SCP-1280-JP

登録日:2019/03/24 Sun 00:27:11
更新日:2023/11/13 Mon 23:23:58
所要時間:約 17 分で読めます





毒を制しているものこそ猛毒だと気づくことに遅すぎた。
だが、我々にはこれしか無い。


SCP-1280-JPとは、SCP財団日本支部が収容しているオブジェクトである。
項目名は「ヒュームの穴」。
オブジェクトクラスはSafe。

…「ヒュームの穴」で色々と嫌な予感がする財団職員も多いだろうが、そのまま読んでほしい。
その予感は恐らくは、おおよそは当たっているはずなので。

特別収容プロトコル

SCP-1280-JPは移動しないため、サイト-8129旧研究室棟内の収容室、G285に収容されている。
室内には現状、18台のSRAが配置され、SCP-1280を抑え込んでいる。
…SRAを使用するという時点で、現実改変関連、或いはヒューム値に関連するオブジェクトだと感づいた方は多いはずだ。

※SRA(Scranton Reality Anchor/スクラントン現実錨)とはざっくり言うと毎度おなじみ財団のビックリドッキリメカ…もとい現実性の変化を固定或いは安定させ、ヒューム値異常で発生する現象や現実改変を阻止するための機器である。
直接的に現実改変を行うのではなく、飽くまでヒューム値(現実性の強さ)の変化を固定するだけの機器である。…本当に、それだけですよ?
このためいわゆる現実改変系SCPの収容や、或いは逆にSCP-2000のようなThaumielクラスオブジェクト、財団の切り札中の切り札に対する悪さを阻止するための「セキュリティ」などに用いられている。
変わったところでは野球ボールサイズにまで小型化して、アノマリー大合戦と化した財団の野球大会にも投入されている

しかし現状で18台とは、オリンポス山頂張りの固め方である。

さらには、仮に収容室内のヒューム値が0.85Hmを下回った場合、4.1Hm/h以上の出力を持つSRAをさらに増設して抑え込むこととされている。

こんな世界やり直しマシーンやオリンポス山もかくやのSRAからくり卍固めをしなければならないオブジェクトとは…。

説明

SRAでガッチガチに固められたこのオブジェクト、オリンポス山を担当した経験のある職員なら大体察しがついたはずだが、
東経13█°██'██"、北緯3█°██'██"に位置する時空間異常と、その周辺の現実性希薄領域のことである。
現実性の希薄なエリアでンボボボさんを思い出した職員もいるだろうが、こいつのヤバさはあんなものじゃない。
ちょっとだけ現実性が低いなんてもんじゃない。本家の記事の画像を見ればわかるが光景が歪んでるのが肉眼どころか写真でわかるレベル。
SAN値、もといヒューム値がゴリゴリ削られているので景色が歪んで見えてる上に白く霞がかっている。
「核」となっている時空間異常は、当初は直径1.1mだったが、現在は2.1mにまで広がっている。
広がる時空間異常であの長野の大ウツロことハイパーデンジャラスブラックホール、SCP-280-JPを思い出した方もいるかも知れない。
あっちは財団世界「が」ヤバイが、こっちは財団世界「を」含めた数多の平行世界がまとめてヤバイ。
もしかしたら我々の世界もヤバイかもしれない。それ程物騒なオブジェクトだ。

SCP-1280-JPは2006年の12月23日にサイト-8129の研究室内に突如として現れた。
こんなもんが現れたらSCPの研究なんてやってる場合じゃない。そんなわけでサイトそのものを改築してSCP-1280-JPを収容するに至った。

で、このSCPが何をやってるのかといえば、ものすごくざっくり言ってしまえばオリンポス山頂と同じく、周辺の現実性を全力でバキュームしている。
メタタイトル通りの「ヒュームの穴」なのだ。
向こうと違ってヤバイ実体が現れるということは少なくとも現状ではない。だがこんなものが恒常的に居座ってたら危険なことには変わりない。
何が危険なのかって、周辺の現実性を吸い取っている「穴」ってことは、その周辺はもちろん現実性が薄くなる
そんなところに1Hmの世界のものが入り込んだらどうなるか。
スクラントン博士が図らずも体を張って示したとおり、薄い現実性の場で「溶けて崩れて」消えてしまう。
だから特別収容プロトコルにある通り、SRAをしこたま持ち込んでヒューム値をなんとか維持している。
もちろんこんなとこに立ち入ったらろくなことにはなるわけないので、立入禁止にもされている。

これで終わりじゃないのがSCP-1280-JP。12時間毎に、中心部である時空間異常の領域が拡大していく。
しっかりきっかり12時間毎に、パーセントで2桁の割合で直径が拡大する。
SRA関連の技術者なら、きっちり12時間毎に拡大する辺りでこれまた嫌な予感がしただろう…?
兎にも角にも12時間毎に拡大するこの「ヒュームの穴」、放って置いたら日本、地球、ひいては宇宙そのものが根こそぎ現実性を吸い取られ
ZK-クラスシナリオ待ったなしだ。
だが幸いなことに、こいつはSRAで拡大を阻止する事ができることもわかっている。だから大量にSRAを持ち込みブロックしてある。

実験記録

とまあ、「現実性を吸い込むハイパーデンジャラスホワイトホール」だけじゃあ、一体どんなものなのかわからないので、
幾つかの実験記録もある。

実験記録1280-JP-1では、ハツカネズミをSCP-1280-JPの影響範囲内に30分間入れてみた。
結果は、ハツカネズミの実体はまるで陽炎のようにゆらめき、表皮の溶解や内臓の脱落などが発生。
但し領域内にとどまる限りでは、身体の75%を失ってもなお生存していることが確認された。
スクラントン博士の身に起こったことが、この世界でも再現されたのだ。

続く実験記録1280-JP-2では、同じくハツカネズミを影響範囲内に3時間入れてみた。
結果は、ハツカネズミは目視不可能なレベルまで薄く広がった。
さらに影響範囲内から出すと、「現実性の濃い」この世界に希釈され消滅。

実験記録1280-3では、ハツカネズミに超小型SRAを装備させ、影響範囲内に入れてみた。
結果は、ハツカネズミは全く現実性希薄領域の影響を受けなかった。
なんだかんだでシンプルに「現実性の薄い世界」で済んでいるので、"常識的な"扱いの延長線でも行けることが確認されたのだ。

実験記録1280-JP-4では、Dクラスに携帯型SRAを持たせ、有人での調査を実施。
だがこのとき、担当のDクラスが誤って中心部である時空間異常に触れてしまう。
が、この際に時空間異常の先にも空間があることが確認されたため、そのまま調査をさせた。

突入した際にDクラスはまず、「真っ暗な無人の部屋に出た」と報告。
その部屋から出るように指示したが、部屋から出たであろうタイミングで「巨大な白い球体」と報告。
同時に件のDクラスに持たせていたカント計測器が下限値を記録し、通信が途絶。
…ちなみにカント計測器の下限値は、0.000Hmとなっている。もしかしたらその下限値を振り切った…つまり、ヒューム値がマイナスに行ってしまったのかもしれない。
恐らくDクラスは、携帯型SRAの性能を遥かに超える低ヒューム領域に巻き込まれたのであろうと分析された。

また、この結果からSCP-1280-JPの「中枢」である時空間異常の正体は、平行世界を結ぶワームホールの"出入り口"であることも判明。
ヒューム値がゴリゴリ削られている理由は、やはりオリンポス山頂と同じく、現実性が流出する「穴」であるためだということも推測された。
もしかすると、向こうの世界にもこの「穴」と似たようなものがあるのでは…となり、内部探査の実施が要請されたが…。

SCP-1280-JPの向こう側を調べた人は追記修正をお願いします。









インシデントレポート1280-JP-1


2000年代某日、SCP-1280-JPから人型実体が1名出現し、直後に消滅するという事件が発生。
監視映像と、居合わせた職員からの証言によれば、件の人型実体は「おおむね人型をしていたが、赤黒い部分と白い部分が混ざりあった体表、脚部、頭部、目を保持していた」とのこと。
…凄まじい低現実性領域に居合わせた実体のことだ、低現実性領域で身体が「かき回された」結果であろうことは容易に想像がつく。
但し外観以外の点-例えば知性などについては、出現時間が35秒と短かかったため不明である。

「実体」は時空間異常内部から出現した模様。
居合わせた職員は即座に応援を要請した。
…が、「低現実性領域」で身体の構造をグチャグチャにかき回された実体をこっちに引きずり出したらどうなるか。
即死どころか「消滅」以外の運命は、ちょーっと考えられないので、接触は行われなかった。

実体はその後、周囲のSRAを見つめるかのような素振りをしたあと、出現から27秒後にゆっくりと職員に近づいたが…
この先は「編集済」となっており、詳細は不明。
しかしその後、周囲を取り囲んでいたSRAの高い現実性に「希釈」され、消滅した模様。

尚、同様の事件は、この事例以降確認されていない。
内部探査申請はO5理事会の命令により却下された模様。

追記修正は謎の人型実体とのコンタクトをした方にお願いします。






































 
【端末を認識。閲覧が承認されました。】

インシデント1280-JP-1で消滅した人型実体、その先の「編集済」となっている部分。
実はこの人型実体が消滅したあとに、奇跡的に「彼」の持っていた機器が残されていた。

…が、この残された機器が問題である。
この機器は財団標準のフィールドエージェント向けの記録端末に酷似したものだったのだ。

そして、この端末の内部に記録されていた情報…

そこに記録されていたのは、この時空間異常の正体、そして財団の異常存在の収容を支えるSRAの真実、
さらにそれがもたらす救いようのない結末であったのだ。

まず、唯一復元された画像データ。
それは、雲がかかった真っ赤な夕日と大地である。

そして記録されていた文書データ。
冗長なのは許してほしい。

Day0、最初の日付では「彼」の出発点である、彼にとっての"基底現実"が比較対象として記録されていた。
この時点で彼の元いた世界における「穴」、つまりSCP-1280-JPは直径5.5mとかなりの大きさになっていた模様。

探査開始一日目。
この時点で平均ヒューム値は0.071μHmとなっている。
「μ」が付く数値がどれだけ異常なことかは、SCPの世界に入り浸っており、なおかつ電子工作を嗜む方なら割と容易に想像できるだろう。
「穴」をくぐり抜けた先は…
ZK-クラスシナリオにより壊滅した世界であった。
頭上では真っ赤な太陽が不規則に動き、地面はこれまた絶えず揺らめいているとのこと。
先程の画像データは、恐らくこの世界の写真なのだろう。
初日の時点でこんな退廃的な世界を見せつけられたら、不安以外に湧いてくるものはないはずだろう。
そして…この世界にも「穴」、つまりSCP-1280-JPを見つけた模様。

二日目。
この世界における「穴」は7.06mと更に直径が拡大。
ヒューム値に至っては、0.069μHm。
この穴の先の世界もやはり、ZK-クラスにより壊滅していたようだ。
そして…この世界にも、やはりSCP-1280-JPが存在していた。どうやらこの「穴」は繰り返し出現しているらしい。

四日目。
合計3つの世界を通過した彼は、この世界で初めて「住民」と思わしき存在に遭遇した模様。
現実性を失ったその姿は、赤いスライム状となっていた。…こんな「第一村人発見」なんて嫌すぎる。
布をかけて弔ってやろうとしたところ、その住民は「耳を踏まないでくれ」と言った。…彼の後ろに落ちていた口で。


ここまでの情報「真っ赤な太陽」「スライムになった人間」からSCP-001 S.D.ロックの提言を連想する人も多いだろう。
ZK-クラスシナリオにより壊滅した世界との偶然とは思えない共通点があるが、明確にSCP-001と書かれているわけではないのでS.D.ロックの提言の実在証明にはならず、読者の想像に委ねられる。

九日目。
「穴」の大きさは18.44mに拡大、平均ヒューム値に至っては0.033μHmにまで低下。
彼いわく、進むたびに穴は拡大し、その先の世界は酷い有様になっているとのこと。
この世界で見たものとは、人だった液体が混じり合った川であった。
しかもそれが一人ひとりがささやきあっていて、自分と他人の区別すらついていない状態の模様。
「彼」が近づくと、それらは彼が持っていたSRAの現実性に「希釈」され、単なる肉のヘドロに成り下がった。

十二日目。
平均ヒューム値0.016μHmという超・現実性希薄化の影響か、長さすら計測できなくなったため、穴の大きさは目視によるものに変更。
肉の雲が空に昇るのを見た。赤く綺麗に発光している。
もはやこの世界の住民は液体ですらなくなっているようだ…。

十三日目。
穴の大きさがN/A(該当なし)に変化。
太陽が笑っている。五月蠅くて眠れない。今日は休息を取る。
太陽が笑っているのはSCP-1374-JPに影響を受けSCP-1374-JP-Aに変化したためだとと考えられる。
五月蠅いのはSCP-1374-JP-V群の歌だろうか。

23番目の世界では、「穴」の大きさは180~200mに拡大。
ヒューム値は遂に0.009μHmにまで低下。
ここで彼は恐るべき事実に気づく。

あの「穴」、つまりSCP-1280-JPは、一つの世界に複数開いている、ということに。
あの穴の正体は…。

その次の世界で探してみたところ、穴はやはり複数…いや、無数にあった模様。
特に(この世界での)財団施設だったと思わしき廃墟に密集している。
「元凶」の特定のために、より現実性の薄い"穴"に突入したものの、その先では遂にカント計測器が下限値を振り切り故障。
更に携帯型SRAすら、この領域の現実性…すなわち、ヒューム値が負の値を示しているであろう世界には耐えられなかったようだ。
彼は一旦「元の世界」に戻り、ZK-クラスシナリオの連鎖を断ち切る方法を考えることにしたようだ。

そして元の世界に帰った彼は、あの「穴」ことSCP-1280-JPの正体に薄々気づく-
あれは穴ではなく、現実の無い「空白」の領域であると。
そしてその原因は…
他でもない、SRAそのものであることである、ことに。

ヒュームに関する解説ページには、「他の宇宙から現実性という"砂"を汲み上げて、この世界に現実性を供給するものである」という形でSRAの動作を説明している。
…SRAは現実性を生成しているのではなく、他の世界から現実性を汲み上げる「ポンプ」であるのだ。
SRAというポンプで現実性を吸い取られれば、当然、吸い取られた先の宇宙は現実性が希薄化し、幻となって消える - すなわちZK-クラス世界終焉シナリオである。
SRAで現実性を吸い取られ、ZK-クラスを迎えたのが、SCP-1280-JPという「吸引口」の先の世界だったのだ。

そして、彼の携帯端末に記録されていた映像データ…
ここにはSRAがもたらした、絶望的な結末が記録されていた。

6分27秒間、くぐもった風音が録音されている。映像はホワイトアウトしており判別できない。
白い背景に男が映り込む。服装からするとやはりこの男は、異世界の財団におけるフィールドエージェントだったようだ。

[判別不能]…現実にいるうちに、どこかへ端末を届けられればいいんだが。

視界が揺れ、彼の後方が映し出された。
そこは完全な白色で埋め尽くされた世界。
判別できるものは一切が無い。

俺の世界だ。

再び男が画面に映る。
どうやら記録端末を地面に置いたらしい。
…記録端末が映し出した「地面」は、静かに波打ち揺らめく赤褐色の汚泥のようなものであった。
端末が置かれる瞬間、わずかに不特定多数の声が記録される。

文書データにあった「3つ目の世界」を思い起こせば、この「地面」の正体が何であるかは容易に想像できるはずだろう。

…こうなったことが分かってから、俺は必死にこの世界を調べた。ほとんど何も残っていない、空っぽの世界だ。だが、俺はなんとか真相にたどりついた。すべて遅すぎたが。

18秒間の沈黙のあと、男はこう語る。

……無数のZK−クラスによる滅亡、無数のヒュームの穴を作り出した原因は、他でもない、財団だった。

苦悶の表情で男は語る。
あの穴、つまりSCP-1280-JPはSRAことスクラントン現実錨そのもの、
正確にはSRAの「反対側」である、ということを。

SRAは別の世界から現実性を吸引し、この世界に供給する。
それは安全だと財団職員は聞かされていた。いや、正しくは何を行っているのかを把握できていなかったのかもしれない。
現実性を吸い取られるのはこの世界ではなく、ちゃんと「滅びた世界」を選択し、"リサイクル"しているのだと聞かされていた。
しかし、彼は、いや、財団は、SRAを甘く見すぎていた。

幾つもの世界を巡り、そこに残された現実性の研究資料を漁った彼。
その中の一つにはSRAの現実性吸引先の選定アルゴリズムの記載があった。
そこにあった記述には…
SRAはいくらかの割合で、「SCP財団」という組織の存在した滅亡世界を選択し、そこから現実性を吸い上げる…という旨が記載されていたのだ。
「供給元」を選択したSRAは、その世界にワームホールを接続し、自身の内部にある超小型ワームホールへと現実性を吸い上げる。
その生成法は財団独自の技術を用いた特殊な方法らしく、「痕跡」はほとんど残らないと言われている。
但し飽くまで「ほとんど」であり、極稀に痕跡を残すことがあるようだ。…それもかなり特徴的なものを。

さらに、一定の割合で「財団の存在した世界」を選ぶという点にも落とし穴があった。
SRAも現実性のもとに存在している機器である。
非稼働状態で現実の希薄化に晒されれば、それ相応のダメージを受けるのだ。
そのダメージは…恐らくはハードウェアとしてのSRAのみならず、内部の制御用プログラムまで侵食することがあったのだろう。
そうして、制御プログラムを侵食され、暴走したSRAは…

無差別に平行世界の現実性を貪った。
滅亡してない世界すら、「供給元」に選定したのだろう。

ここで冒頭の、SCP-1280-JPの特徴を思い出してほしい。
SCP-1280-JP、つまり異世界のSRAが作り出した「ヒュームの穴」は、きっかり12時間毎に拡大する。
この12時間という数値は、SRAの自己メンテナンスのサイクルと同じなのだ。

現実希薄化によりプログラムを侵食されたSRAは、12時間毎に「吸入口」を拡大させながら、無差別に別世界の現実性を吸い上げていく。

彼の世界の財団にある無数のSRA。
そしてその「無数のSRA」を保有し、使用する、これも無数の世界の財団。
それらが奪い去る「現実性」の総数は…。

俺も職員として、無数のSRAを使ってきた。ここまで来れたのも、携帯型SRAのおかげだった。だが…だが、俺にはもう、耐えられない。

男は機器…恐らくは携帯型SRAに手をかけ、荒々しく操作する。
稼働音が急速に消え、機器の発光が消える。
男の被覆が、表皮が揺らめき始める-SRAを停止させたことにより、彼自身がμHm単位の世界に「拡散」しているのだ。
この後、男は見つけ次第にSRAを止めること、そしてこのメッセージを多元放送により「吸引先」に選ばれた世界に届ける旨を伝える-
滅びの連鎖を断ち切るために。

…なぁ、頼む。SRAを今すぐ止めてくれ。それがこの悲劇の連鎖をくい止める、唯一の手段だ。これ以上、ZKの連鎖を続けないでくれ。頼む…。
君らの世界では、こんなことを現実にしないでくれ。

この記録を受けた調査の結果、現在(基底世界の)財団で稼働しているSRAのうち、いずれかのK-クラスシナリオにより滅びた世界を「供給元」としている個体は56%、
更にそのうち「彼」の言及のあった放送電波を受信している個体は22%に上ることが判明した。
この事実を受け、SRAの活用を停止または縮小する提案がなされたが、
今日ではもはや、財団の収容体制はSRAなしでは成立しないことから、提案の無期限凍結…実質的な却下が決定された。

また、この決定を受けて、SCP-1280-JPの特別収容プロトコルは、SRAを多数用いたものに差し戻された。


SRAは、現実改変者、或いはヒューム値異常に対する財団の切り札であることは疑う余地がない。
しかしその動作は無からヒューム値を作り出しているのではない。
ボロボロになり死にゆく世界からヒュームを吸い取り「リサイクル」しているだけである。

そして、その「供給元」は一定の割合で、亜財団のあった世界が選ばれる。
亜財団も「確保、収容、保護」を遂行する以上、SRA、或いはそれに類似した機器を開発し、運用しているのだろう。
そしてその機器も、現実性が希薄化すればその影響を受ける-機器すなわちハードウェアとしても、さらにはその「機器」を制御するプログラムも。
現実性の希薄化で魂を狂わされたSRAは、先行きすら考慮せずに、無差別に別世界に根を伸ばし、現実性を食い荒らす。
少なくとも今は滅びに瀕していると言えない世界にも、その魔の手を伸ばすだろう。
実際、この基底世界にも、SCP-1280-JPという形で、別世界の「財団」の「SRA」が、現実性の吸入口を穿孔したのだ。
そしてそれは、もしかするとこの世界の財団におけるSRAも同じなのかもしれない。
さらに皮肉なことに、別世界からの「吸入口」というSCPオブジェクトを抑えるために使用されているのが、他でもないSRAなのだ。
SCP-1280-JPだけではない。
オリンポス山、イエローストーン公園の地下…様々なSCPを確保し、収容し、そして保護するために、今もなお数えきれない量のSRAが稼働しているのだ-別世界の現実を貪りながら。
財団の確保、収容、保護のために、異世界を食い荒らし、滅亡に追い込む。そしてそれは、ZK-クラスの連鎖となって様々な平行世界に広がっていく。さらにその一旦も、なんの因果かこの世界に時空間異常として戻ってきた。
それを抑え込むのは - 皮肉なことに、全ての元凶たるSRAなのだ。
結末を抑えるために元凶を用いる。我が身を喰らう蛇のごとく
こんな連鎖があっていいのだろうか。


追記・修正は、ZK-クラスシナリオを断ち切る決心をした方にお願いします。



SCP-1280-JP - ヒュームの穴
by sanks269
http://ja.scp-wiki.net/scp-1280-jp


この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • SCP Foundation
  • SCP財団
  • SCP-JP
  • SCPオブジェクト
  • ヒュームの穴
  • SCP-1280-JP
  • 亜財団
  • スクラントン現実錨
  • SRA
  • どうあがいても絶望
  • 負の連鎖
  • K-クラスシナリオ
  • Safe
  • おれらのせいだ

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年11月13日 23:23