護身術

登録日:2019/08/10 Sat 19:23:38
更新日:2023/04/16 Sun 15:04:42
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護身術とは、格闘技の一種。


概要

実際に「護身術」という流派が存在するわけではないが、少林寺拳法を始め一部の格闘道場などでは「護身術」を謳っているところも存在する。
また警察などで護身術が一般向けに教えられていることもある。

現代社会で一般人が習得できる格闘技としてはほぼ唯一実戦を想定している のが特徴。
もちろん、他者を積極的に攻撃するわけではなく、危険な相手から逃れることがメインではあるのだが。

「護身術=女性でも習得できる穏当で平和な格闘技」というイメージも一部あるが、実際には
「護身術= 体格でも腕力でも男性に劣る女性が確実に男性から逃れるための技 」なので、本式の護身術は 非常に容赦ない

また、「格闘技」の要素も強いが、「実際に襲われた際に自分の身を守る」ことが最重要視されるので、催涙スプレーやその辺にある鈍器を使うことも辞さない。
むしろ大抵の格闘技においてすら「反則技」として禁止されている行動が多く、綺麗に決まると相手を怪我させる危険が大きいので、襲われた際の反撃以外では絶対に使わないこと。

というか、そもそも大事なのは「危険を避ける」ことなので、護身術において一番重要なのは 危険な場所には近づかない こととされる。さらには「命より大事なものはない」として「金銭ぐらいなら渡してしまえ」と教えられる場合もある。
「俺護身術かじっているからwww」とわざわざ危険な場所に乗り込むようでは本末転倒と言えよう。
良くも悪くも「スポーツ格闘技」とは一線を画す技術である。

なお、基本的に襲われた上で反撃する分には「正当防衛」とみなされて相手を傷つけても罪には問われないが、「相手が完全に無力化しているのに執拗に攻撃を加える」などした場合は「過剰防衛」に問われる可能性もある。
また、護身術程度ならあまり問題にはならないだろうが本格的に格闘技を修めている場合*1は、「肉体自体が凶器」とみなされて正当防衛にならない可能性が高くなる。



主な護身術の技

  • 大声
「え?」と思われるかもしれないが、何気にかなり重要な技その1。
相手に襲われても恐怖に駆られることなく、腹の底から助けを求める大声を出せる技術というのは自分の身を守る上で非常に重要なスキルなのだ。
そもそも 自分一人で相手を倒そう などというのがすでにリスキーなのだから、とにかく助かるためには恥も外聞もなく叫ぶことも大事。
また、大声を上げれば人が来ることを恐れて相手が逃げ出す効果も期待できる。
ちなみに、もし実際に助けを呼ぶ場面に遭遇したならば、「助けて!」よりも「火事だ!」の方が有効だと言われている。(助けてだと、暴漢に絡まれるのは悪い言い方をすれば対岸の火事であり、自分が暴力に巻き込まれることを恐れて避けてしまう人がいる。一方で火事ならば、近所の人達にとっては文字通り近所の火事であり、延焼の危険などから無視しにくいため)
…ただし、「腹の底から大声を出す」というのはこれでなかなか訓練が要る上に、緊急時に意識して行うのでは更に難しくなる。その為の護身術であり訓練なのだが、なかなか行き届かせるのは難しい。
そこで全くのド素人でも大声以上の成果を上げるために開発されたのが
いわゆる、
  • 防犯ブザー
である。恐怖で声が竦んだりしていてもワンアクションで使えるし、一度鳴らし始めれば簡単に止められず自動で鳴り続けるなど、大声にない利点も獲得している。
なお、他の防犯グッズにも言えることだが、ランドセルやバッグに放り込んでおいて「防犯ブザー持ってるから」というのは全くお話にならない。暴漢がいちいちカバンの中を探す隙を待っていてくれるわけはないからである。持つならば、緊急時には即座に使える位置を確保すること。周囲から見える場所ならば、「防犯ブザーを所持している」ことそのものが牽制効果を持つため一石二鳥。
しかし、昨今は小学生のイタズラや誤作動等によって、防犯ブザーの音が民間人からは軽視されてしまいがちである。狼少年などと揶揄され笑い話になっているが、先述の通り大きな音を立てることは対犯罪者において重要な行為であり、防犯の観点から見るとかなり由々しき事態といえる。
みんなも防犯ブザーがなったら発生源を伺うぐらいはしてあげようね!

  • 逃走
「え?」と思われるかもしれないが、何気にかなり重要な技その2。
先に述べた通り、「危険なところには近づかない=危険を回避する」が護身では最も大事なことである。
危険なところを回避できずに不幸にも身の危険に遭遇してしまったら?とにかく危険から距離を取ることが大事である。
↑の大声や防犯ブザーも駆使し、相手を威嚇しつつ、または助けを求めつつ距離を取ろう。走力に自信があるならとにかく逃げよう。

  • 金的
男性諸兄ならば想像するだけで悶絶できるあの痛みと苦しみ
外部に完全に露出している急所であるため、非常に攻撃しやすい。そして肉体的に絶対に鍛えようがないのでどんなマッチョマンでもここを攻撃されれば体を丸めて身悶える他ない。
実際にソ連がパルチザン向けに書いたマニュアルでも「銃を払いのけて全力で蹴れ」と推奨されている由緒正しき技。
また後ろから羽交い絞めにされても、後ろ蹴りで攻撃しやすいのもメリット。
もちろん相手が女性だとダメージは半減する…なんてことはなく、男女問わず急所であるので普通に効く*2

特に女性への要注意点として、ふざけてやった、とか、冗談でやった、というのはもちろん
蹴るつもりがないいわゆる金的のふりすら絶対にやってはならない。
創作では金的が割とカジュアルに行われお笑いシーンのように見えるが、
実際に金的をされそうになること自体が男性にとっては本能レベルに強い恐怖を抱かせる行為であり、
一歩間違えば相手の生殖能力に止めを刺しかねない重大な傷害行為になってしまう。
襲い掛かってきた相手を撃退するためなど必要の際は仕方ないとしてもふざけ半分というのは絶対に通じないと思ってよい。
治安の悪い地域で相手に冗談で中指立てればどうなるか、それに近いかもしれない。

男でも女でも硬さの変わらない部位を使った攻撃・その1。
これで顎を思いっきり弾かれると、昏倒する他ない。ちなみにこれもソ連推奨の一撃。
後ろから羽交い絞めにされた場合でも、全力で何度も後ろに頭を振れば逃れられる可能性も高くなる。

  • 肘打ち・膝蹴り
男でも女でも硬さの変わらない部位を使った攻撃・その2。
単純に腕を振り回すだけだと隙が大きいし、掴まれてしまったときに振りほどくのが困難になるので「コンパクトな動きで、最大のダメージを」与えられるように動くのがベスト。
相手の腹部や金的などを狙うと効果が高い。

金的と同じくどんな人間でも鍛えようがない部位への攻撃。
完全に目を潰すまではいかなくても、顔面に攻撃されれば大抵の相手は怯むため逃げるチャンスも増える。

  • 足踏み
全体重をかけて相手の足を踏みつぶす。単純な割に効果は高い。
特にピンヒールの女性などの場合……

  • 手三里
相手の肘から指二本分ほど離れた場所をグッと指で押す。 これだけ
自分で実際やってみるとわかるが、 かなり痛い 技である。
厚着の相手などには効果は薄いが、女性の腕力でも効果的なダメージを与えられるため腕を伸ばされたりしたときには有効な技。
本来は首肩コリや寝違え、腱鞘炎等多方面に効くツボであり、暇なときには自分で押すのも良いだろう。

何かと反則・卑怯扱いされる噛みつきもいざという時は護身術となる。
やり方は簡単、自分の歯で相手の皮膚に食らいつく。ただそれだけ。
チョークスリーパーをされたときなどに効果的だが、服ごしに噛みつくと案外ダメージが軽減される上
滑りやすいため引きはがされやすい上、悪ければ自分の歯ごともぎ取られてしまうこともあるため注意。
自分の服で試してみると体験しやすい。
とはいえ上手くいけば子供や女性でも傷を負わせられるくらい強力なのも事実であり、
過去にひったくりに襲われた女性が取っ組み合いになり、指を噛み千切ったなんて
事例があるとか。
ただし成功すれば確実に相手に傷を負わせられるからか
過剰防衛になることが多いのでその点も注意。

  • 得物を振るう
現実的には、あたりを使うことになるだろう。手近にあるのなら、木の枝やコーンバー(カラーコーンを繋いでいる黄色と黒のアレ)なんかも有効。
ある武術家は「自転車」を推奨している。街中のどこにでも有り、振り回して放り出せば命中せずともまず人間の動きは止まるからとのこと。
相手に逆に掴まれてしまわないためには、常に振り回すこと。テコの原理により、素人が扱うそれでも先端はかなりの速さになる。
リーチがあるほど相手との距離が開き、先端の速さも増すので、振り回せる範囲であれば長ければ長いほどいい。

  • 投げつけ
とにかくポケットに入っている物や手近なモノを思いっきり投げつける。これだけで相手を完全に無力化するのは困難だが、怯んでくれれば逃げるチャンスは増える。
特に硬貨の類を十数枚ほどポケットに忍ばせておくと投げつけた際にバラバラと相手に当たってかなりの足止めを期待できる。
地面がアスファルトだと困難だが、石や砂を掴みとって相手の顔面に投げつけるのも有効。

  • 死んだふり
逃げられないときの最終手段。
一度攻撃を受けたときに、よろけるなどして木や壁などにぶつかり、その際にあたりどころが悪かった風を装い痙攣や、必要に応じて吐血や嘔吐など
大ダメージを受け再起不能になった風に見せ、相手の精神的動揺を誘う手段である。
殺害もしくは重傷を負わせてしまったと勘違いしその場から相手が逃走することを期待するのである。
ただしこれは、相手がこちらを負傷させる気がなかった場合にのみ有効な手段であり、最初から殺傷・強盗・誘拐目的だったり女性(稀に男性)に対する
性犯罪を目的とした攻撃には余計に隙を与えることになりかねないため、相手の行動目的を見極める必要がある。
また「熊に襲われたら死んだふりをすること」という迷信がかつては広まっていたことがあったが、そんなことをしても猛獣からは「動けない獲物」と判断される可能性が高く実際には無意味と言っていいだろう。


  • 相手と友達になってしまう
もっとも平和な解決法。
例えば、相手が攻撃してきた際に「きみの父上がいけないのだよ!」なんて言っていたとしよう
それに対してあなたが「ぶったね?」「2度もぶった…」「親父にもぶたれたことないのに!」と返したら…
そこに奇妙な友情が生まれるかもしれない。
…生まれないかw


主な護身術使いのキャラ

「風間流護身術+三島流喧嘩空手」の使い手。元々は母である風間準から風間流古武道を護身術程度に習っていただけだったが、後に父である三島一八と同じ喧嘩空手も習得している。
なお、この設定だったのは初登場の「3」だけで「4」以降は自分の忌まわしい血を嫌って三島流喧嘩空手は完全に捨てて正統派空手に移行している(風間流護身術の技についてどのように考えているかは不明)。

ロバート・ガルシアの執事で護身術を使うひげを生やした渋いオッサン。
設定的には強キャラなのだが、全体的にクセの強い技が多く最弱扱いされやすい。あと戦闘スタイルも当身と投げがメインでどう見ても護身術ではない
技名がクソ長いことで有名。

スーツ着用の護身術使いの黒人銀髪モヒカンという印象的な外見のオッサン。
蹴りと当身メインなのでやはりあまり護身術っぽくはない。

主人公を務める医学生の青年。作中最強とも名高い幼馴染の母親に師事し護身術としての武道を学んだ結果、
医学生(笑)とばかりの戦闘能力を身に着けてしまっている。その強さたるや傭兵や正規軍を相手取って全く引けを取らないほど。

70代のご老人にして渋川流柔術の達人。敵の力を利用し、小柄な体で巨漢を投げ飛ばす合気の体現者。
筋肉モリモリの格闘家だらけのバキシリーズにおいて作中上位の実力者というスッゲ~~~爺ちゃん。
長い戦いの結果、「そもそも護身術が必要となるような危険に近づけなくなる」能力、『真の護身』を会得する。
……しかしせっかく『真の護身』に目覚めたというのに、この爺さん戦うことが大好きなので、いっつもそれに逆らって戦地に赴くのである。オイオイオイ。
われわれはこの老師を教師として「危険な場所には近寄らない」を実践するべきであろう。


主な護身術漫画

  • 大江山流護身術道場
「そもそも危険に近づかないこと」から「暴漢相手の格闘術」までかなり広くを扱っている漫画。全二巻。
暴漢相手の実践編もあり、解説もなかなか詳しい。
これできらら系列なのだから恐れ入る…。

最後に……

護身術はあくまで最終手段。頼らずに済むならそれに越したことはない が大原則なのは絶対に忘れないように。
「生兵法は怪我の元」を心に刻み、聞きかじった程度の護身術に頼って危険な場所に踏み込むなどという愚挙は 絶対にしてはいけない
そもそも訓練と実践は全く違うものである。訓練でどれだけ動けたとしても、実際に害意を持ってこちらを攻撃しようとしてくる相手に素人がどれだけ身体を動かせるかは非常に怪しい。
それでも、こららの知識を知っているのと知らないのとでは実際に逃げられる確率に差が出てくるのも事実である。
「技術」と「心構え」の両方を両立させてこその護身術であることは決して忘れないように。


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最終更新:2023年04月16日 15:04

*1 段位を持っているなどの場合

*2 骨が薄く骨折しやすい