ドクササコ

登録日:2012/04/24(火) 13:59:58
更新日:2024/01/27 Sat 02:30:10
所要時間:約 10 分で読めます




ドクササコは日本原産の毒キノコ。それも凄まじい猛毒を持つ。

キシメジ科カヤタケ属に属する見た目は茶褐色で地味、他のカヤタケ属との差もなく、香りが良く口当たりも悪くはない。ただ、美味くはないとされる。

食感や味の情報が残されているのはその毒が遅効性であるため。加えて、このドクササコは致死性がないことでも知られている。
毒キノコにはカエンタケ等のように『即、死有るのみ』のといった強烈な致死毒を持つものも多く、「一本なら食べても大丈夫」なんて言われるベニテングタケですら致死毒のアマトキシンを含んでいるというのに…

笹子の名がしめす通り竹藪に生える為、一時期はヤブシメジと言う表記がよく見られたが、竹藪に生える他キノコもあることや、何よりも危険を周知させるためか、昭和末辺りにドクササコという名称が周知され、それ以降はこの名で呼ばれている。






では教育してやろう



本当のキノコ中毒の


恐ろしさというものを!!!!







症状

ドクササコの中毒は食後4、5日後に下痢、嘔吐という毒キノコ誤食ではあるあるな基本的な症状から始まる。

やがて手足がしびれ、手、足、鼻、耳さらに外性器…と全身の「末端部分」がまるで火傷したかのように真っ赤に腫れ上がり、焼けた火箸をぶっ刺され続けているような痛みが全身を襲う。

水膨れと同じように患部を水に浸すことで痛みが多少和らぐが、水から離せば痛みがより悪化
症状が酷い時には末梢部が壊死するとか、人の歩いた時の風が当たっただけで全身を抉られるような激痛が襲うといわれる。

そしてその痛みが24時間休みなく、一ヶ月もの長きにわたり続く…。

それでもこの毒自体に確実に命を奪うような作用はないらしく、「あえて殺さない」とでも言わんばかり。
その毒性の極悪さからヤケドキンジゴクモタシとも呼ばれている。
実際に消化器系や循環器系へのダメージが基本的には発生しないので、血圧や脈拍及び白血球数なども変化しない(ただし因果関係は不明ながら消化器からの出血事例はあるらしい)

治療法

解毒法は無い。
キノコ中毒にはありがちな事だが、複数の神経毒を持ち合わせるこいつには治療法がない。そもそも体内でどのように作用しているのかがはっきり解明されていないのだ。
故にキノコ中毒では多くの場合、「対症療法を施して回復を待つ」という手段に頼ることになるのだが…
こいつの毒が齎すのは末梢部分の腫れと無限とも思える長期に渡る激痛であり、それを完全に止める手段も実質的には存在しないのだ。

最も強力な鎮痛剤であるアスピリンやモルヒネですら効果がなく、それらの麻酔薬を直接脊髄等に打ち込む神経ブロック*1でようやく軽減できる。

そして問題はそれらを使ってさえ痛みを完全に止められず「軽減」するに留まり、症状が重篤になれば常人はそうそう耐えられないこと。
実際に、

  • 水に浸してふやけた患部からの感染症などの合併症で死亡
  • 長きに渡る激痛で精神をすり減らし、食欲が落ちたりした末の衰弱死
  • 激痛によるショック死
  • 長きに渡る激痛に耐えきれず、自殺

といった具合で、直接的な死因とはならない非致死性の毒キノコの中では異例の死亡率の高さを誇る。
当然ながら食べた量・年齢・体重・体質などによっても変わるため、ここまでの事態にはならない場合も多々ある。程度が違うだけで苦しむことには変わりないが…

まあ、現代日本では整形外科ではなく、早めに神経外科に通えた場合、少なくとも感染症で死ぬケースはほとんどないと思われる。
ただこの痛みを乗り越えても、痺れが収まるまでに更に数か月、中毒が収まっても重い後遺症が残るという。

そして厄介なことに、多くの毒キノコと違い食ってから症状が出始めるまでがやたら遅い。
初期症状が出るのでさえ4~5日ぐらいかかるので、まさかキノコが原因でこうなったとは思わず原因の特定が遅れてしまいがちだし、微量摂取によるいわゆる「毒見」も困難である。
ついでに言うと毒キノコ症状の対処として一般的な胃洗浄もこの発症の遅さでは意味がない。

特徴

食用キノコ選別の忌避要素、見た目が派手ではない、縦に裂ける、香りがよく食べやすい、虫が食べる、竹林に生える*2…………要するに猛毒を有する割にとにかく地味。
2004年まで可食とされたスギヒラタケと似たような経緯だが、あちらはとても美味しいので、東北、北陸、中部地方を中心に広く食べられ、被害が続出していた。また、見た目が派手で生息場所も針葉樹の倒木や古株といった分かりやすさで、毒キノコと簡単に警戒出来る。

まさしく悪魔のようなキノコだが毒があるとわかったのは大正~明治時代と割と最近*3だが、このキノコによるものと思われる中毒はそれ以前から発生していて、明治時代にもそれらしき事件が記録されていた。
しかし、医療も発達していない明治~昭和時代辺りの死亡例は危険性が周知徹底されていない頃のもので、しかも前述の通り発症まで時間がかかることもあってドクササコと断定しているケースは少なく、「秋口に発生する謎の風土病やリウマチ、或いは祟りや呪いの類」だと思われていた模様。
しかもドクササコの毒素は水溶性で、数時間も水に浸していればそれまで無色透明だった水がドクササコの毒が溶け出して褐色になっていたという実験結果が残っている。そのため、ドクササコを誤って食べてしまっても症状が出ても軽く済んだり、むしろ出なかった例もあったという(奥井真司『毒草大百科』)。


中毒者が相次いだ原因は、地味な上に一見可食菌っぽい、発症までの長いラグ、全身が腫れ上がるという毒物全体ですらあまり見られない毒性とドクササコを結びつけにくいこと、その悉くを回収したためである。

もちろんこの毒以外は地味な特徴のせいで現代においても中毒者が出ている。
ちなみに味の方は可もなく不可もないという感じであるらしい。子実体が一か所に沢山確認できるケースもあることから手軽に数を集めやすく、その点も現代で中毒者が出ないわけではない理由となっている。


キノコ全体として見れば、地味でも有毒であるものは珍しくもないので、素人はキノコに手を出さない方が無難である。

余談だが人間以外(ラットや鶏、カエルなど)が食べた場合は上記のような症状はよほど特殊な条件でなければ発動せず、鶏の場合はかなりの量を継続的に与えればいずれ死ぬという感じ。
致死的毒性を示すのはラット、カエル、マウス、モルモットだが、それ以外では症状自体が出ないことも。




もしあなたがキノコを食べたあと全身が腫れ上がるような事があればちゃんと神経外科にいきましょう

勿論それから一ヶ月生き延びられるかはあなた次第ですが




追記・修正は一ヶ月生き延びた方がお願いします

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最終更新:2024年01月27日 02:30

*1 モルヒネはヘロインの原料となる超強力な麻薬であり、神経ブロックは「痛みが抑えられないなら、伝達を止めればいいじゃない」という発想

*2 厳密にはそこまでじめっとしていなかったり、汚く見えない場所

*3 厳密には新種として分類された時期