SCP-811

登録日:2019/05/12 Sun 02:02:31
更新日:2023/12/16 Sat 02:11:17
所要時間:約 9 分で読めます




あか。あか。あか。あか。とても…おなかすい-た。こわかった。


SCP-811は、怪異創作コミュニティサイトSCP Foundationに投稿されたオブジェクトである。オブジェクトクラスはEuclid。

概要

このオブジェクトが何か、端的に言えば、人間の女性のような人型生物である。
手足は細長く、身長は171cm、体重は常に47kg未満、僅かに腹部は膨らんでおり、常に全裸である。…おい、そこの君。萌えるのはもう少し説明を聞いてからにしてくれ。

まず、肌。質感はわずかにざらざらしていて、緑のまだら模様である。その汗は弱い皮膚刺激性物、要は酸として我々の皮膚に作用する。

次に、髪。従来のシャンプーに対する耐性を持った、油っこい黒髪である。

…シャンプーに対する耐性って何?

後述するが、普通のシャンプーでは汚れを落とせないので、財団は専用のシャンプーを提供している。

特筆すべきなのは、彼女の手足である。彼女は自分の手足から常に半緑の透明な粘液を出している。
この粘液、SCP-811自身以外のあらゆる有機物に触れると、その部分を溶かして黒色の液体にしてしまう。

彼女はそれを皮膚から吸収して"食事"する。どうにも、彼女の血管に当たる部分は、全部腐った何かで満たされており、さらにすべての細胞にある種の細菌が見つかっていることから、彼女はこれを代謝して生活しているようである。彼女に赤血球と呼べるものが明らかに不足しているのもこれを裏付けている。

彼女は消化器官と呼べるものを持っていない。いや、正確に言うと胃はある。SCP-811内の老廃物はこの胃に集められ、体内の酵素と細菌がこれを分解凝縮し、ざらついたタール状の物質へと変える。

この物質、彼女の意思によって口から排出される。排出は彼女の意思で制御できるらしく(したがってゲロとはちょっと違う)、彼女はこれを"狩り"に利用する。標的の口、鼻、傷口のどれかを狙って、窒息させるか、細菌による壊死を起こさせる。ただ、彼女の歯はこの液体に耐性を持っていない。彼女自身、これによって起きる歯痛に悩まされていた(後述)。

傷口にこれが命中すると、三時間以内に治療を受ける必要がある。それ以上経過すると、まず助からない。それは、元の報告書が如実に物語っている。

「Dクラス、あるいは12時間以上を治療受けていない職員は、解雇を要請してもよいです。」

特別収容プロトコル

こんな危険生物…じゃなかった、愛らしい少(?)女、どうやって収容すればいいんだ?

現在、彼女は沼を模した小さな区画に収容されている。職員はこの区画の気候を人工的に作り出し、区画内には多様な種類の植物が植えられる。
「その他の植物として、根が破損しない限りSCP-811との接触に耐え、損傷から素早く再生し適応するものが置かれています。」
…一体どんな植物なんだ?

彼女が財団に忠実なら、ご褒美として丸太や腐葉土を与えることが許可されている。
温度は25℃、湿度は70%以上に保たれる。換気した空気はどこにも再循環させてはいけない。もしそんな空気を吸って体の内側から腐りでもしたら…恐ろしや。

水槽はpH値に至るまで管理され、Dクラスをこき使ってによって、一週間ごとに清掃される。

24時間おきに彼女には5㎏の餌が支給される。食いしん坊だなぁとか言ってはいけない。ただ、人を食べるのは嫌いじゃないらしく、お腹がすいている時に水槽に入ることはお勧めしない。もし入ったら…ご愁傷様。

彼女に対する医療措置は危険を伴うため*1、投与が許可されている薬品のリストを確認したうえで、慎重な会議を経て行われる。

職員は水槽に立ち入る際、防護服を着る必要がある。もし外すのなら、手足のどれかを失っていても問題ないオブジェクトへの配属変更がなされることに了承する必要がある。

SCP-811の要望

彼女からの要望は、会議を経て承認、却下を決めることになっている。以下はそのリストである。

  • 餌用牛の定期配達(却下)
財団にいくらコストを掛けさせる気だ。

  • 餌用動物のローテーションからワニを除外(許可)
嫌いだったのかな?

  • 元の生息地█████からの豊富でさまざまな魚類入りの水(却下)
故郷の味が恋しくなったのかもしれない。駄目だったけど。

  • 100%人工素材で出来た1本のヘアブラシ(許可)
彼女の髪はそう簡単に整えられるわけではないらしい。

  • 1日おきに一緒に水たまりに入ってくれるDクラス職員1人と髪を洗って調子を整えるためのシャワーヘッド(許可)
この際、前述したとおり、あのメリットよりも強力なシャンプーを使うことになっている。普通の人だったら間違いなく一本も髪が無くなるだろう。

  • ”Aé (アエ)”と字訳された二音節の名前で呼ばれること。SCP-811は読み書きができず、従って綴りを自分で選ぶ才能はありません(許可)
SCP-811の通称はアエちゃんである。アエちゃんかわいい。

  • 慢性的な歯痛の軽減(承認)
元々この要望は、彼女に対する安全かつ確実な麻酔薬の投与法が確立されるまで却下されていた。現在、彼女の歯は全て義歯に入れ替わっている。要は入れ歯である。

  • Hazmatスーツを着せた非食用目的のカメ1匹(却下)
ペットが欲しかったのだろうか。今までカメも食事として彼女に与えていたが、ローテーションから外れることとなった。現状の提案として、エリア外に観賞用のカメの水槽を置くことが挙げられている。

経緯

さて、ここまで読んでくれた方の中には、アエちゃん、じゃない、SCP-811を「かわいい」とか、「抱っこしたい」とか思っている人もいると思う(そんなことしたら溶けるけど)。では、財団に収容された経緯を説明しよう。
本人の話から推測するに、もともと彼女はこんな生態ではなかったと思われる。


彼女の食事を文章にするとなかなか恐ろしい。


おい、誰だ今卑猥な事考えた奴。*2


ここからは、少し心を強く持って読んでほしい。


どうやら、彼女は元々、我々通常の人間と同じ肌だったらしい。何故緑色に…?


注射…?


賢明なるアニヲタ諸君。もうわかっただろう。ひょっとしたら彼女は、元人間であった可能性があるのだ。

何処までが本当かは分からないが、この話から博士は彼女を元人間だと仮定している。あくまで推測にすぎないが、彼女の話を察するにこのSCPは恐らく年端のいかない少女を捕まえて、何らかの細菌だか化学物質だかを注入して作り出されたと思われる。

SCP財団というのは(SCP-999とか例外はあるけど)基本的に陰惨なオブジェクトが多い。彼女もその一つである。


話がずれるが、上で登場した「トレビュシェット博士」は、このインタビュー以降彼女に献身的に寄り添っている。

彼女は31歳で、身長はわずかに1メートルを超える程度合法ロリ(つまり、SCP-811とは70cmほど差がある)だが、財団一の働き者と噂されている。どれくらいかというと、慢性不眠症と重度の仕事中毒の傾向のため、ほぼ1度も帰宅しないし、睡眠を完全に薬に頼っている。眠りにつくときは、致死量の何倍もの睡眠薬を摂取する要は社畜である

そして何より、彼女は強い倫理観の持ち主である。

彼女としては、いたいけな少女がたどったあまりに悲惨な運命を、何とかして変えようと努力したいのである。

それは、インタビュー最後の補足文からひしひしと伝わってくる。


注記: 私が、緑色の新しい血の魅力を理解し比較的無害にできるようになるまで、他の人は別のヒューマノイドにあててくれませんか?私は、何かを本当に成し遂げるためにここにいます。~トレビュシェット博士


"アエ"を元に戻すまでは、今の状況よりマシにできるまでは、トレビュシェット博士は努力し続けるだろう。一人で、信念を持って。

SCP-811

Swamp Woman(沼女)


余談

SCP-978(ざっくりいうと、写した人物の欲望が見れるカメラ)でアエちゃんを写してみた実験記録がある。結果は以下のようになった。


この記録から彼女の元人間説は真実味を帯びた。
彼女の夢が叶う日が来ることを切に願う。

追記・修正は、アエちゃんの幸せを願いながらお願いします。



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最終更新:2023年12月16日 02:11

*1 彼女は未知の細菌や化学物質を抱えている。その中のどれかが薬と反応して、彼女の身に危険を及ぼすかもしれないからだ。

*2 ちなみにここの翻訳は日本支部屈指の名訳とも言われている。原文ではearliest thing → Air-wee is thing という聞き間違いとなっている。