ジョージ・クライ

登録日:2019/05/01 Wed 02:00:50
更新日:2024/02/05 Mon 11:19:38
所要時間:約 13 分で読めます





その世界では皆が明日への希望に満ちていた。

しかし、永遠に続く煌きは存在しなかった…人はそこを楽園と呼んだ。




アニメ『HUGっと!プリキュア』の登場人物。

CV:森田順平


■概要


どこか暗い雰囲気を漂わせる黒髪の中年男性。
ミライクリスタルのような美しい模様が表紙に描かれた本を携え、常に憂いに満ちたような表情をしている。
一人称は「ボク」。

物語の要所要所で野乃はなの目の前に現れ、ポエムのような意味深な言葉を投げかけてはふらりと立ち去っていく。
相手の話は大して聞かずに立ち去るので、ほぼ独り言のような状態である。
ちなみに「ジョージ」という名前はEDクレジットで判明したものであり、初登場時点で本編中では名前を名乗っていない。



第8話で初登場。
もぐもぐに引っ張られたはなの前に現れ、冒頭の台詞を呟き立ち去った。
果たして何を意味する言葉なのかはわからなかったが、はなは彼のミステリアスな雰囲気に「大人の人だ…」と感心していた。

その後もたびたびはなの前に現れては、不思議なポエムを語り掛け立ち去るということを繰り返す。
第20話ではハリーとほまれの前にも登場。
はぐたんを指して「可愛い赤ちゃんですね」「お兄さんとお姉さんと仲良くね」と、はぐたんがハリー達の子供ではないと見抜いてるような台詞を発し頭を撫でて去っていった。
彼のただならぬ雰囲気にハリーとほまれは警戒感を露わにし、人懐っこい性格のはぐたんも珍しく不思議そうな表情を見せていた。

第23話ではまたもはなの前に現れる。
雨宿りの場ではなと夢について語り合う。
その中で「理想の王国」「皆が心穏やかに笑顔を絶やさない花が咲き乱れる美しい国」が夢であると語る。
はなからその夢を応援されると、「君は素敵な女の子だね」と返し、はなを赤面させた。
そして雨が上がってはなが目を逸らした瞬間に立ち去った。

かと思えば同話ですぐに再登場。
ドクター・トラウムが召喚した猛オシマイダーに襲われそうになり、キュアエールは彼を守ろうとするが…

…君は、本当に素敵な女の子だね














どうして…?夢があるって…みんなが笑顔の国を作るって…話して…

新たな苦しみが無ければ、皆笑顔でいられるだろう?

だから…時間を止めよう。皆が笑顔のまま暮らせるように

共に終わらぬ、永遠を!!

……もう何も生まれない。永遠の幸せの始まりだ


彼の正体はクライアス社の代表取締役社長。
つまりプレジデント・クライその人であり、本作のラスボス

それまで作中で顔を出していたプレジデント・クライはリストルが操作していたホログラムに過ぎなかった。
穏やかな物腰や言動こそ相変わらずだが、その思考の根底にあるのは「世界の時間を止め、全てが停止し何も生まれなくなった永遠の不変の中にこそ幸せがある」という陰鬱なもの。
全ての時間の静止したモノクロの世界を「理想の王国」と称している。
当初は(自身の正体を知らなかったとはいえ)はなと夢と幸せについて笑顔で語り合って意気投合する仲のいい姿を見せていたが、彼の真の思想を知った瞬間、はなは決裂とも言える敵対関係に至った。

プリキュアに10個のミライクリスタルと大量のアスパワワを集めさせて希望を大きく育てさせた上で一気にそれを奪い取ることで絶望に落とし、希望と絶望の落差の大きさを利用し莫大な力を収穫するという遠大な長期計画をリストルを除いたあざばぶ支社の人間には一切伝えず実行していた。
つまりは初期のあざばぶ支社の社員達はプリキュアのアスパワワを高めさせ、ミライクリスタルを生み出させるための使い捨ての当て馬にしかなかった。
そもそも初期のあざばぶ支社の社員達には自身の真の姿すら見せていなかった模様。
一時ははぐたんを除く、プリキュアを含めた全世界・全生命体の時間を完全に停止させることに成功したが、
はぐたんの助けを呼ぶ声をきっかけに過去のトラウマを自力で乗り越えたキュアエールに時間停止を破られ形勢が逆転。
しかし余裕を崩すことなく寧ろ自身の齎した絶望を打ち破ったことに歓喜の笑みを浮かべて撤退すると、クライアス社本社に戻りジェロスに対し計画の上方修正を宣言。
自身の計画を打ち破ったキュアエールを「面白い」と称して彼女に対して何かしらの思惑を浮かべている。



正体を明かしてからも穏やかな口調や物腰は変わらないが、目的のためならば手段を選ばない冷酷さも見せる。
プリキュアとの決戦にて、エール以外のプリキュアを捕らえたうえで、エールの目の前で拷問じみた攻撃を行い、「君がわかったというまで続ける」と脅しの言葉を悪びれもせず無表情で放つ。
一方でジェロスに対して彼女の求めるものと自身の求めるものが違うと諭したり、かつてハリハリ地区を滅ぼしたことでリストルが自身を憎んでいることを見抜いてもおり、他人の気持ちに全く無関心というわけでもないようだ。

そしてパップルの「彼氏」の正体でもある。
向こうには自身の素性は明かしていなかったが、失敗続きの彼女を優しく慰めていたようで、パップル自身も打算もなく純粋に彼を慕っていた。
それは全部嘘だったのか、それとも…



彼の目的は世界の時間を停止させて「理想の王国」を作ること。
かつて彼がいた未来世界は、人々の過大な欲望によってトゲパワワが蔓延し、世界が荒廃し文明が滅び、やがて世界の時が止まってしまった。
そう、クライアス社がいようがいまいが、民衆は欲望を制御できずトゲパワワを蔓延させ、やがて世界を破滅させてしまう。
そこでジョージは、自ら時を止めることを決意する。
人々が明日を夢見る時代で時を止め、その幸福を永遠にしようと決めたのである。
第46話でそれを語る彼の脳裏には、はなによく似た女性の姿があった…

あくまで彼は世界の破滅を望んでおらず、やり方こそ違えど世界の幸福を願うという意味ではプリキュアと目的は同じである。
もっとも、そのために時間を止めてしまおうとも考えているので、目的に対して大きく歪んでしまったともとれる。
また「大きな希望ほど敗れた時に発する負の力が凄まじい」とも考えており、プリキュアが自身の計画に立ち向かい想定を上回っていくことを喜んでいるような節もある。


一方で事あるごとに野乃はなに執着する言動と行動を見せる為、一部からは「ロリコン」「不審者」だのと不名誉な呼ばれ方をされる場合もある。


■「楽園の物語」


彼が常に携えているハードカバーの書物は、未来に至るまでの歴史が記されている。
つまりこの本には未来に起こる事象が書かれており、ジョージは「楽園の物語」と語っている。
聞こえはいいものの、本に書かれているのは上記の通り世界の破滅までの歴史であり、破滅に至るまでの絶望が記されたものになっている。
彼は本からトゲパワワを生み出し、その力を使役することが出来る。
ラスボスというだけあって、その力は強大。
吹雪や落雷といった気象攻撃から、プリキュアの猛攻にも耐える結界を生み出すこともできる。
また能力行使の際は必ずしも持っている必要はなく、手放したまま遠隔で攻撃を発動する場面もある。

だが本の内容は絶対ではなく、プリキュアが奇跡を起こした時、本の内容が書き換えられていく。
第42話では、エールの活躍により希望を取り戻した若宮アンリに関する記述が白紙になっていく様子が描かれており、未来を変えることが出来るということを示している。
これにはジョージも驚きを隠せずにいた。

最後はエールとの最終決戦で彼女の攻撃を受け、跡形もなく消滅した。


■劇中の動向


正体を現すまで

初登場は第8話。
もぐもぐの散歩をしていたはなの前に現れる。
ミステリアスな発言をして、その場はすぐに立ち去った。
はなは言葉の意味がよくわかっていなかったようだが、「大人の人だ…」と感心していた。

第11話ではのびのびタワーで再びはなと遭遇。
またもはなに不思議な言葉を投げかけると、直後にオシマイダー化したチャラリートが出現。プリキュアとチャラリートの戦いを見届ける。

第16話では、雨が降る中花畑に佇むところをはなと遭遇。
はなと少し会話し、またふらりと姿を消した。

第20話では、買い物をしていた輝木ほまれとハリー、はぐたんの前に現れる。何気にはな意外と初めての会話。

第23話ではまた雨の中はなと遭遇。
今まで一方的に喋るだけだったが、ここで初めてはなとまともな会話をする。

「君は素敵な女の子だね」

そしてまたも姿を消すも、直後のオシマイダーとの戦いの最中に再登場。
一般人だと思ったエールはジョージを庇おうとするも、ジョージは本性を現しミライクリスタルを強奪。
自身の正体を悪びれもせず語り、ドクター・トラウムの発明した機械と合わせて、一度は世界の時間を止めることに成功してしまう。
唯一はぐたんだけが時間停止の影響を受けず、不思議に思ったジョージははぐたんを自身のもとへ連れようとするが、その時はなが自力で時間停止を解除しはぐたんを救出。
他のプリキュア達も復活し形勢逆転と見るや、その場をトラウムと猛オシマイダーに任せて自身は撤退した。

本社に戻ってからは、それまでのラフなシャツから正装へと着替え、ジェロスに計画の上方修正を指示。
自身の当初の計画がプリキュア達に打倒されても「計画通り」と高笑いし、モニターに映るエールにどちらが描く未来が正しいか宣戦布告をした。

本性を現してから

第31話では、タクミ・ジンジンの解雇を要求するジェロスに対して、「君には君の物語がある」と、二人の処遇について半ば丸投げをした。

第39話では、夜中の窓際で「楽園の物語」を読んでいるところをリストルに身体に障ると毛布を掛けられる。
その後出撃したリストルとプリキュア達の戦いで、「ミライクリスタル・マザーハート」が覚醒すると、それまで読んでいた「楽園の物語」の中身が白紙になっている(=未来が書き換えられた)ことに驚きを見せていた。

第42話では、若宮アンリに訪れる絶望に未来に憂うも、その後のエールの活躍でアンリがキュアアンフィニに覚醒し、またも未来が書き換えられたことに興奮を隠しきれずにいた。

第43話では、はなの前に久し振りに単独で登場。
「希望とはすぐに絶望に変わるものだと、君は気付いている」と、はなに不安を残す言葉を投げかけ、「君は本当に素敵な女の子だ」「じゃあ、またね」といつもの調子でその場を去った。

第45話では、はなが包装紙の絵を描くシーンに合わせて大きな壁画のような「花」の絵を描いていた。
だがラストではせっかく描いた絵を恍惚の表情で白く塗りつぶしていた。

最終決戦

第46話では、はぐくみタワーのエレベーター内で、まるで二人きりになるのを狙ったかの如くはなの前に出現。
クラスペディア(花言葉:永遠の幸福)の花束を渡そうとするも拒絶され、ひどくショックな表情を見せていた。
そしてはなに未来世界の真相を語り、それを知ってもなお自らと対立するはなの気持ちを知るとその場を去る。

その後本社に戻り、本格的に決着をつけるべく自ら稟議承認。
クライアス本社社屋ごと乗り込み、膨大なトゲパワワの力で世界の時間を止めてしまう。
時間が止まってもなお動くことが出来る者たち、プリキュアと元社員たちを相手に、ついに最終決戦に臨む。
はぐたんを人質として攫い、リストルとビシン、召喚した大量のオシマイダー軍団を差し向ける。

元社員たちの協力でそれらを跳ね除け乗り込んできたプリキュア達と本社内でついに対峙。
圧倒的な力でプリキュア達を翻弄し、エールだけをトゲパワワの檻に閉じ込め、他のプリキュアを触手で拘束し拷問の如く痛めつける。
仲間を人質に取られエールは心が折れそうになるが、そんなことをさせない仲間たちは自力で拘束を脱出。
それを見たジョージは、エール以外のプリキュアを空間の狭間に閉じ込め、ステージを花畑に移しエールと二人きりで対峙する。
花はゾリダスター、花言葉は『永遠』。

仲間を失いたった一人になってもなお立ち向かうエールをジョージは難なくあしらう。
圧倒的な力量差に追い込まれても諦めないエールに、ジョージはついに苛立ちを隠せなくなる。
一度は変身が解けたが、それでも立ち上がったエールははぐたんを救出、更に仲間達も脱出し、その時溢れたアスパワワによって世界の時間が再び動き始める。
とうとうエールとは分かり合えないと悟ったジョージは、自らにトゲパワワを注入し巨大なオシマイダーと化し、無差別に破壊を始める。

それでも諦めないプリキュア達の気持ちが奇跡を起こし、世界中みんながプリキュアとなり、合体浄化技を発動。
巨大化したジョージ・クライは消滅し、彼の野望はここに完全に終えた。





決着後、崩れゆくクライアス社内部に佇むジョージのもとへエールが駆け寄る。

ボクの負けだ

夢をみていたのは、ボクの方だったのかもしれないな

23話でエールに貸したままだったハンカチを受け取り、二人で穏やかに話す。

一緒に行こう

どこへ?

未来へ

無理だよ、ボクは未来を信じない

ウソ
本当に未来を信じていないなら
どうして、いつもわたしに『またね』って言うの?

そっと優しくハグをするエール。
そして、心のどこかで本当は未来を信じていたことに気づかされ、ジョージは涙をこぼす。

ハハ…ハハハハハ…
君は本当に素敵な女の子だね

またね

ボクも、もう一度――


ジョージはその場を去った。
そこには、一輪のクラスペディアが残されていた…


最終回では、どこかの時代のどこかの荒野で歩く彼がいた。
どこへ行くのかはわからないが、彼が未来へ歩み始めたのは間違いないだろう。

時計の針は動き出した

命が生まれ、未来が育まれていく――



野乃はなとの関係


他人にはおよそ無関心な彼だが、野乃はなにだけは異常なまでの執着を見せる。
正体を明かした後もわざわざはなのもとを訪れていることからも、彼がはなに対して特別な感情を持っていることがうかがえる。

第23話ではなを「素敵な女の子」と評した彼だが、それを受けてはなは赤面していた。
アニメージュのスタッフインタビューで、「はなにとってジョージは初恋の人」であることが明言された。
だが同話ですぐに彼が敵のボスであることが発覚するため、はなが恋心を自覚していたかは怪しいところで、「好意が恋心であると気付く前に裏切られた」といった感じと思われる。
はな役の引坂理絵氏は「芽生えかけたところで叩き折られた、みたいな感じかなあ」と語っている。
「素敵な大人だと思っていた人が悪の親玉だった」という事実は、はなの心に少なからず影を落とすことになった。

第46話の彼の回想に、はなによく似た女性が登場している。
キャラクターデザインの川村敏江氏のインタビューにて、この女性の事を「髪が長かった頃のはなが成長した姿」であると明かしている。
同時に「今のはなとは、別の世界線のはなということでしょうね」ともコメントしており、どこか違う世界でジョージとはなが関わりを持っていたのは間違いないようだ。

そしてこの事実を踏まえた上でシリーズ構成の坪田文は「クライは未来では、最愛の人があまりいい事情でなく亡くなっている」と明言している。
ジョージが語る未来の物語の中に「髪が長かった頃のはなが成長した姿」が映っているということは、つまり彼の最愛の人の正体は…
このことに加え最終話で判明したある人物の正体を考えると、ニチアサで描写するには非常にマズイ描写となりかねないのでボカされた可能性が高い。


■余談


名前の由来は、脚本の坪田文氏いわく「常時、暗い」。
当初「○○・クライ」という名前にしようとは考えていたが中々決まらず、そこにシリーズディレクターの佐藤順一氏が呟いた「常時、暗い」という言葉にピンときて決めたという。

演じる森田順平氏はプリキュアシリーズ初出演。
演じるにあたって、公式側から「(ジョージは)はなのことがとっても好き」ということだけ伝えられ、その一点で演じてきたと語っている。
ちなみにクレジット表記はされていないがホログラムのクライも森田氏が演じている。

なお、「プリキュアシリーズ」では非常に珍しい、現状では唯一無二の純粋な『人間』のラスボスである。


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最終更新:2024年02月05日 11:19