武藤敬司

登録日:2011/08/17(水) 03:17:18
更新日:2024/01/10 Wed 22:04:53
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◆武藤敬司

武藤(むとう)敬司(けいじ)」は日本の男性元プロレスラー。
当代を代表するトップレスラー中のトップレスラーで、ライバル蝶野正洋と共に一般メディアへの露出も多く抜群の知名度を誇る一人。
90年代~現在まで日本マット界を頂点から牽引して来た存在であり、
同世代の中でも同門の蝶野正洋、ライバル団体のエースであった三沢光晴と共に現代プロレスを象徴した存在と言える。
所謂「闘魂三銃士」の一人として長らく新日本プロレスで活動して来たが、
02年にジャイアント馬場の逝去以来、表面化したフロント(元子さん)との軋轢から三沢光晴以下の選手、スタッフの大量離脱騒動を受けた全日本プロレスに移籍。
代表取締役(※参加選手の不祥事により現在は辞任)に就任する。
新日本プロレスを象徴した男の、まさかの嘗てのライバル団体への社長就任劇は多くのファンや関係者の度胆を抜いた。

尚、全日本プロレスは武藤新体制の許、シリアスからJr、コメディまでを楽しめるパッケージプロレスへと変化。
諏訪魔、BUSHI、KAI、真田聖也など独自に有望選手を育てる等、旧来のやり方には拘らない乍らも見事に歴史を継続させている。

しかし一部の選手の不祥事や業績赤字、オーナー会社の新社長との対立など原因で
2013年に諏訪魔らを除く大多数の選手・スタッフとともに全日本を退団。「WRESTLE-1」を設立したが、団体は2020年4月1日をもって活動停止。

現在は元新日本プロレス勢が多く参戦するようになったプロレスリング・ノアを中心に参戦。
何と58歳にしてGHCヘビー級王座も獲得した。

しかし2022年に股関節唇損傷から長期離脱、完治が見込めないため2023年2月に引退試合を行った。

一言で言えばプロレスの「天才」で、米マットでの活躍から「マスター」の敬称も用いられる。
日本人離れした体格の持ち主にもかかわらず、極めて高い運動能力と天性の格闘センスを併せ持ち、純粋な才能に於いては真実の意味で比肩し得る存在は居ないと言える程であろう。


【プロフィール】

通称:「天才」
生年月日:1962年12月23日
出身地:山梨県富士吉田市
身長:188cm
体重:115kg
血液型:B型
スポーツ歴:柔道
入場テーマ曲:「HOLD OUT」「TRIUMPH」「Out Break」「SYMBOL」他多数…現在は「HOLD OUT」を主に使用。

子供の頃からとにかく運動神経に恵まれていたらしく、小学生にして既に鉄棒で大車輪が出来ていたらしい。
学生時代は柔道に明け暮れ(※野球でもスターだったが、後に柔道に専念)、当時のライバルは軒並みオリンピックレベル。
自身も、柔道高専時代には警視庁の猛者も交えた大会で活躍。「日本で一番強い黒帯」との評価を得ている。
その後、勤務していた接骨院の紹介から84年に新日本プロレスに入団。
年齢、体格、才能共に新弟子の中では一番であり、煩わしい下積みも無くいきなり即戦力として迎え入れられ、翌年には海外遠征に出発。

帰国後「スペースローンウルフ」のキャラクターを付けられるも、UWF全盛の時代に合わず自身の希望で無期限の海外遠征に再出発。
この時に生まれたのがグレート・ムタ(別項目参照予定)で、旧NWAの流れを汲む米WWCにてリック・フレアー、スティングに次ぐスターの座に就く。
本人はずっと米マットで活躍したいとの意向があったのだが、
UWF勢に加えて長州力まで離脱した新日本プロレスを救うべく同期の蝶野正洋、橋本真也と「闘魂三銃士」のユニットを組まされ帰国。
90年から漸く日本に定着し、知らぬ間に自分に匹敵する実力を身に付けていた蝶野、橋本を始めとするライバル達と黄金時代を築き上げる。
また、95年には初頭の大スランプが嘘の様な大復活劇を遂げており、至宝IWGPの獲得とG1クライマックスの制覇。
更にUWFインターとの対抗戦に於いて「最強」を喧伝されていた高田延彦を破る活躍を見せている。
……長らくスター路線に居たが、ライバル蝶野が自身も馴染みの深い米マットのビジネス方式=nWoジャパンを持ち込むと腹心として加担。

ブームの追い風は勿論、蝶野との最強コンビによるタッグタイトル奪取、リーグ戦制覇と完全に新日本プロレスを支配する。
……一方で、小川直也の登場等に伴う総合格闘技路線への傾倒には常に否定的で、本人曰わく「柔道と同じ」。
事実、一度だけ行った異種格闘技戦やムタとして対戦した小川直也戦では、いずれも相手を子供扱いしており、
それでも傾倒を止めようとしない新日本プロレスが、自分達と共に黄金時代を作り上げた憲二パパこと、坂口征二社長を解任するに当たり、
遂に古巣を見限り再度の海外遠征……前述の様に全日本プロレスへの移籍へと繋がる事となった様である。
美形の二枚目路線だったが、若ハゲの影響から01年以降は頭を丸めている。


【ファイトスタイル】

意外にも基本的な技術と、限られた技のみで試合を組み立てているのだが、
どんな技でも独自のアレンジが加わり、単純な技でも全く新しい技に見せてしまう程のインパクトを与える。
蝶野が「武藤の良さを理解できない」と語った内館牧子に説明した言葉によると、
「無駄の無い動きは洗練されているだけで詰まらない。武藤さんはそれに更に一手を加えるから凄いんです」……との事。

事実、本人のキャラクターからか技が軽い印象があると言われるが、実際には武藤が余りに「簡単そうにやってみせる」からそう感じさせないだけであり、
元々の高い技術に天才的な閃きが加わったスタイルは、上記の様に総合格闘技にすら対応してしまっている。
膝の負傷が悪化して以降は緩急を付けたインサイドワークが基本となっているが、若手時代にはスーパーヘビー級にもかかわらず、ビックリする様なスピードで動いていた。
最も酷い時には「階段が普通に歩けない、カニ歩きで上り下りする」や「300m以上休憩無しに歩けない」「膝への負担軽減のため車椅子も利用する」という凄まじい状況だった。一応下肢障害7級の認定を受けているほど。
それでも手術に踏み切らなかった理由が「プロレスが二度と出来なくなるから、障害が残ってるキツさに比べたら、プロレスが出来ない方が遥かにキツイ」
…凄まじい医者泣かせである。
その後医術の進歩でプロレスが出来つつも人工関節置き換えが出来るようになったため、2018年3月より全休というリスクを背負いながら手術を決断したとのこと。

以前は、その才能に反比例して持病となった膝の悪さから同世代では最も選手生命が短くなるのでは?とも囁かれていた武藤だが、気付いてみれば闘魂三銃士、全日本四天王の中では最後まで試合を行った選手となっていた。
当人も現役時代は上記の経緯を重ねつつもリングに上がり続けていることを、寧ろ肉体の維持や若さの秘訣とまで悟ったように語るまでになっており、YouTubeチャンネルでもちょくちょく絡むセミリタイア状態の盟友蝶野に健康の為に復帰を促す場面すら見られる。
そうした意味でも、正にプロレスリングマスターの域に到達した感のある武藤であった。


【得意技】

ムーンサルトプレス
別名:月面水爆
武藤の代名詞で、何とデビュー当時から披露している。
因みに、武藤本人は基本的に自分の技を“ラウンディングボディプレス”と呼んでいるのだが反映されない。
この技の世界的な流行を作った張本人であり、武藤はこの技の連発により膝への深刻なダメージを抱えてしまった。
海外でも伝説的レスラーであるグレート・ムタの技として認識されているようで“ムタプレス”と呼ばれることも。
因みに、小橋健太始め、他の選手が使うムーンサルトプレスは「コーナーポストからふわりとした弧を描く」のに対して、
武藤のそれは「コーナーポストを蹴った勢いそのままに低空で飛び、飛距離も長く、高速で相手に突き刺さる」……と云う、誰にも真似出来ない物。
現在は膝の致命的な悪化により大一番限定の隠し技。
2018年3月に再度膝の手術を行い、人工関節化したため、欠場前興行のムーンサルトが最後のムーンサルトとされていた*1
が、2021年のGHC王者防衛戦で叩き込んだ結果負担が大きく自爆した

シャイニングウィザード
別名:閃光魔術
海外から帰国した武藤が01年から使用し始めると共に、矢張り世界的な大流行となった。
武藤の完全なオリジナル技であり、一言で言えば立て膝を突いた相手への、それを踏み台にした変則的な飛び膝蹴り。
総合格闘技用に開発されたと云う説があったが、本人曰わく「相手が立ってこないから何か出来ないかと思ってたら咄嗟に閃いた」……との事。
当初は、相手の顔面に真正面から膝をぶつけていたのだが、相手をガチでKO状態にしてしまう等、プロレス技とは言えない部分があったため、膝の内側を当てる変形の回し蹴りとし、当てる場所を調節することで手加減が出来る形に修正がされている。
コーナーへの串刺し式や踏み台式、立った状態の相手への一撃等、矢張り他人では真似出来ないバリエーションも多数存在する。
この技のせいで相手を踏み台にして何かをする技の総称として「シャイニング(式)~」という接頭語になった。

足4の字固め
「フィギュアフォーレッグロック」はプロレスの生んだ最強の拷問技の一つ。
前述の高田延彦戦でのフィニッシュとなって以来の得意技で、この技を決めるまでの一連の「足殺し」メニューは目を背けたくなる位にエグい。
古典的な技だったが、矢張り武藤が流行させた。

●ドラゴンスクリュー
武藤が特に影響を受けた存在と語る藤波辰爾のオリジナル技をアレンジした物。
「足に仕掛ける巻き投げ」なのだが、武藤式は足を取った後で一瞬タメて、高速で捻る事により瞬間的に膝にダメージを与える。
高田延彦戦で、受け身を取れなかった高田の膝を破壊……やっぱり大流行した。
現在は棚橋弘至が同型のドラゴンスクリューを引き継いでいる。

●低空ドロップキック
地獄の「足殺し」メニューの一つで、他の選手のそれとは違い、漫画みたいな角度から相手の膝に飛び蹴りを叩き込むのが武藤である。
コーナーポストからダイブして膝を蹴ったり、寝転んだ相手の膝を踏むのでは無く、跳び蹴りする事が出来るのが武藤。
……棚橋らが再現に挑んだが、誰も真似出来ていない。
通常のドロップキックも勿論得意で、瞬発力に優れる為か目の前で動き出そうとした相手を瞬間的にカウンターで迎撃するのも更。

●フラッシングエルボー
またはドライビングエルボーとも。
主にロープの反動を利用して仕掛けられる、独特のモーションの高速エルボードロップ。
超レアだがトップロープに飛び乗ってからダウンした相手に仕掛けたダイビング式を披露したこともある。
因みにらこの技のモーションを参考に、準備段階のロープワークを往復式にして、高速で動く代わりに緩急を付ける方向に発展させたのがロック様のピープルズエルボーである。

●側転エルボー
別名:スペースローリングエルボー
対角線のコーナーに相手を振り、側転→半回転捻り→背面エルボー→フェイスクラッシャーを叩き込む。
以前の定番ムーヴだが、矢張り膝の悪(ry……で現在は滅多に見られない。

●フランケンシュタイナー
ジャンプして相手の頭を両足で捉え、後方回転の要領で頭をマットに打ちつける。
全盛期には相手をロープに振り、返ってきた所を投げていた他、カウンター式は幾度もここ一番での決め技として使われ、一時期はフランケンからの腕ひしぎ逆十字も見られた。
潮崎豪を破りメジャー3団体グランドスラムを達成した時のフィニッシュに決めた技がこれ。
ゲームでもお馴染みの技だが、それらの型の元ネタは実は武藤である(※オリジナルはスコット・スタイナー)。


【余談】
◯若手時代から囁かれていた若ハゲは90年代半ばから深刻化し、試合の終盤になるとそれまで体裁を取り繕っていた髪が崩れ、セルリアンブルーのマットに河童が出現する事態が多発していた。
このことは本人も気にしており、試合中に相手が髪を掴んで持ち上げるよりも先に立ち上がっていたという。また伝説の10.9の試合を見た際には試合内容よりも自分の薄くなった頭頂部を写すテレ朝のカメラワークに苦言を呈していた。

◯上記の若ハゲを橋本真也からイジられて「HOLD OUT」のリズムに乗せた替え歌まで作られた。
「むーとーちゃんがハゲるー♪」
そのためか、入場曲が「triumph」に変わった。

◯後年、長州力と共演した際には「(頭を見て)それ塗ってる?」と聞かれた。

◯近年は自身の物真似で知られるお笑い芸人、神奈月とタッグを組み芸人×レスラーのイベントを開く等、精力的に活動。
年末の「ガキ使」でも放映され、ダイナマイト四国とも対戦している。

◯若手時代は「辞めよう」が口癖で、唆した上に実際に一人辞めさせているが、
蝶野曰わく「武藤さんは自分の価値を解っていたからそう言ってた(絶対にクビにならない)」との事。

◯元タレントの夫人は中学時代の蝶野の同級生で、蝶野の応援に会場に足を運んだ所を紹介して貰った。
美人なので蝶野は武藤、橋本の両方から紹介しろと迫られたそうだが、「女癖が悪くない方」ということで武藤の方を紹介したとのこと。

◯グレート・ムタは別人。
ただしムタはしゃべれないため、武藤が代理人という形で記者会見には登場する。



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最終更新:2024年01月10日 22:04

*1 プロレスはやってもいいがこの技だけは絶対に駄目、と医者に忠告されている。