果敢な勇士リン・シヴィー/Lin Sivvi, Defiant Hero(MtG)

登録日:2010/12/24(金) 13:01:26
更新日:2023/04/19 Wed 20:18:11
所要時間:約 2 分で読めます




《果敢な勇士リン・シヴィー/Lin Sivvi, Defiant Hero》はマジック・ザ・ギャザリングのネメシスに収録された白のクリーチャー。レアリティはレア。
メルカディアン・マスクスにて登場した部族「レベル/Rebel」におけるリーダー的な存在である。



果敢な勇士リン・シヴィー/Lin Sivvi, Defiant Hero  (1)(白)(白)
伝説のクリーチャー:人間(Human)・レベル(Rebel)
(X),(T)あなたのライブラリーから、点数で見たマナ・コストがX点以下のレベル(Rebel)・パーマネント・カードを1枚探し、それを戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。
(3):あなたの墓地にあるレベル・カード1枚を対象とし、それをあなたのライブラリーの一番下に置く。
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当時のプレイヤーからの通称はリン姉。ただし普通に「リン」や「シヴィー」と呼ぶプレイヤーも多かった。この項目では以降、他の固有名詞と被ることが少ない他、《シヴィーの武勇》など他のカード名にも使われている「シヴィー」と呼ぶことにする。

さて、シヴィーの説明をする前に今のレベルの状況を理解する必要がある。少し長くなるぞ。


Ramosian Sergeant / レイモス教の兵長 (白)
クリーチャー — 人間(Human) レベル(Rebel)
(3),(T)あなたのライブラリーから、点数で見たマナ・コストが2以下のレベル(Rebel)・パーマネント・カードを1枚探し、それを戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。
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Defiant Falcon / 果敢な隼 (1)(白)
クリーチャー — レベル(Rebel) 鳥(Bird)
飛行
(4),(T)あなたのライブラリーから、点数で見たマナ・コストが3以下のレベル(Rebel)・パーマネント・カードを1枚探し、それを戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。
1/1

Ramosian Captain / レイモス教の隊長 (1)(白)(白)
クリーチャー — 人間(Human) レベル(Rebel)
先制攻撃
(5),(T)あなたのライブラリーから、点数で見たマナ・コストが4以下のレベル(Rebel)・パーマネント・カードを1枚探し、それを戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。
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Rebelというのは本来は反乱者のこと。秩序や正義の白とは正反対のように思えるのだが、これは「悪玉への圧政に反乱する善玉勢力」だから。*1
さて、このレベルという部族には、自分より点数で見たマナ・コストが1つだけ高いレベルをライブラリーから直接戦場に出すことができる能力を持つカードがある。これを主軸にして、ライブラリーから直接カードを展開し、連鎖的に呼べるクリーチャーを大きくしていく戦略を軸とすることになる。
ライブラリーから直接戦場に出せるというのは強力だ。しかも「手札を使わず、色拘束すら無視して、起動型能力なのでインスタント・タイミングで、しかも打ち消されることなく展開できる」のである。

これがリクルート能力の利点であり、打ち消し満載の青単メガパーミッションのようなデッキに対して有利をとれる*2。「ごめんねー、打ち消せないんだよこれ!
さらにクリーチャー展開をインスタント・タイミングで行えるのでパーミッション側が使うことにも適している。「あ、打ち消せるもん何も唱えないんだ?じゃあレベル引っ張ってくるね
このリクルート能力は、反乱の輪が広がる様子を再現しているようだ。小さな人でも、熱意をもって高官や実力者を動かし、果ては戦場をも左右していく…まさに「反乱」の名にふさわしいメカニズムというわけだ。

ドローする必要すらなく、場合によっては色すら合わせずにすみ、隙も作りづらく、打ち消されることすらなく、自分より大きいクリーチャーを展開する。一見利点だらけに見える能力だが、当然欠点はある。
リクルート能力でクリーチャーを呼ぶ際のコストは、本来のコストよりも1マナ重いのである(赤字部分参照)。
しかも呼べる範囲には制限がある。「4マナのレベルを呼びたいが、戦場には《レイモス教の兵長》しかいないので呼べない」ということも起こる。また、「飛行が欲しいから《果敢な隼》を呼びたいが、戦場には《レイモス教の隊長》しかいない」という状況になると、2マナのカードのためにわざわざ5マナも支払うという割高なことを強いられてしまう

そのため「リクルートに頼りっぱなしではマナがいくらあっても足りない」という状況に陥りやすい。
TCGかじってれば誰でもわかる強さだと思われがちだが、この時点ではぶっちゃけ動きがもっさりしてて柔軟性がなく、そこまで強いわけではない。
そのうえ、リクルート能力を持っている分クリーチャー本体は「コストの割には弱い」ことが多い。ライブラリーから直接出せても素が弱いのでは仕方がない…そのため実際はそこまで強い戦術というわけではない。
同じようなリクルート能力を擁する黒の部族「傭兵」も似たようなもので、このテンポ損にどうやって向き合うかということを考えるうちに
よし!素直にテンポ損しないデッキを使おう!
という結論になってしまうのである。

ここで続くネメシスで登場した《果敢な勇士リン・シヴィー》を見ていく。

まずリクルート能力だが、本来「呼べるクリーチャーの最高マナ・コスト+1」で固定されているリクルート能力の基本から外れ、等価で呼び出すことができる。つまりリクルーターのライブラリーからリクルートするときは1マナ重いという弱点が解消されている。呼び出すコストが軽いのだ。
しかもどんなマナ・コストのカードでも呼べる。7マナだろうと2マナだろうと、Xの値をそれに合わせれば呼べてしまう。
同じく3マナの《レイモス教の隊長》と比較してみると、「4マナ以下のレベルしか呼べない上に、どんなカードを呼ぶときも5マナ必要」な隊長に対し、シヴィーは「どんなレベルでも呼べる上に、それに応じてコストを軽くすることも可能」。能力の柔軟性が分かるだろう。

これだけでも十分強いのだが、3マナで墓地のレベルをライブラリーに戻す回収能力も強烈だ。
墓地に落ちてしまった強力なレベルを再利用できるというのはもちろん、墓地にすでに落ちている別のシヴィーを戻すこともできる。
しかも能力にタップを含まないので「戦場に出たターンにも起動できる」「1ターンに何度でも起動できる」「回収能力の後にリクルート能力を起動することで、墓地から疑似的にリアニメイトする」という柔軟性もある。柔らかすぎないかお前

この2つ目の能力によって、たとえば神の怒りで一掃されても手札にシヴィーをリクルートできるレベル、あるいはシヴィー本人さえ握っておけば、墓地回収とリクルートによってあっさり戦線を築き直せる
つまりシヴィー1枚があれば、テンポ損のみならず様々な弱点を解消できてしまう上、本来クリーチャーを大量展開するデッキの弱点である全体除去すらリカバリーできてしまうのだ。

そのためレベルデッキは「3マナのレベル=シヴィーにいかにアクセスできるか」という点が重要視されるのだが、ここで既に述べたレベル全体の説明を思い返してほしい。
自分より点数で見たマナ・コストが1つだけ高いレベルを呼び出す
つまり2マナ以上のリクルーターは、必然的にシヴィーをリクルートできるのである。
デッキに入れない理由がどこにもない上に、そのレベルデッキを一気に大躍進させてくれるシヴィーを得たレベルは、当時のMTGに一気に蔓延した。


弱点としては、クリーチャー・タイプがレジェンド(現在の伝説のクリーチャー)だったという点。
つまりシヴィーの2人目、3人目を出して一気に戦線を整えるということはできない…のだが、実はこの部分も弱点と言いづらい部分があった

当時のレジェンド・ルールは「戦場に1枚しか出せない。後から出たほうは即墓地送り」というもので、先出し有利だった。
そして上述のシヴィー自身のリクルートのしやすさや、墓地回収能力によるリカバリー能力の高さから、完全に除去するのはまず無理。
つまりレベル同士のミラーマッチの場合、レジェンド・ルールの都合上「先にシヴィーを出したほうが勝つ」のである。

戦場に1枚あるだけで大勢が決するカードなので、このカードに関する話はそれこそ枚挙にいとまがない。
「除去してもすぐに2枚目、3枚目をリクルートされて戦線を立て直されるので、《不実》《威圧》《袖の下》などで奪うことでレジェンド・ルールを使って封じる戦術があった」反乱者のリーダーをあっさり裏切りさせるとは、呪文とは実に強力なものである。
「それらのデッキに、レベル対策カード《反逆者の密告人》を1枚だけ入れておく。奪ったシヴィーでリクルートする
などなど。

この事態を重く見た運営側は、マスクス・ブロック構築において、《果敢な勇士リン・シヴィー》を禁止カードに指定した。
さらに、この「シヴィー先出しが圧倒的有利なレジェンド・ルール」は、不愉快どころか先攻の有利性すら加速させてしまうことになる。これが神河物語におけるレジェンド・ルールの更新(対消滅ルール)につながっていくこととなる。


スタンダード環境では禁止には至らなかったが、高い展開力とリカバリー能力を持つシヴィーが強い事に変わりなく、トップメタとして警戒され続けた。
ウルザ・ブロック+マスクス・ブロック期では純正のレベルもさることながら、白ウィニーにレベル・パッケージを入れたデッキも強かった。
白ウィニーの弱点として「点数で見たマナ・コストがまとまりがちである」という点があるのだが、レベルはこれをたやすくばらけさせることができ、点数で見たマナ・コストが同じパーマネントを一気に吹っ飛ばす《火薬樽》などに強くなる。
また、憎い憎い青単メガパーミッション系のデッキに対して、リクルーターを1枚出せさえすれば以降打ち消されずに戦線を展開できるため、カジュアル人気も高かった。
そして対となる部族の傭兵にはシヴィーのような優れたリーダーがいなかった*3のと、この頃の基本セットである第6版では黒ウィニー用の不吉の月は収録されず使用不可になった一方、白ウィニー用の十字軍はしっかり残ったことで黒に期待したプレイヤーの大半が涙を飲んだ。いいよなー白は優遇されててさぁー!*4
スリヴァーについでまともに作れる部族デッキということや、シヴィーという核を持つことによる戦術の分かりやすさなどから、当時のプレイヤーの間では人気が高かった。


とはいえ所詮は部族デッキの一種である。スタンダードにおける部族デッキは、その部族がフィーチャーされていなければろくな強化がもらえないままフェードアウトすることになる*5
ローテーションによりウルザ・ブロックが落ち、続くインベイジョン・ブロックではレベルはろくな強化をもらえず、さらに多色環境ゆえの強力なライバルたちが台頭してくることになる。
そしてレベル対策として作られた強烈な部族メタのインスタント《サーボの命令》は、想定通りレベルを非常に苦しめた。

Tsabo's Decree / サーボの命令 (5)(黒)
インスタント
クリーチャー・タイプを1つ選ぶ。プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、自分の手札を公開し、選ばれたタイプのすべてのクリーチャー・カードを捨てる。その後そのプレイヤーがコントロールする選ばれたタイプのすべてのクリーチャーを破壊する。それらは再生できない。

「滅びよマーフォーク、これはサーボの命令なり」という一文は今でも語り継がれているのだが、本来はマーフォークではなくレベルを滅ぼすためのカードである。
6マナと重いが「シングルシンボルなのでタッチ黒で唱えられること」「自分に被害が一切ないこと」「環境トップメタの《ブラストダーム》や《カヴーのカメレオン》などにも有効で、とりあえず1:1交換を狙えること」などから、単なる部族メタとしては桁違いに取り回しがよい。
レベル対策としては非常に有効で、しかも他の相手にも使えるということで、黒を入れたデッキがサイドはもちろんメインから入れることすらあり、さすがのシヴィーもこれには苦しめられた。

そのためレベル側も従来の白単部族ウィニーではなく、青と手を組むことによって打ち消し呪文を構えながらリクルートしたり、自分から《神の怒り》などのリセットを使いながらシヴィーで戦線をリカバリーするという、
カウンターレベル」という新しい戦術にシフトしていくことになり、そのままスタンダードを駆け抜けたのであった。


スタンダードでも圧倒的存在感を放ち、ブロック構築では禁止にまでなった、白のレジェンド・クリーチャーを代表する実力派のこのカード。
後年のレジェンド・ルールの二度の改変を経た現在は、「シヴィーを狙った単体除去に合わせてもう一体のシヴィーをライブラリーから出すことで除去をすかす」ということができるようになり、事実上の単体除去耐性まで得てしまった。いいよなぁ白はなんでもできてさー!
しかも全てのクリーチャータイプを持つ多相クリーチャー…特にクリーチャーのパンプアップにも使える《鏡の精体》や、レベルとしてリクルート可能な《静寂の捕縛》、マスクス時代からリクルート先は増えたことには増えた。打ち消し対策の《魂の洞窟》なども強化になるだろう。

ルールや環境から追い風を受けている彼女は、現在ではエターナル環境、およびEDHにおいても順調に活躍している。


というわけではない。


はっきり言うと、彼女はスタンダードを落ちた瞬間に「過去の人」になり果ててしまっていた
スタンダード当時は2000円という高額カード*6だった彼女は、ローテーションで使用不可になるや否や大暴落を起こし、用済みになった彼女は買い叩かれ、その後もショップに不良在庫として長年くすぶり続けている。

ブロック構築やスタンダードでは今なお語り継がれるレベルで強かった彼女だが、エクステンデッド以下の環境では弱かったのである。より正確に言えば「強いと言えば強いのだがもっと強いアーキタイプがある以上採用する意味がない」、というべきか*7
さらに当時、スタンダード以外の構築での遊び方は「プロの遊び」「貴族の遊び」と敬遠されており、この現状を打破しようと「2サイクル構築」という遊び方が開発されるも結局主流になることはなかったというプレイヤー事情があった。
プロや貴族があえて二線級のシヴィーを選ぶはずもなく、スタンダードしか遊ばないプレイヤーは目もくれず、2サイクルや自宅にあるカードを使うカジュアル勢にしたってレベルデッキを組もうと思わないプレイヤーなら見向きもしない。なんならスタンダードで苦しめられた憎いやつ、あるいは傭兵と違って優遇されてた部族、というマイナスの印象がある人だっていただろう。

つまり、スタン落ちした後の彼女には需要がまったくなくなったのである。
あるショップの店主は「レベルというデッキがあり、スタンダードでそれが主流になったからというだけで、一時は2000円オーバー。スタンダードから落ちたら値段は途端にガッタガタ。迷惑レアである。」とこのカードをさんざんにこき下ろしている。
反乱革命の時代が終われば英雄がお払い箱になる…って言えばなんだか歴史的だが、確かにショップからすればいい迷惑だろう。

その後のレベルにしても、確かに上述のようになかなかの強化をもらった。しかし他のデッキは、レベルがよりもはるかに良質な強化を、レベルよりも素早いペースで得ていた
極端な話、多相や《魂の洞窟》をレベルよりうまく使える部族なんてたくさんある。
そして「2マナ1/1飛行」だの「1マナ1/1」だのというスタッツは、レガシーはおろかローウィン以降のスタンダード基準ですら三流である。そんなものをライブラリーに何枚も搭載しなければならないし、そんなものを幾度となく呼べたところで何かメリットがあるのだろうか?というわけだ。
しかもマスクス時代には存在しなかった《真髄の針》をはじめとした名称指定系の軽量メタカードも激烈に刺さる。

言ってしまえばさすがに20世紀末のロートルを主力にするには、今のレガシー環境はきつすぎるのである。どんなカードにも栄枯盛衰がある…それは当然と言えば当然の話。


レベルもレベルで、不遇な道をたどっている。回顧ブロック「時のらせん」でフィーチャーされた*8のはいいが、それほど強くなかった。時のらせん当時のスタンダード期には「レベル連合」という構築済デッキがあったが、ぶっちゃけあれをどれだけ強化しても、直後のローウィンで出てきたキスキンウィニーのほうが圧倒的に強かった
そりゃマスクス構築にせよスタンダードにせよ、《果敢な勇士リン・シヴィー》あってのレベルだもんな…。

そしてその後は、多相を除くと一切の強化をもらえていない*9
さらに開発の姿勢も逆風だ。たとえばMTGの開発陣はたびたび「シャッフル撲滅」を語っており、*10。レベルはリクルート能力の都合上、レベルはコモンの時点でシャッフルを多用する。
さらに《静寂の捕縛》で初登場したカードタイプ「部族」も作らないと宣言された…つまり《静寂の捕縛》のようにリクルートできる特殊なカードが今後増える見込みがなくなってしまったのだ。

今となっては特殊セットの「モダンホライゾン」シリーズあたりで、強力なレベルが出ることくらいしか期待できなくなってしまった。
しかし4Cオムナスのようなアドバンテージの塊みたいなデッキが基準になってしまったモダン以下の環境で、果たして逐一マナを支払わなきゃいけないシヴィーの戦略が通用するのかという疑問も残り続ける。

なお、一応現在のモダンやPauperでも、レベルを組めないわけではない。強力な多相クリーチャーを、時のらせんのリクルーター《アムローの偵察兵》などで引っ張ってくる…というアプローチになる。
とはいえデッキを引き締めてくれたリーダー、つまり《果敢な勇士リン・シヴィー》なしでは烏合の衆感が強い。
リーダーのない反乱軍なんて烏合の衆にすぎない…というのは、様々なゲームでも、そして実際の歴史でもたびたびあるが、皮肉にもMTGのレベルにもそれが当てはまってしまったのである。



と、ここまでは後ろ向きだが一般論。
実はレベルならではの強化がもらえていないわけではない

Training Grounds / 訓練場 (青)
エンチャント
あなたがコントロールするクリーチャーの起動型能力は、それを起動するためのコストが最大(2)少なくなる。この効果は、そのコストに含まれるマナの点数を1点未満に減らせない。

クリーチャーの起動型能力のコストを減らす1マナのエンチャントだが、これはマナ食い虫になりがちなリクルート能力との相性が抜群に良い。《果敢な隼》から2マナでシヴィーや《鏡の精体》が出てきて、しかもその2枚の起動型能力すら軽くなる。
色が合わないことこそ問題だがレガシーといえば青が非常に強い環境だし、かつてカウンターレベルという形で共闘を組んだ色でもある。
その青に非常に相性が良いカードが存在しているというのは嬉しい話。


Unsettled Mariner / 不確定な船乗り (白)(青)
クリーチャー — 多相の戦士(Shapeshifter)
多相(このカードは常にすべてのクリーチャー・タイプである。)
あなたか、あなたがコントロールしているパーマネント1つが、対戦相手がコントロールしている呪文や能力の対象になるたび、それのコントローラーが(1)を支払わないかぎり、その呪文や能力を打ち消す。
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多相を持つのでレベルである。マナがカツカツになりやすいレガシーにおいて、除去にかかるコスト1マナ増やすことができるというカードは想像以上に強力。
似たようにマナ拘束を仕掛ける《スレイベンの守護者、サリア》《アメジストのとげ》などで相手の動きを縛ったり、青を濃いめにして《意志の力》などを構えたりしながら、
こちらはタッチした青で《渦まく知識》とリクルート能力によるブレストシャッフルで手札の質を整えるという、さながらマスクス当時のマナ拘束系デッキやカウンターレベルを思わせるアプローチが可能になった。
また、白が主体ということは《カラカス》や《剣を鍬に》という優れた除去が使えるということでもあるし、青が入るということはここ最近に多い青がらみのパワーカード《時を解す者、テフェリー》《王冠泥棒、オーコ》などを入れることもできるということにもつながる。
現在ショップのレガシーイベントなどで見かけるレベルは、大体この青や緑を入れ、《レイモス教の兵長》などの3マナのレベルにアクセスできるカードを主軸にしながら、パワーカードとシヴィーでひっかきまわしていくというアプローチがとられている。


その一方、カジュアル勢の主戦場となりそうな統率者戦においては、苦行色と名高い白単でデッキを組まなければならない。
つまり《訓練場》も《不確定な船乗り》も各種カウンターも使えない。どう戦うかはデッキビルダーの腕の見せ所だ。
知名度の高さや根強いオールドファンの存在、リクルートの多用によって他の統率者と違った動きができることから、よくリストが掲載される。
白単なのにシャッフルが多くなるが、《土地税》とか《白蘭の騎士》とかあるしそんなに気にならないんじゃないだろうか。


とはいえやっぱり二線級。
デッキに流用できない専用パーツが多いのに、今の基準だとそこまで強くない。
今なお彼女を使うのに必要なのは、ひとえに愛だよ、愛。



余談として。
現在も遊戯王で使われている「リクルーター」という呼称だが、なんでrecruit(新兵を募る)なんてなじみのない言葉なのだろうと気になった人々も多いだろう。
原作にも出てこない言葉だし、ゲームよりもむしろ就活とかに使いそうな言葉だし、他の用語に比べると由来もはっきりしない。もう少しなじみのある言葉を使いそうなものではないか?」
これはおそらく、時期的に「MTGの用語を流用した」というのが真相だろう。遊戯王に限らず2000年代前半のTCG界隈では、様々な意味で先駆的だったMTGの用語を流用するプレイヤーが多かった*11
MTGがすごいゲームなのだ、と持ち上げているわけではなく「デッキから特殊召喚するこのカードの使用率が高い以上、俗称を決めたい。ここにちょうどいい言葉があるし、いちいち新しい言葉を定義してもめるより、言葉を流用したほうが様々な意味で楽だ」と選ばれたのが真相だろう。
マスクス・ブロックが1999~2000年、遊戯王初のリクルーターが登場した「ファラオのしもべ」が2000年発売なので時期的にもちょうど合う。
とはいえ当時遊戯王を牽引していたプレイヤーに裏付けを取ったわけではないので、このあたりの由来に詳しい人に筆を譲りたい。


また、MTGをかじったアイマスPの中には、アイドルマスターシンデレラガールズの登場人物「渋谷凛(しぶやりん、リン・シブヤ)」の元ネタがこの「リン・シヴィー」なのではないかという説を提唱する人もいる。
名前以外にも、後に出たカードの構図がシヴィーにそっくりだという話や、かつてシンデレラガールズのキャラに大体元ネタと目されるものがあったことなどが、これらの説を裏付けている…というものだ。
当然だがこれについては公式の見解は一切出ておらず、さらに同じくMTGとアイマスをプレイしている人の中ですら「確証がないことをさも真実のように言うな」と白眼視する人のほうが多い。
アニヲタwikiで言うのもなんだが、MTGというゲームは有名どころに見えて結構ニッチなゲームである。上記のリクルーターの由来ともども、TPOをわきまえて唱えたほうがいいだろう。





時は流れ、2020年。
過去のストーリーラインの登場人物やこれまでの伝説のクリーチャーのリメイク版をカード化する「統率者レジェンズ」において、シヴィーは再びカード化…しなかった。

のだが、実はカード化する案があったということがYoutubeのチャンネル「Good Morning Magic」で語られた。これがその草案。

《Lin Sivvi, Recruiter》(3)(白)
伝説のクリーチャー – 人間・レベル
(1)(白), (T):あなたのライブラリーから、点数で見たマナ・コストがあなたがコントロールするクリーチャーの上に乗っている+1/+1カウンターの数以下のクリーチャー・カードを1枚探し、それを戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。
共闘(両方が共闘を持つなら、あなたは2体の統率者を使用できる。)
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共闘を持ち、レベル限定ではなくなったかわりに+1/+1カウンターの数という制約が付いている。もしカード化されていたら、例えば《不屈のダガタール》とかをリクルートできれば、そこからさらにクリーチャーを展開できて面白そうだ。
没になった理由は語られていないが、一応そういう話もあったということである。



ストーリーではおよそ30歳の女性。身長 5'10"(178cm)、体重170lbs(77kg)と、そんじょそこらのアニヲタより立派なガタイをしている
ラースの主要部族であるヴェク族の女性で、ファイレクシアに対する反乱軍(レベル)を率いていた。
小説版プレーンシフトの途中でいつの間にかエルフの指揮官エラダムリー(子持ちのオッサン*12)とちゃっかり恋仲になっており、読者を困惑させた。アメリカの恋愛観は日本と違いすぎる…
とはいえロマンスのシーンはほとんどなく、登場シーンの大半で戦い続け、最後はエラダムリーとともに「ヨーグモスの暗黒雲に飲まれることを拒絶して地上の業火に身を投げる」という壮絶な最期を遂げる。
正義の反乱に明け暮れた壮絶な人生だったが、彼女は救われたとみていいのだろうか。
ちなみにフレーバー・テキストに登場したカードはたった1枚、インベイジョン版の《再供給》のみ。


マスクス・ブロックの彼女が残した足跡は、実は「圧倒的に強いカード」以外の部分でも非常に大きいが、その本人は今はストレージの中でくすぶっている。
というわけで最後にもう一度。
彼女を救うのに必要なのは、ひとえに愛情
昔の話に明け暮れるのもいいし、強化を願うのもいい。たまには伝聞による知識とレジェンド・ルールの話以外でも、彼女に思いをはせてみてはいかがだろうか。


私たちはアニヲタwikiのあちこちでこういう項目をたくさん編集したわ。ここでも同じことをするべきよ。
――― リン・シヴィー 《再供給/Restock》

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最終更新:2023年04月19日 20:18

*1 マスクス・ブロックのテーマのひとつとして「これまでの常識をさかさまにする」というものがあり、背景ストーリーでは非常に賢いゴブリンや、ひっくり返ってそびえる山などでドミナリアとは異なる世界を再現しようとしたり、メカニズム的にはマナを使わずに唱えられる「ピッチスペル」や、ライブラリーから疑似的に唱えられる「リクルート」、マナを支払うことで弱体化が可能な「リスティック」による駆け引きなど様々なものが試みられた。本来混乱を起こす「反乱者」という言葉を白の主要部族にあてがったのも、こうした試みのひとつだろう。

*2 当時は青単メガパーミッションの全盛期だった

*3 《カテラン組合の首領》はさすがに重すぎるし、シヴィーのように軽いリクルート能力やリカバリー能力がない。伝説じゃない点は「無名の首領だからこそいい」「レベルばっかずるい!」と人それぞれ

*4 一応傭兵デッキがトーナメント環境に出たことはあったが、部族デッキという趣ではなかった。そもそも黒使いというのは結構注文が多い、面倒くさい生き物なのだ

*5 神河の忍者、ゼンディカーの同盟者、イクサランの海賊など

*6 当時基準。モダンという環境ができるまでは1000円を超えれば立派な高額カード、2000円を超えれば憧れの的で、《変異種》や《ウルザの激怒》の話は今でも語り草である

*7 エクステンデッドではレベルデッキもあるにはあったようだが、様々なアーキタイプが分からん殺しを仕掛けてくる魔境で上位に入ることはなかった

*8 一方傭兵は出なかった

*9 銀枠には《Alexander Clamilton 》というレベルが登場した。

*10 シャッフルする間はゲームが中断すること、シャッフルやカットに際するトラブル、さらにデッキに直接触れる合法的な機会なので不正や不正疑惑を誘発しやすいことなどで実は我々が考える以上に問題が多い

*11 様々なゲームにおける「パーミッション」「ウィニー」や、ポケモンカードのデッキ名「スライ」、デュエルマスターズの三色の俗称など。現在では廃れたものや意味が変わったものも多い

*12 小説版ネメシスではその実娘を殺害することとなった…つまり子持ちのオッサンという印象が読者に非常に強く残っている