エタニティラルバ(東方project)

登録日:2019/03/22 Fri 22:20:00
更新日:2024/04/14 Sun 16:54:33
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夏をエンジョイしているかい?


エタニティラルバとは、東方Project第16作『東方天空璋』のSTAGE 1ボスを務めるの妖精である。(2017年8月9日という夏の真っただ中に天空璋CDラベルにて初登場)
同作以外ではコミカライズ『東方三月精』、第16.5作『秘封ナイトメアダイアリー』、第18.5作『バレットフィリア達の闇市場』にも登場している。


  エタニティ(Eternity)は英語で永遠を、

     ラルバ(Larva)はイタリア語で幼虫を意味する。


【概要】

英語表記 Eternity Larva*1
種族 妖精
二つ名 神に近づく蝶の妖精 (『天空璋』)
    真夏のアゲハ蝶の妖精 (『三月精』)
能力 鱗粉をまき散らす程度の能力
テーマ曲 真夏の妖精の夢


太陽の畑を根城とするアゲハ蝶の妖精。愛称は”ラルバ”。イタリア語のおしゃれなネーミングがとても素敵。なお、夜明けという意味の場合、alba(アルバ)に定冠詞l'を加えるとL'alba(ラルバ)となる。ちなみにイタリア語ではEternità Larva(エテルニタラルバ)と呼ばれることも。
後述の【容姿】からわかる通り成虫だけではなく幼虫やサナギをも含んだ“昆虫の成長と再生と変態”を体現する存在である。



【容姿】

水色の髪とオレンジ色の瞳を持った、十歳前後の少女の姿をしている。妖精なので身長は低めだが、足は裸足で腕も露出度が高めなのでセクシー。イタリア人男性たちにモテること間違いなし。
背丈はチルノ光の妖精とほとんど変わらないが、穏やかで気配りが出来る性格もあって少しだけ大人びて見える。
背中には大きなアゲハ蝶の羽が、頭にはダフネを彷彿させる葉(橘か)のリングに加えて黄色い二股の触角が備わっており、彼女がただの蝶の妖精ではないことを示唆している。上着はサナギを、スカートは幼虫をそれぞれあしらったデザインで、全身を使って蝶の一生を表現している。
寒いと羽で全身を包み込む。鱗粉まみれになっても自分は平気なのだろうか。



【性格】

前述の通り、普段は極めて温厚な性格。
頭はあまり良くないが、『天空璋』で霊夢達に敗れた後も彼女を応援する辺りに彼女の人となりが窺える。
何処かで戦闘があるとパワーアップアイテムを数個持参して遊びに行くそうだ。……温厚?
まぁ戦国時代には弁当片手に合戦を見に行く文化もあったしその名残りなのだろう。
一応、この設定のおかげで普段ゲーム中で霊夢達が退治した妖精がパワーアップアイテムを落とすのは持参してきていたからだという事が明らかになった。


夏が大好きで、特に同じ妖精には“夏をエンジョイしているか”尋ねる事が多い。
他の妖精同様、基本的には子供らしい単純な性格をしているが、時折幼い外見に不似合いな聡明さを見せることも…(詳しくは【能力】にて後述)


初出の『天空璋』では四季異変により暴走していたため、道行く自機勢に弾幕ごっこをふっかける好戦的な性格となっていた。
特に霊夢や文との戦闘では「今なら新世界の神にでもなれそうな気分よ!」と豪語しているほど。
……もっともいくら暴走しようとも妖精は幻想郷のヒエラルキーでも下位に位置する存在。同じ妖精のチルノ相手には善戦した物の他三名には容易く蹴散らされてしまった。
とはいえ一面ボスにしては珍しく撃破後も会話があったり、ある程度強いという描写は成されている。

しかし、ラルバにはとてつもない新世界の神としての底力を秘めていることを知る由はなかった…隠岐奈からあの台詞が飛ぶまでは…



【能力】

自己申告の鱗粉をまき散らす事以外にも、危険を察知すると触角から弾幕と臭い匂いを出すとされる。
だが、四季異変の後ラルバは更なる能力に目覚めようとしていた。
秘神の力によって一度は暴走したラルバだったが、『三月精』にて三妖精に誘われて参加した博麗神社での“灼熱炎祭り”ではクラウンピースの松明の真価を見抜いてそれを振りかざすことで神社の巨大な焚火をたったの一振りで消した。そればかりか祭り会場の周辺を覆うかのように何本ものヤシの木を生やし、真冬の境内の気候を夏その物に変えてしまったのだ。
異変によって得た力を失うどころか制御した事で、地獄の妖精たるクラウンピースをして「不気味な底力」を感じさせた。


なお夏の妖精であるはずのラルバだが、秘神(摩多羅隠岐奈)が彼女の背中に発生させた“扉”の行先は夏ではなく季節の変わり目である“土用”だった。
『三月精』では秘神との再戦に赴くチルノがラルバの背中に生じた扉に入った結果忽然と姿を消した事がラルバの口から語られている。この事をチルノから聞いた秘神はラルバの本質はアゲハ蝶の妖精などではなく、秘神に敵対する神の一つである“常夜神”*2ではないかと推測している。


隠岐奈「そいつはアゲハチョウの妖精では無く常夜神なのかもしれんな。」


ラルバが使うスペルカードは以下の通り。
スペルカード名 登場作品
蝶符「ミニットスケールス」 東方天空璋
蝶符「アゲハの鱗粉」 同上
蝶符「フラッタリングサマー」 同上
蝶符「真夏の羽ばたき」 同上
蝶符「バタフライドリーム」 秘封ナイトメアダイアリー
蝶符「纏わりつく鱗粉」 同上
夢蝶「クレージーバタフライ」 同上
蝶符「デッドリーバタフライ」 バレットフィリア達の闇市場



【ラルバの生活】

暖かい日を好むため、普段はひまわりが生い茂る太陽の畑を拠点に暮らしているが、暖かい環境には多くの妖精(ライバル)が住んでおり人口が密集している事から引っ越しを考えているとのこと。
ただしチルノが住まう霧の湖を勧められた際は日光がまともに入らない環境を嫌がり却下していた。さらに博麗神社は風が強いという理由であまり近づこうとしない。
蝶の妖精であるため寒さには弱く、冬の間はひたすら魔法の森の地中にある“別荘”で春を待つ。
一般的に妖精の住処は発見が難しい事から、『三月精』作中で光の三妖精が訪れるまでは彼女の別荘に足を踏み入れた者はいなかったとのこと。
別荘の中は真冬でも暖かく、室内にはひまわりを中心に葉っぱやキノコを材料にした多くの家具がある。就寝時は葉っぱのベッドで繭に入るかのように丸まって眠る。
“自分だけの夏”を再現した快適な部屋の中でゴロゴロして過ごすため一見すると気楽そうだが、ラルバにとっては退屈極まりないようで春が早く来ないかと待ち侘びている。



【対人関係】

❾チルノ(チルエタ)
『天空璋』以前からの顔馴染みで、四季異変では両者とも暴走しながらも“夏をかけて”勝負した。幻想郷全域に及ぶ異変の最中では妖精同士の戦いはちっぽけな物のように思われるが、こと今回の異変の本質は“妖精の暴走”であるためある意味象徴的な戦いである。
事実『外來韋編』におけるZUN氏のコメントによると「二人の対決が一番のクライマックス」であるとの事。最初からクライマックスだぜ。
異変解決後もしばらくの間幻想郷の季節の異常 (とチルノの日焼け) が直らなかったが、太陽の畑で再びチルノが消失した際には一晩かけて捜索していた。ちなみに異変のあらましについてチルノから詳細を聞いており、彼女の日焼けの真相にも気付いている。


●サニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイア
博麗神社の境内に住まう、お騒がせな光の三妖精。
ラルバは四季異変解決の直後に太陽の畑へ遊びに来た彼女達と出会った。
チルノに虫扱いされたことを受けて、昆虫を思わせる羽をもつ三人を指して「あんたらもみんな虫みたいなもん」と発言している。これを受けた三妖精はお腹を抱えて笑っていた。
再び消失したチルノを探す時には、 (サニーは寝ていたが) 協力した。
その後冬に魔法の森の別荘に三人が訪れたため歓待、神社の祭りに誘われた事で快く了承する。
この直前に、「食材を探しに来た」というスターに二の腕を甘噛みされている。かわいい。このシーンで印象に残ったファンからはそのカップリングを「スタラル」と呼ぶことも。


●クラウンピース(ラルクラ、やっかいコンビ)
地獄の女神の命を受けて地上にやってきた、狂気の妖精。
互いに寒さが苦手なためすぐに打ち解け、ラルバはピースの持つ狂気の炎に興味を示していた。
神社の祭りを通して双方の力を認め合ったが、ピースは今まで誰も消した事がない自分の松明の炎が消えたのを見てラルバに警戒心を抱いた。この様子はかつてギリシア(クラピはギリシア神話のランパデが元ネタ)を制圧したローマ帝国でさえ恐れおののく存在(ラルバ、詳しくは【Larva nell'Età Imperiale Romana】にて後述)があり、「ギリシア(クラピ)<ローマ帝国<ローマ帝国でさえ恐れる存在(ラルバ)」という関連図で東方Projectの世界で表現していると言えよう。



【永遠の妖精、または永遠の幼生】

四季異変を起こした秘神がラルバを称した“常夜神”。そのラルバは普段は頭の悪いイタリア人(まあ南イタリア人。北イタリア人はイメージに反してルナサのようにクールな性格の人が意外と多い)のように陽気な妖精を演じているが、裏の顔は下記の通りカルト宗教の神であったか。
史実におけるこの神は『日本書紀』に登場した新興宗教が崇めた祭神で、その姿はアゲハ蝶の幼虫に酷似していたとされている。この神を祀った者には富や長寿が授けられるとされ、全国各地に信仰が広がっていった。やがて信仰が都まで達すると人々は歌や舞に興じるばかりで各々の財産を手放す一方となり、これを案じた豪族の秦河勝は教祖の大生部多(おおうべ の おお)を討伐した。
この秦河勝こそが東方における秘神の化身の一つ、つまり隠岐奈の元ネタにして秦こころを最初に所持していた能楽の祖でもある。一方で神としてのラルバは信仰が消滅してしまい、その名残として現在の妖精としてのラルバとなった可能性がある。
去る『妖精大戦争』の魔理沙戦でチルノが「秦河勝」の名前を出していたのは偶然か、それとも伏線だったのだろうか。
このようにラルバと隠岐奈(おきラル)のものだと思われる経歴があるため、二次創作では両者はジェストデロンブレロ(Gesto dell'ombrello)をし合うくらい仲が悪く描かれることも多い。なお、イタリアではジェストデロンブレロはアメリカで🖕中指🖕を両手で突き立てて見せるくらい強烈な侮辱のため、冗談でもこのサインをイタリア人(多分フランス人でもアウト)に向かって行うと即喧嘩になる。遠くから瓶ビールを思いっきり投げつけられても知りませんよ。



【Larva nell'Età Imperiale Romana】

※この見出しはイタリア語文献を参考にしているため、固有名詞はイタリア語読みとなっています。ご了承ください。

"Larva nell'Età Imperiale Romana"(ラルバ ネッレタ インペリアレ ロマナ)とはイタリア語で「ローマ帝国時代のラルバ」。そう、ラルバはイタリアのローマ帝国と深く関連していることが文献から推測できるのだ。

イタリア語としてのLarvaは古くはローマ神話に登場する悪霊としてのラルバ(レムレ)を指していた。(イタリア語文献ではレムレ"Lemure"と呼ばれているため、その名前で統一する)

レムレは夜の悪霊として知られ、強大なローマ帝国でさえレムリア(Lemuria)というお祓い祭りを行わない限り、ローマの民は激しい永遠の苦しみ(魂でさえ)に悶えそのまま亡くなると言い伝えられてきた。レムリアは5月9,11,13日の計3回行われた。ローマ帝国の祭りはたくさん存在するが、同じ祭りを複数回行うものは非常に数少ない。このようにローマ帝国はレムレを恐れており、ときにレムレをエカテ(ヘカテ"Ecate")の呪いと同一視する者でさえ現れた。まさかラルバはへカーティアと同格なの!?

そもそも例のレムレが生まれた背景にはローマの建国神話にある。神話内のイタリアのローマ(正確にはローマ南部の湾岸都市ポメチア"Pomezia")はアルバ(Alba,現地ではラルバ"L'Alba"と呼ばれることも多い、アルバ・ロンガとも)という国があった。

そこにはB.C.770年頃にローマの建国神話の主人公となるロモ(Romo)とレモ(Remo)という双子の兄弟が生まれた。紆余曲折を経て(ロモ兄弟にとっては波乱万丈すぎる内容だが長くなるためここではあえて割愛)、ロモとレモがアルバからローマ帝国を建国することとなった。しかし、兄弟間でローマ帝国を建てる場所(パラティノ"Palatino"かアベンティノ"Aventino"、いずれもローマの七丘として有名)やローマ帝国の名前(ローマかレモリア"Remoria")などをめぐって争いが起こり、最終的には殺し合いでレモが亡くなってしまった。一方で争いに勝利したロモはそのままローマ帝国の王(正確には当時は王政)となった。このようにレモの恨みがレムレという名の亡霊となり、悪霊としてローマ帝国を襲撃したとされている。

ここで補足だが、ローマ神話が成立し始めたB.C.6世紀頃では、イタリア語(というかラティナ語、現地ではラテン語をラティナ語、正確にはリングア・ラティナ"Lingua Latina"と呼ぶ)はrとl、bとvの発音は区別されず、それぞれ日本語のラ行、バ行に非常に近い発音がなされたケースがある。つまり、当時は"Larva"や"L'Alba"は共に「ラルバ」に非常に近い発音、レモに関してはレモ"Remo"からレムレ"Lemure"へ語形変化していったと言える。(本当はラティナ語だが、イタリア語と同様にラティナ語でも同じ理屈でラルバとレモの発音や語形変化について説明することも可能である)

こうして、ローマ帝国を理想の国として創造するはずだったがロモに殺され野望が叶わなかったレモ、その恨みでレムレとしてローマ帝国を恐怖に陥れたその存在は、日本をカルト宗教で支配しようとして秦河勝に討たれてしまった常世神(正確には常世神の宗教を広めた大生部多)、二次創作だがその復讐として隠岐奈を殺しにかかるラルバ、といずれもストーリの流れが似ている。しかしレモはローマ帝国を自分のものすることは永遠に叶わなかった…

そのため、ラルバというイタリア語が使われているのはこのような背景がある可能性がある。なおエタニティラーバ
レモが叶わなかったその似たような野心をラルバは果たして実現する日(常世神として覚醒し隠岐奈を倒してラルバのカルト宗教の世界を創る日)は来るのだろうか…?

●参考文献(全てイタリア語かラティナ語だが興味があれば頑張って読んでみても良いと思います)
〇レムレ
Steiner, L'essenza dei Lemuri, dei diavoli grassi e dei diavoli magri.
Lemure, in Treccani.it – Vocabolario Treccani on line, Roma, Istituto dell'Enciclopedia Italiana.
〇ローマの建国神話
Dionigi di Alicarnasso, I.
Diodoro Siculo, Bibliotheca historica, libri (testo originale), VII.
Dionigi di Alicarnasso, Antichità romane.
Eutropio, Breviarium historiae romanae (testo latino), I.
Floro, Epitoma de Tito Livio bellorum omnium annorum DCC (testo latino), I.
Livio, Ab Urbe condita libri (testo latino);
Periochae (testo latino).
Modifica su Wikidata Remo, in Dizionario di storia, Istituto dell'Enciclopedia Italiana, 2010.
Ovidio Fasti, IV.
Plutarco, Vita di Romolo.
Remo, su Treccani.it – Enciclopedie on line, Istituto dell'Enciclopedia Italiana.
Varrone, De lingua Latina, V.
Virgilio, Eneide, VI.



【ラルバの名言集】

  • 『東方天空璋』
「アゲハ蝶の妖精だって負けてないよ!力が無限に湧いてくるわ!」

「今なら新世界の神にでもなれそうな気分よ!」

夏をエンジョイしているかい?




私だってここまで追記・修正が出来るとは思ってなかったわ。夏の冥殿が私をそうさせたの

今ならWiki籠りの神にでもなれそうな気分よ!


この項目が面白かったなら……\夏!/

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最終更新:2024年04月14日 16:54

*1 『外來韋編』のZUN氏曰く、「設定段階では”エタニティラーヴァ”読みだったらしいが、響きが強そうになりすぎたため変更した」との事

*2 史実では”常世神”だが、前述の新世界の神ネタと合わせるためか作中ではこの表記だった