ミスリード(手法)

登録日:2011/02/01(火) 13:37:09
更新日:2024/02/15 Thu 17:31:23
所要時間:約 6 分で読めます




ミスリード(mislead)とは、人に意図的に誤解を与えたり、間違った方向に誘導する手法のこと。
翻って、新聞や雑誌などで見出しと内容が大きく異なることもミスリードと言う。
後者は、東スポの「○○か!?」見出しや、いかがでしたかブログなどがわかりやすい例になるだろう。

ちなみにmisreadだと「誤解する」「読み違える」と受け手側の意味になるので注意が必要。

概要

基本的には、
  • 情報の一部を意図的に省く
  • 情報の一部を強調する
というのが主な手法になるだろう。

ここで気をつけないといけないのは、「嘘をつかない」ということである。
嘘をついては、単に虚偽の情報で人を騙しているだけであって、ミスリードとは言えない。

具体例

「A知事の任期中に、この県は5万人もの人間が失業した!!」

Bさん「いやぁ、100円くじを買ったら1万円当たりましてね。そりゃもう最高の気分でしたよ」

さて、諸君は以上の台詞からA知事とBさんをどう思っただろうか?

◆A知事=無能?
◆Bさん=幸運の持ち主?

だが、もしこの台詞の裏に、

◆A知事の任期中5万人が失業したが、15万人が職を得た。
◆A知事の任期中に大地震が発生して倒産した企業が続出した。

◆Bさんは100円くじを200枚買っていた。
◆当選直後に宝くじを紛失、盗難で失って賞金を得られなかった。
◆当選したという噂を聞きつけて友人達がBさんにタカってきたためにかえって大損になった。

……などの、語られていない真実があったらどうだろう?
A知事は必ずしも無能ではないのかもしれないし、Bさんは幸運どころか不運かもしれない。

似た概念

・燻製ニシンの虚偽(Red herring)

本当に重要な情報から目をそらさせるための技法のこと。
犯人ではない怪しい人物、やけに強調される関係ない事象など。
ミスリードの一部として使われることもある。
現実でも怨恨などで殺した相手の財布を持ち去ったり(もちろんすぐ捨てる)部屋をあさったふりをして、
「強盗に出くわして殺された」と見せるミスリードをたくらむ犯人は割といる。

・論点相違の虚偽(Ignoratio elenchi)

本質とは関係のない論点を持ち出すことで、関係のない本質を肯定・否定しようとすること。
(例)
「ゲームの違法コピーで自分が逮捕されるのはおかしい。同じように違法コピーを持っている人間はたくさんいるからだ」
(後者が事実だとしても、違法コピーが犯罪なのは変わらないので、逮捕されるのは何もおかしくない)

・藁人形論法(Straw man)

相手の意見をわざと歪め、それに対して反論する詭弁の手法のこと。
(例)
A「男女の賃金に格差があるのは問題だ。男性と同じ仕事をしているのに賃金に差異があるなら是正するべきだ」
B「女性だけを優遇してろくに仕事もしなくても高給取りにするなど許されない! はい論破!」
(Bの主張が間違いとは言えないが、そもそもAは労働時間と賃金の違和感を指摘しているだけであり、「女性を優遇すべき」とは主張していない

創作物における手法

アニメ等では過去に起きた真実の一部を抜き出して見せる事で特定の人物を悪人に仕立て上げ、
読者や視聴者に「こいつはとんでもない悪党だ」と思わせておいて、後に抜き出した真実をはめ込んだものを見せることで、
それが勘違いであったと気づかせるみたいなパターンで用いられる。

今川泰宏版『ジャイアントロボ』の「バシュタールの惨劇」の真相には誰もが驚いた事だろう。

だが、如何せん扱いが難しいのかあまり使われない。
なにしろ最初の印象が強すぎると仮に後に真実を告げたとしても『後付け』とか『こいつはこんなキャラじゃない』とか言われてしまうし、
明らかに理不尽な真実を後で告げると読者や視聴者が理解できずに失望しかねない。
割と王道なので、A「俺がBを殺した」→Aさんは殺人犯?!→Aは仲間のBを救出できなかっただけ。などがあるが、これも「なんでそれで殺した殺したうじうじ引きずり続けるんだ」と非難されやすい。

小説では主にミステリーなどで、読者を惑わせる手法として使用される。
もちろん、真実につながる情報も本文には記載されているのだが、その部分はさらっと流され、一方で関係の無いことを強調して書くなど……、すなわち燻製ニシンの虚偽の部分で説明した手を使うことが多い。
これにより、読者は誰が犯人なのかわかりにくくなるのである。

(例)
探偵「その時、あなたはどこでなにをしていましたか?」
怪しい人A「そ、それは……、言えねぇ!!」

これがミスリードの場合は、Aは犯人をかばおうとしている(Aが犯人だと思っていた人物は実は犯人ではない、という二重のミスリードの場合も多い)、または事件には関係無い別の犯罪に関わっていたり、人に言えないこと(逢引など)をしていた……という展開が定番だろう。

小説版「金田一少年の事件簿 電脳山荘殺人事件」は、巧くこれを応用している。

また、ミステリーで犯人は犯人だがめちゃくちゃ目立つ格好や奇怪な殺人をして「頭のおかしい人」と思わせ、
実際は金や怨恨というオーソドックスな動機だったりするのはもはや王道のレベル。

非ミステリーでも機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズにおいても主要キャラクターの専用機を出すことで、
そのキャラクターが専用機に乗って前線に立つという視聴者の先入観を利用したミスリードを応用したことがスタッフインタビューで語られている。


海外では、ダンブルドア殺害時のスネイプの会話が例にあがるだろう。

また、これが大規模なものになると、それ自体が読者を騙すトリックの一部とされ、叙述トリックと呼ばれる。
叙述トリックの場合は、騙されるのは読者だけで、作中の人物は特に騙されていないことが多い。

叙述トリックはミステリーに留まらず小話やギャグの一種として扱われることもある。
一見エロく見えるが、最後まで読むと全くエロくない健全な会話だった……というネタを見たことのあるアニヲタ諸氏もいると思うが、読者を騙すという意味ではそれも叙述トリックである。





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最終更新:2024年02月15日 17:31