手榴弾

登録日:2013/02/02(土)11:56:31
更新日:2024/04/09 Tue 01:33:40
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概要


手榴弾(しゅりゅうだん、てりゅうだん)とは主に手で投げて使う小型の爆弾
手投げ弾や擲弾(てきだん)とも。*1

小型で取り回しやすく、かつ安価で殺傷能力が高い為、現代歩兵の基本装備の一つとなっている。
雷管と爆薬を内部に収めた構造をしており、密閉されているので水中でも爆発する。


用途


基本用途は投げて目標を攻撃するという単純なもの。
目標とは基本的に人間だが、戦車のような装甲目標であることも。
最も先述の通り手榴弾は爆発自体ではなく、生成される破片によって攻撃するので装甲貫徹能力はほとんどない。
履帯や車輪の破壊、ハッチに投げ込んで乗員を殺傷する等工夫が必要になる。
炸薬の種類や量を工夫した専用のものも存在するが、結局のところ”人力で投射する”という構造状限界が多く、
第二次世界大戦時にパンツァーファウストやバズーカが出現すると対装甲兵器としては急速に廃れた。

また、ブービートラップに利用することも多かった。
木々の間に張ったワイヤーと連動させたり、死体に仕掛けて死体を回収する兵員に二次被害を食らわせたり多種多様。この場合、即座に爆発させるためにピンを抜いてレバーを固定させることも。
市街戦では「戦利品」となるものに仕掛けられる事も多いので、民間人へ被害が及ぶことがある。
CCWC*2、オタワ条約によって規制されているため、批准している国は公的には使用できない。

歴史


元を辿れば熾烈な塹壕戦が繰り返された第一次世界大戦に遡り、その塹壕の掘削の為に使われていたダイナマイトをそのまま火を着けて相手側の塹壕へ投げ込んでいたという急場の攻撃手段が始まりであったとされる。
それが思った以上に有効な場面を何度も見せ付けた事からやがてダイナマイトを投げやすくするために木の棒などに括り付ける、更にはその数を増やして破壊力を上げるといった工夫がされていき、そうして「兵士が手に持って投げる爆弾」として各国が手榴弾の開発をし始める切っ掛けになっていったという。
イギリスでは前衛に進んで手榴弾を投げる榴弾兵は体力と勇敢さに長ける精鋭として英雄視された。

形状


外観は球状、筒状、パイナップル状の弾体に安全ピンや安全レバーといった装置が取り付けられている。
パイナップルという俗称が有名だが、パイナップルを想起させる溝は効果が限定的なことが判明しており、後継としてアメリカ軍に採用されている「レモン」「アップル」はツルツルである。
ドイツやソ連、日本では木の柄の先端に炸薬が取り付けられた柄付手榴弾が開発された。小柄な日本人には投げやすかったようだが現代では見られないあたりお察し

種類


爆発物を投擲するという単純なコンセプトの兵器なので、様々な発展形が存在する。

破片手榴弾

内部の爆薬によって弾殻の破片を飛ばして殺傷する。最も基本的な手榴弾で単に手榴弾と言われるものはまずこれのこと。

発煙手榴弾

発火装置によって内部の薬剤に点火し発煙させる。煙幕による敵のかく乱に使われる。
基本的には白い煙を出すが、派手な色付きのものは航空支援への座標マーキングなどに使われる。
レノックス「オレンジの煙ってこれか?

焼夷手榴弾

リンの発火反応やアルミニウムの酸化還元反応などで生じる燃焼を利用する。

音響閃光手榴弾

マグネシウムを主とした炸薬から生じる爆音と閃光によって対象を一時的に無力化させる。非致死性なので人質救出や特殊戦に使われる。
スタングレネード、フラッシュバンという呼び方の方が認知度が高いか。

ガス手榴弾

塩素ガス、マスタードガス、サリンに代表される致死性の液体を充填したもの。吸引した場合はもちろん、皮膚に付着しただけでも危険なガスもある。
第一次世界大戦時、塹壕を突破するために使用された。
1925年署名のジュネーブ議定書によって使用が制限されたが、締結国以外には使用できるなど穴が多かった。
1993年署名のCWCによって署名国は全廃が義務付けられている。

催涙手榴弾

非致死性の催涙剤によって落涙などを引き起こし、対象を無力化する。主に警察機構による暴徒の鎮圧で見られる。
広義では化学兵器にあたるのだが、上記のCWCには
「国内の暴動の鎮圧を含む法の執行のための目的」に使用するのは禁止しないと、明確な除外規定がある。


消火手榴弾

内部の薬剤が火災熱に反応することによりガス化し、窒息消火させる。発火装置が付いていないので手榴弾と呼べるかは怪しいところ。
日本では大戦時に空襲対策として研究が進んだが、屋外では使用できないなど制限が多く、普及は進まなかった。現代では生産はあるものの、消火手段として主流ではない。

収束手榴弾

第二次世界大戦時ドイツが使用した応急的対戦車手榴弾。1個の柄付手榴弾の周囲に柄と雷管を外した柄付手榴弾を6個括り付けたもの。これで威力は7倍だよ!
なお重いので投擲距離はお察しの上、別に装甲を貫通できるわけでもなかった。装甲板の脱落くらいは期待できたようだが。


対処法


基本的には逃げることが重要。付近に障害物があれば良いが、ない場合はとにかく全力で遠ざかる。
投げ返す、蹴り飛ばすなど絶対に触ってはいけない。

前述の通り危険なのは手榴弾の破片である。破片は爆発地点から半球状に散らばるのだから、
一瞬だけ全力で逃げ、爆発地点に足を向けてうつ伏せになって頭を抱える。
これによって確率的に破片に当たる可能性は低くなるし、当たっても靴や脚程度で、致命傷を負う可能性は格段に下がる。

また、塹壕などの防御拠点には処理用の穴を設けている場合がほとんどで、そこに放り込むことで上方向に破片や爆風を逸らすことができる。状況が限られるものの、有効な対処法と言える。

上記二つ以外に、手榴弾を覆い隠すという最終手段もある。
ヘルメットや背嚢、ボディアーマー・・・そして自分の肉体で破片と爆圧を遮断する。
まず間違いなく行為者は死亡するが、味方を守るためにしばしば行われる行動でもある。
日本ではサダオ・ムネモリ上等兵が有名か。


創作における手榴弾


銃が頻繁に出てくる作品であれば手榴弾も登場することが多い…が、特に映像作品において威力の誇張が顕著。ビルのワンフロア丸々吹き飛んだりすることは無い。
当然ながら3個程度で戦艦を沈めるだけの威力も無い。

ゲームでは大概銃とセットで登場する。爆発地点から一定範囲にいると即死ということが多い。普通に使えば避けられるため、移動先に置いておくように投げたり、敵を遮蔽物から移動させるように投げたり工夫が必要。
EMPグレネードのような変わり種が登場する作品もある。

ゲームにおける手榴弾

EMPグレネードが登場するゲーム。発動すると周辺の電子機器を一時的ないしはマッチ中機能停止に陥れる。
通常グレネードや衝撃起爆タイプのもの、貫通可能な壁や床に装置を設置して複数のグレネードを障害物越しに発射するクラスターチャージなど様々なものが登場する。

作中で度々登場する。
1のリメイクではクリスのカウンター武器として閃光手榴弾がある。敵に噛みつかれた時に口に押し込むのが主な使い道だが、押し込まれた相手は一定時間後首が爆発四散する。閃光とは……?
3では、路面電車内でのネメシスとの戦闘でミハイルが手榴弾で自爆する。一車両丸々破壊する異常な威力を発揮したが、さすがに過剰演出と判断されたのかリメイク版では持ち込んだ爆薬という事になった。
4では手榴弾、閃光、焼夷の3種類が登場。それぞれ外見が色分けされており、通常手榴弾以外は着弾時に眩い閃光や狭い範囲で炎上する。リメイク版では焼夷がリストラされた。

シリーズ定番の武器。
主に炸薬、閃光、チャフが登場。ただし隠密ゲームなので、同フィールド内にいる敵に発見されるリスクが高くなる。使用タイミングは十分気をつけないといけない。
2まではピンを抜いた段階で起爆までのカウントダウンが開始され、投擲しないと自分も巻き込んでダメージを受ける仕様だった。しかし3以降は、ピンを抜いてレバーを開かないと始動しないタイプに統一されたため、持ち続けても問題ない。そして持ち続けていると足音が発生しないバグが発見されたため、タイムアタックなどではグレネードを構えながらジャングルを走り抜ける蛇が散見された。
3からはスモークグレネードが追加。4では喜怒哀楽の感情高揚を促す発色タイプも追加された。

ハゲ御用達の武器として持ち込める。
ただし純粋な武器だからかステルスキルには向いておらず、携行しているだけでたいてい怪しまれるので不遇。

自作武器の一つにヌカ・グレネードというものがある。
洗剤や油とヌカ・コーラ・クアンタムを混ぜてドラム缶に詰め込んだ武器で、メントスコーラの要領で膨れ上がり大爆発を起こした油を着火して炎上させる焼夷手榴弾。
案外威力は高く、携行型核爆弾と同等程度のものがある。

  • XCOMシリーズ
特殊部隊とエイリアンの戦いを描くSRPG。
お互い遮蔽を利用して命中率を下げ合い、当たれば即死もある中でお祈りを伴う銃撃戦をするのが基本となるゲームだが、手榴弾(グレネード)はダメージ量こそそこそこに留まるが必中、かつ範囲内の遮蔽物を丸ごと吹っ飛ばせるという特性を持ち、
「トドメに使って確実に殺す」「初撃に使い、遮蔽を剥がして後続で蜂の巣にする」のどちらに使っても強い……が基本的に1人1戦1回しか使えないという虎の子の武装として扱われる(特に全ての行動が頼りない序盤)。
攻撃用途以外の特殊な効果を持つグレネードも登場し、それらも凶悪な性能を持つものがしばしばある。


映画における手榴弾

  • ソナチネ
沖縄で起こった村上組と阿南組の抗争で双方使用する。だが村上組側が使用した手榴弾は粗悪品だったのか不発に終わってしまう。

女子07番の日下友美子の、映画では女子05番金井泉の支給武器だった。
どちらも桐山和雄の手に渡り、主人公たちに向けられて投擲されている。
映画では生首に手榴弾を咥えさせ室内に投げ込むシーンが衝撃的だった。


漫画やアニメにおける手榴弾

警察組織という物語上、銃器はかなり出演があるのに対しこちらはほぼ無い。
ただボルボ西郷が登場して以降、米軍関連の回があると若干登場する事はあった。有名なのは、鬼ヶ島を制圧する戦法を想定するボルボ西郷のシーンだろう。
また121巻の地域の老人にビリヤードを教える回では、爆竜大佐からロシアンビリヤードなるゲームを一緒にプレイする。手球が当たりピンの取れた手榴弾をポケットに入れて地下深くに掘られたホールに落とすのだが、初手で両津が全ての手榴弾のピンを抜いてしまったため処理が間に合わず大爆発した。

作中でジオン軍の軍人であるランバ・ラルが、戦艦ホワイトベースへの強襲揚陸を果たしたものの失敗し、自らも手負いのうえで追い込まれ手榴弾で自決するというシーンがある。

木星帝国のカラスが「狙いどころでどうにでもなる」と手榴弾1個でMSを行動不能にするという離れ技を見せる。なお、宇宙世紀の手榴弾は上記のラルのもの含め明らかに現実より爆発力が高い点には留意されたし。

人間用と、アーム・スレイブ同士用がそれぞれ登場。
いずれも敵味方問わず複数使用されており、主人公・相良宗介陣代高校に複数持ち込んでいる。覚醒した用務員に躊躇なく投げたが、傷一つつけられなかった場面が有名か。


追記・修正は手榴弾のピンを引き抜いてから行って下さい。

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最終更新:2024年04月09日 01:33

*1 標準語の本山であるNHKでは、「手投げ弾」を使うようにしているとの事。テ-リュウダンでは訓・音読みが混在する、シュ-リュウダンでは発音しにくい、「榴」の字がそもそも常用漢字ではない、手で投げる爆弾なのだから「手投げ弾」が直感的でわかりやすい…との事。

*2 特定通常兵器使用禁止制限条約。いわゆる戦時国際法の一つ