云う手法を執り業界を驚かせたとの事。

特に「妖怪シリーズ」に顕著であるが(て云うかそれだけ)、
出版される本が分厚い事で有名で、新書版が「辞典」や「レンガ本」呼ばわりされる事でも有名。

真偽不明の京極夏彦の文章量が長い事をネタにした噂まで飛び交っているが、
作者の名誉の為に言えば、京極夏彦は優れた短編や中編もちゃんと残している。

実際、近年では短編集である『○談』シリーズを意欲的に執筆しており、ホラーともミステリーとも言えない不条理な世界観を紡ぎ出していた。

また、本邦の民俗学、妖怪学の勃興に於いて重要な役目を果たした柳田國男の『遠野物語』のリブートに挑み、現代語や絵本として復活させている。


【評価】


デビュー当時の出版業界が綾辻行人ら「新本格派」の若手作家が活躍していた時期であった為に、
京極夏彦も当初はその列に加わる一人として業界には認識されていた。
因みに、当初は「ミステリ・ルネッサンス」と銘打たれたデビュー作『姑獲鳥の夏』の、
余りにミステリーの常識からはかけ離れたプロットへの業界内の評価は賛否両論だったらしい。
……しかし、この杞憂も肝心の読者が熱狂的に受け入れた事であっさりと解決。
前述の様に次作『魍魎の匣』は日本推理作家協会賞に選出され、京極夏彦は流行作家への道を歩む事になった。

現在では、作者本人が早々に否定していた様にミステリー作家といったカテゴリーには収まらない活躍をしている京極夏彦だが、
良く知られているのが本業の意匠家(デザイナー)らしく、目で「魅せる」文体を心がけている事であろう。

また、何よりも情報の分析、説明の論理的構成が上手く、それが多彩な文体を描ける秘訣なのだとも云える。

手許に本があるのなら確かめて欲しいが、新書版『狂骨の夢』以降の著作では、必ず見開きページで、
新書版『絡新婦の理』からは1ページで文章を区切り、読み易い様にとの作者自身の配慮が為されている。

また、耽美な作品の場合には文章の文字列を徐々に収束させたり、
逆に拡大させたりと云った視覚からのインパクトを狙った効果により更に印象を強める等、
デザイナー発の作家としての才能を惜しみなく発揮している。

デザイナーとして他作家の本の装丁も手掛けている他、元々が漫画家志望であっただけにイラストも得意。

特にファン必読の虚々実々の笑撃の妖怪対談本『妖怪馬鹿』では京極夏彦がネタに合わせてわざわざ、
楳○かずおや高橋○美子や、○星大二郎や水木しげるや鳥山石燕らの絵柄に似せて漫画を描き下ろしている。

この他、妖怪を題材にした舞台の脚本も数度手掛けている。

これら出版関係以外の仕事では、怪談『新耳袋』の著者二人と共に発起人となった怪談ライブ「怪談の怪」や、
自作のアニメ化や映画化の際の出演やプロデュースが有名。

特に声質は渋めの低音ながら善く通ると云う、
自身の生み出した二大ヒーロー京極堂や御行の又市にも通じる最高の評価を得ている。

京極夏彦が声優に初挑戦したのは『ゲゲゲの鬼太郎』(第4期)の『言霊使いの罠!』だが、
この回に於いて京極夏彦はファンの同人誌を原案に自らが演じるゲストキャラクター・一刻堂のデザインまで担当。
京極堂・中禅寺秋彦の名台詞「この世に不思議なものなどない」まで披露している。
……流石に、一刻堂が「憑物落とし」により鬼太郎達を追い詰める内容は児童ファンは置いてきぼりだったらしいが、
特に年長の世代に評価の高い第4期を代表するエピソードである事は間違いないだろう。

声優業以外にも声に関する仕事として、ナレーションや朗読、
更にはCDリリースやラジオのパーソナリティも経験済み。
所属事務所のボスである大沢在昌曰く「金にならない仕事」



【余談】


※大沢オフィス所属の著名作家3人(大沢在昌、京極夏彦、宮部みゆき)による「大極宮」としても活動。
対談(?)シリーズも人気である。


※トレードマークの「指ぬきグローブ」は小学生の頃から着用している。
因みに、当時の夢は格好良い坊さん。
デビュー直後に大沢在昌と対談した時点では、まだこの夢は諦めていなかったようだ。


※無類のテレビ好きで、寝る間を惜しんでテレビを見て得た知識を創作に活かしているらしい。
特に時代劇「必殺シリーズ」の大ファンとして有名。
あまりにも好き過ぎて「必殺シリーズ」のガイドブックの装丁まで手掛けてしまった。
後述のラジオでもシリーズについてそれはそれは熱く語り倒している。


西尾維新らメフィスト賞作家も、京極夏彦からの影響を公言する者が多い。


※作家の山田詠美と対談した際、自分の小説は下調べをせず過去に読んだ本の記憶を頼りに執筆していると答えている。
そのせいか『狂骨の夢』では心理学についての記述におかしな点があると、宝島社から刊行されたファン向けのムック本『僕たちの好きな京極夏彦』にて本職の心理学者から指摘を受けた事があった。
文庫化の際に上記のムック本で指摘された箇所を丸々修正した際には、
同じ心理学者から「間違いの指摘を真摯に受け止めてきちんと次に活かしている(要約)」と絶賛されていた。


※短時間睡眠体質、いわゆるショートスリーパーであり昔から2~3時間程度の睡眠で充分との事。
また痛みに対して強い耐性を持っており、
事務所のスタッフが足ツボを刺激されて悲鳴を上げる中、一人平然としていたという。
コロナウイルスのワクチンを複数回接種した際にも、一度も副反応は出なかったとの事。
北海道出身でありながら暑さに対しても非常に強く、大量のPCの排熱で40℃を超える室温となった書斎で仕事を続けていても平気。
その様子はルポマンガを描くために書斎を訪れたあの漫☆画太郎をも戦慄させている。
そんな京極夏彦だが2005年の春にドクターストップが掛かるレベルの体調不良を起こした際は、生まれて初めて8時間以上も眠ったという。


※『姑獲鳥の夏』の実写版を監督した実相寺昭雄の追悼番組に出演した際、
実相寺が手掛けた『ウルトラセブン』の登場キャラクターであるメトロン星人と共演している。
以来マブダチとの事。
ちなみに公式の映像でメトロン星人と一緒にちゃぶ台を挟んで語り合った数少ない人物の一人である。


※大量の本を所有する蔵書家としても有名で、地震対策として奥に向かって傾斜がある特注の本棚を愛用している。
その大量の蔵書は定期的に整理整頓を行っており、デビュー当初は本の整理整頓に必要なものは「愛と執念」であると公言していた。
ところが2000年代に入って以降のインタビューでは、「整理整頓に必要なのは執念。愛はいらないと気付いた」と断言している。
そこに愛はなかったわけだ。
ところがところが時は流れて令和。講演会にてかつてのように「本棚の整理に必要なのは愛と執念である」と答えている。
この十数年の間にどういった心境の変化があったのかは不明だが、どうやら愛をとりもどせたようである。


※Twitterにてモバマスの画像をアップすると近い構図の京極夏彦の画像が送られてくるというハッシュタグが盛り上がった事があったのだが、
途中で京極夏彦本人に捕捉され、どうした事か半ば公認状態となってしまった事がある。
公式でも『魍魎の匣』が長門有希の100冊にチョイスされたり、
同作の表紙が『NEWラブプラス』とのコラボ企画で期間限定で姉ヶ崎寧々に変更されたりと、美少女キャラとの絡みは意外と多かったりする。



【出演作品】

テレビアニメ
  • ゲゲゲの鬼太郎(第4シリーズ) 第101話「言霊使いの罠!」(一刻堂)
  • 京極夏彦 巷説百物語(京極亭)
  • 墓場鬼太郎 第10話「ブリガドーン」(トムポ)
  • 魍魎の匣 第12話「脳髄の事」(黒衣の男)

劇場版アニメ

実写作品

ラジオ番組



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