魔女・魔美?(エスパー魔美)

登録日:2019/06/16 sun 04:10:15
更新日:2019/07/06 Sat 15:49:26
所要時間:約 12分で読めます




『魔女・魔美?』は藤子・F・不二雄作品『エスパー魔美』のエピソードのひとつであり第12話の作品。

まだ序盤ということもあり超能力者という自覚が薄い魔美。そんな彼女が正体をバレかける伏線がここまでの話で『くたばれ評論家』『未確認飛行物体!?』『ただいま誘拐中』などで貼られてきた。
その伏線が回収され、ついに魔美の正体が学校中にバレてしまいそうになる。

さらに魔美の友人・幸子のもとにエスパーが書いたとしか思えない脅迫状がいくつも届き、魔美は犯人扱いを受け周囲から恐れられていくようになる。
昨日まで優しかった友人たちが手のひらを返すシーンはある意味本作の見せ場。魔美の超能力の源流である魔女裁判を彷彿とさせる。


そんなことより何よりも、読者の間で高畑=イケメンという共通認識が明確に芽生えた話である


【ストーリー】



幸子ヨ
又竹長クントでえとシタナ。
竹長クント、コレ以上ツキアッタラオソロシイコトガオコルゾ。何度モ注意シテキタハズダ。
カクシテモダメダ、オマエノ行動ハ全部ワカッテイル。
キノウ二時三十分学校カラ帰ッタ、オヤツハばにらくりいむダ。三時五分竹長クンニ電話。一時間半勉強シテ、四時四十分竹長クンノ家ニ行ク。話題ハくらすノコト。深夜放送ノコト。


魔美の友人である幸子のもとに不気味な手紙が送られてきた。何故か幸子の行動の全てが分かっているらしい。しかもこのような手紙が来たことはこれが初めてではないようだ。
幸子の中で気味の悪い不安がつもっていく……。

その頃高畑は草野球にいそしんでいた。とはいっても彼は野球が非常にヘタクソである。ライトでフライを取ろうと身構えれば、ボールは背後に落ちてしまう。
高畑はあえなくエラーをしてしまう……はずだった。しかしボールは落ちる瞬間に消えてしまった。気が付くとボールは何故か高畑のミットの中におさめられていた
そして最終回、二死満塁というドラマのような絵にかいた劇的場面で打順が高畑に回ってきてしまった。高畑は代打を送ることを提案されるが、本人は無茶苦茶な理論*1でバッターボックスに向かっていった。
当然のようにツーストライク。しかし三球目、ボールは高畑のバットに掠ってもいないのに場外まで吹っ飛んでいった

自分でも信じられないような大活躍に高畑はご満悦。
しかし疑問に思っていると、帰り道に待ち構えていた魔美に意外な事実を教えられる。なんと先ほどまでの活躍は裏で魔美が超能力で操っていたものであったのだ。
魔美としてはささやかなお礼のつもりであった。まあいつものおせっかいな魔美である。だが高畑には「実力で勝ったんじゃなきゃなんの意味もない」と苦言を呈されてしまった。

高畑の家に誘われた魔美。部屋で高畑は魔美に何かを見せようとする。だが高畑は見せようとしたものをどこに置いたのか忘れてしまった。
すると魔美はふと「あそこに落ちてるの、そうじゃない? 二週間前の新聞」と言い出す。
魔美は疑問に思うもすぐに新しくテレパシー能力に目覚めたと気が付く。
新能力を手に入れたことを無邪気に喜ぶ魔美とは対照的に、高畑は深刻気味な表情を浮かべていた。魔美は気が付いていない……。

高畑が見せたのは前回『ただいま誘拐中』で魔美が解決した(と言えなくもない)カオリちゃん誘拐事件が解決したという記事だった。さらにその下には「事件にからむナゾの少女」という明らかに魔美について書かれた記事もあった。

高畑が心配しているのはこれであった。さらに前の回ではぼやけているとはいえテレポート中の写真を撮られている。行く末には魔美の正体が世間に明かされてしまうかもしれない。
魔美は「わるいことしてるわけじゃないし」と口をとがらせると高畑は珍しく声を荒げた。


エスパーってこと知られて、これまでどおり暮らせると思う? まずきみはワッとばかりに好奇の目にとりかこまれる。
テレビや新聞、週刊誌などで引っ張りだこになる

えっ、テレビや週刊誌!? まあすてき!!

だが、そのうちきっと反動がくる。みんなは君の力を不気味に思い……、おそれ、ねたみ、敬遠し……、にくむ者さえ現れる

まさか!? そんな……

忘れたの? 火あぶりになったという、フランスのご先祖のこと


魔美は現状を理解していないことを自覚し、無知だったことに気が付きしょぼくれてしまった。そのまましょぼくれ、これからは気を付けることを宣言すると高畑の家を去って行った。
……だが魔美は帰宅にテレポーテーションを使ってしまう
流石の高畑も「それが使いすぎだというのに!」と呆れるのだった。
というか靴どうした?(前のコマでは靴を脱いでいた)

そしてテレポーテーションで帰宅する様子を、同じクラスの日上という少女が見ていた。

日上はなんとなくで高畑の友人である竹長の家に向かっていた。
部屋に上がると幸子も来ていたが、どちらも表情が硬い。
幸子は冒頭の手紙のことをボーイフレンドの竹長に相談していたのだ。
まったく手口が読めない犯行に暗い憶測だけが増えていく。
一応日上は魔美らしき少女が不可解な行動をしていたことを言うが、全く信じられなかった。

そんな中魔美はパパのアトリエで漫画を読んでいた。パパは油ビンを取るように頼む。
魔美は断る理由もなく取ってあげた。……サイコキネシスを使って
なんとか誤魔化した魔美だが、やはり高畑の言葉が脳裏によみがえるのだった。
逃げ出すようにお使いに向かう。

そのお使いの帰り道近所で映画のロケをやっていることを耳に挟む。
ロケ場所に向かうも、もう人だかりができており見えない。
ふとしたタイミングでやっとロケ場所が視界に入るが、気が付くと魔美はどこかの家の屋根に立っていた。無意識のうちに超能力*2を発動してしまっていたのだ。

屋根なんて目立つ位置であるため、ロケ場所の多くの人間に見られてしまったそして運の悪いことにそこには日上たちがいた。しかも魔美には赤毛という分かりやすい特徴がある。
流石にマズいと感じた魔美は深刻に反省しようと今度こそ考えるが、既に事態は大きく動き出していた……

それからしばらくして。魔美は学校で不可解な目に遭っていた。
何か話している人だかりに入ろうとすれば、魔美を残して誰もいなくなる。
昼休みのバレーボールに参加しようとすれば、ボールと魔美を残してみんなが帰ってしまう。
放課後帰ろうとすれば魔美の周りに自然と間ができる……。

流石に不審に思った魔美。クラスメイトでいつもレコードを誘ってくる、富山に一緒に遊ばないかと誘うがおびえたように断られてしまった。怒った魔美は富山の腕に掴みかかる。



他人の生活をのぞき見。

一日中。

脅迫状。

人は見かけによらない。

おそろしいいやなやつ……。



テレパシー*3によって富山の思考が流れてきたのだった。
ようやく事情を呑み込んだ魔美は周りの生徒に弁解をしようとするが、だれも聞かずそそくさと逃げていった。
もう魔美はどうすればいいのかわからなかった……。


魔美が高畑を訪ねると、ホームバッティングマシーンで野球の練習をしていた。だが打てないどころか、毎回デッドボールになる。曰く魔美のせいで名選手の評判を取ってしまったので、実力を追いつかせるために猛練習をしなければならなくなったのだ。

魔美に高畑の言葉を聞いている余裕はなかった。平静さを失いながら高畑がうわさを信じているのかを聞き続ける。


ふしぎとしかいいようがないね。密室の会話を、聞き取るなんてことは……、
エスパーでもなけりゃ、できることじゃない!

やはり……、そう思われてもしかたがないわね


ついに自分が最も信頼している高畑にも突き放されてしまい、なすすべなくなった魔美は彼の家を後にしようとしていた。


おい、まてよ! 一つ考えたことがあるんだ。真犯人をさぐる方法について

じゃ、高畑さんは、犯人はあたしじゃないと?

あたりまえだろ!

あらゆる証拠が不利なのに? それでもあたしを信じてくれるの!?


理屈じゃないんだよ、人を信じるってことは


ぶっきらぼうな口調ながらも温かい言葉に魔美は涙を流すのだった。


高畑が提示した作戦はシンプルなものだった。
三時に竹長へ、そして四時に幸子の家に電話すること。それも出来る限りいいわけくさくくどくどと。
よくわからない作戦であったが、魔美は「でも、いいわ。高畑さんのいうとおりにしてればまちがいはないんだもの」と納得していた。
よっぽど高畑を信頼しているのだろう。若干依存しているとも言う。

そして四時になり、幸子への電話をかけていた。
くどくどと言い訳らしい言葉を並べるも、会話はヒートアップしていく。
最終的に幸子の「あなたわたしたちが仲のいいのを妬んだんでしょ」という言葉に「じょうだんじゃないわよあんなヒョーロク玉*4!!」と返してしまい、ブチ切れた幸子に電話を切られてしまうのだった。
「くどくどいいわけを並べてほしい」と言われて「ヒョーロク玉」と言ってしまう辺りが実に魔美である。

幸子は怒りながら部屋に戻る。部屋には高畑がいた。遊びに来ていたのだ。
何か用があるわけでもなくのらりくらりと彼女の部屋に居座っていた。幸子が勉強を始めると言ってもマイペースに漫画を読み続ける。

不審に思う幸子だったが、そこに日上が訪ねてくる。
すると高畑はいきなり動き出し、日上に「幸子と散歩をしたいから留守番をしてほしい」と言い出した。不思議に感じつつも日上は了承する。

散歩なんてしたくないと怒る幸子だったが、高畑はしばらく部屋を開けなければならないと言う。高畑は懐からあるものを取り出した。
それは高性能の盗聴器だった。三百メートル以内ならFMラジオではっきりと受信できるものであり、机のかげにしかけてあったと言う。そして同じものが竹長の家にもしかけてあった。


発見と同時にこのスイッチを切ったからね。
犯人が気づけば、どうしたのかと思って、さぐりにくるはずだ






















部屋に戻ると日上が昏い表情で机の下を探っていた。

出典:エスパー魔美第2巻、小学館、藤子・F・不二雄、
17年12月14日配信(電子書籍)


【登場人物】


◆佐倉魔美
魔女の疑いをかけられた超能力者。
調子に乗った結果正体がバレかけてしまい、さらに運の悪いことに幸子の脅迫状も加わった結果完全に孤立してしまう。高畑がいなければ今回ばかりは危なかった。
魔美も今回の件が本気でトラウマになったのか、超能力の使用に細心の注意をはらうようになる。まあバレないと分かったら調子に乗った回もあったが。
彼女が高畑に(無意識ながらも)明確に好意を寄せていくのは今回以降のこと。どうしようもなく八方塞がりで孤立していた時に手を差し伸べられ解決してもらったのだから、まあ惚れるしかないだろう

◆高畑和夫
イケメンに定評のある高畑。「理屈じゃないんだよ、人を信じるってことは」は『エスパー魔美』屈指の名言として名高い。
魔美が魔女疑惑をかけられる中、唯一彼女を信じ救おうとした。その理由も証拠が何かあったわけではなく、信じていたから。立案した作戦もよくよく見ていくと本当に魔美が犯人ではないということが前提のものとなっている。本気で魔美を信じていたのだろう。
また野球で魔美のおせっかいがかかった時も怒るのではなくあくまで諭すように言っているのもポイント。本当に彼は人間ができすぎている。
ちなみにのび太の打率は0.01なので高畑くんはギリギリ彼に勝利している。

◆間宮幸子
魔美の親友であり、竹長くんの嫁。
脅迫を受ける中、疑心暗鬼になり魔美を疑ってしまう。このエピソードの後は特にしこりを残した様子もなく遊んでいるため和解したのだと思われる。人の彼氏を「ヒョーロク玉」とか言っておいてよく仲直りできたな
ちなみに原作では今回のギミック程度にしか描かれていない幸子と竹長くんの仲であるが、アニメ版ではかなり掘り下げられている。最早クラス内でも公然の仲。幸子も中学生とは思えぬ高い嫁力を発揮している

◆竹長悟
幸子のボーイフレンド。
一応今回は幸子と並ぶ重要人物であるはずなのだが、彼女と比べるとなんか影が薄い。
ちなみに原作ではあまり描かれていないが、アニメ版では成績よし、人格よしで最終的に生徒会長になるほどのいい男である。
そのあたりが日上に狙われた理由だろう。まあ本人にはいい迷惑だが。

◆富山隆志
魔美のクラスメイト。
珍しく魔美に遊びに誘われるが、彼女を恐怖する気持ちが勝ってしまい理由をつけて逃げ出した。というか彼は魔美に片思いしており、常に遊びに誘っている。そんな彼ですら魔美を恐れる辺り、今回の異常性がうかがえる。

◆日上
今回の黒幕。名前の由来は「僻み」か。
竹長と幸子が一緒にいるのが悔しい」という僻みだけで嫌がらせをするというとんでもない行動力を見せる。
70年代の高性能盗聴器は本当に高価であり、間違っても中学生が手を出せるものではない。
ついでに何事もないかのように魔美が犯人だという噂を流したのだから恐ろしい。
ちなみに「なんとなく」で竹長の家に訪れた彼女だが、実際は「二人を引きはがすために脅迫状を送ったのに、それのせいで幸子が竹長の部屋に招かれてしまい悔しい」という理由で乱入したのではないかと推測できる。
ラストシーン後どのような処罰を受けたのかは不明。ただ、彼女は今後本編に登場しない


【アニメ版】


第16話「魔女・魔美?」として放映された。

アニメ版ではぶっちゃけ原作では空気だった幸子と竹長の活躍が掘り下げられているため、彼らに疑われる悲壮感がさらに強いものとなっている。また魔美が孤立するシーンは原作ではギリギリギャグテイストな描写だったが、アニメ版は動画であるためさらにつらく見える演出となっている。

『エスパー魔美』のターニングポイントと言える回であるためか声優の演技にも気合が入っている。特に魔美が高畑の言葉に涙を流すシーンは、よこざわけい子の熱演もあり非常にかわいらしい魔美にしては珍しくかわいい

最大の特徴は結末が真逆になっていること。まあテレビで放映するにはショッキングすぎるので仕方がないか。

ストーリーが変わってくるのは後半、高畑が真犯人を探すために作戦を開始してから。
原作では日上をおびき出すために盗聴器のスイッチを切っていた。
それに対しアニメ版では幸子の部屋に関係者を全員集めた上で敢えてスイッチを切らずに盗聴のトリックを説明した。
そして高畑はトリックがバレた以上今回の件は二度と起きないだろうとして、もう犯人捜しはやめることを提案した
彼の説得によって全員が納得し、盗聴器でそれを聞いていた日上は涙を流すのだった。

次の日の朝、流石に日上は罪の意識を感じ校門前で幸子のことを待っていた。しかし幸子は一瞬何か言いたげな顔をするも、ほほ笑んで「ほら、さっさとしないと遅刻するわよ」というのだった。
そして昼休みに幸子や竹長、日上たちは夏休みに竹長の別荘に遊びに行く計画を立て魔美や高畑もそれに加わる。
そしてこれが次回『地底からの声』にそのまま繋がることとなる。
まあ次のエピソードでの日上はいなくてもいいレベルで空気だが。

このようにかなり明るい終わり方をしている。これをハッピーエンドになった良改変と見るか、今回のキモであるラストシーンが変更された改悪と見るかはあなた次第。

ちなみに事件の解決後、高畑はもう一度魔美に超能力のことをくぎ刺しながらも、「使いすぎないなら」という約束で大量のビーズ*5をプレゼントしている。本当にイケメンである。



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