死霊のはらわたⅢ/キャプテン・スーパーマーケット

登録日:2018/12/09 Sun 22:39:31
更新日:2023/01/14 Sat 19:11:31
所要時間:約 10 分で読めます




■キャプテン・スーパーマーケット

『キャプテン・スーパーマーケット(Army of Darkness)』は1993年に公開された米国のホラー(?)・アクション映画。
身も蓋もなく、カルト映画として分類されていることも。

ソフトでは、分かりやすくするために『死霊のはらわたⅢ』が、タイトルの前後どちらかに加えられている。

80年代スプラッターホラーのカルト的傑作の一つである死霊のはらわたシリーズの第三作目……なのだが、完全にホラーを逸脱した内容と主人公のみに(・・・)注目した超展開が炸裂する内容だからか、後のドラマシリーズ『死霊のはらわたリターンズ(Ash vs Evil Dead)』では、正式な時系列からは外されてしまっている。*1

ただし、ノリや性格や義手等、明らかに本作の経験を積んだ後のアッシュとなっているが……。

しかし、一応は死霊を相手どらないときは普通の人間ながら、コミック作品ではジェイソンやフレディとも肩を並べると設定された、主人公アッシュ・ウィリアムズの超人的なキャラクターを決定付けたのは、間違いなく本作の影響である。

尚、キャプテン・スーパーマーケットの名称は勝手な邦訳によるものであり、原語版は勿論、吹き替えでもキャプテン・スーパーマーケットとは一度も名乗っていない


【概説】

学生時代から自主制作映画を撮ってきた監督のサム・ライミと、ライミの中学時代からの親友で、長らく自主映画制作に付き合ってきた主演のブルース・キャンベル(ブルキャン)双方のメジャーデビュー作となった、83年公開の『死霊のはらわた(Evil Dead)』シリーズの三作目。

……しかし、本作は友人の映画へのボランティア的な出演から始まり、その濃ゆい存在感とアクの強い演技により、既に一廉の役者となっていたブルース・キャンベルの名前を前面に押し出した作品となっており、人に取り憑く死霊との死闘をスプラッターにしろコメディにしろ描いていた前二作とは違い、本作で描かれているのは死霊軍団相手のアッシュの無双である。

そのため、本作のみ(?)はこれまでのシリーズのイメージとは大違いの、既に2から怪しかったが純粋なホラーと呼ぶには難しいアクション活劇となっている。*2

原題もタイトルとして紹介されているのは『Army of Darkness』まで(・・)だが、OP映像では『Bruce Campbell vs Army of Darkness』となっており、最初からブルキャンの名前を前面に押し出したタイトルとなっていた。

正にブルキャンによるブルキャンの為の映画であるといっても過言ではない

しかし、突如として片腕にチェーンソーを付けたスーパーマーケット店員がアーサー王の時代に現れて死霊軍団と戦うという超展開と、10年を経てプロとして成長したライミとキャンベルの映像美と演技の妙など、最も見所が多いのも本作である。

ホラー・ファンタジー系のコミックで知られるダークホースコミックから、92年より映画の後日談やスピンオフ、クロスオーバーとなるコミックスシリーズが刊行されている。

コミックスでは前述のジェイソン(13日の金曜日)フレディ(エルム街の悪夢)の他、ドラキュラやライミ作の顔の無いダークヒーローであるダークマン、ゾンビ化したヒーロー達によるカオスな展開が魅力のMarvelゾンビーズとも戦っている。

尚、元々のエンディングは皮肉たっぷりのブラックジョーク的なバッドエンドであったが、配給会社から物言いが付いてしまい、米国版はハッピーエンド(?)に変えられている。
日本公開時に映画館を爆笑に包んだのはハッピーエンドの方である。

【物語】

※以下は特に意味は無いがネタバレ有り。

前回の戦いの後に、愛車と共に過去の世界に飛ばされたアッシュ。
そこは、かのアーサー王が死霊共が人々に暗い影を落とす中で赤髭王ヘンリーと戦っている時代であり、ヘンリーを捕らえて城に帰る行軍の目の前に落ちてしまったアッシュは、
自分もヘンリーの手の者と勘違いされ、賢者の止めるのも聞き入れられずに捕らえられ、処刑として死霊の潜む穴倉へと投げ込まれる。

さしものアッシュも死霊相手に素手では分が悪く追い詰められてしまう。
しかし、アッシュを伝説の空よりの勇者と信じる賢者は、落下現場から持ち帰っていた神器チェーンソーを投げ入れ、それを天に舞って受け止めたアッシュは反撃を開始、襲いくる死霊共を次々と切り裂き穴倉から脱出。
アーサー王を殴り付けると、ヘンリーを解放するのだった。

死霊を倒したアッシュの力を見た人々は、苦々しい顔のアーサーを無視して、彼を英雄として祭り上げる。
本来の調子の良さを取り戻しはじめたアッシュに、賢者は元の時代に帰るには『死者の書』が必要であると説く。
乗り気ではなかったアッシュだが、同じく『死者の書』を狙う死霊が城内に入り込んだのを見て、あっさりと片付ける序でに『死霊の書』を取りにいくことを承諾。

甲冑のガントレットを利用して怪力を発揮する義手を作る等、装備を整える一方、ヘンリー王の軍勢に兄を殺されたことから、アッシュを仇と思い込んでしまい因縁が生まれていたシーラと何だかんだで結ばれてヤル気を出したアッシュだったが、傲慢で細かなことを気にしない性格が災いして、死霊に付け入る隙を与えて自分の悪の分身が生まれてしまったり、一言一句間違えるなと念を押されていた呪文を適当に唱えたことで、間違えた状態で『死者の書』を取り出してしまう。

……これにより、恐れられていた死霊の軍団が復活。

王になったアッシュの悪の分身に率いられた死霊軍団が『死者の書』を取り戻すべくアーサー王の城へと向かってくる。

……当初は、この危機に対しても悪びれもせずに『死者の書』を取ってくる約束は果たしたのだから現代へと戻せと居直り、周囲を呆れさせていたアッシュだったが、シーラが死霊に拐われてしまう。

シーラを行きずりの女でしかないと思い込もうとしていたアッシュだったが、いざ拐われてしまうと我を無くして態度を一変。
城を捨てて逃げようとしていたアーサー達を自分の責任を棚に上げて挑発して仲間に引き入れると、持てる知識と力を尽くして死霊軍団を迎え撃つ準備を進めるのだった。

果たして、二人のアッシュの戦いの行方や如何に……!?

【登場人物】


■アッシュ・ウィリアムズ
演:ブルース・キャンベル
声:田中秀幸
顔も存在感も濃ゆい、スーパー「Sマート」の家庭用品係責任者。
たった三言の呪文も覚えられない、女好きの脳筋。
恋人のリンダと、知らなかったとはいえ死霊の封印されていた小屋で一夜を過ごそうとしたせいで、死霊に取り憑かれたリンダを自らバラバラにすることで失い、自分は自分で死霊の取りついた右手をチェーンソーで切り落とす羽目になりつつも、そのチェーンソーを手首に装着して死霊との戦いを征した。
しかし、死霊を還す為に唱えた呪文で空いた穴に呑み込まれてしまい中世へ……というのが、かなり食い違いもあるけど前回までの巻きに巻いたあらすじである。
戦に勝利して帰る途中のアーサー王の軍勢の目の前に落ちたことで捕らえられるが、これは予言に記された「伝説の勇者」の出現と同じであり、死霊に苦しめられている人々に「天の使い」として迎え入れられるも、やがては失望される。
既に死霊相手には無敵のハンターと化しているものの、本人が傲慢で無責任な女好きのためか大口を叩いては自らピンチを招くのを繰り返すが、死霊相手には本当に無敵で、ガントレットを改造した義手の他、最終決戦前には偶然にもトランクに積まれていた初歩的な科学とエンジンの本を利用して愛車を戦車に改造、爆薬を作り軍事教練を施したりとやりたい放題である。
死霊達にとってもアッシュは自分達の宿敵と認識されているようで、あの手この手で亡き者にしようしているがほとんどギャグである。
……全ての戦いの後、アーサー達の厚意により現代までを眠って過ごすことになるが……?

■シーラ
演:エンベス・デイヴィッツ
声:水谷優子
アーサー王の領地の娘で、兄が戦に参加していたようだったが戦死を告げられブチ切れ、捕虜となったアッシュに八つ当たりした。
が、アッシュが死霊を倒せる伝説の英雄だと知ると掌を返す。しかしシーラのやったことを根に持っていたアッシュに冷たくされて険悪に……が、何故かアッシュとギシアンして恋仲に。
アッシュの適当な呪文で死霊が復活した時にも唯一人アッシュを庇うものの、その時にはアッシュに行きずりの女だと言われてしまい、ショックを受けている所を死霊に拐われてしまう。
その後、ツンデレなことに死霊との戦いを覚悟したアッシュに救われ、アッシュが現代に帰ることを受け入れる。

■アーサー
演:マーカス・ギルバート
声:菅生隆之
聖剣エクスカリバーを振るう、伝説のアーサー王その人と思われるが、突如として現れたアッシュを捕虜にして、更に処刑までしようとしたのが運の尽き。
死霊を目の前にしてやる気になったアッシュに反撃され、愛剣もショットガンで折られてしまう。
その後もアッシュのせいで死霊によって領地を蹂躙される危機に直面するも、当のアッシュに救われることになる等、終始アッシュに振り回されっ放しの英雄。
言い分が互いに食い違っているものの、死霊に民が襲われている混乱の中で何れもが相手の領土の獲得に動いたのがヘンリー王との対立の原因らしい。

■賢者
演:イアン・アバークロンビー
声:村松康雄
アーサー王に仕えており、死霊の襲撃に頭を悩ませていた所に現れたアッシュを予言に記された伝説の勇者である、としてアーサーに進言する。
その時はアーサーに聞き入れられなかったものの、密かにアッシュの腕から外れたチェーンソーを回収しており、処刑されようとしていたアッシュを救うことになった。
実際にアッシュは伝説の勇者であるにはあり、当初は敬意を払っていたものの、本人の適当な態度に最後にはキレていた。

■ヘンリー王
演:リチャード・グローヴ
声:阪脩
「赤髭王」と呼ばれる、アーサー王と長らく敵対してきたノースランド国王。
物語の冒頭では虜囚となって連行されている所であり、そこに落ちてきたアッシュも配下だと勘違いされた。
共に捕らわれたアッシュを心配して話しかけたが、けんもほろろに失礼な態度を取られたことを恨み、アッシュが死霊の穴に落とされるのを止めなかった。
……が、死霊相手には人外と化すアッシュは死霊の穴から脱出。
そのアッシュに救われたことで*3、終盤には援軍の要請を受け入れて死霊軍団と戦うアーサー王に加勢して勝利を掴むと共に和解を果たした。

■悪のアッシュ
死霊がアッシュへの刺客として、自分達の領域で放った小さなアッシュ達の一匹がアッシュに呑まれ、アッシュの悪心で大きくなって分裂した存在。
本物のアッシュに射たれた上にバラバラにされて埋葬されたものの元が死霊の為か不死身で、アッシュが呪文を間違えたことで死霊が本格的に復活した後で、軍団の王となってアッシュとの決着に向かう。
小さなアッシュから悪のアッシュまで演じているのは勿論ブルキャンで*4、更には合成を前提としたパントマイム的な動きの妙といい、ブルキャンの演技力というか対応力の凄まじさが窺える。

■死霊
シリーズお馴染みの人類の敵で、本作の時代でも人々に恐れられている。
人に取り憑いて操るのが基本だったが、本格復活したことでスケルトンな軍団に。
……しかし、スペックが人間程度なので明らかに霊体だった時の方が強いと思う。

■リンダ
演:ブリジット・フォンダ
声:佐藤しのぶ
どんどん美人になるアッシュの永遠の恋人。
今作では当時の売れっ子女優ブリジット・フォンダがチョイ役ながら演じている。

■Sマートの同僚
演:テッド・ライミ
別エンディングにて登場してくるアッシュの同僚で、アッシュの体験談を呆れ顔で聞いていた。
演じているのは監督の弟で、ブルキャン同様に監督作品の常連でもあるテッド。


【余談】


※アーサー王の剣をブチ折った後で、ショットガンの宣伝を始めたアッシュは「12ゲージの二連式レミントン」と言っているが、実際にはStoger製ショットガンらしい。
「Sマート」のスポーツ用品売り場で109㌦95㌣。
一番の売れ筋商品とのことで、これがあれば死霊と戦えるぞ!


※当時は、監督のライミ、主演のブルキャン共にハッピーエンド(?)に修正されたエンディングの方は気に入らないと発言していた。
……しかし、後には二人共に修正Verの方が好きになったと語っている。
修正版じゃないとキャプテン・スーパーマーケットの邦題も、後のTVシリーズも生まれなかったし。





「一言一句間違えないで追記修正したのか?」

「したよ!……したさ、でもな追記修正を間違えないってことと俺が現代に帰ることに何の関係があるってんだ!?」

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最終更新:2023年01月14日 19:11

*1 より正確に言えば『2』は『1』のリメイク的位置付け。続編と言えるのが本作だが、回想で描かれるシーンに食い違いがあるためパラレルと言える。また、ドラマシリーズ内でのアッシュには、地元で友人達を皆殺しにした殺人鬼であるとの疑惑がかけられており、本作の2つのエンディングのどちらからも繋がらない設定となっている為。

*2 後に、オリジナルヒーロー『ダークマン』や、トビー版『スパイダーマン』の監督をしたことからも解るように、ライミの本来の嗜好にはヒーロー物があるので必然とも云える。

*3 気が合うのか「お若いの」「とっつぁん」と呼び合っていた。

*4 小さなアッシュは代役と3人で撮影している。