ボヘミアン・ラプソディ(映画)

登録日:2018/11/16 Fri 22:20:00
更新日:2023/12/14 Thu 22:12:05
所要時間:約 8 分で読めます





伝説のバンド<QUEEN(クイーン)

彼らの音楽を唯一超える

<彼>の物語――。


概要

『ボヘミアン・ラプソディ(原題:Bohemian Rhapsody)』は2018年に公開されたアメリカ・イギリス合作の伝記映画。配給・制作は20世紀フォックス。
監督は映画『X-MEN』シリーズのブライアン・シンガー…だったが、様々なトラブル*1を起こしたために解雇され、その後の代役をデクスター・フレッチャーが務めた。

1970~90年代初頭に掛けて世界中でその名を轟かせた伝説のロックバンド「QUEEN」のリード・ボーカルであり、史上最高のエンターテイナーの一人と言われるフレディ・マーキュリーの半生を描く。
描かれる時期は1970年のQUEEN結成~1985年のライヴ・エイドまで。
QUEENが生み出した数々の名曲が本作を彩ると共に、一部の楽曲の制作エピソードも盛り込まれている。
タイトルの「ボヘミアン・ラプソディ」もイギリス史上最高の名曲と言われるQUEENの代表曲の一つ。

伝記映画であるものの、物語のドラマ性や分かり易さも重視された結果、一部史実とは違う部分や時系列の変更がある点には注意。*2
歌唱パートについては、フレディ役のマレックが一部担当しているが、基本はフレディ本人のオリジナル音源と公式コピーバンド「クイーン・エクストラヴァガンザ」のボーカルであるマーク・マーテル*3による吹き替えとなっている。
演奏パートについては、6週間程かけて担当俳優4人が各々の楽器を訓練して撮影に臨んだ。*4

QUEENの現役メンバーであるブライアン・メイとロジャー・テイラーも音楽プロデューサーとして制作に参加している。
20世紀フォックス作品恒例のファンファーレも2人がロック調にアレンジした本作独自のサウンドとなっている。
また、QUEENの母体となったバンド「SMILE」として当時のボーカル兼ベースのティム・スタッフェルを呼んでオリジナルの「ドゥーイン・オール・ライト」を再現した。

クライマックスでは、1985年に開催された20世紀最大のチャリティ・コンサート「ライヴ・エイド/LIVE AID」でのQUEENのパフォーマンスが再現された。
実は撮影順ではこのライヴ・エイドのシーンが一番最初に撮影されており、この時のキャストの気合いの入ったパフォーマンスを見たブライアンとロジャーは成功を確信したという。その後、監督回りで色々起きるが。
当時の会場だった旧ウェンブリー・スタジアムは解体され存在しないため、空港に精巧なセットを制作。
流石に10万人の観客をエキストラで呼ぶことは不可能だったので、エキストラ900人+CGで当時の熱狂を演出した。
パフォーマンス自体はもちろん、機材や当時のスタッフ達すらも精巧に再現して高い評価を得ている。
劇場公開版では演奏がカットされた楽曲が存在するが、Blu-ray・DVDには特典として完全版が収録された。

公開当初の批評家受けはあまり良くなかった*5が、観客からは絶大な支持を獲得。
日本でも昔からのQUEENファンから当時を知らない若年層まで幅広い支持を得てリピーターが続出。
QUEENに詳しいファンの中には史実からの改変や映画で描かれなかった部分を挙げて否定的な意見を述べる者もいたものの*6、実に観客満足度93%を引き出している。
字幕版のみの公開ながらドルビーアトモスやIMAX・4D・ScreenXといった特別な上映形式及び全国各地の応援上映も人気となり、
特にIMAX版は年末年始に大作映画が入れ替わり続ける中でもロングランとなった。
1週あたりの興行収入も公開から5週連続で上昇を続け、1月22日には累計100億円を突破し、2018年公開の洋画興行収入ランキングで1位となった。

主演のラミ・マレックの演技は作品に否定的な批評家からも評価を得ており、第76回ゴールデングローブ賞では主演男優賞に加えてドラマ部門作品賞を受賞、第91回アカデミー賞では作品賞を含めて5部門ノミネート、うち主演男優賞・音響編集賞・録音賞・編集賞4冠を達成した。
この結果についてブライアンは当初、批評家達がこぞって批判したことを皮肉った発言もしており、実際に批評家よりも観客の目が正しかった証明ともなった。
監督交代騒動の影響により、各映画賞でも監督賞へのノミネートは果たされなかったが、もしシンガーがトラブルを起こす事なく映画製作に最後まで関わっていれば、彼も映画賞の監督賞候補に名前を連ねていた可能性もあったのではないかという声は多い。また、後任監督のフレッチャーは、2019年に公開されたエルトン・ジョンの伝記映画である『ロケットマン』を監督する事になる。



あらすじ

1985年、イギリス・ロンドン郊外ウェンブリー・スタジアム。この日、スタジアムでは史上最大のチャリティ・コンサート「ライヴ・エイド」が始まろうとしていた。
ロックバンド「QUEEN」のリード・ボーカルであるフレディ・マーキュリーは決意と共にステージに足を運ぶ。

1970年、空港で働くファルーク・バルサラはお気に入りのバンド「SMILE」のライヴに足繁く通っていた。
ある日、SMILEのボーカル兼ベースのティム・スタッフェルが脱退することになり、残されたブライアン・メイとロジャー・テイラーが頭を抱えていることを知る。
2人に自分をボーカルとして売り込み、ベースにジョン・ディーコンを加えて新バンド「QUEEN」として再出発。
ファルークは名を「フレディ・マーキュリー」に変え、圧倒的なパフォーマンスでQUEENを引っ張って行くが、4人の前に様々なトラブルが立ち塞がる。

そして1985年ライヴ・エイド当日。
後に伝説として語られるQUEENのステージの幕が上がる。


登場人物

吹き替えはBlu-ray・DVDに収録。
尚、QUEENメンバーに限らず、関係者もそっくりだったりイメージを寄せられているのが特徴。

  • フレディ・マーキュリー
演:ラミ・マレック/吹き替え:櫻井トオル
主人公。QUEENのリード・ボーカル兼ピアニスト。
自分の生まれと容姿にコンプレックスを持つシャイな青年だったが、バンド入りを機にシンガー・パフォーマーとしての才能を開花させていく。
後にゲイであることを自覚したため、恋人のメアリーと破局。
更にフレディを独占しようとするポールの策略でメンバーと対立して孤立を深めていくが、メアリーの叱責でポールと決別。
乱れた性生活が原因でAIDSを発症してしまうが、これを機に己を見つめ直してメンバーと和解し、ライヴ・エイドに臨む。

1991年にAIDSによる免疫低下で罹患したニューモシスチス肺炎により死去。享年45歳。
史実ではAIDSを発症した(診断された)のは1987年頃とされている。*7
また、史実ではフレディはインド出身であることによる人種的差別、性的マイノリティであることによる差別、当時のAIDSに関する誤った知識の広がりについて*8物の見事に槍玉に挙げられているのだが、そうした部分の葛藤や悲劇の描写が少ないことを残念がる声や批判も寄せられた。

  • ブライアン・メイ
演:グウィリム・リー/吹き替え:北田理道
QUEENのギタリスト。
ハンドメイドギター「レッド・スペシャル」で様々なサウンドを創り出す。
「QUEENは家族である」と常々説いており、これが本作の重要なキーワードとなる。
一見すると厳つい見た目だが、特にバンド思いである。

外見と仕草の再現度がメンバーの中でも抜群と評判。
ブライアン当人は2018年現在も現役バリバリであり、近年では2012年のロンドン五輪の閉会式で「ブライトン・ロック/Brighton Rock」のギターソロを披露した。

  • ロジャー・テイラー
演:ベン・ハーディ/吹き替え:野島裕史
QUEENのドラマー。
メンバー随一のイケメンで、フレディの妹カシュを口説こうとする程の女好き。
結婚してからは妻子を優先する姿も見せる。
「ブレイク・フリー」のPVでの美少女コスプレも再現された。

ブライアン同様、ロジャー当人も現役を続けている。
ロンドン五輪の閉会式ではブライアン、ゲストのジェシー・Jと共に「ウィ・ウィル・ロック・ユー」を披露した。

  • ジョン・ディーコン
演:ジョゼフ・マゼロ/吹き替え:飯島肇
QUEENのベーシスト。
基本的には寡黙かつ穏やかだが、皮肉屋な一面も見せる。
ブラック・ミュージックに傾倒し、ブライアンとロジャーに批判されながらも「地獄へ道づれ」を作曲する。

ジョン当人は「フレディなしでQUEENの活動は続けられない」として1997年に音楽業界を完全に引退した。

  • ジム・ビーチ
演:トム・ホランダー/吹き替え:赤城進
QUEENの顧問弁護士。渾名は「マイアミ」。
一見堅物だがユーモアの分かる男。
後に事実上のマネージャーとしてQUEENを支えた。

  • メアリー・オースティン
演:ルーシー・ボイントン/吹き替え:川庄美雪
フレディの初期の恋人。
フレディとは婚約もした間柄だったが、彼がゲイであることを自覚したことで破局。
別の男性と結婚した後も、親友としてフレディの支えであり続けた。

  • ジョン・リード
演:エイダン・ギレン/吹き替え:志村知幸
QUEENの同期で既に有名シンガーになっていたエルトン・ジョンのマネージャー。
QUEENのデモ・テープを聞いたことでマネジメント担当に名乗りを上げる。
後にポールの策略によりフレディと決裂してしまう。

  • ポール・プレンター
演:アレン・リーチ/吹き替え:鈴木正和
リードの部下。多忙な彼に代わりQUEENの側で実務を担った。
次第にQUEENよりフレディに惚れ込んでいき、お互いゲイであることもあって肉体関係を持つ。
フレディを周囲から孤立させて独占しようとするが、メアリーに叱咤されて目を覚ましたフレディと決裂。
フレディの私生活についてメディアに暴露した。

  • レイ・フォスター
演:マイク・マイヤーズ/吹き替え:咲野俊介
レコード会社「EMI」の重役。
QUEENの新アルバムに「キラー・クイーン」のような曲を収録しろと要求するが、当時オペラに傾倒していたメンバーに拒否される。
納期と予算をオーバーして提出された「ボヘミアン・ラプソディ」は演奏時間が6分もあり、シングルカットに難色を示したためにQUEENと決裂する。

主要登場人物の中で唯一の架空の人物である。
モデルは大物プロデューサーのロイ・フェザーストーン。
フェザーストーン本人はQUEENのファンだった。

演じたマイヤーズは自身の映画『ウェインズ・ワールド』で「ボヘミアン・ラプソディ」を使用・熱唱したこともある筋金入りのQUEENファンである。
上記の一連の流れは同映画の該当シーンをネタにしたもの。

  • ジム・ハットン
演:アーロン・マカスカー/吹き替え:花輪英司
フレディの後期の恋人。
フレディの邸宅で雇われ給仕をしていた頃に出会い、心を通わせる。
後にフレディと再会し、最後にして最高のパートナーとなった。

  • ティム・スタッフェル
演:ジャック・ロス/吹き替え:-
QUEENの前身「SMILE」のボーカル兼ベース。
別のバンド「ハンピー・ボング」に加入するためSMILEを脱退、代わりにフレディがボーカルとして加わった。

史実ではティムとフレディは同じデザインの学校に通う友人だった。
ティム本人はいくつかのバンドを渡り歩いた後、音楽活動を止めて模型・アニメ・CMといった分野のクリエイターの道に進んだ。
2001年から再び音楽活動を再開している。

  • ボブ・ゲルドフ
演:ダーモット・マーフィ/吹き替え:小林親弘
チャリティ・コンサート「ライヴ・エイド」の主催者。



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最終更新:2023年12月14日 22:12

*1 撮影中に現場を空ける、キャストやスタッフと衝突したとされる。解雇時点で撮影の2/3が終了していたこともあってか、シンガーが監督として単独クレジットされた。

*2 映画ではフレディ・ブライアン・ロジャーがSMILE解散時点で初対面のように描かれているが史実では元々知り合いだった、ハットンとの出会いの流れ、AIDSの発症時期等。

*3 オーディションで優勝してボーカルになった。

*4 流石に完全に演奏出来るようになった訳では無く、本物の音を乗せても極力違和感を無くす為の練習。とはいえ、実際のメンバーの動きを参考にして本物そっくりの表情や癖をも再現して見せたのは称賛に値する。

*5 「QUEENという偉大な原作ありきの作品であり、芸術的価値は薄い」と見る向きなど。

*6 これについてブライアンは、「これは記録映画じゃなく、フレディという一人の男を描いた肖像画なんだ。僕たちだってこれが素晴らしい肖像だと心から思うまで9年(2010年に映画の企画が立ち上がってからの期間と思われる)かかった」と述べている。

*7 それ以前からファンやマスコミからはフレディがAIDSでは無いか?という疑惑は囁かれていたが、フレディとメンバー、関係者のみが否定していた。結局、公表したのは奇しくも死の前日である。

*8 AIDSはゲイの罹る病気である、等。これについては当時の衛生、保険局の怠慢や調査不足があったと言われている。