ビートダウン(TCG)

登録日:2019/05/11 Sat 14:17:37
更新日:2023/12/29 Fri 17:50:58
所要時間:約 5 分で読めます




概要


ビートダウン(Beatdown)とはTCG/DCGにおいて使用される用語である。
直訳の「殴り倒す」という意味からも分かる通り、モンスター/クリーチャーによる攻撃を主軸とした勝ち筋を指す。
ただし、会話の流れ次第でこの「勝ち筋」そのものを指すのか、それともこの勝ち筋を軸とした「デッキの構築方針(アーキタイプ)」を指すのかで変わることがある。

●目次

「勝ち筋」としてのビートダウン


モンスター/クリーチャーの「戦闘ダメージにより相手のライフを0にする」という勝利条件を満たすこと。
つまりバーンデッキ破壊特殊勝利といった他の勝ち筋との差別化で使う用語である。

とはいえ実質的にはビートダウン以外の勝ち筋をとれないTCGも多く、そうしたTCGではわざわざ「勝ち筋はビートダウンです」と明言せずとも暗黙の了解になっている。
特にカードファイト!!ヴァンガードはユニットで攻撃を行う以外の選択肢がほぼないゲームであるため、わざわざビートダウンを他と区別するような慣習はプレイヤーに定着していない。

TCGの元祖であるMTGでは当初、「ビートダウンによる勝利はあくまで選択肢の一つ」という考えが根底にあった。
しかし漫画の遊戯王以降「カードゲームを映像化する場合はモンスターによる戦闘が一番派手でわかりやすい」という理由から、TCG全体がビートダウンへ偏重していくことになる。
遊戯王が遊戯王OCGとして商品展開する際の副題に「デュエルモンスターズ」と名付け、モンスター同士の戦闘をメインだと明確にしたことがこの流れを決定的なものにした。
その後MTGでもクリーチャーが主体となるようになり、さらに後発のTCGにおいて、「デュエル」「バトル」「ファイト」といったモンスター/クリーチャー同士の戦闘を前面に押し出したタイトルで溢れるようになる。
そして現在のTCG界隈では「ビートダウンこそが主流で他の勝ち筋は傍流」という流れができている。

「アーキタイプ」としてのビートダウン


モンスター/クリーチャーの攻撃を勝利条件としていても、勝ち筋の過程はデッキによって様々である。
「攻撃を積極的に行う」ことを勝ち筋にしたデッキをアーキタイプ上ではビートダウンと分類している。
必要なカードが揃うまで攻撃を行わないコンボデッキ、妨害を主軸とし相手に阻まれないことが確定するまで攻撃を行わないコントロールデッキとの対比としての分類である。

ただ、長年の商品展開で成熟したTCGの場合、単なるビートダウンと言ってもコンボ/コントロールの要素をある程度内包していることが多い。
例えば遊戯王OCGの場合はモンスターの特殊召喚を連続し、EXデッキのモンスターへ繋げる関係上どうしてもコンボ要素は必要になるし、出てきた大型モンスターは除去や制圧といったコントロール要素を保持しないと何も仕事ができない。
また、デュエルマスターズや遊戯王OCGなど、攻撃側のプレイヤーが攻撃対象となるモンスター/クリーチャーを選択して攻撃できるTCGではビートダウン=コントロールという側面まである。

「攻撃を積極的に行う」と簡単に済ませているが、前述のとおりTCG全体でビートダウン以外は傍流という風潮のため、ほとんどのデッキはビートダウンとして組まれる。
そのためビートダウンのデッキ種類はあまりにも膨大となっており、更に細分化した分類がないとタイプが定義できない状況となっている。
以下は主にコスト制のTCGで採用される分類である。

アグロ


詳細はアグロ(TCG)を参照。

相手よりも早く、最序盤から攻撃を仕掛けて相手の準備が終わる前に決着をつけるデッキタイプ。速攻。
スピード勝負になるため、モンスターは小型、低コストになりやすい。
1体の打点よりも数と攻撃回数で押し切るビートダウンと言える。

ミッドレンジ


守りを完全に排したアグロに対し、守りも攻めもバランスよく行おうというデッキ。中速。
打点、コストのバランスがいいモンスター/クリーチャーを採用し、ある程度のコントロール要素を複合することで相手のカードを排除しながら殴りきる。
採用されるモンスター/クリーチャーは踏み倒しやコスト加速が必要なほど重くはなく、それでいて相手のカードにパワー負けをしない程度のサイズが求められる。

各TCGの代表例はMTGの【ジャンドコントロール】など。
実はMTG以外のTCGでは非常に分類がしにくく、他ではDCGで使われることの多い用語。

ランプ


1体でゲームを決め切れるようなデカブツで殴るデッキタイプ。速度による定義はない。
除去耐性や強力なコントロール力を持った大型を如何にして場に出すか、を追求したデッキであり場に出す方法によってさらに以下の2通りに細分化される。

①コストそのものを踏み倒して召喚する
②コスト加速を行うカードで支払うコストを確保する

①の場合は「踏み倒しのカード」と「出す対象の大型」をどうやって揃えるかに主眼を置くことになり、コンボデッキ寄りの構築と言える。
墓地/トラッシュを経由して大型の生物を踏み倒すリアニメイトデッキはここに分類される。尤も、リアニメイトと言う呼称がメジャーな事もあり、ランプデッキと呼ばれる事はまず無いが
各TCGの代表例ではMTGの【スニークショー】、DMの【ヘブンズ・ゲート】、バトスピの【白重】など。

②の場合はコストの捻出をできる盤面をどう早く作りだせるかに主眼を置くことになり、それまでをコントロール要素で凌ぐ形になりやすい。
各TCGの代表例ではMTGの【ウルザトロン】、DMの【ビッグマナ】、バトスピの【赤緑連鎖】など。

デュエルマスターズとバトルスピリッツではコストを支払わずに大型を召喚するカードがあまりに増えすぎたためにコストを支払わない召喚に対する強力なメタカードが多数登場した。

各TCGにおける事情


Magic the Gathering


TCGの元祖でありビートダウンの基礎を作った。
このようなデッキが代表例となる。
またコンボ系複合の【緑単トロン】、【親和】、コントロール複合となるクロック・パーミッションとして【青黒フェアリー】、【Canadian Threshold】
などなど、殴り倒すけど他の要素もあるというデッキも多い。
初期の頃はクリーチャーのカードパワーが低く*1、ビートダウンよりも他の戦略に頼った方が強い環境が多かった。
しかし他のTCGの台頭に影響される形で徐々にクリーチャーを中心としたデザインへとゲーム性自体が変化していく。
特にローウィン以降のクリーチャーはカードパワーがそれまでより一段高く、ビートダウン、それもミッドレンジを中心とした環境づくりを開発が意識するようになったのが見て取れる。
このミッドレンジ偏重の産物がセレズニア・アポカリプスと言われていたりもするが。


遊戯王OCG


MTGに先駆け、モンスター同士の戦闘を前面に押し出したTCGの第1号だが、ビートダウン以外のデッキも構築が成り立つようになっている。
コスト制でないこととその戦闘システムの関係からコントロールデッキの概念もほぼなく、アーキタイプ分類は90%がただのビートダウンに分類される。
遊戯王カードwikiの「デッキ集/各種のデッキ」のページを見てもらえればその数がどれほど多いかわかりやすい。
ビートダウン内を細分化しようにも最終的には「特殊召喚を行うか行わないか」以外の部分に差を見出しにくく、アーキタイプの概念が根付きにくい一因となっている。


バトルスピリッツ


バーンの項目にもあるが、バーンダメージ効果もアタックに付属するものが大半であり、フィールドコントロール用の除去効果もアタック時効果のものが多い。
つまりビートダウン寄りの構築にしなければ大半のデッキが成立しないようにデザインされている。
例外となるのがデッキ破壊で、ビートダウン以外の戦略はだいたい巨人猟兵オライオンなど『このスピリットの召喚時』に発揮するタイプのデッキ破壊効果を勝ち筋に据えたデッキになる。
そしてこれらのデッキが流行するとプレイヤーは「バトルしないスピリッツ」とゲームを揶揄するようになる。
とはいえこれらのデッキがトップとなっていた時期はバトスピ全体からしてもわずかな期間で、大半の環境デッキはビートダウンである。



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最終更新:2023年12月29日 17:50

*1 インスタント、ソーサリーなどの「使いきりのカード」とクリーチャーの「戦場に残り続けるカード」のバランスを意識していたデザインと言われている