吸血鬼ラ・セーヌ(ゲゲゲの鬼太郎)

登録日:2019/05/26 Sun 09:40:00
更新日:2019/05/28 Tue 22:15:10
所要時間:約 15 分で読めます





吸血鬼ラ・セーヌ」とは、水木しげる原作「ゲゲゲの鬼太郎」アニメ第一期、第四話のエピソード。
原作は「手」。



【ストーリー】

フランスはパリ、エッフェル塔にほど近い「オペラホテル」の大広間では、各界の名士を集めてのダンスパーティが開かれていた。
その華やかな舞台に、黒いスーツとシルクハットで身を固め、葉巻をくわえた、やたら目つきの鋭い紳士が紛れ込んでいた。
紳士はその鋭すぎる視線を、椅子に座って休んでいたカトリーヌという若い女性へと向ける。
邪悪な笑みを一瞬浮かべた彼は、特注の手袋に両手を包むと、いかにも紳士としての洗練された動きで彼女を誘う。

穏やかに踊るふたりだったが……彼女の薄いドレスの生地を破って、男の爪が手袋ごと食い込んだことに、周囲のひとはだれも気づかなかった。

声にならない悲鳴を上げて、急速にやつれていくカトリーヌが最後に見たのは、男──吸血鬼ラ・セーヌの満面に浮かべた凶悪な笑みだった。

カーテンの裏からふたたびカトリーヌが姿を現したときには、美しい少女はミイラとなって死んでいた。



カトリーヌ嬢の遺体はさっそく病院に運ばれて司法解剖を受けたが、全身の血液が一滴もないということで、度しがたい事態に医者も警官も困り果てる。
しかもこのような事件は初めてではなかった。すでに同じような死にかたで、十二人もの若い女性が命を絶たれてきた。カトリーヌを入れて十三人だ。
とうとう「吸血鬼」という言葉が流布する始末で、それがフランス一国では収まらず、全ヨーロッパ、果ては遠く離れた日本にまで、その恐怖は広まっていた。

この「血なし病」と通称された奇病に、日本政府はとりあえずフランスからの輸入品に検疫を強化することで対処しようとした。
ところが、街頭テレビでそれを眺めていたゲゲゲの鬼太郎は、それについてあっさり「ムダなことさあ」とぼやいた。
他人事のような態度に、いっしょにテレビを眺めていたひとびとがいきり立つ。
すると鬼太郎は「血なし病は吸血鬼の仕業だからですよぉ」と答えた。
周りの人たちは笑うだけで取り合わなかったが、鬼太郎はこの原因を遠く日本にいながら把握していたのである。


そして、吸血鬼ラ・セーヌもまた、鬼太郎のことを把握していた。
自分の正体を知り、かつ、いずれ自分を討伐に来るであろう相手のことを。
「ゲゲゲの鬼太郎……?」
丸々と太った男が、ラ・セーヌから聞いた名前を復唱する。
彼の名はマンモスといい、人間だが腕利きの殺し屋であり、ラ・セーヌの用心棒にして従者のような男である。

「うむ……世界中の妖怪たちが鬼太郎の正体を知りたがっている」
「あ、なるほど。それで先生は、鬼太郎の正体を探るために日本へ行こうとそういうわけで!?」

しかしラ・セーヌは、ただ鬼太郎を調べることだけを考えてはいない。ラ・セーヌの狙いは、マンモスと組んで鬼太郎を暗殺することにあるのだ。
すでに東京には最新式のマシンガンを密輸入しており、かつまた地元で極秘に案内役も雇っている。
ラ・セーヌはマンモスをともなって飛行機に乗り、一路日本へと旅立った。


ところが、「鬼太郎暗殺」というラ・セーヌの目標は──繰り返す。「暗殺」、ひそやかに殺すという計画は、東京についた瞬間コッパミジンに消し飛んだ。

東京国際空港では、「歓迎 ラ・セーヌ大博士」という横看板とともに、大量のマスコミを従えたねずみ男が待ち構えていたのである。

「あアー、大博士の飛行機がお見えになりましたぞー! ラ・セーヌ博士バンザーイ!!」

いきなり絶句するラ・セーヌ主従。しかもねずみ男──ラ・セーヌが鬼太郎に接触するため「極秘に」雇った──は、困惑するラ・セーヌたちを適当にあしらいながら、いきなり記者会見場へと連れ込んだ。
ねずみ男はラ・セーヌが来ると知り、彼を「血なし病に詳しい博士で、特効薬を発明してやってきた」というていで売り込もうと考えたのである。もちろんラ・セーヌにはなんの相談もしていない。
激怒するマンモスとイラつくラ・セーヌは、ねずみ男も暗殺のターゲットに設定した。

といっても、まさかこれだけの記者を含めて一瞬で皆殺しにはできない。とりあえずラ・セーヌは博士然としたふるまいで、てきとうに記者たちをあしらった。
……まあ、勝手にセッティングされた記者会見で容赦なく質問責めにされたので、最後はマンモスがブチギレてむりやり終わらせたのだが。マスコミはこのころからマスゴミだったのか!
「日本人をだましに来たという噂もありますがね!」なんて詰問調で押しかけられれば、そりゃラ・セーヌだって顔色変えるし、マンモスだってキレるよ。



とまあさんざんな記者会見だったが、ねずみ男の暴走はとどまるところを知らず、というよりここからが本番だった。
彼はラ・セーヌの名前が売れたのを利用して、さっそく「血なし病 生ワクチン」なる看板を掲げた「ねずみ男診療所」を立上げ、インチキ薬を売り始めたのである。

しかも「若くて美人ほどかかりやすい」と言い出し、そのうえでワクチンの配布を「Aクラスの美人は三杯、Bクラスは二杯、Cクラスは一杯」「ワクチンは一杯ぶん千円」女性たちの恐怖とプライドに漬け込んでむちゃくちゃな商売を展開した。
当然、列をなす客人たちはだれもが三千円を払っていく。
そもそも千円というのも暴利で、現代価格だとざっと一万円ぐらいになるだろう。多くのひとがAクラスと申請するから、ねずみ男は半日で大金持ちになってしまった。


あまりのあこぎさに、もっとも怒っているのはマンモスだった。
もちろん彼の場合、激怒の原因は女性たちが利用されていることに対してではなく、敬愛する主人を愚弄し切った挙げ句とことんまで利用したことに対してであるが。
もはや口を利くのも嫌だといわんばかりに、マンモスはへらへら笑うねずみ男の眉間に、狙撃銃の照準をつけた。

ところが、そのマンモスを止めたのはほかでもないラ・セーヌ自身だった。
「でも……でもあいつは先生を利用してカネ儲けをしてるんですぜ?」
「さらにそれを利用させてもらうんだ……鬼太郎は自分が狙われているのを霊感で知っている。やつは普通のことではぜったい姿をあらわさんのだ。……嫌いなものをちらつかせるより、仕方があるまい」

それでもピンと来なかったマンモスだが……その直後、ラ・セーヌ主従は下駄を鳴らして歩いてくる隻眼の少年、鬼太郎を発見した。
明らかに憤慨している鬼太郎は、歩くというよりも突進するような勢いで、ねずみ男のインチキ医院へと進入。
いつも通りの、かつ謝ってもすまない搾取にいきり立った彼は、弾劾されて脂汗を流しながらもカネだけは手放すまいとするねずみ男を猛烈に締め上げた。
するとねずみ男はあっさり「ワタシはラ・セーヌ博士の言いつけ通りにやってンですからねエ!」とラ・セーヌに責任を押しつけた。
「そいつが黒幕だな!」

そのやりとりを、薬局の扉に近づいてラ・セーヌ主従が聞いていた。
ねずみ男がラ・セーヌに押しつけることも想定のうちだった。いやむしろ、彼はねずみ男にはそのように言い含めていたのである。

「ラ・セーヌ博士は高名な鬼太郎さんのこともよぉーく知っておいででしてエ」
「僕のことをよく知ってる……?」
「ハイ! それで今晩ぜひ、お会いしたいそうですがア?」

その言葉に隠された意図を、鬼太郎もまた敏感に読み取っていた。これは吸血鬼が、鬼太郎に叩き付けた挑戦状である。
しかし決闘の申し込みなら、彼にとっても話が早い。
「よし! 会おう!」
決然と宣告する鬼太郎。ラ・セーヌもまた迫る決戦に邪悪な笑みを浮かべていた。



夜になり、指定した墓場でラ・セーヌとマンモスは鬼太郎を待ち構えていた。
カラスが三度なきオケラが四度なくと、鬼太郎が現れるという。その声も聞いた。
マンモスはマシンガンに弾倉を装填して隠れ、ラ・セーヌはひとりで鬼太郎を待つ……

と、そこに下駄の音も高らかに鬼太郎が出現。
ラ・セーヌも姿を現し、正面から相対した。

「おお、親愛なる鬼太郎先生。お待ちしておりました。わたしがラ・セーヌです」
シルクハットを捧げて、あくまで紳士的に振舞うラ・セーヌ。しかし鬼太郎は最初から敵意をぶつけていた。

「ラ・セーヌ博士! ほかのひとはだませても、僕はだまされないぞ!」
「だますなどとんでもない……」
「黙れ吸血鬼!」

いきなり正体を暴かれて、ラ・セーヌの表情が一瞬引き吊る。それを見逃す鬼太郎ではない。

「とうとう本性を現したな、吸血鬼観念しろ!」


「ククククク、観念するのはお前のほうだ、あれを見ろ!!」

開き直ったラ・セーヌが笑った瞬間、石塔の陰からマンモスが飛び出した! 腰に抱えたマシンガンが火を吹き、無数の銃弾が鬼太郎に殺到して噴煙が巻き上がる!

「弾がなくなるまで撃ちまくれ!!」

……やがて、残弾が尽きて煙が晴れたとき、鬼太郎の姿は完全に消えていた。残っているのは片方の下駄だけ……
驚くマンモスだったが、同じ妖怪のラ・セーヌは「人間じゃないんだ、死体がなくても不思議ではない」と、気にすることなく歩き去った。

「とにかくやつは死んだのだ……クククフフ……」


……吸血鬼たちが去ったあと、墓地に残っているのは打ち菱がれたねずみ男だけだった。



「すまん、おれが欲深い考えを起こしたばっかりに、こんなことになって……」
翌日、ねずみ男は鬼太郎の家まで戻って、目玉おやじに一部始終を報告していた。
目玉親父は、当初こそ「機関銃に打たれたぐらいで死ぬ鬼太郎ではない」と余裕ぶっていたが、帰ってきたのが下駄の片方だけ、しかも不吉にも真っ二つに割れたのを見ると、ただならぬ気配を感じて戦慄した。



鬼太郎を倒したラ・セーヌ主従は、東京のホテルで優雅にくつろいでいた。
もはや吸血鬼を止められる相手はいない。手始めとばかりに、テレビスターの花沢恭子に面会を申し入れた。
ねずみ男のせいでラ・セーヌはすっかり名士であり、花沢はあっさり、一時間後の面会に同意した。
「日本女性が外人に弱いっつーのは本当ですね先生」
「クククフフ、久しぶりの新鮮な血だ……」

と、そこにはっきりと下駄の音が。

驚愕するマンモス。ラ・セーヌは、分厚いじゅうたんを敷きつめたホテルで下駄が鳴るはずがないというが、その音は確かに迫ってきている。
焦れたマンモスが、例のマシンガンに弾倉を込めて扉を開けた……が、扉の前にはだれもいない。
首を傾げながらも戻るマンモスだったが、その足元で下駄が入り込んだのには気づかなかった。

部屋に進入した下駄は、いきなり明かりを消すと、暗闇のなかで縦横に飛び回ってラ・セーヌとマンモスを激しく殴打。
ボロボロになりながらも、ラ・セーヌはかろうじてホテルのボーイを呼び寄せた。
ところが、ボーイが部屋に入ると明かりは普通に点くし何事も起こらない。

そのボーイから、花沢恭子が到着済みと聞いたラ・セーヌは、異変のことはあと回しにして、ロビーにて花沢と面会。マンモスはフランスからの化粧品を箱に入れて渡した。
ところが、蓋を開けてみると入っていたのは片方だけの下駄!
ラ・セーヌとマンモスは驚愕し、花沢は憤慨して席を立ってしまう。
花沢のことはあきらめたラ・セーヌだったが、その下駄が鬼太郎のものだということはわかった……



明けて早朝、ラ・セーヌは風呂場からのうるさくしつこい水音で目が覚めた。
てっきりマンモスが入っているのかと思って怒鳴りつけると、風呂場ではなく隣室からマンモスが出現。
風呂場を覗いてみると、湯船のなかで下駄が浮かんでいる!
もう疑う余地はない。鬼太郎は生きていて、下駄を利用して挑戦してきているのだ。

そっちがその気ならと、ラ・セーヌは下駄をホテルの床に釘づける挙に出る。とどめにマンモスがマシンガンで下駄を蜂の巣にしてしまった。
それでも油断はできない。ラ・セーヌは東京を離れ、遠方に身を隠すことにした。

新幹線や蒸気機関車を乗り継ぎ、都心部どころかひとの気配もない、山間の果て……そんなところに、ラ・セーヌは別荘をこしらえていた。
どうやら新築らしく、外はひどい田舎だが、内部は立派な洋風の屋敷である。
東京から五百キロもある距離だ。下駄が歩けばすり減る……と笑うマンモスだったが、その窓には例の下駄が張り付いている!
驚くラ・セーヌだったが、それでもこの別荘には入れないと意気込む。
「この屋敷の窓と入り口にはフランス製電気錠が取り付けられている。この鍵は一定の時間が来るまでどんなことがあっても開かんのだ!」
「なるほど、鬼太郎も別荘の周りをうろうろするだけですね」
「そういうことだ」

すると、下駄が今度は天井を歩き出した。洋式で作ったため、煙突が設けられている。そこを狙われたのだ。
煙突の下には暖炉がある。
「火を焚くんだ!! 焼き殺せ!!」
ラ・セーヌの指示が飛びマンモスが火を放つ。普通なら暖炉に火を付けても炎になるには一苦労だが、悠長にしていられない。石油を掛けて一気に炎を強くした。
これで下駄も燃えつきると思われたが……


急に炎の勢いが弱まった、かと思うと、いきなり爆発したかのような勢いで炎が巨大化し、しかも部屋のなかに向けて逆流しだした!!

「うわあっ、あちちちちちぃっ!!?」
「うおっ!? ど、どうしたのだ!!?」
主従は外に逃げようとしたが、巨漢のマンモスがどれだけ体当たりしても扉はびくともしない。
「しまった!! 電気錠が掛けてあった!! あと八時間しなければ開かんのだ!!」

ラ・セーヌとマンモスの絶叫が響き渡り、そのふたりの悲鳴を炎がゆっくりと飲み込んだ……




翌日の新聞に、ふたりのフランス人の焼死体が発見された、と小さい記事が載った。
その意味を、ねずみ男と目玉親父は理解はしたが……ふたりしかいない部屋には、喜色はさっぱりなかった。
「悪いやつらも死んだけれど……鬼太郎も……」
「かわいいせがれじゃった……」


と、ずっと静かだった、半分に割れたままの下駄が、いきなり逆回しのようにしてくっついた。
驚くふたりだが……さらに庭先の虫たちがざわめき出す。
目玉親父とねずみ男が窓を覗くと、片方だけの下駄の音を響かせて、傷ひとつない鬼太郎が歩いていた。
「僕はそう簡単に死にゃあしないよ!」
明るく笑う鬼太郎は、部屋に残った下駄を脳波で呼び寄せて、やっと両足ともに下駄に揃えたのだった。


【解説】

「吸血鬼ラ・セーヌ」は、原作のエピソードは「手」。
フランスの吸血鬼ラ・セーヌと殺し屋マンモスが鬼太郎の暗殺を狙うというのは変わりがないが、原作ではマシンガンに撃たれたあと残っているのは下駄ではなく鬼太郎の切断された右手である。
同じように鬼太郎の切り放された手が暗躍する「ぬらりひょん」も三度アニメ化されたが、いずれのパターンでも鬼太郎が操るのは、「切断した手」から「リモコン下駄」に変更されている。
そもそも鬼太郎は、原作ではわりと頻繁に肉体の一部を切り放し、それを遠隔操作して戦うが、アニメではそれが採用されることはまずない。
同じく指を切り放して発射する「指鉄砲」も、アニメで使われるときにはエネルギー弾に変わっている。

原作を意識しつつも、放送コードに抵触する恐れのある描写は回避する、というのは、この「吸血鬼ラ・セーヌ」から始まっているといえるかもしれない。

まあ、それにしては美女が惨殺されたり、敵とは言え人間ふたりの断末魔の絶叫が激しく響いたりと、わりと肝が冷える描写も散見されるが。


【登場人物】

  • ラ・セーヌ
「クククフフ……鬼太郎め待っていろ……」

のちに登場する「吸血鬼エリート」と同じく、フランスに縄張りを持つ吸血鬼。
アニメ鬼太郎では最初の吸血鬼*1にして、最初の西洋妖怪でもある。
両手の爪が長く伸びており、その爪を突き刺して目標の血を吸い上げる。
吸血の折りにはわざとらしく手袋をつけている。説明はないが、この手袋も吸血時に赤く染まるなど、何かしらのツールのような描写がなされていた。
いかにも紳士らしい出で立ちをしているが、実際に紳士らしく、起居振る舞いはやけに洗練されていた。

野望のために多くの人間を殺してきたとんでもない悪人ではあるが、本作ではどういうわけだか、やけに人間らしいというか明るいキャラ付けがされている。
東京到着早々のねずみ男の凶行にぶったまげたり、記者会見の場に立たされて、しかも無礼窮まりない詰問をされてムカッ腹を立てたり、風呂からの音にうるさくてうめいたり(しかもできるだけ我慢していたり)、汗だくになりながら金鎚を振って下駄を釘付けにしたり、とわりと感情豊か。
東京から離れるときの汽車のなかでは、転がってきた下駄に驚愕したところ、同じ汽車に載っていたおっさんの落とし物だったと発覚。
マンモスとふたりで苦笑いしあい、彼らなりに喜怒哀楽のしっかりした、生きた人間らしいところがわりと描かれている。

それだけに、無慈悲にゆっくりと焼き殺されるのはなんとも言いがたいものを感じる。もちろん、彼らの行ないは外道であるし、鬼太郎も正々堂々勝利したのだが、善悪を超えた勢いがあったといえる。


  • マンモス
「先生! 早く参りましょう!!」

ラ・セーヌの用心棒で従者。ラ・セーヌは「秘書」と紹介したことがあるが、実際に雑用いっさいを担っている。
丸まると太った巨漢で、本性は殺し屋。描写こそないが多くの人間を手に掛けてきたと見られ、銃火器の使い方に慣れているほか、鎖付きトゲ鉄球も愛用らしい。

とまあここまで書くと冷血無慈悲な暗殺者だが、実際は丸っこいデザインやひょうきんな描写、ひたむきにラ・セーヌを尊敬して尽くす性格から、むしろ愛嬌のあるキャラクター
ラ・セーヌには最初から最期まで忠実・実直で、彼を利用して荒稼ぎをするねずみ男に本気で怒ったり、無礼な質問責めを仕掛けるマスコミを怒鳴ったりと、「先生」を心から尊敬しているようだ。

ちなみに、アニメで鬼太郎が殺害した最初の人間でもある


「僕の下駄は、脳波でリモートコントロールができるんだ」

主人公だが、今回は全編に渡り出番が少ない。
序盤はラ・セーヌ主従の暗躍、中盤はねずみ男の暴走、終盤はラ・セーヌ主従の逃避行、に間を取られているうえに、鬼太郎はリモコン下駄を操る黒子になってしまったため、鬼太郎の出番が少なくなってしまった。

とは言え、ねずみ男に憤慨して締め上げたり、ラ・セーヌの存在をいち早く察知したり、現れた吸血鬼に最初から敵意をぶつけたりと、感情をあらわにする場面が多く、印象はむしろ強いほうである。

ちなみに原作「手」だと、鬼太郎のセリフはひとつしかない

「みごと! それでこそゲゲゲの鬼太郎じゃあ!!」

今回、ゲゲゲハウスから一歩も外に出なかった。
鬼太郎が機関銃で撃たれたと聞いても高を括っていたが、実際に鬼太郎になにか起こったと知ると余裕はふっ飛び、ラストまで嘆きっぱなしだった。
しかし前者と後者でキャラクターのブレが大きいうえ、嘆き方がいささかチープなため、それぞれの性格を発揮した鬼太郎やねずみ男、ラ・セーヌやマンモスに比べるとどうにも地味。
もともと、原作「手」では目玉親父はまったく登場しないため、このような味付けの薄いキャラ付けになったと思われる。

「鬼太郎! お前死んだんじゃないのか!?」

ラ・セーヌに雇われて「ひそかに」鬼太郎と接触する案内役となるはずが、勝手にラ・セーヌを報道陣に売り渡し、「血なし病」ワクチン開発者として祭り上げたうえで、荒稼ぎを図る。
途中からはラ・セーヌも一枚噛んだが、ラ・セーヌは当初ねずみ男が記者会見を開いたあたりではおもいっきり困惑していた。つまり、ねずみ男はラ・セーヌを最初から罠にはめたのである。それで雇用主や記者、そして恐怖におびえてすがりつく女性たちがどれほど困ろうが知ったこっちゃない。
のちの「猫娘とねずみ男」や「二期」で見せる傍若無人っぷりは、四話にして早くも存分に発揮されていたのである。

しかし、ラ・セーヌとマンモスによって鬼太郎が暗殺されたときには深く傷つき、目玉親父に涙声で謝罪する、高を括る親父に本気で憤慨する、下駄が不吉に割れたのを見て驚く、帰ってきた鬼太郎を心の底から喜ぶ(上記のセリフはその時のもの)、といった意外な一面を見せる。
今回の時点では、鬼太郎には本気の友情を抱いていたようである。

原作「手」では一切登場しないが、目玉親父と異なりキャラクター性を生かして活躍している。


  • カトリーヌ嬢
吸血鬼に目をつけられ、非業の死を遂げた若き女性。
殺され方と死体の扱いがなかなか惨たらしい。このあたりの残酷さは、いかにも昭和中期の一期鬼太郎らしい展開。なお、彼女らの存在はアニメオリジナルである。

  • マスコミ
ねずみ男に利用されて、なにも知らないラ・セーヌを「ワクチンを開発した博士」として質問責めにする。
しかしねずみ男が焚き付けたとは言え、その態度はハッキリ言って無礼千万。
ラ・セーヌに対して「なぜワクチンをフランスで使わなかった」「もっと速く発明していればあれほどの死者は出なかったはず」「ハッキリ答えてください」と、まるで「お前の不手際で感染が広がった」といわんばかり。
とどめに「日本人をだましているんじゃないか」と詰問する始末で、あまりの物言いにラ・セーヌは顔色を変えマンモスは激怒。
マスゴミはこの頃から存在したようだ。
(ちなみに、水木しげるはマスコミをモチーフにした「マチコミ」という短編を作ったことがある)


【余談】

原作「手」は、鬼太郎シリーズが週刊マガジンに移籍してからの最初の作品である。
この頃はまだタイトルは「墓場の鬼太郎」だったが、後世からは本作こそが墓場鬼太郎」から脱皮し、「ゲゲゲの鬼太郎」へと移った最初の作品という評価になっている。

ただし、ラ・セーヌ以前に登場していた吸血鬼であるドラキュラ四世(「墓場」の「下宿屋」登場)、夜叉、吸血鬼エリート、あるいは「手」より後に登場するドラキュラ(ベアード配下。ベラ・ルゴシ風)といった、鬼太郎シリーズで有名な吸血鬼たちと比べると、
ラ・セーヌはリメイクやデザイン流用、アニメ化の機会に恵まれず、いささか地味な扱いとなっている。
一応「新編ゲゲゲの鬼太郎」にてデザイン・設定を大きく変えて再登場(というか実質同名の別人)しているものの、やはりエリートらに比べると知名度は大きく劣る。

「新編」ではフランスからやって来た大物吸血鬼で、千人の美女の生き血を吸って寿命を千年伸ばそうと企んでおり、最後の標的を日本人に定めて来日している。マンモス?知らん
猫娘が好みのタイプだった様で、彼女を千人目の標的に選ぶが……?
ダンディーな紳士という点は「手」と同じだが、こちらはマントを羽織ったいかにも吸血鬼然とした出で立ちで、吸血方法も噛み付いて血を啜る昔ながらのやり方。
だが、他の吸血鬼たちと一線を画する点として、蝙蝠の発する超音波を利用した瞬間移動装置を発明しており、科学技術にも精通していることが窺える。

そしてこのたび、アニメ六期においてなんと吸血鬼エリートの次のエピソードで登場し、界隈を驚かせた。ただし、六期のラ・セーヌは原作やアニメ一期とは似ても似つかぬ逆立った金髪の小柄な少年に改変されている。


PS2ソフト『ゲゲゲの鬼太郎〜異聞妖怪奇譚〜』では、ドラキュラ率いる世界妖怪軍団の幹部として登場。
デザインは新編のものだが「手」での設定も微妙に混ざっているらしく、武器としてマンモスの使っていたマシンガンを使用する。
また、同じ吸血鬼であるドラキュラとエリートを「兄弟」と呼んでおり、特にエリートとつるんでいるシーンが多い。
本作では紳士ぶってはいるが割と直情的な性格として描かれており、血気に逸る所をエリートに宥められる一幕も。
超音波瞬間移動や猫娘との一件といった原作要素もしっかり盛り込まれているので、ファンならニヤリとさせられることだろう。


なお、原作ではラ・セーヌとマンモスは「ラ=セーヌ」「ザ=マンモス」と表記されている(新編からは「ラ・セーヌ」表記)。




「おお、親愛なるアニヲタ先生。これがラ・セーヌの項目です」
「黙れWiki籠もり!!」
(ぬっ!? やはり追記・修正するつもりか!!)


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