味で勝負!(美味しんぼ)

登録日:2019/06/16 Sun 19:33:49
更新日:2019/06/19 Wed 11:45:33
所要時間:約 5 分で読めます




「やれやれ、日本の食通とたてまつられてる人間は滑稽だねえ」

概要


「味で勝負!」とは、漫画『美味しんぼ』の第1巻に収録されたエピソードにして第二話にあたる話。

『美味しんぼ』のメインとなる自称食通を気取るゲストキャラ等と山岡士郎が食べ物の味で勝負をする話の記念すべき第一回にもなるエピソード。

また、このエピソードは言わずと知れた1989年にファミコンで発売された『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』の原作の一つとされており、
作品自体が超展開まみれのバカゲーとして世に知れ渡っているため、このエピソードもネタ扱いされる傾向にある。

あらすじ


東西新聞創立100周年の記念事業として究極のメニューを作成する担当者となった山岡士郎と新人社員の栗田ゆう子。

新人ながら張り切るゆう子に対して山岡は興味も無く企画会議の出席もサボって競馬に行こうとするが、
財布を会社に置き忘れてしまったので結局は渋々と究極のメニュー作成について打ち合わせる会議に参加することになる。

そこには究極のメニュー作成のために協力を依頼した食通の先生達が待ち受けていた。

本エピソードの主な登場人物


◆山岡士郎
究極のメニュー作成の担当者に選ばれたグータラ社員。
この頃の本人は諸般の事情から関心や熱意は一切なかった。

ちなみに現在の絵柄と比べてみると顔つきが全然違い、だらしなく無精髭を生やしたもので印象が異なる。


◆栗田ゆう子
山岡と同様に究極のメニュー作成の担当者に選ばれた新人社員。

現在の絵柄はふっくらとした感じであるがこの頃は初々しく可愛らしいとファンから評判である。


◆大原大蔵
東西新聞の社主。
この頃は社主としての威厳がありいかにも大物といった雰囲気と貫禄のある人物だった。


◆谷村部長、富井副部長
山岡達の上司。
富井副部長は現在と印象はあまり変わっていないが、谷村部長はダンディな現在と比べると全然印象が異なる。


◆食通家の先生方

究極のメニュー作成のため、大原社主が協力を依頼して呼び寄せた人達。

芸能評論家、川本広増。
食味エッセイスト、花村友夫。
作家、高岡兵郎。
料理学校校長、井戸正夫。
作曲家、丹数馬。
レストラン評論家、左田修一。

以上の6人で構成され、業界では食通として評判が高いとされている。


以下、ネタバレ注意(原作、アニメ版のエピソードを交えています、あとゲームのネタもあります)



招集された食通の先生達は黒海のキャビアやツバメの巣だの、有名な高級食材や珍味といった物ばかりを究極のメニューにしようと意見を出してくる。

鼻くそをほじりながら興味なさそうにする山岡だが、川本はフランスから美食の王とされる世界三大珍味・フォアグラを取り寄せることを提案した。

だが、そのように有名な高級食材ばかりをメニューに加えようとする食通達を山岡は「滑稽だ」とこき下ろす。
曰く、彼らは有名ブランド商品を有難がるのと同じであり、中味を味わっている訳ではないミーハーなのだと告げていた。

この発言に食通達は「フォアグラの味が分かるのか。馬鹿にするな」と猛激怒するが、山岡は涼しい顔で
一週間後に「一番良いと思うフォアグラよりももっと美味しいものを味わせる」と告げて去っていった。


そして約束の日になっても帰ってこない山岡をゆう子は心配するが、本人から電話がかかってきたのでゆう子は慌てて山岡がいる茨城県沖の海へと向かった。

船の上で船酔いしてしまうゆう子を尻目に漁師たちに獲れるまで粘れと指示する山岡。
中々目的のものが捕れないままが続いていたが、やがて網に大物が引っかかった。それこそが山岡の求めていたものだった。

獲れた魚はアンコウだった。季節外れ(旬は冬でこの時は5月)でありながら見事な大物が捕れたのである。
捕れないと漁師がやたら日を改めたがりますが、約束の日までにはちゃんと捕りましょう。

そして山岡は自前の包丁セットを手にしてアンコウの解体作業に取り掛かる。



アンコウをフックで吊るし、
殴ってもひ弱な体じゃ腕が折れます。


肋骨が無いのでそのままだとグニャグニャして切れないので口から海水を入れて膨らませ、
バシッ、バシッ、と叩いてもグシャグシャになって食べられなくなります。


包丁で皮を剥ぎ、腹を裂き、肝臓を取り出し、
キエーッ、と気合いと共にメッタ斬りにしたらどこが肝だか分からなくなります。
突然、世の中が嫌になってもボチャーン、と捨てたりしないように。
細切れにしてしまうととても食べられそうにありません。


取れた肝臓を酒で洗って蒸す。
その前に飲んべえの漁師に全部飲まれたりしないように。
生で持ち帰ってもすぐに痛んで腐るし、焼いても冷えれば生臭いし、煮てもパサパサして美味しくないです。


颯爽とした身のこなしと包丁さばきの山岡の姿は普段のグータラぶりからは考えられない真剣な姿だった。

これこそがフォアグラより美味いアンコウの肝である。


その夜、ホテルでは大原社主らを含めてフォアグラトリュフを用意して待っていた食通の先生達と対峙する。
山岡はシェフにアンキモを同じように切って持ってくるように言いつけ、まずはフォアグラの味見から始めることに。

さすがに美食の王と言われるだけあってゆう子もフォアグラを美味しいと感じられていた。

そして次に用意された山岡が持ってきたアンキモに食通の先生達は貧乏人だと笑い飛ばすが、
山岡は動じることもなく「文句は後で聞くから食べてみろ」と言い渡す。


そうして食べてみたアンキモだが……不思議なことに全員が美味いと感じていた。

ゆう子や大原社主、谷村部長らもはっきりとフォアグラには劣らない味だと告げる。
しかもフォアグラには無い鮮烈さがあり、少しも生臭くなく香りも豊かで味も純粋で澄んでいた。

フォアグラの方は油臭くて味がべったりしていることが食べ比べてみるとはっきりしていて、
アンキモの前では霞んでいるとしか言えなかった。

深海の自然の中で育った健康なアンコウの肝臓と人為的に作り出された病的な肝臓であるフォアグラとどちらが美味いかは歴然としていた。
しかも山岡が持ってきたものはその場で調理したものなので鮮度もフランスから取り寄せてきたフォアグラとは天地の差があったのだ。
後の作品では旬を外していたら旨くないというのを何度かやっているが…

だがこれだけの味の差がはっきりと示されても食通の先生達は頑なに認めようとせず、

「不味くは無いがアンキモは所詮フォアグラより下等」
「世界中の食通が美味いと認めた味」
「フォアグラの味が分からないなんて食通ではない」

と反論するがそんな彼らの姿を見て大原社主は「究極のメニュー作りに彼らの協力は必要ない」と告げていた。
彼らには新しい味を発見しようとする気構えがまるで見られないことがはっきりと分かったのである。

フォアグラ等の高級食材の味や高名さに固執してばかりいるようではレストランのガイドブックは書けても
新しい食文化は切り開くことはできないのだと論破されてしまい、食通の先生達は何も言えなくなってしまう。

大原社主は山岡とゆう子の思い通りに究極のメニューを作成するように告げるが、
山岡は「食通気取りに対して意地になっただけ。そんな企画に興味はない」と返して去っていった。


これだけ料理の知識と才能がありながらどうして真剣に取り組もうとしないのか
ゆう子達は不思議そうに山岡を見送るのだった。


余談

ゲームでやたらネタにされる警察官に不審者扱いされて対峙する場面は当然ない。
この場面はフォアグラより美味しいものを探す過程で小料理屋に行くシーンなので、最初からアンキモと決めて捕りに行った原作では存在しない。
というより何を出すか決めていないのに、食通の先生方に喧嘩売ってるのがそもそもおかしいのだが。




馬鹿なことやってないでさっさと追記・修正するんだ!


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