瑪羅門の家族

登録日:2019/02/17 (日) 10:51:53
更新日:2023/07/15 Sat 18:02:53
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これが瑪羅門の裁きだ!!


週刊少年ジャンプ』に1992年から1993年まで連載されていた漫画
作者は宮下あきら。全4巻。

「聖なる力」(チャクラ)と呼ばれる力を使い、法では裁けぬ悪を裁く、いわゆる『必殺仕事人』のようなストーリー。

しかし、すぐに行き詰まったのか『魁!!男塾』のような拳法バトルものに路線変更
さらに、唐突に現れた「世界のバラモン」と共に主人公がまだ見ぬ仲間を探す旅に出ると、これまでの主人公格だった兄弟がフェードアウトしてしまい、最後は日本で最終決戦と繰り返し路線変更を行った結果、結局最後の敵と決着をつける事なく打ち切りとなってしまった。

連載に先だって掲載された読み切り版は好評だったらしく、この作品から名前を取った『バラモン兄弟』*1というプロレスラーが登場するなど、カルト的な人気を得る事には成功したようだが、残念ながら多数の読者の支持を得る事はできなかったようだ。
繰り返される路線変更と、内容が『男塾』と大して代わり映えしなかったのが響いたのかもしれない。

最終巻の作者のコメントによると「出来の悪い子供」と言いつつ、「それなりに思い入れのある作品」との事である。

【登場人物】

◆瑪羅門一族

瑪羅門の開祖たる二人の人物のひとり、ラーダ・バラモンを祖とする一族。
ヒマラヤ山脈に総本山がある。
歴史の裏で世界を戦火に包もうと企む魔修羅一族とは壮絶な戦いを繰り広げている。

瑪羅門の「聖なる力」(チャクラ)は、念・砕・舞・獣・速・力・炎の七つに分けられる。

日本の瑪羅門家は「念」の能力で裁きを行っており、指先や道具などから相手に「聖なる力」(チャクラ)を込めて肉体を支配し、罪を自白させたり、自害させる事で裁きを下す。

⚫瑪羅門龍

本作の主人公。瑪羅門家三男。
十八才の高校三年生で、拳法部主将。
一七才の誕生日に家族の秘密を聞かされ、一族の血に流れる「聖なる力」(チャクラ)を目覚めさせられた。
物心ついた時には母親は死んでおり、兄弟の中で唯一母親の顔を知らない。
普段はあまり口数は少なく、食事の度におかずの取り合いをしている家族達に呆れているが、その胸の中には悪を許さぬ熱い心を持つ。

瑪羅門の「聖なる力」(チャクラ)の能力のひとつ「念」の頂点を極めており、それに加えて恩師柳大周に学んだ凄まじい拳法の腕を持つ。
また、旅に出てからは敵の放つ邪気を感知する事ができるようになった。
怒りが頂点に達すると、肉体が発する生体エネルギーが大気中のプラズマと融合分裂し、燃焼する事で体が青白い炎のように包まれる。

実は「瑪羅門選ばれし七人」の一人にして、三千年の歴史を持つ瑪羅門一族の血にあって三百年に一度出現するという転輪聖王であり、世界各地数千にのぼる瑪羅門の使徒の総帥となるべき宿命を背負っている。

世界に散らばる「瑪羅門選ばれし七人」を束ね、魔修羅一族との戦いへ挑んでいく。

  • 昇龍刑(しょうりゅうけい)
瑪羅門最大秘法儀の一つ。
念を打ち込んだ相手の胸に龍の形をした刻印が現れる。
この時点では命を失う事はないが、龍が浮かんだ者が再び邪なる心を抱いた時に胸から龍が飛び出し処刑する。

⚫瑪羅門凱

瑪羅門長男の二十一才。現在失業中。
普段は食意地のはった酒好きのだらしない男だが、その愚行もひとつの仮面にすぎず、その裏には冷徹たる裁き人の素顔が隠れている。

高校時代は拳法部に所属し、常に二番手であったが、それは決して陽の当たる事のない瑪羅門の宿命のため、わざと負けていただけで実際ははるかに高い腕を持っている。

兄弟の中では最も感情的になりやすく、親友を裁かねばならなくなった時には命までは取らず、警察に自首するようにするだけにするなど情に厚い性格でもある。

物語の終盤、龍達から聞いた魔修羅の野望を阻止するため単身敵地へ乗り込むが、現れた孔雀院一馬の圧倒的な力の前に敗北。
逆に念を込められ龍を殺す駒とされてしまう。
しかし、龍を助けるために自らを刃物で貫き念を破り、龍の腕の中で息を引き取った。

読切りでは二十五才の銀行員で、性格も「真面目が服を着ているような男」と、全くキャラクターが違っていた。

  • 怒髪針(どはつしん)
瑪羅門秘法儀。
凱の十八番と言える技で、の毛に「聖なる力」(チャクラ)を伝えて針金のように変え、相手に刺す事で念を伝える。

  • 怒髪襲(どはつしゅう)
瑪羅門秘法儀。
全ての髪の毛を念で針金のように変え、敵の全身を刺し貫く。
「怒髪天を衝く」と言う言葉の通り、髪にまで達した怒りのエネルギーを「聖なる力」(チャクラ)により増幅させ秘法儀として完成させたのがこの怒髪襲である。

⚫瑪羅門翔

瑪羅門家次男。十九才の予備校生。
普段は眼鏡をかけた気弱な優男だが、その奥深くにはすさまじき青い炎が燃えている。
身が軽く、素早い動きからの攻撃が得意でグリーン・ベレーにいたプロでさえも軽く倒す力を持っている。

  • 不動冥髖巣(ふどうみょうかんそう)
瑪羅門秘法儀。
古代より瑪羅門に伝わる「霊糸」で蜘蛛の巣のような網を張り、敵を捕らえて念を送り込む。

⚫瑪羅門惷

兄弟達の父親で、五十四才。三流陶芸家。
家事を担当しているが、何故かおかずが余ってしまうので毎回取り合いになってしまう。
かつては、瑪羅門一族にあって伝説的な強さとさえ言われていたが、現在は息子達に第一線を譲っている。
読切り版では、三流小説家だった。

⚫瑪羅門寇

瑪羅門寺の住職で、兄弟達の祖父。八十八才。
裁きを決定する瑪羅門家族会議を取り仕切り、訴訟人が最後に見た光景を念写する秘法儀「臨眼肖」で犯人を暴き出す。

◆瑪羅門選ばれし七人

魔修羅一族の野望を阻止するため、瑪羅門総本山によって召集された戦士達。
それぞれ異なる「聖なる力」(チャクラ)を持ち、それを頂点まで極めている。

⚫ジェイク・バラモン

アメリカの瑪羅門。
サングラスをかけた屈強な男。
口が悪く協調性に欠ける性格で、仲間達とのいさかいが絶えない。
しかし、その身には龍達と同じ熱い血が流れている。
運転が得意で、はもちろんヘリやジェット機も操縦できる。
「砕」の「聖なる力」(チャクラ)を持ち、拳に「聖なる力」(チャクラ)を込める事で「この世に砕けぬものはなし」と言うほどの破壊力を持つパンチを放つ。

⚫チチ・バラモン

アフリカの瑪羅門。七人で唯一の女性。
温厚な性格で、七人のまとめ役。
武器はで、魔修羅の工作員程度なら武器を持っていても軽くいなしてしまう程の実力を持つ。
「獣」の「聖なる力」(チャクラ)を持ち、地球上に生きとし生きる全ての生物と意思を通じ会う事ができる。

⚫マハール・バラモン

インドの瑪羅門。
ターバンを被った恰幅のいい男で、でかい体のわりに小さなネズミにも腰を抜かすほど臆病な性格。
「力」の「聖なる力」(チャクラ)の持ち主で、生まれ持った天性の怪力を「聖なる力」(チャクラ)で増幅する事で時速100キロで走る列車を正面から受け止めるほどの力を発揮できる。
普段は気弱な性格だが、ここ一番ではジェイクでさえも認める勇気を発揮する。

⚫瑪羅門 王

中国の瑪羅門。
剽軽でお調子者の性格。
自分の「聖なる力」(チャクラ)を大道芸に使い、金を稼いでいた所を発見され、仲間に加わる。
「速」の「聖なる力」(チャクラ)を持ち、目にも止まらぬスピードで動く事ができ、そのスピードには大きな自信を持っている。

⚫ナセル・バラモン

シュメール共和国の瑪羅門。
金に執着する冷徹な男を装っているが、それは祖国に圧政を敷く独裁者・ナムセンを倒すための芝居であり、実際は優しく国を思う強い正義感の持ち主。
「炎」の「聖なる力」(チャクラ)によって、両手から炎を発する事ができる。

⚫ジャン・バラモン
フランスの瑪羅門。
世界に名を知られるクラシック・バレエのダンサーでもある。
世界最大の麻薬組織のボス、ドン・カルロスに殺された恋人の仇を討つため宝石強盗をおこし、カルロスのいるバルザック刑務所に入り込んでいた。
「舞」の「聖なる力」(チャクラ)によって驚異的な身の軽さを発揮し、水面に浮かぶ花びらに乗る事もできる。

◆その他

⚫イタコのバアさん
恐らく瑪羅門側の人間だと思われる。
最終決戦の地、冥恐山にいた老婆。凱の霊を呼び出し、龍達に帰るように警告した。
その後、魔修羅鬼界衆の最後の一人をあっさり片付け、孔雀院一馬との戦いに挑む龍達を激励した。
この人物が何者なのかは、いずれいやでも分かる時が来るはずである。


瑪羅門一族と敵対する暗黒組織。
詳しくは該当項目へ。

◆バルザック刑務所

地中海に浮かぶ孤島にある、フランス中の凶悪犯ばかりを集めた悪名高い刑務所。
警備は鉄壁で面会も禁止されている。
所内は比較的罪の軽い者が収監されたA棟と、死刑囚や終身刑の者が収監されたZ棟に分けられ、Z棟は想像を絶する凶悪犯達の巣窟であり先のない人生の終焉を意味している。

⚫ドン・カルロス
世界最大の麻薬組織のボス。懲役50年の刑で服役している。
カルロスが刑務所にいるのは最も安全に商売できるからにすぎず、その絶大な力は何も変わっていない。
刑務所内に豪華な特別室を構え、ハーレムのような生活をしながら専用の電話で毎日巨額の麻薬取引や殺人の指示を出している。
万一、反抗する者が現れても三人のボディーガードと特別室までの通路に仕掛けられた罠によって守られている。
Z棟の凶悪犯達からも「俺達も悪には違いねえが奴はそれにも劣るゲス野郎」と言われるほどの外道。
殺人現場を目撃したジャンの恋人を殺すように指示を出した帳本人で、最後はジャンによって葬られた。

⚫クランツ
カルロスのボディーガードのひとり。
これまで299人の人間を殺してきた殺人のプロで、「殺人機械」(キルマシーン)の異名を持つ。
最初の殺人は7才の時で、相手は飲んだくれの父親でその時から人を殺す事に一切の感情を持たなくなった。
Z棟に新しく入る囚人が既にいる囚人と生死を賭けて戦う「新入歓迎死闘ショー」の一番手として登場し、ジャンと戦う。
与えられた武器の切れ味を試すためだけにショーの進行役を殺し*2、ジャンを負傷させたが「舞」の「聖なる力」(チャクラ)を使った回転技でリングを囲む硫酸に転落し、そのまま沈んでいった。

魎皇
カルロスのボディーガードのひとり。
中国拳法最大の殺人拳といわれる魍魎拳を極めた世界最強の拳法家。
ジャンの負傷を理由に後退した龍と戦う。
ガラスで造られた透明のブーメランや、針を神経節に打ち込み自在に操る技を使って戦ったが龍が全てにおいて上手であり、硫酸の海に落とされそうになってその恐怖から降服してしまった。
字は違うが名前から技までどこかで見たもののオンパレードだが、これが自己パロディなのかどうかは不明。

  • 椿斬薨(ちんざんこう)
魍魎拳奥義。
ガラスで造られたブーメランで攻撃する技。
人間の首をたやすく切断するほどの威力を持つ。

  • 釗操経(しょうそうけい)
魍魎拳秘奥義。
ガラスの針を神経節に打ち込み、思い通りに操る技。

⚫デューク
三人のボディーガードのひとり。
世界一の拳銃使いと言われた男。
その正体は国際刑事機構(インターポール)の麻薬犯罪課の秘密捜査官で、カルロスとつながる世界各国の政治家や警察幹部の名が記されたリストを手にいれるため、ボディーガードとして潜入していた。
カルロスが倒れた後、事情を説明して龍達が出所できるように取り計らってくれた。

◆悪党達

自らの私利私欲のため、悪事を働く外道達。
このような輩には、必ず瑪羅門の裁きが下る事になる。

⚫村雨玉堂
文化勲章の声も高い、大御所と言われるほどの彫刻家。
しかし、すでに才能は枯れ果て新しい作品を生み出す力もなくなっており、すでに名ばかりとなっている。
そこで、弟子の山崎幸夫が造り上げた一大傑作を奪い自らの作品として発表する事で名声を回復しようと企み、事故に見せかけて殺害。さらに、息を引き取る寸前に幸夫から証言を聞いた母親の由美までも殺害した。
最後は龍によって裁きを下され、大勢の前で罪を自白した後、自ら頭をノミで割って自害させられた。

⚫黒岩栄三
村雨玉堂おかかえの美術商。
村雨と共謀し、幸夫と由美殺害の実行犯となった。
村雨と同じく龍に裁きを下され、速乾性コンクリートを頭からかぶり、石像になってしまった。

⚫末松有恒
龍達の街の警察の刑事課長。
権力をかさに金と出世のためにかなりの悪事を働いており、暴力団とのつながりもある。
酔っ払い運転で子供をひき逃げした上、それを問い詰めるために乗り込んできた龍を罠にはめて留置所送りにした挙げ句自殺に見せかけて殺害しようとした。
龍の裁きで来日中の国賓を銃のにするなどの失態を演じさせられ、その後車道に飛び出し車にはねられた。

⚫堀田
凱の高校時代の親友。
拳法部に所属し、全日本選手権を制したほどの腕前。
凱と堀田、もう一人の親友・鳥居とは何をするにも一緒で拳法に青春の全てを賭けた仲だった。
高校卒業後は鳥居と同じ大学に進学し、同じ会社に就職したが鳥居が出世の邪魔になったため駅のホームから突き落として殺害した。
凱にそれを問われると、口封じのために凱を始末しようとしたが、真の実力を発揮した凱には手も足も出ず、怒髪針によって警察に罪を自白させられた。

⚫ナムセン大統領
ナセルの祖国、シュメール共和国の大統領で、国の全てを意のままに動かす独裁者。
己の地位を保持するためには手段を選ばず、秘密警察を使い敵対する者や自由を求めて立ち上がる者を容赦なく殺している。
反政府組織の指導者だったナセルの両親も三年前に処刑されている。
格闘技大会の表彰式の時が唯一近づけるチャンスであり、そこを狙ったナセルによって焼きつくされた。

【その他】

以前、この作品は発禁処分になっているとされていた時期がある。
ある猟奇殺人事件の犯人が3巻に収録されたタイトル「積年の大怨に灼熱の裁きを!!」を引用して警察への挑発の手紙を作って送り付けたため。
そのため、後に作者の別作品『極!!男塾』に登場した時は読者から驚きの声が上がり、ネットニュースにもなった。

ちなみに、事件の際に取材に訪れたマスコミに対し、作者は「この作品を描いたのは昔の事なので記憶にない!コメントする立場にない!」と、コメントしたという。


バアさん
あんた一体何者なんだ!?

それをまだ追記・修正する時ではない
いずれいやでもする時が来るはずじゃ

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最終更新:2023年07月15日 18:02

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