屍人荘の殺人

登録日:2021/01/26 (火) 15:23:30
更新日:2024/03/12 Tue 19:29:31
所要時間:約 39 分で読めます





※※※当記事はネタバレを含みます。未読者の方は必要に応じブラウザバックを願います※※※


「読んだことのないミステリを!」という一念で書き上げた作品がこのような栄誉を賜ったのですから、
本格ミステリとは私が思い描いていたよりもはるかに自由で懐の深いものなのだと実感しました。

今村昌弘 第27回鮎川哲也賞受賞の言葉より抜粋



屍人荘(しじんそう)の殺人』は、今村昌弘により2017年に執筆された長編推理小説。
密室!館!クローズドサークル!な王道かつ古典的な本格ミステリを大胆不敵な発想のもと現代を舞台に成立させた作品であり、
第27回鮎川哲也賞を審査員の満場一致で受賞。
「このミステリーがすごい!2018」「2017年版週刊文春ミステリーベスト10」「2018 本格ミステリ・ベスト10」の3つで第一位を獲得、「第18回本格ミステリ大賞」を受賞するなど、
デビュー作にして今村氏を2010年代における新本格派の代表格へと押し上げた快作である。

2019年には神木隆之介主演で割と設定改変されて映画化されたほか、
ミヨカワ将作画で「少年ジャンプ+」にてコミカライズ連載された。全4巻。
原作表紙絵は綾辻行人作品でお馴染みのイラストレーター遠田志帆が手掛ける。

シリーズ化され、2023年現在で続編が2冊出版されている。

【あらすじ】


神紅大学ミステリ愛好会会長にして「神紅のホームズ」を自称する明智恭介と、彼のブレーキ役にして唯一のミステリ愛好会会員葉村譲
二人は警察にも協力して難事件を解決してきた同大学の「探偵少女」剣崎比留子の誘いに応じ、
映画研究部の夏合宿に同行して映研OBの親が所有するペンション紫湛荘(しじんそう)を訪ねる。
しかし『今年の生贄は誰だ』との脅迫状を受けながらも強行されたその合宿は、
就職斡旋目当てに美人をOBに宛がうことを暗黙の目的としたものであり、一行には険悪な雰囲気が漂う。

そして肝試し中に巻き込まれた想像しえなかった事態の発生により一行は紫湛荘での立てこもりを余儀なくされる。
一夜明けたその時、部員の一人が密室で惨殺死体として発見。そしてそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった…



【紫湛荘】


本作の舞台。館と見取り図は本格ミステリの嗜み。
S県娑可安湖近隣の山の斜面を階段状に切り開いた平地に立つ、3階建ての洋風建築。田舎の小学校レベルとかなり立派な建物。駐車場は1段下の平地に備えてあり、ペンション本体とは鉄製の階段で行き来する。
ペンション本体は「横を向いた拳銃」に例えられる東―中央―南の雁行型。オーナーが別荘として使っていたものを会社の研修施設兼保養所として増改築したものであり、廊下の扉などにその名残が見える。
部屋の扉はカードキー式のオートロック+ドアガードで、壁のホルダーに差し込んで電気をつけるタイプ。ホルダーはキー裏面の磁気ストライプを読み込む高級なもので、別の部屋のカードならともかく無関係のカードでは電気が使えない。扉を開錠状態に保つにはドアガードを立てる必要あり。
エレベーターが定員4人の非常に小さなもの一つしかないため、行き来には東側端の階段も併用の必要あり。南側端には非常階段があるが、建物の外であり内側からしか非常扉は開けられない。

1階

建物中央部にある玄関正面から入るとガラス窓のはまったフロント、奥には裏手の庭に繋がるテラス。
左手はガラス張りの大窓で採光良好な広いロビー。南側には大浴場、東側には食堂と厨房を備える。フロント奥は管理人室。

2階

中央のラウンジには中世の戦を愛好するオーナーの意向で西洋の武具のコレクションが壁一面に並ぶ。テレビ台の脇に並ぶ1メートル大の九偉人のブロンズ像もあって極めて圧が強い。
南側2部屋、中央3部屋、東側3部屋の客室を備える。ラウンジと南廊下、東廊下はそれぞれ両側から施錠可能な扉で仕切られている。
部屋割りは南から201(剣崎)、202(高木)、203(星川)、204(立浪)、205(空室)、206(名張)、207(出目)、208(空室)。

3階

中央にはエレベーターホールの他、リネン室と屋上に繋がる非常用倉庫あり。
廊下の扉と客室の数は2階と同様。合宿の性質上、部屋割りにはOBが標的を同エリアに寄せる意向が透けて見える。
2階も同様だが、客室の壁は防音素材でできており隣室の音は聞こえない。一方、天井やドアは防音が施されていないため廊下やラウンジなどの音は割と聞こえてくる他、直上ないし直下の音が耳を澄ますと聞こえることも。
南から301(七宮)、302(下松)、303(明智)、304(重元)、305(進藤)、306(空室)、307(静原)、308(葉村)。







以下は重大なネタバレを含みます。






























誰一人として革命の結果を目にすることはできないだろうし、仮にそれが叶ったとしてもその時の彼らは意味を理解できはしまい。



「こいつはもう手遅れだった。殺さないといけない奴だったんだよ。」


「人を噛み殺すのはゾンビだけの特権か?」


「もういつゾンビが二階を占拠してもおかしくない。その前に現場を検証しておかなきゃ」


「人間並みの知性を持ったゾンビだなんて、本気ですか?」





食糧危機とゾンビ殺人者、複数の波濤がぶつかり打ち消し合う、不思議な平穏の中に俺たちは身を置いていた。

※※※「屍人荘の殺人」は本格ミステリです※※※






本作品は、クローズドサークルと化した館での連続殺人事件夏のペンションを舞台としたゾンビパニックホラーを組み合わせた全く新しいミステリ小説である。
実はミステリーとゾンビの組み合わせ自体は業界初ではないのは内緒だ!


……ゾンビ出しておいて本格ってなんだよ、と思われる方は絶対いらっしゃると思うのだが、
詳しくはリンク先項目見てもらうなりで調べてもらうとして、ごくごく簡単に言うと本格ミステリとは「作中情報で論理的に解くことができる」「トリックの推理に重点を置いたミステリ」というものなので、
「このミステリを読み解くには提示されたゾンビの概念が不可欠である」ならゾンビが出ても何も問題はない。
本作はこれを見事に成し遂げ、「明らかに邪道なのに物凄く王道ミステリ」という作品に仕上がっている。



【本作におけるゾンビ

S県娑可安湖近隣で実施された5万人規模のイベント、サベアロックフェスがバイオテロの標的となったことで誕生(?)した「動く死体」。めんどくさいことに五感以外での人間の探知能力を持っている節があり、明るく騒がしいロックフェス会場が起点にもかかわらず紫湛荘へと山を越えてやってきた。
人間の脳を乗っ取った細菌によって酸素循環を必要としなくなった「元人間」が動き回るものであり、
細菌の本能的指示でしか身体を動かせないため思考能力・学習能力は幼児レベルにも満たないうえ手足の連携が拙く走れない、歩くのも割と下手とゾンビとしては最低限レベルのスペック。
噛みつかれた者は確実に感染し、ゾンビへと変化するのはお約束通りだが、これは細菌の「繁殖行動」の一環であり、ゾンビの噛みつきは捕食ではない。このため、ある程度噛むと繁殖完了として次の感染対象を捜索する傾向がある模様。まぁそうでないと被害者が骨だけになっちゃうしね
とはいえ、脳破壊以外の攻撃をものともしない無尽蔵のスタミナを持つ存在僅か十数人しかいない紫湛荘の生存者を探知して人数と耐久力任せに執拗に襲ってくるのは十二分に脅威であり、生存者たちは基本的に時間稼ぎできる障害物の向こうに逃げ込む以外の対応策が存在しない。
総じてゾンビがいかに純粋に脅威かを堪能できるバランスと言えるだろう。
途中政府による公式発表があり、感染から発症まではおおよそ3~5時間ゾンビの体液から粘膜感染する毒性に耐えられないため蚊などを媒介としたベクター感染はしないことが判明した。

紫湛荘で手に入る武器で脳破壊を行える手段が限られている都合上、基本的に戦闘になった際は目を狙っての刺突だけが有効打



【登場人物】


実写映画版のキャストを併記。

主要人物

■葉村 譲(演:神木隆之介)
「カレーうどんは、本格推理ではありません」
「探偵っていうのは颯爽と事件に関わるから格好いいんですよ」

本作の主人公(ワトソン)。神紅大学経済学部1回生にして、ミステリ愛好会会員。
ミステリ好きだが同大学のミステリー研究会が極めてライト(婉曲表現)だったため入部を躊躇っていた折、
真のミステリ愛好家を探し求める明智に生まれて初めて奢ってもらい、学校非公認団体ミステリ愛好会に入会。以降とかく事件に首を突っ込みたがる明智のブレーキ役として振り回されている。コーヒーアレルギーで、ミステリ愛好会行きつけの喫茶店での注文はクリームソーダ。
中学生の頃に震災*1の被害にあっており、こめかみに残る当時の傷の影響と根暗な気質により陰気な顔がデフォ。当時「騒ぎ立ててもどうすることもできない惨事」を経験した影響により、非常事態においても起伏を見せない精神性を持つ。……表面的には。
貸切ペンションでの夏合宿(脅迫状付き)という事件フラグ、とかく衝突(含む明智の詮索)の絶えない人間関係、さらには自分にだけ妙に気安い剣崎からの「アプローチ」に翻弄されつつ紫湛荘の一日を過ごすが、
剣崎とペアを組んだ肝試し中に想像しえなかった事態=ゾンビと遭遇、以後一連の事件に精神を摺り削られることになる。



■明智 恭介(演:中村倫也)
「くっそう。なかなか理屈どおりには動かんものだな、人間というのは」
「ペンションと聞いてもう少し奇怪なロマン溢れる事件を期待していたんだが」

神紅大学理学部3回生にしてミステリ愛好会(総勢2名)会長、そして自称「神紅のホームズ」
上背のある体格とリムレス眼鏡が目印の謎と事件をこよなく愛する男。
飽くなき謎への欲求と「ヴァン・ダインや都筑道夫も知らんような連中」ことミステリ研究会への敵愾心から、学内のサークル・近辺の探偵事務所・交番に「ご入用の際は連絡を」と名刺を配り歩く奇人。
これでも事件の場では鋭い閃きを見せたり見せなかったりし、学内の事件をいくつか解決してきた実績の持ち主。結果的に大学内なら大抵の相手に(ある意味)顔が利く有名人だが、剣崎に対しては「名探偵」としての実績の差から一方的にコンプレックスを抱いていたため接触したことがなかった。
底抜けのアクティブ精神の持ち主であり、およそ物怖じするということがない。常々振り回されている葉村も何だかんだ彼のアクセルぶりに大いに救われていることを零している。
映研の行うペンション貸切の夏合宿にミステリの雰囲気を感じて参加を打診するも、三度に渡って断られていたところを剣崎にコンビで指名され、似合わないアロハシャツで紫湛荘へと到来。



■剣崎 比留子(演:浜辺美波)
「取引しましょう」「その理由を訊ねないこと。それが私からの交換条件です」
「単刀直入に言おう。私の助手になってよ。私には君が必要だ」

神紅大学文学部2回生。警察も手を焼く難事件に幾度も協力してきた「探偵少女」
150cmと少しの小柄な体格の佳麗な黒髪美少女で、横浜の名家のお嬢様。
明智が映画研究会の合宿に興味津々なことを聞きつけ、映研夏合宿の裏事情を開示しながら自らを加えての合宿への参加を打診する。
実績を重ねた「名探偵」というべき人物であるがミステリにはおよそ造詣がなく、探偵とミステリを不可分とみなしていた明智を大いに狼狽させた。
「殺害方法とかはあんまり気にならない」*2と述べ、そうせざるを得なかった理由(ホワイダニット)を現場から見出すことを重視する傾向があるが、よりにもよってゾンビに目下命を狙われている状況で、生還のための頭数を減らす殺人を強行するという不自然を前になかなか上手くいかず、ミステリマニアの意見を取り入れながらのトリック推理(ハウダニット)を模索していく。
思考を巡らせる際に髪の毛を弄る癖がある。基本は自分の髪先だが、他人のでも構わない。というか葉村の髪でやる方が冴えてくる。

沈着にして果断な「名探偵」として振る舞う一方、葉村に対してはやけに人懐っこくかつ無防備結果葉村は彼女が隠れ巨乳であることを知った




映画研究部夏合宿関係者


剣崎曰く「覚えやすい、まさしく名は体を表す」人々。合宿の裏事情の都合上、女性陣は美人揃い。


■進藤 歩(演:葉山奨之)
「僕らはその餌食ってわけだ」

神紅大学芸術学部3回生にして、映画研究部部長。
眼鏡で痩身、やや気弱なところがある「真面目そう」な男。
数少ない去年の夏合宿の参加者であり、脅迫状について部員に箝口令を敷くなどどこか後ろ暗さが窺える。
見た目とは裏腹に出来の悪いところがあり、コネ就職の機会を求めてOBに媚びるための合宿を強行。脅迫状の影響もあって部員が集まらず自分の彼女まで引っ張り出す姿は、参加したほぼ全ての女子に冷ややかな目で見られている。
初日夜のゾンビ襲来を生還するも、先に逃がした筈の星川が戻っておらず、錯乱状態で紫湛荘中を探し回る。
翌朝、施錠された扉に『ごちそうさま』とのメモが差し込まれていた自室ベランダにて、全身を食い荒らされ顔面は判別不能なほどに食いちぎられた姿で発見される。
七宮が動いた瞬間を見たと主張したため高木により頭部を串刺しにされるも、部屋の隅に『いただきます』とのメモが発見されたことにより、
「明らかにゾンビに襲われたようにしか見えないにもかかわらず、ゾンビの仕業と考えると密室とメモの存在が説明できない」という謎を残す。



■立浪 波流也(演:古川雄輝)
「二人ともビギナーってわけだ。一番楽しい時間だ」

映画研究部OB。オールバックに日焼けした肌の「サーファー系」二枚目。
見るからに遊び慣れた男で、他のOB二人がロクデナシ癖の強い性格な分まとめ役を担うことが多い。
散々不倫を繰り返したのちに間男と組んで夫の保険金殺人を行った母親の影響で人の愛情を信じることが出来ず、愛情を模索して交際を行っては破綻させる、の悪循環を繰り返す評価に困るお方。結果去年の合宿で手を出した相手は大学を辞めてしまった。
ゾンビ襲来後は逃げ場を確保するため空き部屋のドアガードを立てて開錠状態に保つことを提案するなど積極的に生還のための行動を模索。いざゾンビに襲われた際に自室を開錠するのもロスだとして外出中の自室も同様に開け放しにすることを提案し自ら実行するが、こちらは女性陣に全く賛同を得られなかった。
一方で私物のナイフを隠し持ち、就寝時にオートロックのこじ開け対策*3を行うなど殺人者への警戒を独自に行っていたが、三日目早朝、血の海となったエレベーターのカゴの中で全身をゾンビに食いちぎられ、引きずり回され、鎚矛(メイス)で完膚なきまでに粉砕された頭部に『あと一人。必ず喰いに行く』とのメモを差し込まれた常軌を逸した死体として発見される。
2階がゾンビに侵攻される中での決死の現場検証の結果エレベーターでゾンビで一杯の1階に送り込まれて殺害されたことが確認されるも、
「どうやって部屋から立浪を連れ出したのか」「2階にカゴを戻す際、乗り込んできたゾンビに襲われるリスク」「ゾンビに噛ませるなら南エリアの扉まで退避できる非常扉側を使えば十分であり、リスクを負ってまでエレベーターを使う理由が不明」など多くの謎を残す。



■七宮 兼光(演:柄本時生)
「俺の部屋に一歩も近づくな。来たら撃ち殺してやる!いいな、警告はしたぞ!」

映画研究部OB。映像制作会社の社長である紫湛荘オーナーを父に持つ「七光りのボンボン」。
小柄で整った顔立ちだが、顔のパーツが小さく色白のため仮面を被っているような印象を与える。
代々の部長に圧力をかけ、女性部員に手を出す舞台として紫湛荘を合宿所として提供してきたOB連中の主犯。去年手を出した相手は睡眠薬を飲んで自殺しており、脅迫状の言うところの生贄はほぼこの件絡みだろうと周囲からは疑われている。
非常に我儘かつ短気で極端な潔癖症とある意味では名張以上の神経質。
やたらこめかみを叩いたり目薬をさしたりと非常に忙しない。目薬が自分も使っているコンタクトレンズ用であることから、静原はこの奇行を「過矯正が原因の頭痛やストレスの影響」と見立てている。
肝試し中のゾンビ襲来を下松を置き去りにする形で生還して以降部屋に籠りがちであったが、立浪殺しの際のメッセージから自分が狙われていることを確信し、上記の末路が察される捨て台詞と共にボウガンを携えて籠城。
しかし自室目前の3階非常扉が破られたにもかかわらず一切の反応を返さず、屋上からの観測により苦悶に身を捩らせながら死亡済みであったことが確認された。



■名張 純江(演:佐久間由衣)
「あーーっははは!はぁーはっはっは!」

神紅大学芸術学部2回生。心霊動画の撮影で星川と二人一役を担当する演劇部員。
鋭い空気を纏った理知的な美人だが、車に酔う・蜥蜴がダメ・睡眠導入剤なしでは眠れないと非常に「ナーバス」。
至極当然の結果として一連の事態に神経を尖らせる一方、献身的に全員の生還を目指して尽力する管野の姿に徐々に心惹かれていく。



■高木 凛(演:ふせえり)
「蹴り潰す」

神紅大学経済学部3回生。映研部員にして、数少ない去年の夏合宿参加者。
高身長でボーイッシュなショートヘア、まさしく「凛とした」美人の姉御肌。
去年の事情を理解しているだけに、可愛がっている後輩の静原が進藤に参加を強要されるのを見逃せず参加。身内だけの集まりに防犯ブザーを持参し静原にも持参させるなど、OBを全く信用していない。
三日目の午前4時半頃、2階非常扉が破壊されたことで隣の部屋の剣崎と共にそれぞれ自室前をゾンビに包囲されるも、
犯人から二人それぞれにかけられた内線電話によって異常事態が通達されたこともあり、
何とか剣崎ともども上階から縄梯子で救助される。

映画版では学生ではなく、ゾンビ発生後に紫湛荘に避難してくるおばちゃんとなっている。


■静原 美冬(演:山田杏奈)
「赤いからちょうどいいじゃないですか」

神紅大学医学部1回生。大人しく、小柄で「もの静か」な清楚系美少女。
部長である進藤の要請を断り切れずに参加した映研部員。
仲の良い高木と常々行動を共にしている。これに関しては合宿開始前から高木が彼女の身を案じていたところも大きいが。

映画版では紫湛荘の招待客ではなく、ロックフェスの客である。落とした携帯電話を拾った七宮と立浪にナンパされた後、ゾンビが発生すると、紫湛荘に避難してきた。


■重元 充(演:矢本悠馬)
「人々はゾンビに自分のエゴや心象を投影するんだよ」

神紅大学理学部2回生。撮影機器類を担当する映研部員。
縁の太い眼鏡をかけた「肥満気味」の男。コーラ以外を飲もうとせず、500ミリコーラを1ダース持ってきた。
ゾンビに襲われた夜中にゾンビ映画を見て過ごせる筋金入りのゾンビマニアであり、一行を襲う想像しえなかった事態ゾンビの襲来と超速理解して即応。皆に「噛まれたら終わり」「頭部破壊以外は無意味」のゾンビものの鉄則を伝授する。
以後も実際に発生したゾンビの観察と考察に余念がなく、周囲からは辟易とされながらも異常事態を乗り切り受け止める方策として彼の知識が応用されていく。



■管野 唯人(演:池田鉄洋)
「でも夏とレジャーと若者といえば、僕はミステリよりパニックホラーを思い浮かべますけどね」

紫湛荘の「管理人」。30前後の誠実そうな雰囲気の男。
以前の勤め先の倒産によりツテを頼って去年冬から勤めている人物であり、去年の夏合宿の事情は知らない。
ゾンビ襲来以後も年長者として、管理人として全員の生還を目指して心を配り1時間ごとのバリケード・非常扉の点検を買って出るなど奮闘するが、全員にコーヒーを用意する気配りをコーヒーメーカーに睡眠薬を仕込むという形で犯人に利用され、結果的に2階非常扉からのゾンビ侵攻を看過するというピンチを招くことになる。
剣崎からの救援要請の内線電話を受けたタイミングが推定犯人が高木に内線電話をかけていたタイミングと重なっていたため、高浪殺しにおいて数少ないアリバイ持ち。



■星川 麗花(演:福本莉子)
「歩、心配ないって言ってたよね。あれで心配ないって本気で思うわけ?」

神紅大学芸術学部3回生。恋人である進藤に請われて撮影に参加する演劇部員。
緩くウェーブのかかった栗色の髪の、愛嬌に満ちたアイドル系美少女。「まさしく美人にしか許されない名前」「正直進藤には高嶺の花」
撮影現場である廃ホテルを歩くのに向かないサンダルで来てしまった剣崎のために、「どうせ自分は幽霊役の都合上裸足だから」と替えがあるわけでもないのにパンプスを貸し出した。
女性参加者狙いを大っぴらにするOBの姿に不安が隠せず、進藤との諍いが目立つようになっていく。
肝試し中に進藤と共にゾンビと遭遇し、進藤曰く「自分が囮になって逃がした」とのことだが、
ついぞ紫湛荘にその姿が現れることはなく、完全に消息を絶った。



■下松 孝子(演:大関れいか)
「先輩の機嫌を取ろうと必死なのよ。まあ所詮男だし、アドバンテージはこっちにあるけど」

神紅大学社会学部3回生にして映研部員。金髪巨乳のギャル系美女。
心霊動画の撮影という建前の夏合宿の実態がコネ就職をエサにした七宮らの女漁りであることを承知の上で、自ら女の武器を使って就職を分捕りに来た中々に「したたか」なお人。
非常に明るく面倒見もよし、七宮への取り入りも順調に進んで合宿を誰より楽しんでいた女性であったが、
七宮曰く肝試しで向かった神社にてゾンビに群がられて喰われたとのこと。
ゾンビパニックに登場するにはあまりにも存在が死亡フラグだった感は否めない。



■出目 飛雄(演:塚地武雅)
「こっちは朝からずっと女の子を待ってんのにさぁ、先に到着したのはデブ男で吐きそうになったぜ」

映画研究部OB。ギョロついて間が離れている「飛び出た目」とモヒカン風の髪型の、魚類を思わせる風貌の男。
OB連中の中でも一段軽い扱いを受けており、その反動故か非常に高圧的。
酒が入ると素行が輪をかけて悪くなる問題人物であり、去年夜這いを目論んで大いに顰蹙を買ったにもかかわらず今回の合宿でも名張に絡んでトラブルを起こし、罰として一人で肝試しの脅かし役を担うことになる。
バーベキュー中の煙を避けるため葉村が置いておいた高校入学祝いの時計をくすねており、葉村は後で何としても返してもらわねばと考えていたが、肝試しのゴール地点となる神社でゾンビに貪られているのが七宮により発見される。

映画版ではOBではなく、ゾンビ発生後に紫湛荘に避難してくる関西弁の男性となっている。

その他

■浜坂 智教
これはパンドラの匣というより、戸棚だ。かつて班目機関と呼ばれた組織の残した戸棚。

儀宣大学生物学准教授にして、サベアロックフェスで発生したバイオテロ=ゾンビ発生の主犯。
既に公安により解体済みの研究機関「班目機関」に所属していた研究者であり、20年の歳月を費やした研究成果を世間に知らしめるべく熱狂状態のロックフェスにて秘密裡に観客をゾンビウイルスに感染させた。
実行犯らと共に自らにもゾンビウイルスを投与したため本人は恐らく死亡したと思われる。拠点にしていた廃ホテルに暗号化された手帳を残しており、これは撮影現場として映研一行が廃ホテルを訪れた際に葉村の猛抗議を無視して重元に回収され、バイオテロ首謀者としての「マダラメ機関」(MADARAME org.)の存在を伝えることになる。



■班目 栄龍
岡山の資産家であり、「班目機関」の創設者。
登場人物紹介に名を連ねているが、本人は登場しない。



【屍人荘】

くそったれ。これじゃ紫湛荘というより屍人荘じゃないか。

初日夜のゾンビ襲来を受けて生存者が籠城態勢を整えたのちの紫湛荘。洋館とバリケードはゾンビパニックの嗜み。
あくまで作中での扱いは紫湛荘であり、屍人荘と呼称されるのは引用した葉村のモノローグのみである。
幸運なことに客室も含めて外開きの扉が多いことからゾンビの体当たりに短時間なら耐えられることを期待したうえで、封鎖が破られた際は「適宜廊下扉を施錠することで防壁とする」「逃走困難の場合は内線電話で連絡を取った上で部屋で待機し、直上の部屋からの救助を待つ」との方針がとられる。
葉村が限界まで行方不明者の荷物利用を避けるよう提案したこともあり、基本的に使用者のいた部屋はそのまま放置状態。





以下、物語の核心に迫るネタバレ注意!
































「ここで罪を暴き、殺人者を名指ししたところでどうなるというんですか。私たちはこれから力を合わせて生き残らなければならないのに。犯人の検挙は私たちが救助された後、警察がやってくれるはずです」

「いいえ。私たちには知る権利があるはずです。責める権利があるはずです。どんな理由があれ犯人は三人もの命を奪ったのですから」









「立て主さんの記事を追記修正して。できたらちゅーしてあげる」
「うええっ」情けない声が漏れた。
記事って、このぐちゃぐちゃの状態のを?いや、こんなことを言っては立て主に失礼かもしれないが、見えちゃいけないものがたくさん見えてしまっているこれは触っていいものじゃない。


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最終更新:2024年03月12日 19:29

*1 明言されていないが、執筆年を作中の現在と対応させた場合のタイミングと、作中で説明される彼の被災描写から、ほぼ東日本大震災と思われる

*2 現に事件が発生している以上「上手くやれる方法があった」事実は変わらないので、不可能だ無理だと問題視しても事件解決は進展しない、程度の意味合い

*3 ドアの隙間からドアノブの高さに合わせたL字型の針金を差し込み、ノブを外から回すことでドアを開ける方法。立浪は「ドアノブの下に障害物を貼り付ける」ことで対策した

*4 高木が犯人で嘘をついている場合などが在り得るため、この履歴=高木の主張する「犯人からの電話」の証明とはならない。どちらにしてもあくまで第三者として通話の錯綜に絡んだ管野のアリバイは成立する

*5 置いていった鍵が自分の部屋のものでなかった可能性は、唯一使用可能な進藤の部屋の電気が付きっぱなしだった=進藤の鍵は抜き取られていないことにより否定される