綱彌代時灘(BLEACH)

登録日:2018/12/16 (日) 01:04:29
更新日:2024/03/09 Sat 23:37:10
所要時間:約 20 分で読めます





それは誤解だな。確かに彦禰は道具だが、私は『人』を道具などとは思っていない。
自らの意志で物を考え、叫び、喚き、勝手に絶望する、実に滑稽な見世物だと思っているよ。







綱彌代 時灘  
つなやしろ   ときなだ

[職業]貴族

[肩書]四大貴族筆頭 綱彌代家 分家末席→本家当主

[CV]津田健次郎


BLEACH』の登場人物。
小説版『BLEACH Can't Fear Your Own World』に登場。


 概要



四大貴族の中でも筆頭とされる「綱彌代」家の分家の末裔。映像庁という監視機関を取り仕切る。
かつては護廷十三隊に所属する死神であったが、現在は離隊。京楽春水浮竹十四郎とは霊術院時代の同期の関係である。
東仙要の親友だった歌匡の夫で、彼女を殺害した張本人であり、東仙の闇堕ちの元凶とも言える人物。

綱彌代家の当主とその周辺人物が次々と暗殺され、その暗殺者を全て返り討ちにした功績によって
末席から一気に当主の座へと上りつめた…ということになっている。



 人物



他人を蹂躙する行為を至福とし、その為には手間隙を惜しまず危険を冒すのも厭わない、極めて享楽的且つ極悪非道の性格をしている。夜一曰く「藍染以上の下衆」。*1
前述した当主暗殺の事件においても、かつての同期である京楽は暗に時灘の自作自演による策謀の可能性を示唆した上で「彼は、そういう事を平気でやる男だよ」と述べ、普段滅多に人の事を悪く言わない京楽の言葉なために、檜佐木、七緒、拳西を驚かせた。
加えて彼は、藍染が本性を現すまでは時灘をルキアの処刑騒動における黒幕ではないかと疑っていたことすらあったという。
京楽からは他にも「彼は『できない』と見せかけておいて、土壇場で『実はできた』と相手を絶望させるのが好きな男」とまで評されており、実際に戦闘スタイルにおいてもそれを組み込んだ形を行おうとしている様子がうかがえる。

ある意味、「他人の不幸でメシがうまい」の極致を行く男と言え、その最たる行動が煽りである。
初登場の過去回想シーンにおいて、東仙が盲目なのを利用して「上げて落とす」言葉で煽り、彼を怒りと絶望の縁に叩き落としたのを初めとし、登場するシーンの大半において名も無い暗殺者のモブから、初対面の破面であるハリベルにまで煽りを欠かさない。
鬼道で隠れていた七緒に向けて、彼女の母親の処刑事実を持ち出して目の前の京楽を乏しめる形で間接的に煽って精神的に衰弱させたり、
亡き兄達を侮辱されようとも努めて感情を殺して冷徹に接する砕蜂に対しても「いっそ私が夜一を妻として迎え入れれば、身内として真に尊敬してくれるのかな?」などと煽って、彼女がキレる寸前までいった。

ただし、作中人物の中には煽りの効かない者もそれなりに存在する。
かつて四番隊副隊長を務めた山田清之介に対して彼が内心尊敬していた卯ノ花の死を引き合いに出して煽ったものの清之介には特に堪えず、時灘も「人の心がない奴をからかってもつまらんな」と言って拍子抜けしたという*2浦原に至っては、「言葉選びのセンスも零点です」と断じられてしまった。

しかし単に口だけの男ではなく、壮大かつ入念な計画を持って準備しており、その目的の大きな理由が「自らが楽しむため」であったりと、とにかく自分の欲を満たすためならば手段を選ばぬ外道。時には肉を切らせて骨を断つような戦法をも躊躇無く実行に移し、愉悦を味わうためであれば己の命すらも懸ける。
またチート斬魄刀の力があるとは言え、隊長格や破面、滅却師の混成部隊相手に一人で相手取る戦闘力を持ち合わせており、能力無しの状態でも砕蜂をして「斬術は想像以上に堂に入ったものである」と評している。
五十番台の鬼道も詠唱破棄で放っており、それを戦術に組み込む場面もあった。
更には戦闘中に巧妙なフェイクで相手を翻弄したり、追い込まれても素早く対抗策を編み出すなど頭の回転も早い。
その他、京楽すら欺けるほどの七緒の高度な隠術を見破り、彼女が部屋の中に隠れて会話を盗み聞きしていることを見抜く眼力も持つ。

更に曲がりなりにも映像庁の代表として長年辣腕を振るっていただけあって、情報収集力および洞察力にも優れており、
東仙が100年以上前から護廷十三隊への裏切りを密かに進めていたこと*3や一部の関係者にしか知らされていないはずの卯ノ花の死の経緯、京楽が伊勢家の八鏡剣を密かに預かっていたこと、果ては銀城空吾を巡る一件の真相など、様々な裏事情に精通している模様。
なお東仙が裏で暗躍していた事実や、銀城が綱彌代家本家の陰謀により陥れられたことなどを把握しつつも、敢えてそれらを誰にも伝えなかったらしい。そうした無情な行いもまた、虚化実験の被害を受けた((のち)の)仮面の軍勢の面々および銀城を心から案ずる浮竹らの苦悩ぶりを眺めて笑うためであった。



  斬魄刀


◇─「九天鏡谷(くてんきょうこく)


解号は「奉れ(たてまつれ)~」
伊勢家の八鏡剣と同じく、綱彌代家に代々伝わる斬魄刀。
時灘自身の斬魄刀も存在するが、追放処分になった時に没収されている。
解放した際には形状変化は見られないが、見えない鏡のような結界を展開し、鬼道を含む相手の技・術を跳ね返す能力を持つ。
ただし、京楽の見立てでは、四大貴族が代々守り続けている斬魄刀にしては能力が妙に控え目なため、それだけの能力ではないだろうと推測しているが…



 過去


◇─少年時代

五大貴族綱彌代家 分家末席として生まれた少年の時灘は、楔である霊王が存在する以前の世界は如何なる世界だったのかと父に問い、理不尽に叱責される。
時灘は無理矢理納得したフリを続けながら、虚飾に塗れた栄華に浸る自分達の一族を心の中で見下しながら時を過ごした。


◇─真実を知る

綱彌代家の秘蔵中の秘とされる書庫の最奥にて、世界の成り立ちと綱彌代家…もとい五大貴族の罪の全てを知る。
己の想像通りにこの世界は腐っていて、自分達は想像以上に救いようがない事を確認した時灘は、世界に感謝して笑う。
世界が悪辣であるならば、自分も悪辣であるべきという自らの悪意が正当であると証明された事に、喜びを覚えたのだ。
何かのきっかけや悲劇を経て悪になった訳ではなく、純然たる己の意志で他人を虐げ驕奢を恣にした時灘は、真実を知る事で、自らの悪が指向性を変えることになった。


◇─歌匡(かきょう)との出会い

綱彌代本家の命令で、とある『素養』を持つ流魂街の女性を、実験のために妻にするように時灘へ命令が下る。
本家からの指示云々よりも、無力な女性が幸福の絶頂から奈落の底に落ちる瞬間を見たいがために、その指示に従い、偶然を装って女性_歌匡に接近。偽りの優しさと自分の身分を武器として結婚まで漕ぎ着ける。

そして祝言をあげた次の日の夜に、時灘は全てを明かした。

『お前のことなど愛してはいない。ただお前は、綱彌代家の実験体として選ばれただけだ』
『今から結婚を破棄すれば、お前だけではなく出身である流魂街の人間達も難癖をつけて処罰されるだろう。お前がよく話していた要という親友もただでは済むまい』


一体どれほど滑稽な絶望の表情を浮かべるのかと期待していた時灘は、あっさりと裏切られることとなった。


「貴方はまだ、星を見た事がないだけよ」


歌匡は衝撃を受けるわけでもなく、失望するわけでもなく、ただ小さな子供を諭すようにそう言った。純朴な慈愛に満ちた声。
歌匡は全てを悟っており、知った上で時灘と結婚したのだと言った。
時灘にはどうしても許せなかった。まるで自分よりも遥か高みにいる場所にある者から、何かを与えられる立場へと貶められたような錯覚を覚えたからだ。


◇─真央霊術院時代

歌匡は死神としても力をつけ始める。
将来席官間違いなしと噂され、同期であった京楽や浮竹も一目置くほどの実力者になっていた。
時灘は自分という存在が侵蝕されるという焦りにも襲われたが、本家からの指示で婚姻してる身である以上、殺すことも離縁することもできないでいた。当時の時灘は京楽曰く「目立たない奴で、影みたいに過ごしていた」らしいが、そんな彼にも浮竹は普通に声をかけて、友達としていたという。

そして、ある日。表向きは親友として時灘や歌匡と繋がっていたとある平民上がりの死神が、偶然綱彌代家の計画を知ってしまう。

その死神は深夜に時灘を呼び出し、真意を問い質す。
時灘はあっさりと真実を告げた。自分が歌匡を欠けらも愛していない事を含めて。
親友だと思っていた男がただの外道だと気づいた男がどのような顔をするのかを見たいがために。

期待通りに男は絶望したような顔をした後『友として貴様を斬る』と言った。
実力の伯仲する両者の決闘へと事が及び、いつどちらが倒れてもおかしくない状況で、それは起こった。


夫を探していた歌匡がその場に現れ、斬り合いを止めるべく両者の間に割って入ったのだ。
その瞬間、時灘は間に入った歌匡の体をそのまま相手の方へ突き飛ばし、


迷う事なく、歌匡の体ごと敵の死神を斬り捨てた。


時灘は、今度こそ偽善的な考えに傾倒していた妻に絶望を与えられたと興奮し、笑みを浮かべるが…



「ごめんなさい……」
「私は……貴方の雲を払ってあげられなかった……」





「お前は……最期まで、最期まで私を見下し憐れむのか!」
「……私は星を見た事がないだけだと?」
「私の雲を払えなかっただと?」
「馬鹿を言うな、馬鹿なことを言うな歌匡!」
「私は最初から雲の上に立っている! いや、私こそが雲だ!」

「間違っていたのは君だ!」



◇─その後

それからすぐに本家の人間に呼び出されることになった時灘だが、こう弁明した。
「流魂街出身の貧民の夫である事が耐えられなかっただけです」
実際にはただの言い訳に過ぎず、時灘にとっては平民だろうか貴族だろうが全員玩具であることに変わらないのだが。

身内から罪人を出したくない綱彌代家の後押しもあり、「妻が友人と不貞を働いている場面を見て、逆上した友人が妻を斬り殺したため、やむなく返り討ちにした」と証言することになった。
綱彌代家の人間がそう言えば、裁判すら開かれない可能性が高かったが、発言力の高い上級貴族の次男であった京楽が確固たる証拠を突きつけた為、裁判沙汰にはなったものの、減刑されて蛆虫の巣へ送られる事が決定されただけであった。
更に結果として蛆虫の巣からもすぐに解放されてしまったため、京楽は「斬っておかなかった時点で手遅れ」とまで言っていたが、浮竹は改心する時をずっと信じていたという。


そして歌匡の親友であり、犯人が死刑にならないことを憤っていた東仙に対し、時灘ははじめ自分がその犯人であることを隠して近づき、東仙に復讐をやめるように諭してみせる。その後に自らの正体を明かしてみせ、「いやあ、君が復讐を望まないでいてくれてよかったよ」「妻の事を想うならば、私の事を許し、憎しみを忘れ、我ら死神に護られた安寧の中で日々を生きるべきじゃあないのかな?」と悪辣に煽ってみせた。
このシーンは本作の冒頭に位置付けられており、東仙側の視点に立っていた為、語りかける時灘の正体は隠されており、原作を知る読者の中には東仙に寄り添う人物を藍染だと思った人も多かったとか。
時灘「一体いつから私が藍染惣右介だと錯覚していた?」

だが、かように時灘の言葉で絶望の淵に落とされた東仙の前に一人の死神が現れ…



 活躍



原作時点において、零番隊の面々がユーハバッハ率いる星十字騎士団親衛隊を迎撃に向かった留守を狙い、王悦の鳳凰殿から斬魄刀『已己巳己(いこみき)(どもえ)』を盗み出したのが最初の活動。
この頃から各地より収集した映像を通して自身が企む陰謀の障害となる存在を観察しており、特に黒崎一護のことは、彼が不在の時を狙わなければ計画は確実に失敗すると最大限に警戒していた。

その後は現世において霊王のパーツを持つ道羽根アウラを勧誘。
そのアウラの力と山田清之介を使い、原作における千年血戦篇の戦場において回収した死神や滅却師、現世の人間や完現術者の魂魄を合成させて新たな生命…産絹彦禰を生み出した。
なお、かつて剣八と死闘を繰り広げたグレミィの脳髄もまた特異な力故に彦禰の重大な構成要素となっている。
宇宙空間すら即座に創造しうる性能な上、元の持ち主の魂魄は既に消失して抜け殻となっていたそれは、時灘にとっては降って湧いた最高の演算装置だったのである。これにより彦禰をただの肉塊ではなく、意思を持った個人へと昇華させることに成功した。

その後は綱彌代家の人間を暗殺する依頼を出し、綱彌代家当主やその周辺人物が殺された時を見計らい、それらの暗殺者を彦禰に殺させるという自作自演の末、当主の座につくことに成功。
暗殺者を殺す寸前に自らの自作自演を明かし、死の間際まで煽ってみせた。

当主就任を祝う号外を出すように瀞霊廷通信へ依頼する傍ら、四楓院夜一へ伝言を依頼するために一番隊隊舎を訪れ、ついでに京楽と七緒を煽る

そして夜一と現朽木家当主である白哉の二名を集め、志波家の再興を提案し、霊王に関して意味深な発言をした。
さらには白哉に対して妹のルキアとかつての妻、緋真を引き合いに出してまたも煽る

次に黒崎一護と愉快な仲間達+ルキア恋次が空座町を離れたのを見計らい*4、道羽根アウラおよび彼女に同盟を結ばせた雪緒の二人の力で空座町を隔離するように命令。
その上で彦禰に命じて流魂街に来ていたグリムジョーと愉快な涅骸部隊と交戦させる。

しかし京楽の差し金によって、警護の名目で現れた砕蜂と隠密機動に包囲される。そこでもしっかり砕蜂を煽り、危うくキレかける砕蜂を、突如現れた夜一がフォローする形でなんとか収まった。

夜一が強硬手段で集めた証拠*5を突きつけられると、焦るまでも無く通魂符(ソウルチケット)を使って断界内に逃げ込み、同時に彦禰も断界内に呼びつける。


その後は断界内で作成していた空中楼閣の中庭において、京楽率いる死神、破面、滅却師混成部隊と対峙。
何も知らぬ現世の人間達に「死神(特に黒崎一護)がユーハバッハを討って世界を守った」という功績を知らしめるために、この空中楼閣を空座町に転移させると主張する時灘に対し、京楽は時灘の真の目的を看破する。


「君はただ、見たいだけだろう? これまでの常識が崩れて、緩やかに壊れていく世界を」


時灘の真の目的は、死後の世界が存在する確固たる証拠を見せつける事で、今までの宗教や死生観を信じていた人々が大混乱に陥り、争い自滅していく様を笑って眺めること。それだけのために空中楼閣を秘密裏に作成し現世に転送しようとしていた。
「己の偸安のためだけに、世界の在り方を崩そうというのか?」と問いかけたハリベルに対しても虚をディスる形で煽ることも忘れない。

それを止めるべく京楽率いる混成部隊と時灘&彦禰+已己巳己巴による戦いが勃発。
京楽は時灘の影に潜る形で切り結んでいき、途中で花天狂骨の能力『指斬り』*6を使うも時灘に看破された挙句、本当の事しか言えない状態になっても京楽をまた煽っていく

『指斬り』の能力でお互い嘘が封じられた状況において、京楽は次に驚愕の質問を口に出した。


「君の斬魄刀…『九天鏡谷』って名前は嘘だろう?」

「……」

「ヒントを出し過ぎさ。大方、騙した後に『九天鏡谷なんて、偶然お前の刀と似た響きになったとでも思っていたのか?』って追い討ちをかけたかったんだろう?」

「半分当たりだ。もう半分は戒めだよ。お前への警戒と憎しみを忘れぬようにな」



  斬魄刀(真)


◇─「艶羅鏡典(えんらきょうてん)


解号は四海(しかい)(すす)りて天涯(てんがい)(まと)い、万象(ばんしょう)(ひと)しく(うつ)(けず)らん~」

今までは偽の名前で封印していた綱彌代家に代々伝わる斬魄刀。
始解の瞬間は刀身が一瞬視界を奪うほどに光り輝き、解放後は刃の存在しない柄と鍔だけの状態となる。

その能力は他者の斬魄刀の力を自在に模倣する能力。
始解までしか模倣できないようではあるが、最初に艶羅鏡典を解放してしまえば、その後は模倣する斬魄刀の解号などは唱える必要がなく、即座に刃が顕現する形で何度でも使える模様。
何より厄介なのが同時に複数の斬魄刀の始解能力を使えるという点。また映像などで過去に視認しただけの斬魄刀をも模倣する事が可能なようである。

作中においては「侘助」「瓠丸」「餓樂廻廊」「千本桜」「土鯰」「灰猫」「流刃若火」「金沙羅」「鏡花水月」「神鎗」「氷輪丸」「天譴」「清虫」「斬月」「瑠璃色孔雀」「五形頭」を模倣してみせた。*7

ただし、メリットともデメリットとも言える特徴としては、あくまで始解を操るのは時灘本人であるため、威力や性能も時灘の霊圧に左右されるという点がある。
山田花太郎が使う「瓠丸」は重傷を治すことはできないが、時灘の霊圧で扱えば大体の傷を治癒可能となる。
「土鯰」を使用した際も本来の使い手である車谷善之助よりも激しい地形変動を起こしていた。
逆に「流刃若火」に至っては京楽に「山じいには熱量が遠く及ばない」と辛辣に評されている他、
時灘曰く「鏡花水月」で生み出した幻も藍染に匹敵する霊圧の持ち主がいたら力尽くで解除されてしまうらしい。
幻覚を維持するのに霊力を割いたせいで他の攻撃の威力が落ちてしまうという事態まで発生していたようだ。
また、生まれが特殊な「斬月」に至っては模倣できたのは形だけで、性能はないに等しいものであった。

更にはこれら以外に斬魄刀そのものに付随した強烈なデメリットとして「命が削られる」というジャンプ漫画でよくあるものが存在し、使う度に魂魄が削られていき、二度と元には戻らない。
綱彌代家の者達がこの刀を扱うことを厭うていたのもこれが理由だったのだが、時灘は「己の愉楽に命を賭けぬ人生に何の意味がある?」と全く気にしていない様子を見せた。



 決戦



始解した時灘は、多種多様な始解能力を持って京楽達を翻弄した挙句、その後駆けつけてきた破面と滅却師の混成部隊を含む、その場の敵全てに対し「鏡花水月」の始解を見せることに成功し、完全催眠をかける*8
そして同士討ちを恐れて手が止まった隙をついて京楽を含む混成部隊を痛めつけていく。そこへ握菱鉄裁の手引きで叫谷へやってきた檜佐木修兵が現れる。

唯一鏡花水月にかかっていない仲間の登場という事で、京楽はとっさに檜佐木を影の中に匿い、事情を話した上で対策を講じる。
鏡花水月の始解を見ないよう目を閉じた状態の檜佐木が霊圧感知で時灘を捉え、それを頼りに京楽が時灘に攻撃を仕掛けるも突如現れたアウラの妨害で失敗。
時灘は檜佐木に対して東仙のこと、そして「霊王の正体と五大貴族の罪」について語りながらまた煽る


「ああ、そうだ! お前達死神に正義などない! 無論私にもな! ここで行われているのは、ただの悪党の末裔同士の陣取りにすぎん! 仮にこの世に正義があったとするならば、それこそ東仙要の中だけだろうなぁ!」


それに対して檜佐木は、静かな敵意とともに時灘と対峙する。


「死ぬ事すら恐れちゃいねえ野郎が……東仙隊長を語るんじゃねえ」


次は目を閉じた状態のまま、まるで見えているかのように「風死」で時灘を攻撃する檜佐木。「流刃若火」や「侘助」をものともせず次第に時灘を追い詰めていき…時灘を覆っていた「千本桜」の壁を突き破った「風死」がとうとう時灘の右腕を切断。
それを好機とみたキャンディスのガルヴァノジャベリン、残りのビッチーズ滅却師達による神聖滅矢、グリムジョーの虚閃をモロにくらい、時灘は倒れた。

目を閉じていた檜佐木も、感じていた時灘の霊圧が消えた事で時灘の敗北を確信する。そして、仲間の声でアウラが目の前に迫っていることを知らされ、慌てて目を開くも…





目を開いた檜佐木の前で、鏡花水月の始解が現れた。




「やれやれ、仲間がこうも単純だと哀れだな」

「藍染ならば、この程度の仕掛けなら簡単に見破っていた事だろうよ。いや、それこそ東仙程度の用心深さがあれば、迂闊にお前に眼を開かせるような事は言わなかっただろうな」



時灘の腕は無事で、艶羅鏡典も握られたままであった。
風死で腕が飛ばされて総攻撃を食らった時灘の姿は、実際は鏡花水月によって偽られていたアウラだった。
千本桜で壁を作っている間に、斬撃も虚閃も効かないアウラと時灘の姿が入れ替わるように見せていた。
霊圧感知していた檜佐木の対策のために霊圧遮断の外套を着て誤魔化し、アウラのふりをして近づくことで仲間が檜佐木に警告させるように仕組んでいたのだ。

わざと東仙の言葉を出しつつ檜佐木と混成部隊の面々を煽る時灘。
檜佐木すらも鏡花水月の支配下に置いた時灘は、アウラと雪緒の手によって洗脳されたという銀城、月島ギリコを前にして、念の為に鏡花水月をかけようとするが…


「ん…?」


鏡花水月は、なぜか発動せず…そればかりか、アウラが洗脳したはずの銀城がその隙をついて時灘に斬りかかった。


アウラは既に心のうちで時灘からの離反を決めており、銀城ら完現術者の四人組とも既にグルであった。
時灘が鏡花水月を発動できなかったのは、アウラが自身の能力によって気づかれないように発動前の鏡花水月に触れていたためであった*9


しかし、時灘にとってはそれすら計算のうちであった。


アウラにとって最悪の弱点となる「瑠璃色孔雀」を使ってアウラを攻撃する時灘。



「なぜ…私が裏切ると?」 

「ん? 当然だろう。彦禰を自らの手で生み出したあの時から、母性とでも言うべきか……お前は今までになかった感情をその胸に抱いたのではないか?」

「だとするならば、予定通りだ。無味乾燥なお前の中に感情を育て、それを踏みにじるのは楽しかろうなと思ってはいたが……中々どうして、良い顔をするではないか」



アウラに彦禰を生み出させた事すら自らの享楽の種であったことを明かした時灘は、必死に抵抗するアウラを嘲りながら煽る

多大なダメージを受けながらもなお鏡花水月に触れ続けるアウラを、わざと自分の手で殺すのではなく彦禰に殺させるよう命じようとするものの、鏡花水月にかかっていない銀城達完現術者が時灘に襲いかかる。


しかし、完現術者達も多彩な斬魄刀の力を前に決定打を取れずに停滞する。
その隙をついて、剣八と斬りあっている彦禰にアウラを殺すよう叫ぼうとするが…


突如飛んできた『風死』に、今度こそ本物の艶羅鏡典が握られた時灘の右腕が、斬り飛ばされた。



「馬鹿…な…?」

「貴様には…『完全催眠』を発動させていた筈…」



時灘が風死を感知できなかったのは、時灘が脱ぎ捨てた霊圧遮断の外套を風死に巻きつけて飛ばし、それごと時灘の腕を切り飛ばしたからであった。
しかしそれ以前に目の前で鏡花水月の解放を見せたはずの檜佐木が、なぜ的確にこちらの腕を弾き飛ばせたか理解できない時灘。

しかし、とある死神の様子を見た時、時灘は理解した。


「ほんまは、藍染が一護に始解を見せる瞬間に使お思うてたんやけどな。あいつ、一護には『鏡花水月』使わへんとか、参るわホンマに」


「お前の脳味噌が単純で助かったわ」


時灘を煽り返した死神の正体は平子真子。手にあるのは始解状態の斬魄刀「逆撫」。
そう、時灘の姿が現れて檜佐木に鏡花水月の始解を見せられる瞬間に、「逆撫」の能力を檜佐木にかけた。
それにより上下左右前後逆を見ることになった檜佐木は、鏡花水月の始解を見なかったのだ。


飛ばされた艶羅鏡典は、京楽の手によって回収され...その隙をついた銀城の『月牙天衝』が、時灘の体を斜めに切り裂いた。


重傷を負い、艶羅鏡典も失って絶体絶命となった時灘。しかし時灘は裾から空間転移の布*10を使って逃走を図る。


「この期に及んで逃げる気かい? 大人しく捕縛された方が君の為だと思うけどね」

「馬鹿なことを言うな京楽。死ぬまで幽閉され退屈な時を過ごすくらいなら死んだ方がマシというものだ!」


悪役らしい潔い覚悟を叫んだ時灘は、間一髪のところで戦闘から離脱に成功。
その後は楼閣に備えつけられている様々な兵器を使って、間接的に京楽達を葬らんとするも、アウラの手引きによって工作を行っていた浦原による妨害で失敗。重傷を負いつつも浦原を煽るものの、冷たく反応される。

あらゆる手段を封じられた時灘は、当初の目的であった「空座町の上に空中楼閣を浮かせ、死神の存在を公にする」を諦め、「空座町の上に空中楼閣を落とす」作戦に変更。

無線を使って彦禰に対しアウラを殺すように命じた上で、自身は小型の転界結柱を使って瀞霊廷にある自らの屋敷に逃亡。



 顛末



満身創痍の重傷を負いながらも、まだ手札はいくらでもあるとした上で、しばし傷を癒して身を隠そうとする時灘。
だが、幾重にも結界を張ってあるはずの自身の屋敷の中に、時灘は何者かが侵入しているのを察した。


「おや、これは失礼したネ」

「人の気配が無いものだから、空き家かと勘違いしていたヨ」


そこにいたのは、十二番隊隊長涅マユリであった。
時灘の煽りを軽くスルーしつつ、かといって特に時灘を攻撃するでもなく、ただ「時灘の研究の末路を観察しにきただけ」と述べるマユリ。


「まあ…どちらにせよ、勝手にこの部屋に入ったことは謝罪しよう」

「ついでに言うなら…鍵を、掛け直さなかった事にもネ」



そして、その瞬間。
何者かが「浅打」を時灘の背中に突き立てた。


「バカ……な……誰……が」



そして振り返った時灘が見たのは、全く見たことのない黒装束の少女であった。
しかし、その少女の服装がかつて自作自演で時灘が始末した暗殺者の一族と同じものだと時灘は理解した。
あの時自分自身を殺すように命じた依頼が今果たされようとしているのかと思った時灘だったが、少女の口からは時灘にとって予想外の言葉が漏れた。


「みんなの……仇……! 綱彌代時灘…! お前が…! 家族のみんなを…!」 


「そんなものの為に…貴様は……私を斬ったというのか?」


「そんなもの……そんなものだと…!?」


まさか暗殺者ともあろう者が家族の情を持って切りかかってきたことに意外の感情を示した時灘に少女は激昂し、時灘の背に何度も刀を突き立てる。ちなみにマユリはガン無視して部屋の資料を読んでいた。

暗殺者として未熟な少女は、重傷の体に何度刀を突き立てても、毅然として立つ時灘にビビり始め、その場にへたり込んで震える。

だが、時灘の体は既に死を待つだけの状態になっていた。
残された力を振り絞れば低位の鬼道を放って目の前の少女を消し飛ばすくらいは可能だったが、自分を死に追いやった相手にまるで関心を抱いていなかった。

逃れられぬ死を目の前にして、時灘は……



「ハハハハハハ!ハハハハハハハハハハ! そうか! 私は…俺はここで死ぬか! 長い時をかけて恨みを仕込んだ東仙ではなく、このような…このような取るにも足らん雑魚に仇討ちとして殺されるとはな! これが、こんなものが、綱彌代の全てを手にした俺の、尸魂界の業を正しく引き継いだ俺の最期だと言うのか! ハハハハハハ!」


ただ、笑った。血を吐きながら、近づいてくる死に一向気に取られることなく、死ぬ時まで、声を上げ続けた。



「ざまを見ろ…ざまを見ろ、京楽春水!」

「俺の命脈はここで潰えるぞ京楽!お前達は、ここにいる名も知れぬ小娘にすら勝てなかったわけだ!お前は俺に届かなかった!やっとだ!やっと俺はお前に一泡吹かせてやったぞ!残念だなぁ!哀れだなあ!死神どもめ!お前達はこれで、私を永遠に罰することはできぬ!」

「どうだ東仙!悔しいか?俺は……私は、貴様にしたことを微塵も後悔せぬまま死ぬぞ?どうだ檜佐木修兵、どうだ銀城、どうだアウラ!今頃は彦禰に殺されている頃か? 生き延びていたとしても、お前達は……もう……私の魂には触れる事すらできん」







「どうだ…….浮竹……貴様が信じようとした男は……何も変わらぬまま……死ぬぞ……」








「どうだ…….歌匡……私は……星を……」






















......

「未熟な暗殺者の抱いた感傷、か」

「成る程 尸魂界の宿業とやらを斬るにはそれで充分だった......という事だろうネ」



追記・修正は時灘の煽った回数を数えてからお願いします。

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最終更新:2024年03月09日 23:37

*1 なお時灘はこの言葉に対して「藍染以上の悪」とまで評されたと解釈して御満悦な様子を見せていたが、彼女はこれに関してはキッパリと否定した。

*2 当の清之介も「性格が悪い」と評判であり、あの花太郎をもってしても「意地悪」と評されるくらいであるから、時灘の評も案外的外れではないかもしれない

*3 流石に藍染が裏で糸を引いていたことまでは見抜けなかったと語っているが。

*4 旅行に行った一護の妹、遊子と夏梨がトラブルに巻き込まれたため、父の一心が一護をふんじばって飛んでいったとのこと。タイミングが良すぎるため時灘に仕組まれたと浦原は推測している。

*5 綱彌代家管轄の映像庁の特殊保管庫の入り口を派手にぶっ壊して採取した、人間の胎児や虚の一部のようなもの

*6 指切りげんまんを元にした能力。互いに嘘をつけばまず指が動かなくなり、二度目の嘘で全身の骨が拳骨で砕かれたように麻痺し、三度目の嘘で臓腑が内側から針で刺されたような激痛に見舞われる。ただ、お花が「自分以外のものを指切りするなど」と言って拗ねるため、滅多に使わないらしい

*7 作中で模倣こそしていないが、“だるまさんが転んだ”と口にして「花天狂骨」を使うかのように見せかけることで罠に嵌めた他、「雀蜂」で夜一を蹂躙した後にその事実を砕蜂に伝えて絶望させようという旨の悪辣な計略を夜一本人に提案したりもしていた

*8 ただし彦禰とのタイマン勝負にかかりっきりの更木剣八だけは見ていない

*9 それに加え、時灘を超える霊圧を持つアウラが触れる事で始解への変化そのものを封じている。藍染と違って規格外の霊圧を持っているわけではない時灘であったからこそ可能な対抗策

*10 原作の尸魂界篇で藍染や東仙が使用した、白い布を周囲にくるくるさせて瞬間移動したアレである