電報

登録日:2018/12/15 (土) 20:06:50
更新日:2022/08/18 Thu 23:28:32
所要時間:約 4 分で読めます



●●さーん、電報でーす
何だよ…こんな夜中に…

チチキトクスグカエレ ハハ

電報とは、電気通信を使って文章や文字を送るサービスである。都市間は電気通信で、都市内は配達員が配達する。言うなれば超高速の速達。

まだ電話が上流階級の物だった頃は親族の危篤・死亡など急ぎの用事を連絡するのには電報が頼りだったのだ。
しかし電話の普及でそういった緊急事態は電話で伝えることができるようになり、電報の需要は一気に減った。
今では祝電や弔電といった儀礼的な場面で使われることが多く、電報サービスもほぼそういった需要だけをターゲットにしている。
上記の経緯から単なる文章だけではなく花束やぬいぐるみなど「オマケが本体」というレベルのオプションが多数用意され、遠方であろうと現地の基地局により急ぎであっても決まった規格の品を贈ることができるという独自の商品文化を持っている。

現在日本国内で電報サービスを提供しているのはNTTとKDDIのみ。
郵便局の提供するレタックスは厳密には電報ではない。


使い方

現在はNTTなどによってインターネットや電話を使って電報の申込みが出来るサービスが提供されている。
インターネットでの申込みは24時間可能で、電話を使ってオペレータを通す場合は日中のみ申し込みができる。

台紙を選択し、届け先、メッセージ、差出人情報を入力。料金の支払いを済ませることで申し込みが完了する。

送られたメッセージはデジタル回線を通じて届け先最寄りの配達局に送られて印刷され、配達員によって届けられる。郵便と異なり、配達は24時間体制で行われており、夜中でも相手に届けることが可能。

デジタル回線になる前はモールス信号を人手を通じて解読、電動タイプライターと交換機による自動中継が行われていた。


料金

料金はNTT東日本だと25文字で440円からとなっている。そこから5文字単位で料金が上がっていく。これにメッセージ台紙の料金も加算される他、毛筆風書体や配達通知などオプションを選ぶとその分の料金も加算される。

電報全盛期の料金は文字・句読点・濁点・半濁点・空白を1字として数えて課金されていた。これは有資格者でないと出来ないモールス通信を利用して文字を送っていた関係である。当然長い文章になればなるほど料金は高くなるので独特な言い回しが発達した。


電報独特の言い回し

現在でこそひらがな・カタカナ・漢字・アルファベット・数字を送ることが出来るが、かつてはカタカナと数字・一部の記号など限られたものしか送ることが出来ず、字数制限もあったので、あまり長ったらしい文章を送ることも出来なかった。特に返信料を発信者が払っている返信料前払電報ではその制限が顕著に出た。文章によってはぎなた読みが発生し、勘違いを招くことがあった。
そんな勘違いを起こすことが無いよう電報の文章は極力やさしいものとされ、独特な言い回しが発達した。その中には慣用句になったものも存在する。
記事冒頭の「チチキトクスグカエレ ハハ」は代表的なもの。

  • チチキトクスグカエレ(父危篤 すぐ帰れ)
訳:父親が危篤である。すぐ帰ってきなさい。
主に地方から都会へ出て離れて暮らす息子や娘に向けてこういった電報が送られた。チチの部分は危篤になった親族に合わせて変わる。

  • レンラクコウ(連絡乞う)
訳:連絡をください。
映画となりのトトロで七国山病院から草壁家にこういう電報が送られてきた。

  • ヒゼウ
訳:非常
ヒゼウは非常の旧仮名遣い表記。旧仮名遣いは新仮名遣いよりも文字数を節約できるので特に好まれた。

  • ヤマイオモシ カネオクレ(病重し 金送れ)
訳:重い病気にかかった。治療費を送ってほしい
実家と離れて暮らす苦学生がよく使った言い回し。本当に重い病気なのか、電話を引いてないのだから声で確かめようがないし、交通網が貧弱で親が都会まで様子を見に来ることも難しかった故に使えた荒業。

  • ゼ/ゴ
訳:午前/午後

  • アトフミ(後文)
訳:詳細は後ほど手紙で送ります

  • ヨロオネ
訳:よろしくお願いします

  • ウナヘンマツ(ウナ返待つ)
訳:至急返事をください
ウナは英語で至急を意味する"urgent"の"ur"のモールス信号が和文の「ウナ」と同じだったことから名付けられた。かゆみ止めの「ウナコーワ」のウナはかゆみにすぐ効くようウナと名付けられたとか。

  • サクラサク/サクラチル
訳:大学合格/大学不合格
大学合格電報の定型文で一番有名なもの。早稲田大学が発祥で、他の大学にはその大学の特色を織り込んだ独自の定型文が存在する。

  • アスワヤマニハナガサク(足羽山に花が咲く)→スイセンカオルニホンカイ(水仙香る日本海)
訳:福井大学合格
カタカナで書かれた「アスワヤマニハナガサク」を「明日は山に花が咲く」と解釈した受験生が補欠合格や不合格と誤解する事例が多発したため、スイセンカオルニホンカイに改められた。
ちなみに足羽山とは、福井市内にある山の名前で桜やアジサイの名所として有名。

  • カチガラスナキゴエヒビキワタル(勝烏鳴き声響き渡る)・アリアケムツゴロウトンダ(有明ムツゴロウ飛んだ)/カチガラスナカズサイキキタイス(勝烏鳴かず再起期待す)
訳:佐賀大学合格/佐賀大学不合格
明らかに長い例だが、とても風流な言い回し。

  • マリアホホエム(マリア微笑む)・サクラサクキセツニツルノミナトデマツ(桜咲く季節に鶴の港で待つ)・マリアノカネガナル(マリアの鐘が鳴る)/アスニムカツテウテ(明日に向って撃て)・マリアノカネナラズ(マリアの鐘鳴らず)
訳:長崎大学合格/長崎大学不合格
これも明らかに長いが、キリスト教とゆかりの深い長崎らしい言い回し。

モールス信号の使用が縮小されてからデジタル回線による直接送信が普及するまでは通話表を使っていた。例えば「アニヲタウィキ」を電報で送る場合
朝日のア
日本のニ
尾張のヲ
煙草のタ
上野のウ
いろはのイ
切手のキ
という具合。小さなイは無視され、相手にはアニヲタウイキと書かれて届いた。

特定の組織内で通用する電報略号というのもあった。一般向けだと七五三や祝電などに電報略号が割り当てられていた。

電報が登場する作品

言わずと知れたジブリの名作映画。七国山病院から電報が届くシーンが描かれている。

電報配達員が主人公でそのものズバリの「電報」というエピソードが単行本40巻に収録されている。

ザンネンユケヌアキコ
何がクリスマスじゃあい!

私立探偵という職業柄故、連絡や捜査情報の収集に電報を頻繁に使う。
シリーズ終盤辺りは現実のイギリスで電話が普及してきたので電話も使うようになるが、やはり主な連絡手段は電報である。

最終巻にて。
護衛対象の小説家の老人、当麻蔵人を東京から大阪まで護衛する最中で主人公、笠原郁が使用した。
中盤、敵である良化委員会に内通していた裏切り者による情報漏洩が原因で襲撃を受け、郁と当麻はギリギリの所で逃げおおせたものの、
逃走過程で大雨の中を走り回ったために携帯電話が故障してしまい、また公衆電話も盗聴の恐れがあったため使えず、
郁は当麻共々無事で現在岐阜にいる事、そしてこれから大阪のイギリス領事館に行こうとしている事を仲間に伝えることができないでいた。
そこで、良化委員会の警戒を掻い潜りつつ、本当に信用できる仲間だけに確実に郁の居場所と行動予定を伝えられる奇策として採用した。
また裏切り者がどこにどれだけいるか分からない状況だった為*1行動予定はそのまま書かず、
「誕生日のお祝いメール」のサービスを使用して『父と共に大阪へ旅行中の娘』から郁の親友、柴崎への祝電を装いつつ、
郁がアメリカ領事館前で陽動を行う事、当麻をイギリス領事館へ行かせる事を伝達する事に成功した。

  • HERO-アカギの遺志を継ぐ男-
6巻にて。
天貴史が元代打ちの漁師・狩野龍二を呼び寄せるため、大間漁業組合に電報を出した。
狩野は携帯電話を持っていないらしい。



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最終更新:2022年08月18日 23:28

*1 実際には裏切り者は一人だけで、郁が電報を打っていた頃には既に確保されていたが、仲間との連絡手段を失っていた郁には知る由もなかった。