共犯者(Q.E.D. 証明終了)

登録日:2019/06/16 (日) 22:13:24
更新日:2019/06/19 Wed 05:50:09
所要時間:約 12 分で読めます





刑事さん
私がやりました
その男を殺したのは私です



「共犯者」とは、Q.E.D. 証明終了のエピソードの一つ。単行本第26巻に収録。同時収録作は「夏のタイムカプセル」。
以下、ネタバレにご注意ください。



【ストーリー】
年の暮れ、宝くじが当たった記念に水原一家はフレンチレストランへとやって来た。
しかしレストラン地下の物置でレストランの出資者、尾原秀次が刺殺体で発見される。
その日のうちに店の料理人、村瀬陽介が自首してきたために事件は解決したかに見えた。
だが物置には鍵が掛かっていたにも拘らず村瀬は物置の鍵を使える状況になかった。

更に彼は鍵が掛かった物置で被害者を殺した方法も、その上でわざわざ自首してきた理由も語ろうとしない。
彼は誰かを庇っているのだろうか?それとも彼と協力して現場に鍵を掛けた「 共犯者 」がいたのだろうか?




【事件関係者】

堀は短い一生をかけてあの店を残した
尾原なら端金で買えるモノかもしれんが…堀の人生の精一杯の結果だ
その輝きのわからんクズに生きる値打ちがあるのかね
  • 村瀬陽介(むらせ ようすけ)
レストランの料理人。
以前は有名ホテルでコック長をしていたようだが、友人の堀が亡くなってからは彼が妻の和代と経営していたレストランで料理人をしている。
事件当日の8時半に地下の物置横にあるワインセラーに行く途中に物置前でうめき声を聞いたらしく、ドアを叩きながら中に向かって声をかけていた。
和代から借りた鍵を使って他の従業員とともに物置を開けたのだが、そこで尾原の死体を発見する。
その後警察による現場検証中に自首してきたのだが、物置にどうやって鍵を掛けたかについては答えずに「自分が殺した」の一点張りという半落ち状態になっている。
ただし動機については、裏を勘繰る水原警部に対して「店を守りたいからだけでは不服か?」とあくまでも毅然とした態度を取る。
また「わざわざ尾原を殺さずとも店は法が守ってくれるはずだ」という警部の言葉に対しても「尾原は法を守るつもりはなかった」と語る。


あの人が残してくれたのは店と…そしてこの絵
絵と店は一体のもの 絶対手放せない
  • 堀和代(ほり かずよ)
レストランのオーナー。未亡人。
料理人の夫とレストランを経営していたが交通事故で夫を亡くしてからは村瀬を料理人として雇っている。
亡き夫との思い出である絵を大事にしており、尾原から絵を売るよう様々な手段で強引に迫られてかなり気が滅入っていた。
絵について一度だけ村瀬に相談した事があったが、
その時には「尾原はもし絵を手に入れればきっと次は店も欲しがるはずだから売ってはダメだ」と助言を受けていた。
事件当日は3時半に外出先から戻ってからはオフィスで業務を行っていた。
店が開店する5時以降は接客も行っていたが物置のある地下には一度も降りていない。
物置の鍵は彼女が持っているため彼女が村瀬に鍵を渡したとすれば説明はつくが、
容疑から逃れる事が目的の共犯のはずなのに村瀬が自首してきた事に説明がつかない。


こんな時のための…マイ道具セット!
やるぞぉ!!
  • 土屋まゆみ(つちや -)
レストランの接客係。
事件当日は昼過ぎからは厨房で村瀬と料理の下準備を、5時以降は酒井、和代と共に接客をしていた。
8時半に村瀬、酒井と共に物置で死体を発見する。
4時頃に村瀬が鍵を使った所は彼女も見たが、その時に尾原は店に入ってはいないと証言する。
また水原家に出すコース料理の前菜の盛り付けを村瀬から任されて張り切っていた。
いつ任されても良いように盛り付け用のマイ道具をバッグに入れてロッカーに常備していたあたり、料理人を目指しているのかもしれない。


村瀬さんまだ下にいるの?
しょーがねェなァ
お客様待たして
  • 酒井雄作(さかい ゆうさく)
レストランの接客係。
事件当日は午後に掃除とテーブルセッティングをしていたが、4時頃にグラスを割ってしまっていた。
替えを出すために和代から借りた鍵で物置に入り、1階に上がったところで村瀬に鍵を渡したと証言する。
5時以降は接客をしていたが、物置の前も何度か通ったようだが変わった所はなかったらしい。
良いバイト先なのに事件以来警察が店を封鎖してるせいでずっと休みだと愚痴をこぼす。


  • 尾原秀次(おはら ひでつぐ)
オハラファイナンス社長。レストラン開業の出資者の一人。
会社乗っ取りや株の買い占めなど違法スレスレの強引な金儲けで知られる。しかし本当に法を破った事はまだない…らしい。
店で飾られている絵が欲しいらしく、資金を引き上げると和代を脅したり村瀬を金で引き抜こうとしていたため従業員たちからも評判が悪かった。
事件当日の8時半に物置内で刺殺された状態で発見される。死因は失血死。
7時には既に付近の有料駐車場まで来ていたらしいが、いつ店内に入り込んだのかは不明。
携帯電話も車の中に置きっぱなしにしていた。




で その日のディナーはどうなったんです?
余所行き着て屋台でラーメン
本当信じらんない
  • 燈馬想
この漫画の主人公兼ホームズ役。
事件とは関係がなく、かつ可奈から強引に頼まれた訳でもないが、水原警部からお年玉をもらった義理もあり事件解決に協力する。
諦めかけていた水原警部に事件関係者を集めてもらい、彼らに対してある事を伝える。

  • 水原可奈
この漫画のヒロイン兼ワトソン役。
せっかくフランス料理を食べられると思って余所行きまで着てきたのに、
事件のせいでその格好のまま屋台でラーメンを食べる羽目になって散々だったと初詣で語る。
和代たちへの聞き込みでは主に、犯行の動機や証言に矛盾が無いかを確認していた。

  • 水原幸太郎
可奈の父親にして警視庁捜査一課の警部。
せっかく当たった宝くじで一家で外食しようとしたら事件のせいで正月出勤する羽目になってしまう。
村瀬が自首してきたため拘置期限内に書類送検しなければならないのだが密室の謎が解けないと送検が出来ず、
かと言って裁判で証言を覆される恐れを考えると自白だけでの送検も出来ず、とにっちもさっちもいかなくなっている。
共犯の可能性を考えてはいるものの、村瀬への度重なる取り調べでもその相手を聞き出す事が出来ずにいる。
鏡開きの時期になっても捜査が進展しなかったため、半分諦めムードで一から再捜査するつもりでいた。

  • 水原夫人
幸太郎の妻にして可奈の母親。下の名前は不明。
宝くじに当たって得意がる夫に対して「その分悪いことが起きなきゃいいけど」と半ばあきれていた。
まさかその予想がこんな形で現実になるとは思いもしなかっただろう。

  • 老夫婦
事件の日に水原一家の他にレストランにいた唯一の客。
事件とはほぼ関係がないため容疑者から外されている。





【キーワード】
  • レストラン
店名は「chemin(フランス語で小道、細道)」。
有名店ではあるが、客が混むのはクリスマスがピークで年末年始はそこまでではないようだ。
厨房にある階段から降りた地下にはワインセラーと食糧庫、そして現場になった物置がある。


  • 物置の鍵
過去に盗難に遭った経験から、基本的に現場の物置は普段は鍵を掛けて和代が管理している。
事件当日は4時頃に酒井が割ったグラスの替えを出すために鍵を借りている。
戻るところで食器を出そうとしていた村瀬に鍵を渡したが、事件当日に村瀬が鍵を持ったのはこの時だけである。
ちなみに鑑識の報告では物置の内側の取っ手には指紋が残っていなかったようである。


  • レストランに飾られている絵
和代の亡き夫がフランスでの修業時代に買った無名の画家の絵。
ちょうど会いに来ていた和代と街を歩いていた時に偶然見つけたもので、一目見てこの絵を飾った店のイメージが思い浮かんだらしい。
それゆえ店にとってこの絵は切っても切り離せない存在となっている。
無名の画家の絵なので金銭的な価値は高くないはずなのだが、尾原はこの絵を手に入れるために色々と強引な手段を使っている。
その理由について村瀬は過去に「使い道がなくても金を集めるのと同じように、自分が絵を手に入れるのは当然の事だから絵が欲しいだけ。
本当に絵が欲しいのかどうか尾原自身も多分分かってない。」と語っていた。


  • エプロン
レストランの備品。従業員が接客の際に制服の上から着用している。
普段は厨房の壁に複数枚掛かっているが、どれが誰のかは特に決まっていないようである。
事件直後に1枚減っている事から、村瀬が返り血を浴びないよう犯行時に着用していたと思われる。
しかし事件後は村瀬は店から外に出ていないはずなのに、彼のロッカーからもゴミ箱からも何故か見つかっていない。










尾原さんの死亡推定時刻は8時から8時半の間…
これは村瀬さんが鍵を持っていない時間帯でした

それじゃあ村瀬さんはどうやって?

やっぱり犯人じゃないってことよね

尾原は自殺したんだよ

警部の推理通りこの事件には共犯者がいます





【余談】
後年に発行されたファンブック「ザ・トリック・ファイル」でも触れているが、
もともと作者は共犯を立てないというルールを作っていたようだ。(だまし合い、コンゲームにおいてはその限りではないが)
過去のとあるエピソードで登場人物に「共犯は状況に関わらずアリバイが出来てしまいアンフェアではないか」と指摘させている事からもその辺の考えが伺える。

今回はそれを踏まえた上でルールを逆手に取り、「共犯」という物をテーマの一つとして話を作ってみたようである。
ちなみに上記の過去話ではこの指摘をフリとして、その後のオチへと繋いでいた。



以上……証明終了です。

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