SCP-572-JP

登録日:2018/12/18 Tue 01:34:44
更新日:2024/03/27 Wed 08:52:39
所要時間:約 5 分で読めます







生と死の分岐点。

そこに立つ小さな正義。










SCP-572-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクト (SCiP) の一つ。 オブジェクトクラスはEuclid→Safe。


概要


SCP-572-JPは一言でいうと、俗に「交通整理人形」「棒振り人形」と呼ばれる存在。
Wiki篭り諸兄の中には、中年男に「もういい…!もう…休めっ…!休めっ…!」と抱かれているアイツ、と言われればピンとくる人もいるのではないだろうか。

『棒振り人形』と呼ばれる「物品」ではなく「存在」とわざわざ書かれているのは、SCP-572-JPが実体を持たず、肉眼でも見えない、つまり見えないし触れないからである。
しかし、監視カメラを通したときだけはこのオブジェクトを視認することができ、財団もこれをきっかけに発見に至っている。
ちなみにこいつはひとところに留まっているわけではなく、不定期的に出現と消失を繰り返す。一応、一回の出現時間は3分、必ず道の上に通せんぼする形で出現し、3分を超えると映像からも消え、別の監視カメラがある場所に出現する……といった法則性はあるようだ。
カメラに写っている間、SCP-572-JPは手に持った警棒を振り続ける。

またこいつは、「見えない、触れない」の他に、「自分の目の前まで来た人の通行を妨げる」というもう一つの異常性を持つ。
見えない触れないのにどうやって止めるんだと言いたくなるが、あら不思議、人は何故かこいつの目の前まで来ると急に「なんか忘れ物した気がする」「なんとなく止まってみよう」などと思いはじめ、Uターン、迂回、あるいはその場で立ち止まってしまうのだ。

そんでその通行人が進むのをやめた直後、SCP-572-JPのすぐ後ろで事故が起きる。
……勘のいい方ならもうお察しだろうが、この人形、SCP-572-JPは、事故・事件が起きる前触れに現れ、通行者を避難させるオブジェクトなのである。

で、以下は実験記録の抜粋(一部)。



出現記録572-JP-3 - 日付201█/8/1 19:21

回収地点: 茨城県つくば市██

補足: ██書店の店頭カメラから回収されました。SCP-572-JPは歩道に出現しており、消失から2秒後に横転したバイクが地面を転がりながら画面を横切りました。調査したところ、SCP-572-JPの手前で立ち止まっていた人が仮に立ち止まらず進行していた場合、確実にバイクに激突していたことが判明しています。



とはいえど、こいつも立派なSCPオブジェクト。
財団として、どんなに善良かつ友好的であろうとも、異常性がある限りは収容せねばならない。
キチクマの例にあったように、オブジェクトに裏切らないという絶対の保証はなく、裏切られた時の被害も未知数なのだから。

……が、なにせ見えない触れないので、追いかけて捕まえることはできない。せいぜい、目の前で「あ、忘れ物した」などとのたまってUターンするのが関の山であろう。
ただ影響自体は少ない部類なので、特別収容プロトコルは収容でなく「このオブジェクトを徹底的に一般人から隠せ!」という方向性で固まったようだ。

そうして収容という名の隠蔽もできて一安心……となったところで、事件は起こった。



事件記録572-JP: 201█/12/3、21時50分、サイト-8126でSCP-████-JPによる収容違反が発生しました。その際、避難中の職員が規定の避難ルートを迂回していたことが発覚、職員へのインタビューでは「気付いたら別の道を走っていた」と述べており、避難ルートにあたる廊下の監視カメラから以下の映像が回収されました。

[21:51:12] B206実験室前にSCP-572-JPが出現する。映像ではカメラに背を向けて棒を振っている。

[21:51:57] 画面奥から避難する職員が見えるが、規定の避難ルートである廊下を横切り、迂回し始める。職員たちが自身の行動に疑問を抱いている様子は見えない。

[21:52:01] SCP-████-JPによる[データ削除]。画面が暗転する。

[21:57:59] 画面が戻る。SCP-████-JPの一部が画面奥の廊下を横切る。SCP-572-JPの棒を持った腕部のみが廊下に残っている。

この事件以降、SCP-572-JPの再出現は確認されていません。また廊下の通行も可能なことから、SCP-572-JPが出現した道を避けさせる異常性を失ったと考えられますが、監視カメラによる映像以外では確認できない点、物理的な接触が行えずすり抜ける点から全ての異常性を失っていないと判断され、Safeクラスオブジェクトとして特別収容プロトコルが更新されました。



悲劇は起きてしまった。

SCP-████-JPはおそらく認識に作用する何らかの異常性を持っていたのだろう。
それが財団の収容下を抜け出し、職員を襲いながら脱走を始めた。

SCP-572-JPは果敢にも収容違反による「事故」にさえ立ち向かったようだが、いかんせん相手が悪すぎた。
監視カメラの映像を切られ、暗闇の中で何かをされた後。
復旧したカメラに映っていたのは、腕と警棒だけを残しそれ以外を消し去られたSCP-572-JPの姿であり、それを最後にSCP-572-JPの出現はぱたりと止んだ。
当然それ以降、全国各地の監視カメラにもSCP-572-JPが映ることは二度となかった。




後日。埼玉県のとある電信柱に、以下のメッセージが貼り付けられていた。


お元気ですか? 年の瀬も近づき、こちらは大忙しです。
ところで夏ごろに、わたしたちの仲間が一人来たと思います。
ちょっと人見知りするけど、お調子者で、目立ちたがり屋で、とても正義感の強い彼。
もし会えたら、そろそろ戻ってきてほしいと伝えてください。
みんなで一緒に新しい年を迎えましょう。みなさんの迎える新年も良いものでありますように。

酩酊街より 愛を込めて



お調子者で、目立ちたがり屋で、とても正義感の強い『彼』。
牙をむき襲い来るSCP-████-JPを前にして、『彼』は最後に、何を思ったのか。

真実を知るは、もう振られることのない警棒のみーーー。









SCP-572-JP


誘導する警備人形






追記・修正は警棒を手に、正義感を胸にお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-572-JP - 誘導する警備人形
by Amateria68
http://ja.scp-wiki.net/scp-572-jp

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最終更新:2024年03月27日 08:52