SCP-999-JP-J

登録日:2019/05/15 (水) 23:30:43
更新日:2024/04/13 Sat 13:31:26
所要時間:約 8 分で読めます





SCP-999-JP-Jは財団の、いや、人類の救世主になりうる存在であることは間違いない。

いま必要なのは、スライムに履かせるパンツだけだ。

SCP-999-JP-Jは、怪異創作コミュニティサイト「SCP財団」に投稿されたオブジェクトである。


J

Jという文字が示す通り、このオブジェクトはいわゆる「ジョーク」オブジェクト、つまりはおふざけで作られたものである。

ある程度SCP財団について知っていて、なおかつSCPオブジェクトをいくつか読んでいて、さらにジョークをジョークとして受け取れる包容力が無い方の閲覧はお勧めしない。

概要

さて、このオブジェクトは何なのか説明しよう。
まず、外見。オレンジ色…ではなく、ミルクチョコレート色の、筋肉質でまとまりのある、スライムである。
…もうこの時点で一部のアニヲタ諸兄は気付いたかもしれないが、しばらく辛抱していただきたい。

表面は未知の油性物質で覆われており、その全重量は約154kgにも上る。SCP-999-JP-Jのポージングは絶えず変化しているが、大抵は大柄な中年男性のような外見をしている。その外見から、不審者と誤解される危険性があるため、夜間の外出は基本的に禁止である。昼間も十分不審者みたいだけど
食べ物は主に植物性プロテインとサプリメント。自由に施設内を散歩してもよいが、それ以外の時は檻にいなくてはならない。

性格は一言で表すならば「遊びたがりな犬」である。誰かが近づくと、まず全力で相手に向かってダッシュ、そのまま大ジャンプを決め、相手を3本の足*1でしっかりと抱きしめ、余っている4本目の偽足を使い対象の頭を撫で回す。
想像してほしい。大柄な人間に目の前で大ジャンプを決められ、そのまま抱き着かれる様子を。それの正体がスライムだと知らない大体の人は、いや知っていたとしてもただものではない恐怖を味わうだろう。しかし、ここでこのオブジェクトの異常性が発動する。
SCP-999-JP-Jの肌に触れた人物は、例外なく急激な脱力感心地よい痛みを同時に味わってしまうのである。形容するならば、「良いマッサージ師にちょうどいい場所を突かれた感覚」だろうか。しかもこの感覚、触れる時間が長い程強くなっていき、離れてもそれが継続する。
さらに、こいつからは(人によっては)芳しい香りが絶えず出ている。これも相まって、彼にとっての「獲物」は抵抗力をなくしてしまうのだ。
そうして大人しくなった人間を「むきむき」「ぴくぴく」といった音を出しながらしばらく撫で、彼は彼自身が最も好む行動を行う。
そう。







くすぐりレスリングである。




もうぶっちゃけてしまっていいだろう。SCP-999-JP-Jの正体は、財団の癒し枠、みんなのアイドル、SCP-999である。項目名は「マスター・くすぐりオバケ」。オブジェクトクラスは、まさかのThaumielである。

どうしてこうなった


まず、この話をする前提として、諸君がSCP-999について記事を読んでいる必要がある。諸君がSCP-999について理解しているという前提で話をする。

諸君は覚えているだろうか。
SCP-682とSCP-999のクロステストを。

ふれあい実験中、「くすぐりレスリング」を敢行しSCP-682に一杯食わせたSCP-999だったが、SCP-682の出した謎のエネルギーにより職員は昏倒、多くが惨殺された。
SCP-999は彼らを一人でも救おうと尽力していたが、彼は気付いた。

「彼らを守るには。大好きな動物を、大好きな人間を守るには。」

「己が強くならなきゃいけないんだ」

一種の悟りに至った彼は、ある日、収容違反の隙をついて財団から脱走。修行の旅に出たのである。

血の、もといゲルの滲むような修行を重ね、強敵との戦いを繰り広げた彼は。

画像出典:http://ja.scp-wiki.net/scp-999-jp-j ,by snoj
この画像は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。


スライムでありながら、鋼の肉体、そして新たなくすぐり術をその身に宿し、財団に舞い戻ったのである。

vs不死身の爬虫類(再戦)


帰ってきたSCP-999、じゃなかった、SCP-999-JP-Jを見て、職員全員こう思った。
「今度こそ、SCP-682を鎮めてくれるだろう」と。
元々、あのクロステストはSCP-682の凶暴性を取り除くために計画されたものである。そして、SCP-999が修行に出た直接的な要因も、SCP-682とのクロステストにある。

今なら、うまくいくんじゃね?

誰もがそう考えただろう。いや、その理屈はおかしい

そしてやってきた実験当日。多数の職員が見守る中、SCP-682の封印区画にSCP-999-JP-Jが投入された。

999: 「むきむき♪」
投入された瞬間、五接地転回法を用いて着地した彼は、SCP-682に向かって意気揚々と駆け出す。

682: 「何だお前は。」
流石にSCP-999とは気づかないSCP-682。人智を超えた唸り声をあげて威嚇する。

999: 「ウオォォォオォ!!!」
そんなことには目もくれず、まるで勝利宣言をするかの如く音を発し、SCP-682に飛びつこうとするが…

682: 「厭わしい…。」
ベチンと振り下ろされた前脚によって一瞬でペッチャンコにされ…
なかった。

SCP-999-JP-Jの身体は、圧力に耐えきったのである。

682: 「うん?お前、いつかの…何だ、何をする!」
相手が誰だか理解したSCP-682。しかし、時すでに遅し。

なんと、SCP-999-JP-JはSCP-682の指をこじ開け、スルリと首にしがみつき、そのままくすぐりレスリングを敢行。

682: 「やめろ!気持ち良いのは分かった!もうくすぐらなくてもよい!」
区画内をのたうち回り、床に尻尾をビッタンビッタン叩きつけながら暴れるSCP-682。デジャヴを感じるが、前回の二の舞にはならない。

999: 「(野太い声で)うーん…ここかなり凝ってますね。強めに押してみますねー。」
おおよそ癒しキャラだった奴の言わない言葉だなと思った、その刹那。

SCP-682が悲鳴を上げ、正体不明のエネルギー波を放出。

同時に、682の身体は崩壊した。

エネルギー波を浴びた職員は前回と異なり、代謝の促進や関節の矯正など、おおよそ整骨院帰りのような感覚を覚えたがそんなことを呑気に感じている場合ではない。
そこに広がっていた光景に職員は卒倒してしまった。
慌ててSCP-999-JP-Jが職員たちを起こして回る。

気が付いた職員たちが見たものは。

夢でも何でもない。

SCP-682だったそれは、小っちゃいトカゲと化していた。

あの最強かつ最悪だった爬虫類は、無力化されたのだ。

Thaumiel指定、その後

この光景を目の当たりにした職員はこんなメモを残している。


Dr.████のメモ: 実験は成功した。その一方で、それは私がこれまで見てきたものの中で最もおぞましいものになってしまった。だが、SCP-999-JP-Jは財団の、いや、人類の救世主になりうる存在であることは間違いない。まさか999を"漢らしい"などと思う日が来ようとは。ああ、別に映像記録を送る必要はない―――いま必要なのは、スライムに履かせるパンツだけだ。

凶暴な、そして財団ですら手に負えないオブジェクトをいともあっさり無力化してしまったSCP-999-JP-Jは、今後の活躍に期待をこめてThaumielに再分類された。

以下は、SCP-999-JP-Jがその後関わったオブジェクトの一覧である。ここのオブジェクトの説明は該当記事に詳しい。

SCP-049…触れただけで人の生命を絶ち、犠牲者に「手術」を施しゾンビ化させるペスト医師。そんな彼は、なんとSCP-999-JP-Jの技術を受け継いでしまった。彼の異常性は鳴りを潜め、整体師となったのである。ついでに暖簾分けが認められた。

SCP-055…それ自身についての情報を覚えておくことができない何か。SCP-055のツボを見つけることが出来なかったため、くすぐりレスリングは断念してしまった。

SCP-076…通称"アベル"。殺しても殺しても生き返り、かつてのSCP-682に匹敵するほどの戦闘能力を持つ。そんな彼との戦歴は11勝8敗の勝ち越し。なんとSCP-999-JP-Jが勝利した。現在、このスライムはアベルの五十肩の治療に当たっている。どうも悩まされていた模様。

SCP-096…通称"シャイガイ"。実物だろうが写真だろうが、自分の顔を見た奴を絶対殺すマン。SCP-999-JP-Jが関わった結果、SCP-096にとっての初めての友だちとなった。よかったね、シャイガイ!

SCP-105…本名"Iris"。所持しているカメラで撮った写真がリアルタイム映像となり、それを通じて現実に干渉できる。彼女はSCP-999-JP-Jの服装が気に入らないらしい。パンツ一丁のマッチョはお好みではない模様。

SCP-173…説明不要、目を離した奴を絶対殺す彫刻。SCP-999-JP-Jが関わった結果、排泄物と血液の混合物が以前よりも増して多く出るようになった。Thaumielとて、万能ではないのだ。
ひょっとしたらデトックスしてるのかもしれないが…

SCP-231-7…大惨事を引き起こすバケモノを身ごもっている女性。出産しない様、最大限の苦痛と恐怖を与えていたが、SCP-999-JP-Jがかかわった結果。
「おかげさまで、無事に元気な男の子が生まれました」
異常性を失ったお腹の子供は、この世に望まれた形で誕生したのだった。

SCP-343…強力な現実改変者。自称、"神"。全知全能とされていたが、SCP-999-JP-Jの目には浪越徳治郎*2に映った。恐れ多い。

SCP-447…死体と触れさせなければ、とっても便利な緑のスライム。現在、SCP-999-JP-Jはこれをプロテインとして使用している。なんでも、タンパク質の吸収効率がいいらしい。流石緑のスライム。有能すぎる。

SCP-811…生物実験を受けた女の子の成れの果て。彼女は現在、自身の異常性を無害化すべく、SCP-999-JP-Jと共に肉体改造に励んでいる。
「アエ、おっきくなる」
頑張れ、みんなのアエちゃん!
しかし、彼をもってしても治せないとは、相当悲惨なことをされてたんだろうな…

SCP-978…通称"欲望カメラ"。被写体が望んでいることを映し出す。SCP-999-JP-Jを映してみた結果、「ベストショットが撮れた。デカイ!」(原文ママ)

SCP-990…通称"ドリームマン"。突然夢に出現し、預言を残して去る。彼はSCP-999-JP-Jのマッサージにはまってしまったようである。「夢の中にまで出張してくれるとは思わなかったよ」

SCP-1000…かつて地球を支配しており、人間に支配権を奪われたいわゆる「ビッグフット」達。彼らにSCP-999-JP-Jが干渉した結果、全SCP-1000が許した。なんと平和な世界だろう。



Thaumielクラスのオブジェクトというのは、基本的に諸刃の剣である。すなわち、世界や財団を救うには、それに見合っただけの代償が必要なのである。さらに、財団内でも極秘情報として扱われる。
しかし、このスライムは違う。一般職員の目の届く位置に、世界の救世主がいるのである。

SCP-999-JP-Jはこれからも、財団、人々、そして世界を救うだろう。

財団の明日は光に満ち溢れていた。

追記・修正は、救世主とくすぐりレスリングを行ってからお願いします。


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最終更新:2024年04月13日 13:31

*1 恐らく両足と腕を合計して「3本の偽足」と表現しているものと思われる。ただし財団には「ヘッドカノン」という概念が存在するため、例えば3本目の足をSCP-999-JP-Jのご立派な[削除済]と解釈しても問題はない。

*2 「指圧」というマッサージ法を最初に発見した人。