物言わぬ航路(名探偵コナン)

登録日:2019/04/18 (木) 00:00:16
更新日:2019/05/10 Fri 21:33:18
所要時間:約 10 分で読めます





知ってるだろ?秀吉の大返し…

そう…
信長を亡き者にし、天下人になろうとした光秀を…
岡山から京都までわずか三日で駆け抜け、討ちに戻った秀吉の神業だ…


能勢…悪いがお前に天下は…

取らせねぇよ…


『物言わぬ航路』とは、『名探偵コナン』において、江戸川コナンの助言を受けながら毛利小五郎が解決した事件の名称である。
単行本第45巻に収録。テレビアニメでは第371話・第372話として2004年8月23日と30日に放送された。
久々の倒叙ミステリーだが、今回でコナンは黒の組織の中枢へと繋がる重要な手がかりを得る事となる。


※以下ネタバレが含まれますので、未読・未視聴の方はご注意ください。


【ストーリー】
日売テレビの企画でプロ野球選手の能勢利三と対談をする事になった小五郎。
それを知ったコナンと蘭もついていく事にし、1月11日に3人で能勢の自主トレ先である沖縄へと向かった。
那覇空港に到着して30分後、能勢の親友のスポーツタレント・本山正治が現れる。
コナン達は本山と一緒に能勢の宿泊しているホテルへ向かうが、その途中の道でうつ伏せで倒れている男性を発見する。
それはロードワーク中に本山に殺害された能勢の遺体であった。
コナンは遺体発見時の本山の言動から犯人は彼だと確信するが、本山には能勢の死亡推定時刻に宮崎発沖縄行きの飛行機に乗っていたという完璧なアリバイがあった……


【事件関係者】
※関係者の名前の最初の漢字を合わせると「本能寺」となる。

  • 本山正治(もとやま まさはる)
CV:坂東直樹
スポーツタレント。
元ジャガーズのプロ野球選手で、能勢とは同期入団の間柄。
1年目にセーブ王と新人王を取ったが2年目に肩を壊し、手術はしたが球威は戻らず5年目で引退した。本人曰く「2年目のジンクスに負けた一発屋」。
その後は同期入団のよしみで能勢からテレビの仕事を紹介してもらい、スポーツタレントとして活躍するようになる。
対談の前日には宮崎で生放送番組に出演し、その後は宮崎市の宮崎プリンセスホテルに宿泊。
対談当日に「秀吉の大返し*1」ばリのアリバイトリックを使って沖縄へ行き、トレーニング中の能勢を殺害して那覇空港に現れた。
警察の事情聴取で「能勢はアンチジャガーズを名乗る何者かから脅迫を受けていた」と話すが、能勢の遺体を発見した際に失言をした事でコナンに犯人だと確信される。

  • 能勢利三(のせ としぞう)
CV:石井康嗣
ジャガーズの守護神として知られるプロ野球選手。
今シーズンの通算セーブ数日本記録がかかっているセーブ王で、球界屈指の頭脳派ピッチャー。
本山とは旧知の間柄で、彼が引退した時には同期入団のよしみでテレビの仕事の世話をした。
現在は沖縄に滞在中で、ホテルの近くでロードワークをするのが日課となっている。
沖縄で小五郎と対談する予定だったが、ロードワークをしていた時に本山と出会い、包丁で刺殺された。

  • 寺西(てらにし)
CV:千葉一伸
沖縄日売テレビのスタッフ。
那覇空港でコナン達を出迎え、小五郎に小さな紙袋を渡す。
本山が到着すると皆を車に乗せて能勢の宿泊するホテルに向かうが、その途中で能勢の遺体を発見する事となる。
高校まで野球部でエースの4番として活躍しており、その頃の名残で左手で物をキャッチする癖がついている。

  • 渡嘉敷(とかしき)
CV:岡和男
沖縄県警警部*2。名前はアニメ版で設定された。
小五郎の事はテレビの影響で「食べっぷりのいい名探偵」として認知しているようで、名推理に期待するものの彼からは「本当にそう思ってんのか?」と疑われていた。

  • 伊良部(いらぶ)
CV:河相智哉
沖縄県警刑事*3で渡嘉敷の部下。名前はアニメ版で設定された。


【レギュラー陣】
ご存知主人公。
本山が能勢の遺体を一目見て殺人だと確信したような発言をした事から、彼を今回の事件の犯人だと断定。
しかし本山には鉄壁のアリバイがあったので、大空の裏道を利用した彼のアリバイを崩そうとする。
だが本山が知人に電話をしている様子を見ていた時に、なぜかベルモットの姿が脳裏をよぎる
奇妙な感じを覚えつい動揺するが、その原因は何なのかは分からなかった。

ご存知蘭姉ちゃん。
小五郎と能勢の対談をクラスの野球部員に知られ、能勢のサインを頼まれる。
色紙がなかったのでとりあえずテニスボールを用意してきたが、沖縄行きの飛行機の中でそのテニスボールを誤ってぶちまけてしまう。
英理のぶんのサインも頼もうと考えており、デジカメで能勢のガッツポーズの写真も撮ろうとしていたが、事件のせいで能勢の遺体の写真を撮る事となったので思わず涙を流していた。

ご存知迷探偵。
日売テレビの企画で能勢と対談する事となったが、コナンと蘭には前日まで黙っていた。
対談の後で豪遊するつもりだったようで、結局3人で行く事となった際には不満そうにしていた。
那覇空港に到着すると寺西から小さな紙袋を受け取る。
以前沖縄で平次と大食い対決をしたので、渡嘉敷達に「いい食べっぷりだった! 」と賞賛(?)されていた。
今回は久々に眠らずに事件を解決する。

ご存知法曹界のクイーン。
今回でジャガーズの熱狂的はファンである事が発覚する。


【その他の人物】
  • 木暮(こぐれ)
鹿児島ファルコンズ所属の野球選手。
自主トレ中の宮崎で、事件前日に本山から取材を受けていた。
13巻『三つ子別荘殺人事件』以来の登場となる。


以下、事件の真相。さらなるネタバレにご注意ください

























フン…皮肉なもんだ…

癖で投手生命を絶たれた私が、またもや癖で墓穴を掘るとは…


  • 本山正治
事件の犯人。
彼が現役時代に肩を壊したのは、能勢の「お前、投げる時癖があるぞ」という一言が原因であった。
新人王とセーブ王を取った1年目に能勢にそう言われた後、ノイローゼになるぐらいに投球フォームをチェックしまくるが、結局癖は見つからずその投げ過ぎが祟って肩を壊してしまった。
5年目で引退すると、能勢が急に親身になってテレビの仕事を世話してくれるようになるが、その時の能勢の態度が今までずっと引っ掛かっていた。
そして先月、編集前のスポーツバラエティ番組のVTRを見て、ようやくその謎が分かった。
その番組には能勢が出演していたが、司会者に球界のここだけの話がないかを聞かれた能勢は頬杖をつきながら得意げにこう言った。

若いピッチャーを潰すなんて簡単だよ…

癖があるって耳打ちしたら、勝手に自滅しちまうんだから…

そう、本山には最初から癖なんかなく、あの時の能勢の言葉は本山の自滅を狙った嘘だったのである。
これまで能勢に恩を感じ、自分の後にジャガーズの守護神となった能勢の活躍を自分の事のように一喜一憂していたが、この真実を知った途端に悔しさと情けなさがこみ上げてくる。
そして肩さえ壊さなければ自分が通算セーブ数の日本記録を破るはずだったと思うようになり、能勢に日本記録を塗り替えられる前にその手で彼を殺害した。

宮崎から沖縄へ向かう飛行機は9時50分着の1便しかないので、昨夜に宮崎で生中継に出ていた彼に犯行は無理だと思われたが、東京経由で大回りをすれば朝9時半前には沖縄へ到着する事が出来る。
今回のアリバイトリックはそれを利用したものであった。
まず昨夜の8時35分の飛行機で宮崎から東京へ飛ぶ。そして翌朝6時55分の飛行機で東京から沖縄へ向かえば9時20分には沖縄の土を踏む事が出来る。
後はあらかじめ借りていたレンタカーで能勢のフィールドワークコースに行き、そこにやってきた彼を殺害。9時50分までに那覇空港に戻り、適当なチケットを使って搭乗口に入り飛行機に乗らずに到着口から出てコナン達の前に現れた。
宮崎のホテルをチェックアウトしていなかったのは、昨日の時点で宮崎を離れ東京へと行っていたからである。
ちなみに犯行に使ったコートと包丁は、那覇空港の駐車場に停めていたレンタカーのトランクに入れていた。

那覇空港に現れた時に、小五郎達から離れていたコナンを小五郎の連れとして話しかけた事で、コナンに「空港で会う前にどこかで自分達が一緒にいるところを見ている」と思われるようになる。
実は彼が利用した東京から沖縄へ飛ぶ飛行機にはコナン達も搭乗しており、彼は顔を隠してコナン達の横に座ってい
た。
その際に蘭がテニスボールをぶちまけるアクシデントに出くわすが、その時に投手だった頃の癖でつい左手でボールをキャッチしてしまう。
それによってテニスボールに自分の指紋が残ったと思い、隙を見て蘭からボールを奪い証拠を隠滅しようとする。
そしてテニスボールをくすねてからレンタカーを停めていた那覇空港へ向かうが、そこではトリックを見抜いた小五郎達が待ち伏せをしていた。
レンタカーからコートと包丁が見つかると観念して犯行を自供。涙で犯行の動機を語った後は小五郎から後述の厳しい言葉をかけられ、沖縄県警へ連行されていった。

ちなみにアニメ版ではトリックを暴かれると黙ってしまうが、小五郎に缶ジュースを投げつけられた時に左手でそれをキャッチしてしまい、懐からテニスボールの缶が落ちてそのまま崩れ落ちていた。

  • 能勢利三
ライバルを減らしたかったからなのか、当時ノリに乗っていた本山に「お前、投げる時癖があるぞ」と嘘をついて自滅を狙う。
だがその嘘で本当に自滅するとは思ってなかったからか、本山が肩の故障で引退した後は親身になってテレビの仕事を紹介した。
しかしそれから何年も経った事で罪の意識は薄れてしまったようで、スポーツバラエティ番組に出演時に「若いピッチャーを潰すなら「癖がある」と耳打ちすればいい」と得意げに語っていた。
すぐにそれをカットするよう冗談ぽく言うが、編集前のその映像を本山に見られた事で彼に真実を知られてしまい、通算セーブ数日本記録更新直前に本山に殺害されてしまった。

  • 毛利小五郎
今回は珍しくコナンに眠らされず、彼の言葉をヒントに事件を解決に導く。
推理に詰まる頼りない場面もあったが、本山が動機を涙で語ると「どの道あんたには日本記録は無理だ」と切り捨てる。
そして能勢に騙された本山の事を不憫に思いつつも、厳しくこう言い放った。

ストッパーっていうのは、チームにとって最後の砦…


ボコボコに打たれようがクソミソに野次られようが…

次の試合で出番がくりゃ、平気な顔でマウンドに立たなきゃいけねーんだ!


我を見失って人殺しをしちまうような奴に…

チームの命運を背負い続ける事はできなかったと思うぜ…

そう語った後に「お前がこんな事しちまったせいでなぁ…」と何かを言いかけるが、すぐに本山に背を向けてそのまま去っていった。
実は英理のために蘭に内緒で事件の前に能勢にサインボールを頼んでおり、先ほど沖縄に到着した時に寺西からそれを受け取っていたのである。
事件で能勢が殺害されたので、サインボールを英理に渡しづらくなってしまうが、これが能勢の最後のサインだとすればかなりのレア物になるんじゃないかと思い、ついにやけるのだった。


【余談】
本作が発表された2003年頃は、テニスボールのような表面がフサフサした物体からは指紋を採取するのは困難であった。
だが科学の進歩によって現在ではテニスボールや毛糸等のフサフサしたものからでも指紋の採取が可能となっている。
本作の約10年後に発表された『 仲の悪いガールズバンド』では、毛糸から採取された指紋が決定的な証拠となっており、安室透がこの事について解説をしている。




追記・修正は大空の裏道を利用した事がある人にお願いします。

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