サソリ固め(プロレス技)

登録日:2019/01/24 Thu 02:35:37
更新日:2023/01/27 Fri 22:37:54
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『サソリ固め』プロレス技の一つ。
主な使い手にトップレスラーが多いこともあってか、非常に認知度が高く、実際に高威力で危険度も高い技である。
英訳はScorpion death lockだが、WWE(WWF)のブレット・ハートSharp shooterの名称で使用していたためか、米国では此方の呼び名の方が定着している。


【概要】
古くから欧州にある技との説もあるが、カール・ゴッチが長州力(当時は吉田光雄)のデビュー時に必殺技として伝授したのが、サソリ固めが世に出た最初とされる。

しかし、当初の吉田(長州)は手足の短い色白でずんぐりとした見映えの悪い風体で人気が出ず、長らくジョバー(負け役)に甘んじていたこともあってか、この技が注目されることもなかった。

しかし、後に“かませ犬発言”から始まる、一連の藤波辰爾との抗争を経て革命戦士に変身すると共に、長州の必殺技として広く知られるようになっていった。

米国では、WCWのスティングが長州へのリスペクトとしてスコーピオン・デスロックの名称で本国に持ち込みフィニッシュとして使用。

その後、WWFのブレット・ハートがシャープシューターの名称で使用して此方も威力を知らしめた。
また、米国マット史に於いてはブレットに絡み、かのモントリオール事件ショーン・マイケルズが逆に仕掛けた技としても有名である。


【仕掛けかた】

①仰向けの相手の両足を取り、真ん中から相手の胴を跨ぐように自分の足を差し入れる。
②差し入れた足に、自分から見て外側の足を絡め、更にもう片方の足をその上にクロスさせるようにして捉えて固定。
③その形を保持したまま、差し入れたのと同じ側の脇にロックした足を捉えてテコの要領で相手の身体をひっくり返しつつ、自らも反転して後ろを向く。
④相手の身体に乗っかるような形で、足をクロス状態にして逆エビを仕掛けるような形となるため、そのまま腰を落として、更に強烈な負荷を掛ける。

…完成すると、主に相手の腰にダメージを与えると共に横隔膜を圧迫して呼吸困難に追い込む効果を持つ。
また、折り畳んだ脚部にも負荷が掛かり、本家の長州はクロス式と評された相手の足首を更に深く極めるロックの方式を考案して使用していた。

尚、相手の足の間に右足を差し入れる選手の方が多いが、利き脚が逆のブレットは左脚を差し入れていたため、技が完成した時の体勢が他の選手とは反対になるのが特徴であった。
これを、日本で最初に指摘したのは蝶野正洋で、一時期の日本では、これをサソリ固め(スコーピオンデスロック)とシャープシューターの違いとされていたものの、実際には単に体勢の違いだけで当然のように同じ技である。
現在のWWEではサソリ固め=シャープシューターの呼び名が定着しており、反対にスコーピオンデスロックは、スティングのみに用いられる一種の称号となっている。
また、リバース・フィギュア・フォーやクローバー・リーフ・レッグ・レイス・クラブといった名称で使用した選手も居た。

ルチャでも、カングレホ・ハポネス(日本式逆エビ固め)と呼ばれており、日本発祥の技として捉えられている。


【主な使い手】

ゴッチより伝授された形ではあるが元祖であり、日本では長州の必殺技というイメージが強いためか、出したことのある選手はともかく得意技やフィニッシュとしている選手は案外と少ない。
技を極めるまでの気合いの入ったアクションが特徴で、仕掛けも速い。
長州は手足が太くて短いのが逆に、この技に説得力を持たせる要因となっており、極めた後で不機嫌そうな顔で締め上げるのもアピールポイントだった。
試合の序盤から仕掛けていくことも多く、常に緊張感のある試合運びをしていた。

“かませ犬発言”から始まる、長州との一連の抗争、いわゆる“名勝負数え歌”の中で、幾度も掟破りの逆サソリを仕掛ける場面があった。
現在でも、基本的には相手の得意技に配慮して自分は同系統の技を出すのを控えるという暗黙の了解があるが、それに対して相手の得意技を敢えて出していく掟破り(逆フィニッシャー)の元祖である。
テクニシャンだけに、長州にも劣らぬバランスで極めていた。
サソリ弓矢固めという、サソリ固めから弓矢固め(ボウ・アンド・アロー)の様な形に移行するオリジナル技も開発したが、見映えが悪かったのか程なく封印している。
後には、同じく間接技を得意とする後輩の蝶野正洋あたりが長州に対して掟破りの逆サソリを仕掛けるムーヴを引き継いでいた。

そもそもは長州の弟子であり、体型も似ていたことからサソリ固めも得意技としていた。
しかし、WJプロレスでのいざこざを経て喧嘩別れしてからは封印

  • 石川孝志
全日本プロレス出身で、後に東京プロレスを立ち上げた石川は大相撲出身であることからスモーピオン・デスロックと称して使用。
相手をひっくり返した後に「フィーバー!」ポーズを決めるのが定番だった。

  • 桜庭和志
総合格闘技でも活躍したIQレスラー。
Uインター時代に周囲の脱プロレス志向に反して、極めてプロレス的なこの技を得意技としていた。

  • GENTARO
有力なインディー団体を渡り歩くテクニシャン。
米マットの最先端を意識した、巧みなレスリングが持ち味でシャープシューターを得意とする。

  • EVIL
ラフファイトと反則・介入を巧みに織り交ぜ新日本プロレスで悪の限りを尽くすキング・オブ・ダークネス。
Scorpion Deathlock名義で使用。オリジナルの長州同様抜群の安定感を誇り、大一番では急角度で反ったり足首を極めたりすることも。

  • スティング
日本から米マットにサソリ固めを持ち込んだ最初の選手で、直訳してスコーピオン・デスロックと称して、自身最大のフィニッシャーとした。
技のイメージに合わせてコスチュームをサソリモチーフにしていたことでも知られる。
長身で手足も長いために仕掛けるまでにヨタヨタとすることもあったが、極めてからのバランスは流石であり大一番ではエゲつなく腰を落とす。
前述の様に、スティングへのリスペクトから“スコーピオン”はスティングの同技のみに使われる。

WWF(WWE)史に残る名レスラー、大エースで、シングル転向の際に間接技をフィニッシャーとすることを薦められ、サソリ固めをシャープシューターの名称でフィニッシャーとした。
小柄な為か、技を仕掛けるバランスが長州にも通じており非常に速いのが特徴である。
歴代の使い手の中でも、技の習熟度に於いては群を抜いており、通常の仕掛けが速いのは勿論、自分が寝た状態から仕掛けたり、相手の技を切り返して仕掛けたりと独創性に於いても他の使い手とは一線を画していた。
実は、ブレットは使い始めるまでサソリ固めの仕掛け方を知らず、居合わせたコナンに教えて貰ったのだとか。
前述の様に、利き足が左のために他の選手とは体勢が反対になるのが特徴。
実弟の故オーエン・ハートや、クリス・ベノワの様に、ハートダンジョン出身のカナダの後輩レスラーがブレットへのリスペクトから同技を引き継いでおり、ブレット。延いてはハートファミリーの必殺技となっている感もあり、現在では姪っ子のナタリアが左足を軸とする形も含めてフィニッシャーとしている。

ブレットとの抗争によりトップレスラーとなったHBKだが、同時にモントリオール事件の実行犯役として汚名を刻んだ過去を持つ。
事件での、掟破りのシャープシューターをショーンが仕掛ける場面は、試合にして一瞬ながら米マット史に永遠に残るであろう場面である。
使い手としてのバランスも高レベルで、普段の持ち技ではないが敢えて繰り出す場面もある名役者。

スポーツ・エンターテインメント業界のトップに立ち、イケイケだった頃にフィニッシャーの一つとして使用し始めた。
…が、足を絡める順番が逆で、単に両足を抱えているだけの変型逆エビ固めになっていることでも有名。
その為、ファンからは「本当に効いてるのか?」と疑問も呈されているが、表情を含めて非常に迫力を以て極める為に名場面も多い。
ライバルのストーン・コールドが対戦中に逆サソリ(シャープシューター)を仕掛けた場面もあるが、その時にはちゃんとしたサソリ固めだったのは言わない約束。

【主な派生技】

  • トライアングル・スコーピオン
若手時代に藤波や長州としのぎを削った木村健悟が開発。
ロックした脚を、回転させてから自分の股に挟み込み、立った状態で負荷を掛けていく変型技。

  • エッジュケイター
エッジのオリジナル技の一つ。
相手のみを回転させて、自分は相手を向いたままで腰を落として負荷を掛けていく変型技。
日本で4のエッジ固めという糞ダサい訳を付けられたことでも有名。

  • テキサス・クローバー・ホールド
テキサス・クローバー・リーフ(テキサス式四つ葉固め)とも。
テリー・ファンクがサソリ固めを参考に開発したとされる技で、仰向けの相手の足を腕で4の字固めに捉えてから仕掛ける変型逆エビ固め。
余り使い手の居ない技で、使用されても印象に残り難い技だったが、棚橋弘至がフィニッシュ級の技として使用したことで認知度が広がった。




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最終更新:2023年01月27日 22:37