ONE PIECE THE MOVIE デッドエンドの冒険

登録日:2018/01/01 Tue 23:24:35
更新日:2024/01/27 Sat 20:50:29
所要時間:約 10 分で読めます






メシより冒険。

生き残れるか!?
大海賊が競う史上最悪のレース!!




2003年に公開された、『ONE PIECE』劇場版4作目。
ONE PIECEの映画でははじめての単独の映画である。
時系列としてはアラバスタ篇終了後、空島篇までの間の物語と思われる。
主題歌はBUMP OF CHICKENの『sailing day』。
上映時間は90分で、興行収入は20億。

●目次

【概要】

無数の海賊が秘密裏に集まる港町を発端に、海戦も白兵戦もなんでもありなデッドレースに参加した麦わらの一味の冒険を描いた活劇物。
これまでの劇場作品以上に航海や海賊同士の対決描写が多いのが特徴。
メインクルーと敵幹部のサシによる対決はないものの、細かな描写や何気ない台詞に各キャラ達の個性と魅力が込められており、
航海における戦闘以外の側面においてもきっちり見せ場がある。

敵ボスのガスパーデ将軍や、賞金稼ぎシュライヤ、非戦闘員のボイラー作業員ビエラ等、ゲストキャラそれぞれに風格やカッコよさがあるのも特徴。
後にアニメオリジナルエピソードの舞台となる海軍基地ナバロンも本作で初登場する。


酒場での乱闘、海上での戦闘や天候・海王類等に振り回される航海風景といった、王道の海賊活劇として見応えのあるエピソードにまとまっており、
今なおファンの間で根強い人気を誇る作品と言えるだろう。


【ストーリー】

今日も今日とて金欠気味な麦わらの一味。
立ち寄った港町ハンナバル*1の酒場にて、一攫千金の匂いを嗅ぎ取ったナミ達は、
数年に一度秘密裏に開催される海賊たちの大レース・デッドエンドへの参加を決める。

指折りの名うて海賊が集まる中、レースの賭けレートにおいてNo.1人気を誇る“将軍”ガスパーデや、
たった一人で幾多の賞金首を狩ってきた“海賊処刑人”シュライヤもルフィの前に姿を見せる。

各々の信念や野望を胸にレースへ臨む海賊たちだったが、やがて彼らは「デッドエンド」に隠された大きな陰謀に呑まれていく。
果たして麦わらの一味は、レースの終着点パルティアへたどり着くことができるのか……。


【登場人物】


◆麦わらの一味

初っ端から大喰らいっぷりを見せつけてくる船長。
相変わらず後先考えずに面白そうなことへ首を突っ込むが、同時に海賊としての矜持や、海の上で生きる者としての覚悟もしっかりと胸に宿している。
ゴムの身体を活かして船の進路を変える等、戦闘以外の場面でもその特技を発揮しレースを進んでいった。

麦わら帽子に込める想いを敵に利用された時には我を忘れる程怒りを湛えていたが、その激情に呑まれることなく、戦闘本能を研ぎ澄ませて決戦に臨む。

アナグマへの語り掛けや、事情をよく知らないシュライヤへの気遣いも示しており、戦闘でもそれ以外の面でも頼もしいキャプテンとして描写されている。


すぐ迷子になることでお馴染の剣士。
今回は幹部戦こそなかったものの、ビガロの海賊団をたった二人で圧倒していた。
ルフィの戦いへは徒に手を出さず、敵船が大破した後も彼の帰りを信じて待ち続ける等、ルフィへの信頼の強さがうかがえる場面が多い。


船の台所事情に頭を悩ませる航海士。
「デッドエンド」の優勝賞金を聞き参加を即決した。
今回は天候棒を使った戦闘はないが、偉大なる航路の不規則な天候変化や異常海流に逐一対処し、一味を導いていった。
「自分なんか生きてる価値がない!」と自嘲するアナグマへの厳しい反応と、最後に見せた優しい態度には、彼女のバックボーンから来る想いが感じ取られる。


レース参加前も参加後もしょっちゅうビビっていた狙撃手。
しかしながらいざ「やるしかない」という状況へ追い込まれればきっちり仕事をし、後続船を大砲で迎撃したりビガロにパチンコを命中させていた。


レディへの気遣いを怠らないコック。
戦闘では、ゾロと共にビガロ一味を軽く一捻りしたくらいしか出番が無かったが、
一人で思い悩むアナグマへの気遣いや、ビエラの覚悟を尊重する姿勢など、随所で粋な所を見せてくれる。
また、ルフィがガスパーデに対抗するための起死回生の手を見つけてくれた立役者でもある。


気持ちと態度が一貫しない船医。
アナグマやビエラの診察をした他、匂いだけでガスパーデの船を追うという大活躍を果たす*2


色んなことに詳しい考古学者。
かつて別の船に乗っていた時に一度だけハンナバルに来ていたことがある。
今回はコースを外れそうになった船を、大量の腕で作った大型腕を用い助けたり、
嵐の中一騎打ちをするルフィとガスパーデの戦況を確認するなど、サポートに徹していた。
まだ一味に加わったばかりなので、何かトラブルが起こる度に「いつもこうなの?」と楽し気に尋ねている様子。


◆劇場版オリジナルキャラ

  • シュライヤ・バスクード(CV:宮本充
“海賊処刑人”の異名を持つ、ソロの賞金稼ぎ“処刑人”ロシオとは関係ない。
黒い帽子を被った細身の美丈夫で、特に専用武器も能力も持っていないが、
卓越した身体能力と冷静な判断力を武器に、その場その場にある物を上手く活用して戦う手練れ。
造船の街で育ち親が船大工だったこともあって、船の構造に深い造詣がある。
外見は初期のエースサボの髪型を載せて紫に染めたような感じ。

子どもの頃ガスパーデ海賊団によって故郷を焼かれ、妹アデルを失った恨みから、復讐の為に自ら血生臭い世界の住人となった。
ガスパーデの側近ニードルスと激闘を繰り広げ、ボロボロになるも機転と策略でこれを撃破。
続けてガスパーデに挑むもその能力には歯が立たず、敗北してしまう。

最終的には、大破した船からルフィによって救出されるも、同時に戦闘中ルフィが落とした麦わら帽子を拾っていたことで、ルフィに恩を返す形となった。

俊敏な身のこなしで戦場を駆け、その場にあるものを最大限に使って戦う戦闘スタイルは見応えがある。
飄々とした態度に秘められた激情と家族想いな一面も、彼のキャラクターに華を添えていた。

  • ビエラ(CV:永井一郎)
ガスパーデ海賊団のボイラー室を取り仕切る老人。クルーからの通称は“モグラ”。
いかにも頑固爺といった風貌と性格だが、同時に他者へ対する慈しみや己の仕事に対する強い誇りを持った漢。

病を押して仕事に臨んでおり、助手であるアナグマに厳しくも優しく接していた。
自暴自棄になるアナグマに「これから先、生きていればきっと良いことがある」と語り掛け、自身もボイラー室を爆破してガスパーデの船を沈める決死の行動に出た時、
あくまで命を捨てる覚悟ではなく、必ず生きて戻る覚悟であった豪胆な人物である。

最後に再会したシュライヤとアデルがぎこちない雰囲気の所、仲を取り持ち背中を押す役目も担う。


  • アナグマ(CV:酒井美紀)
ビエラの助手を務める子ども。石炭で汚れた服と身体に、すっぽりかぶった帽子が特徴。
ビエラを実の祖父のように慕っており、病に苦しむ彼を医者に見せるようクルーに訴えるも聞き入れてもらえず、
ならば賞金首を討ち取ってその金でビエラを助け出すとガスパーデの船を飛び出した。*3
忍び込んだ海賊船が麦わら一味の船だったため、咎められこそすれ命は奪われず、成り行きでレース終了まで船に乗る羽目となった。
もっとも、ハチャメチャな一味の航海模様には命がいくつあっても足りない程の恐怖を味わったようだが…


ガスパーデ海賊団

  • ガスパーデ(CV:石田太郎)
蒸気船サラマンダー号に乗る元海軍の海賊。
異名は“将軍”*4で、懸賞金は9500万ベリー。
悪魔の実の能力を得たことで、乗っていた艦で反乱を起こし海賊となった。
その経歴・残虐性から「海軍最大の汚点」とも言われており、現役海軍兵たちからは目の敵にされていた。*5

超人系悪魔の実「アメアメの実」の能力者で、身体を水飴のように軟化させたり、逆に棘のように硬化させることが可能。
系列としてはシャーロット・カタクリの「モチモチの実」に近い特殊な超人系。
カタクリの兄・シャーロット・ペロスペローの「ペロペロの実」とは同じく飴をモデルとした能力であるが、
ガスパーデは「飴になる」、ペロスペローは「飴を放出する」と差別化されている。
軟化させた身体にルフィの腕をわざと貫通させたまま硬化させ、身動きを封じた状態で一方的に殴打で叩きのめしたり(覇気を習得済みだったのだろうか)、
腕を鋭い棘のように固めたり胴体から無数の棘を生やして白兵戦を行ったり、水飴状の四肢を伸ばして放り出されそうになるのを持ちこたえたりと、シンプルながら応用の効く能力を持つ。
ただし水飴の性質上、小麦粉を浴びせられると体が固まってしまい敵を水飴で捉えることも軟化などができなくなるというガスパーデ自身も知らなかった弱点がある。この弱点には料理人であるサンジが気づいていた。

レースの胴元と手を組んでおり、自分以外の参加者には海軍基地ナバロンを示す永久指針を与えて撃沈させていた。
これはレースに勝つためというより「ゲームの一環として楽しむため」に、海賊を海軍へ売るという外道な行為であった。
「力こそがすべて」という典型的な悪党思考で、見せしめのために街を焼き払って住人を皆殺しにするなど、残酷無比な性格をしている。

一方で骨のある者はルーキーや素性不明の賞金稼ぎでも遠慮なくスカウトする豪胆さ、
おめおめと敗走した部下に処罰こそ下せど命までは取らず雑用係へ降格させるに留める分別、勝負を挑まれればきっちりサシで受ける度量、
沈みゆく船の上でも逃げ腰にならず決着をつけることを選ぶ漢気と、非道ながらも大物感あるボスキャラとして描かれた。


ガスパーデの無口な側近。伸縮する鉤爪を武器に戦い、瞬時にルフィの背後を取るほどのスピードを併せ持つ強敵。
実はガスパーデの懐に入り、弱点を探るのが目的で彼の傘下に加わっており、
シュライヤとの戦闘時には「奴を殺すのはオレだ…!」と強い語気で言い放っていた。*6

シュライヤと互角の戦いを繰り広げるも、船の構造を熟知した彼の戦術にハマり敗北すると同時に、
動力部に引き込まれた鉤爪が仇となって船を損傷させる契機にもなってしまう。

その他のレース参加者

  • ウィリー(CV:小杉十郎太)
かつてノコギリのアーロンのライバルとも言われていた魚人海賊。
種族は(哺乳類ベースの魚人/人魚は今の所彼のみ)。
レースで2番人気を勝ち得るその実力は確かで、他の船がガスパーデの罠にハマってナバロンへの航路を進む中、
早々に別の航路を行くガスパーデがなにか企んでいることに気づき、彼へ挑む。
が、戦闘描写はないまま敗退してしまった…
小説版ではアーロンを倒したルフィをなじることもなく「スゲエじゃねえか」と褒め、レースが始まった際にもルフィと健闘を誓い合う一面も。
名前の由来は恐らく1993年公開の映画『フリー・ウィリー』の主人公である同名のシャチ。
偶然なのかアーロンのライバル故か中の人も同じである。

巨人族の漁師で、相棒ポーゴと共にレースに参加した。海賊じゃなくても参加できるのか。
2人乗りの大型ボートで参加しており、見た目に違わない豪快な舵取りが特徴。
上手く息を合わせて体重を乗せることで転覆した船を台にジャンプする等、なかなか巧みな航海を行うも、飛距離が足りなかったせいで陸地に墜落しあえなく脱落した。
小説版ではルフィが出したドリー&ブロギーの名に興味を示していた。

ボビーとタッグを組む巨人族。
ちなみにこのコンビはレース人気3番手につけていたらしい。


  • ビガロ(CV:服巻浩司)
“縛り首のビガロ”の異名を持つ海賊。
レース序盤に麦わら一味へ喧嘩を吹っ掛け、中盤で最下位を争いながら海戦を始めた。
が、ウソップの狙撃を喰らったりゾロとサンジに船員を呆気なく倒されたりと碌な目に合わず、
大型海王類の生息する海域に紛れてしまった不運もあり船が転覆、脱落してしまう。

その他の人物

  • ドレイク(CV:竹本英史)
海軍本部偉大なる航路G-8支部ナバロンに所属する本部少佐。
冒頭で嵐の中麦わら一味を発見、追跡した海軍将校であり、最終的にレースのゴールであるパルティアにて海賊を待ち伏せしていた艦隊指揮官でもある。
後のアニメオリジナルエピソード『ナバロン要塞脱出篇』にも登場する。
ちなみに声優は後のX・ドレークと同じ人。


  • 胴元(CV:郷里大輔)
レースの賭けを取り仕切る、見るからに金の亡者っぽい胡散臭いおっさん。
常に傍らに美女を侍らせている。
ガスパーデと手を組んでおり、他の参加者にはパルティアではなくナバロンを示した永久指針を与えていたため、
永久指針を信じた海賊たちはいずれも海軍の迎撃に合い撃沈してしまう。

だが彼自身もガスパーデに偽の永久指針を渡されていたため、嵐の海域に迷い込んでしまいあえなく自身の船は沈没。
ガスパーデにはめられたことに怒りながら最期を遂げた。

……するだけかと思いきや、なんとこいつはこいつでガスパーデをハメる為にパルティアへ海軍が待機しておくよう予め差し向けていたことが最後の最後で発覚。
本筋の水面下で、裏世界に生きる者たちの駆け引きが行われていたことを匂わせる存在と言えよう。




追記修正は半端な気持ちで行わないようお願いいたします。

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最終更新:2024年01月27日 20:50

*1 インペルダウンの元副署長は関係ない。

*2 流石に無理があると思われたのか、小説版では「アナグマがガスパーデから渡された弾薬袋の中に本物の永久指針が入っていた」という展開にアレンジされている。

*3 この時ガスパーデに対して無礼な態度を取ったものの、処罰されるでもなく「ならばやってみろ」と拳銃を渡された。ガスパーデからしてみれば面白い余興に過ぎなかったのかもしれないが、結果的にアナグマの未来が救われる一端となっている。

*4 なお、将校であったという描写はないため、海軍コートを着てはいるが最終的な階級は不明。

*5 今でこそX・ドレークやゼファー等似た経歴の者は多いが、当時としては稀な「海軍出身の現役海賊」であり、また力の誇示だけの為に街ひとつを虐殺するその悪辣さは十分この通り名に値する。

*6 ガスパーデがこの事実に気付いていたかは不明だが、知っていても彼の性格的に傍へ置いておいた可能性はある。