漫画道具

登録日:2019/06/27 (木) 16:49:03
更新日:2023/07/20 Thu 20:27:11
所要時間:約 4 分で読めます






概要

『漫画道具』とは、その名の通り漫画制作に使われる道具一式のこと。

漫画を描くために必要な道具とはぶっちゃけ『紙』と『鉛筆』の二つだけ。本当にこれだけあれば漫画は描ける。
……実際、印刷技術の進歩で鉛筆でもペンで描いたのとあまりかわらない時代になっているし、趣味でやるなら充分である。


漫画の神様である手塚治虫氏も漫画を描く道具は上記二つだけでよく、
それ以外の道具は他人に漫画を描いていることをアピールするための見栄え道具だと自著に書いてある。

ただしこれを出版社に持ち込みなり投稿するなり、他人に見せるための原稿にするなら各種漫画道具を使ったものにしなければならない。

ここではそんな見栄え道具について紹介していく。


アナログ

2000年前半まではこれが主流だった。
消耗品で高品質なものとなれば値段が高いのでお金がかる。
しかし未だアナログにしか出せない味を出すためだとか、そもそもデジタルに移行できないなどの理由でアナログで漫画を描く人は多い。
ペン入れまではアナログ、仕上げはデジタルという人もいる。

  • つけペン
漫画道具の主道具。
種類はたくさんあって、強弱がつけられるGペン、細い線が描ける丸ペン、均一な線が描けるスクールペン、先が蕪型のかぶらペンなど。
Gペンで主線を描いて細かいとこは丸ペン、背景をスクールペンで、といった具合にペン先によって使い分けが可能。
メーカーによって同じGペンでも硬さが異なり、硬い方が筆圧が強い人、柔らかい方が弱い人向けとなっている。
ペン先はすり減っていずれ太い線しか描けなくなる消耗品であり、なおかつ当たり外れがあるため買う時はまとめ買いがおすすめ。
だからといって太くなったペン先を捨てるのは早計であり、極太線を描く用に残しておいた方がいい。

ちなみにつけペンはペン軸に差し込んで使うものだが、ペン軸には丸ペン用とそれ以外用、そして全部用の三種類ある。
Gペンを買っても丸ペン用のペン軸だけ持っていたら使う事が出来ない。

また、先端が鋭いモノが多く、気を抜いてうっかりペン軸に付けた状態で落としたりすると平気で手足に刺さるので、取扱には十分注意すること。
間違っても人に向かって手裏剣のように投げてはいけません。

  • インク/墨汁
つけペンはそれ自体では何も描けず、インクや墨汁につけて使わないといけない。
代表的なインクは製図用インクと証券用インク、墨汁は開明墨汁。
製図用インクは乾きが早く、証券用インクは耐水性なのでカラーイラストに向き、開明墨汁は線が伸び細い線が描けて消しゴムかけにも強いが乾きが遅い。
ただ耐水性は水をはじくのでペン先を洗いにくいという弱点がある。

  • 筆ペン
普通の筆でもいいがお手軽な筆ペンが漫画家で人気。
主に書き文字や髪のツヤベタに使う。

  • マジック
こちらも書き文字やベタを塗るのに使う。
細かいベタはつけペンや筆ペンでもできるが、広範囲のベタではマジックの方が便利。

  • ホワイト
ペン入れの際に間違って描いた線や気に入らない線、原稿の汚れた部分を修正したり、ベタの部分に文字や絵を描いたりする際に使う。
基本的にポスターカラーの白を使うが、市販で売っている修正液、特にキャップに筆がついているミスノンがおすすめ。

  • カラス口
『からすろ』ではない『からすぐち』と読む。
線の太さを調整でき、均一な線を引けることから枠線を描くのに便利。

  • 定規
直線を引くのに使う。三角定規などもあると便利。雲形定規というのもあり、曲線を描くのに使う。
味のある風景を描きたい人は定規を使わずフリーハンドで描いているようだ。
ペン入れの際につけペンを使って定規で引くとインクが定規の下に溜まり原稿を汚してしまう。
そのため定規のエッジのついている部分を上に向けるようにしたり、定規の下に小銭を付けて定規を浮かせて使用する。

  • 水色の色鉛筆
水色や青色は印刷に写らないので、下書きやベタ・トーンの指定などに使われている。
……しかし近年は技術の向上で水色は印刷に写るようになったため、印刷所の人がわざわざ消しているとの話もある。
どちらが本当かは不明。

モノクロ漫画に灰色の濃度で色を付けるシール。
消耗品の上、値段が高いので漫画家により使う人使わない人で差が大きい。
詳細は個別で。

  • トレーシングペーパー
薄い半透明な紙。
普通のセリフは原稿に直接書かれているが、ベタやトーンの上からでは文字が書けないのでこちらを使う。
使い方はトレーシングペーパーを原稿の上にのせ文字を書くだけ。

  • ベレー帽
必須では無いが、まずは形から入りたい方の必需品。


デジタル

近年の漫画家で主流となっている。何度でもやり直しができるのが利点。あと手が汚れない。
欠点としてはアナログとは違い初期投資が高いという点。
パソコン、それもそれなりのスペックが必要でありソフト代、ペンタブ代と10万くらいはかかる。
また「何度でもやり直しができる」というのは「納得できるまで終わらない」ということでもあり、
何処かで妥協しないと何時まで経っても次の作業に進めず、時間だけが過ぎていくという地獄コースが待っている。

板型のペンタブと液晶型のペンタブがある。
板タブが手元を見ずにモニターだけで描くのに対し、液タブは手元を見ながら描くというアナログのような描き方となる。
そのためアナログからの移行なら液タブがおすすめだが、板タブには手元で絵が隠れてしまうという現象から解放されるという最大の利点がある。
板タブは1万くらいだが液タブ最大手であるWacomの液タブは10万くらいするので、かつて液タブはアマチュアにとって高嶺の花だった。
しかし近年Wacomしかなかった液タブ業界に中国からの企業が参戦し、その中国液タブは3~5万円で買える。
中国の方は傾き検知がなく発色が悪かったりするので性能はWacom製の方が良いが、モノクロ漫画を描く分には申し分はない。

ペイントソフト。通称クリスタ。
PROとEX版があり、EXはPROよりも値段が高いが漫画制作機能がついている。
詳細は個別。

  • パソコン
これがないと始まらない。
ペイントソフトは基本重く、それも3Dなんか使おうものなら低スペックパソコンでは動かない。
低スペックでも動く『SAI』などのソフトもあるが、少しでも時間短縮を考えるならお金がかかるが高スペックなパソコンを買った方が良い。

  • モニター
見落としがちだが、実はカラーイラストを描く上で重要な機器。
デジタル環境を整えるうえで、一番お金を出すべきところとまで言われている。
アナログの場合、画材の色がダイレクトに作品の色となるので作者が色覚特性でもない限り、作者の想定している色彩と読者が見る色は同じであった。
しかしデジタルでカラーイラストを閲覧する場合、閲覧者のモニターの色域カバー率によって色彩が変化するという特徴がある。これが描き手にも当てはまるのだ。
作者のモニターのカバー率が低いと作者が「これだ」と思った色は実際には異なる色となり、印刷でおかしな色彩となる。
モニター必須の板タブに限らず、液タブにしろiPadにしろ、
普及しているタブレットのカバー率は総じて低いので、正しい色の確認用のカバー率100%のモニターを買っておく必要がある。
カバー率にはsRGB、Adobe RGB、NTSCの3つの規格があるが、普及度的にAdobe RGBカバー率の高いモニターを買っておこう。

世界のリンゴが販売するタブレット端末。
別売りの(結構お高い)ペン型端末Applepencilを併用することで、従来のデジタル環境に匹敵するイラスト環境構築が可能に。
手持ちの携行端末で本格デジタル? 冗談でしょ? ……とこぼしたくなるが、時代の進歩とは恐ろしいものである。
趣味の人たちが持つのはもちろん、プロのイラストレーターや漫画家が仕事道具にし始めている
WJでは遊戯王でお馴染み高橋和希先生の手により、漫画制作環境の電子化をテーマとした全編iPadで描かれた短期連載漫画が掲載された事がある*1
アプリ等の内部設定を除けばほぼ本体+ペンだけで済んでしまう明快さタブレットとしては高いがデジタル環境としてはむしろお安いほう
何より最悪漫画道具として使えなくても超高性能タブレットで遊べる欲張りセットっぷりで一躍、有力な選択肢として界隈を駆け上がっている模様。
なお、さすがに大容量過ぎるファイルやレイヤー数にはまだ制限がある他、本格的な3D環境ではPCに後塵を拝している。


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最終更新:2023年07月20日 20:27

*1 なお遊戯王Rの頃の高橋先生はまだ電子機器に疎かったため、逆にデジタル機器を使いこなすアシスタントの伊藤先生に取り扱いを教わっていた旨が語られている。