初球打ち

登録日:2019/05/26 (日) 23:43:47
更新日:2024/03/29 Fri 02:59:37
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狙いがあるなら、全員が初球打ちで3球でチェンジになっても構わない

―落合博満




初球打ちとは、野球において打席の打者が相手の投手がその打席において最初に投げた球を打ちに行くことを指す。

【概要】


野球用語の一種。文字通りの単語なので各メディアや解説などでも耳に(目に)する機会は多い。

初球をバットで叩き、その結果が安打であろうが凡打であろうが、「初球打ち」と統一して呼ばれる。
初球打ちを試みて空振りかファールになった場合に関しては、初球打ち狙いなのではあるが打席の結果が出ていないので初球打ちと認識しない見方も。
この場合は「初球打ちを狙った」と表現される場合もある。

初球打ちの是非に関しては、結果論で語られる事が多いのでなかなかに難しい性質を持つ。
安打になれば「積極的なプレー」と絶賛されやすく、凡打になれば「初球から簡単に打つな」と酷評されやすい。
尤も、スポーツは結果が全てな一面があるので、初球打ち後の選手への論評を「後出し意見」と決めつけるのも安易ではあるが。
そもそもを言うと、「打者は初球から振るつもりで打つ」というのが野球の基本セオリーなので、初球打ちが間違っているという事はまずない。

野球では、打者の基本的技術やチームのスタメンの戦術の一つとして使われる場合が多い。
野球をプレイする身であっても、プロ野球を観戦するなどの観戦者の身であっても、初球打ちに関する知識は頭に入れておくと良い。

初球打ちとは逆に対照的な性質を持つのは「カット打法」「ファール(ファウル)打ち」だろう。
一概に比較はできないが、初球打ちは「球数を消費させない」性質のなのに対し、カット打法などは「球数を消費させる」性質を持つ点は真逆と言える。


【初球打ちのメリットとデメリット】


◆メリット


  • 決め球を使われる前に打てる
これが初球打ちの最大の利点と言っても過言ではない程の効果となる。

投手からすると、2ストライクに達するまでは決め球を投げない配球をすることが多い。
また、ボール先行になりたくないという心理が働いてストライクカウント優先になるように投げてくる投手もいる。
そのため、初球は「ストライク狙いで逆に甘くなる」「最高の球の可能性が薄い」などと、打者的には絶好の狙い時なのである。

特に相手投手が滅多に打てない一流投手の場合、僅かにでも球が甘くなる可能性を秘める初球を狙うのは基本戦法とされやすい。
プロ野球などでは、初球打ちで凡打を量産し続けて相手エースに処理され続ける光景を見て「球数を稼がせて早く降ろせ」などとの批判が出る事がある。
しかし、チーム全体で僅かな隙を狙って初球を狙い続けているとすれば、策なく処理され続けている訳でもない事が分かる(それが効果があるのかは別として)。

  • 打者の精神的な優位
初球は三振をする可能性がまずないので、気持ちよくフルスイングを行える。

当然の話だがストライクを稼がれると、三振を避けたいが故に当てるバッティングや振らずにボールを狙うバッティングにシフトしてしまいがち。
そのため、空振ってもチャンスが残る初球が一番フルスイングしやすく、ホームランも叩き出しやすいとされている。

初球打ちの打率が高い野手がプロ野球でも多い事実がこれを証明しているだろう。

  • 相手投手への揺さぶりや打線の波の構築
初球を打って安打になれば、相手投手の精神的不安を煽る効果やチームの「打てそう」という意識の構築に繋がる。

特にノーアウトの状態で初球打ちに成功した場合は、球場全体の雰囲気を攻撃側の有利な空気に変えやすい。
相手の首脳陣に投手への信用を薄める心理の増長や相手ブルペンの不穏な空気を作れる可能性もある。

ただし「四球やフルカウントからの安打よりも初球打ちで打たれたほうがマシ」という考えの投手もいるので、絶対的に不安を煽る効果があるとは言えない。
また、ノーアウトで初球打ちでランナーを出したが結果0点と言った場合、逆に相手投手の自信や安心感を作ったりするという危険性もある(後述するが)。


◆デメリット


  • 相手の球数を節約させる
この点が初球打ちの最大にして最悪のデメリットと言える。基本初球を打つので相手は球数が必然的に少なくなる。

初球打ちを試みて凡打に終わると、相手投手は1球でアウトが取れたのでかなり儲けものになる。
これがチーム全体でもそういう様子になる場合、相手投手が長いイニングを投げる事に貢献してしまう。

1イニングの凡退でも全打者が3球三振の場合は最低限9球は使わせるが、全打者が初球打ちアウトの場合は3球になる。
2人が初球打ちで2アウトとなって残り1人が初球打ちではない場合でも、7球以内でアウトになれば三者三球三振よりも肩の負担は(データ上は)少なくなるのが分かる。

初球打ち戦法で相手投手から得点を奪っても、相手のベンチがイニング消費に重点を置いている場合は、続投の判断が下される事も少なくない。
そのため、炎上させても最低限のイニングは消費されてしまい、相手の中継ぎの温存を手伝ってしまう事もある(晒し投げになることもある)。
その場限りの対戦や短期決戦の場合はともかく、プロ野球などのペナントシーズンで相手の中継ぎを出せないのは長期戦略的には痛い。

  • 打線の士気低下の相手投手への貢献の危険
メリットとして「打線の波の構築」「相手投手への揺さぶり」を挙げたが、場合によっては逆に打線の波を破壊する可能性がある。

初球打ちであっさりとイニングが終了したり、チャンスで初球凡退をやらかすと一気に空気が悪くなる。
特に無死一塁で初球打ち併殺や1死満塁での初球打ち内野フライなどの失敗は、初球打ち失敗の最悪のパターンと言えるだろう。
相手からすると、ピンチで球数少なくアウトを取れたことは肩への負担の軽減や不安に陥る精神状態の改善に大きく繋がる。

また、初球打ち凡退でイニングが終了する事は守備の時間が短くテンポが良くなりやすいので、相手野手の精神的集中力の増加に繋がりやすい。









追記・修正は1番打者として1回表に初球打ちでホームランを打った経験がある人にお願いします。

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最終更新:2024年03月29日 02:59