SCP-2406

登録日:2018/10/19 Fri 21:57:34
更新日:2024/01/20 Sat 19:20:56
所要時間:約 9 分で読めます




SCP-2406「The Colossus(巨像)」とは、SCP財団本部が収容しているSCPオブジェクトである。


概要

SCP-2406は、材質は主に75~80%の銅と15~20%の亜鉛、若干量のニッケル、鉄、鉛などの合金で出来た高さ93m・重量およそ210t、操縦に6名必要な搭乗型のオートマトン…

まあ、わかりやすくいうと巨大ロボットである。

現状、財団が確認しているのは胴体外部に鎚と鑕の紋章が刻まれた本機のみだが、機体にはエーゲ海の数字で「9」と刻印されているので、同型機があったのだろう。
しかし鎚と鑕ねぇ………あっ(察し

SCP-2406の脱落していたらしい左腕は未だ見つかっていないが、ノズルが接続された右腕の容量の20800Lタンクを検査したところ、どうやらギリシア火薬*1みたいな液体が入った火炎放射器らしいことが判明。
コクピット内部から発見された6名の「パイロット」のミケーネ風のヘルメットもとい兜は顔全体を覆う構造で、視界は緑色のガラスで出来たバイザーで確保しているらしい。着込んでいた鎧は鉛と銅の合金にアスベストの裏打ちをしたものだったが当時に存在するものですらなく、ヤギの腸でできたチューブが酸素や水分をパイロットに供給していたこともわかっている。
遺骨を放射性炭素年代測定で年代を調べたところ、どうやら紀元前1200~1000年辺りの人間らしいことが判明した。
……タンクに仕込まれていたギリシア火薬って、確か紀元前600年チョイにデビューしたはずじゃ?

その動力源は何と原子炉。

AIらしきものは搭載されていないので、合計160個ものバルブとレバーで空気圧・油圧、そして時計じかけ、つまり歯車などを介して動かす非常に忙しいアナログな仕様なこれは、我々が作るような沸騰水型やら加圧水型ではなく、どうやら天然原子炉*2を参考にしたと思わしき原始的なものであったようだ。原子炉だけに。

因みにSCP-2406から脱落した原子炉は1200度以上の熱を保ちながら地中に沈み、現在は地下820mに埋まっているのではないかと推測されている。

収容までの経緯

1985年8月7日にアラルクム砂漠*3で検出した異常な放射線源を追い回していたら、何らかの大規模戦闘で損傷したハイテクなんだかローテクなんだかわからんこの巨大ロボット…………SCP-2406にたどり着いた。

原子力エンジンを落下させてしまったことで機能停止に追い込まれたと推測されるSCP-2406を当初はGRU"P"部局が管理していたが、ソ連崩壊後は財団が管理している。

一応財団の技術で修理することは可能らしいが、その「損傷」が色々とヤバイことを物語っているので、はいそうですかと修理するわけにもいかないのだ。

胴体には何者かに締め付けられたと思わしき跡や、何らかの酸によって腐食させられたと思わしき跡も確認された。
このようだ。さらに頭部、胴体、左脚に突き刺さっている有機的な巨大なトゲの外見はキチン質に近いが構造はサンゴのそれに酷似している。しかも内部から見つかったDNAにはヒトのものが入っていたことが判明。

キチン質、異形の人間、肉質の触手と、この時点でこのロボットの戦った相手は大体察しが付くだろう。

さらにこの機体からはパイロットのほかに防水シリンダーに入ったMEKHANEの信奉者に関係しているらしい巻物が見つかっている。

コレは内容がかなり古く、かつ特殊な文字と文法で書かれており、加えて宗教的な抽象的な表現も多々あったが、財団の解読班が読み解くのを頑張った結果、10年の年月をかけて翻訳に成功した。

以下がその内容である。






巻物の内容から見るに、パイロットたちの生きた紀元前1200年頃は、サーキック・カルトの大本「アディウム帝国」が世界征服のために異形の力によって魔手を伸ばしたとされる全盛期時代の真っただ中。

古代メカニトと各文明たちはアディウム帝国に対抗する連合を組んでいたのだが、悪の帝国の代名詞でアディトゥム*4誕生の元凶であるのダエーバイト文明ですら、国境ギリギリで死に物狂いの抵抗をするのがやっと。

この巻物を書いたであろう国々は疲弊し、自らの兵士達は蠢く異形の不死者たちに呑み込まれ、敵は死した兵士の死体をも取り込み更に肥大化してより大きな肉の波となり絶えず襲い来る…

次に勝てなかったらもう終わりというところまで追い詰められた古代メカニトの陣営は「彼女」*5と称して崇める「壊れたる神(MEKHANE)」が残した最後の希望を、彼らは組み上げ、そして悍ましい腐肉の軍勢に立ち向かっていったのだろう。



世界に肉の夜明けを迎えさせない為に。


恐怖に満ちた暗闇に人類を呑み込ませない為に。


…そう、財団が掲げるそれと同じものを

それでも単体でKeterクラスがゴロゴロいるようなカルキストの総本山に勝てたかどうかは実際怪しい。

しかし、過去の大戦の証人でもある巨像がボロボロになって発見された『現在』が存在するという事は、彼らは暗闇を晴らしたのだ




特別収容プロトコル


SCP-2406の周囲に「カザフスタン軍施設(サイト-31)」を構築し、不正アクセスを防ぐために警備員を配置するが、動かそうにも動かないので、オブジェクトクラスはSafe。

ただし、SCP-2406-「1」との接触を行う場合はサイト司令の許可が必要になる。

この巨大ロボットは壊れていて近寄らなければどうということはないとはいえ放射線バリバリのブツなので、SCP-2406と直接関わるスタッフはタイプAのHAZMATスーツ、つまり防護服を着用し、作業終了時には除染も行う。


追記・修正はSCP-2406に搭乗してサーキック・カルトを消毒してからお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-2406 - The Colossus
by Metaphysician
http://www.scp-wiki.net/scp-2406
http://ja.scp-wiki.net/scp-2406

この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。

























































 

補遺


それ故に、巨像には切り札があった。

SCP-2406が無くした左腕は1998年に本体から32km程離れた地点で発見されたこれは曲がりなりにも「原子力を動力とし、機械仕掛けで動き、バルブとレバーで操作する」という"常識的"な本体と比べて、謎の機構と技術で作られた兵器と思わしき特殊な代物。

毎度おなじみカント計測器で測定したところ、あの自称Safeのめんどくさい神に迫る70というヒューム値にもかかわらず、「周囲の時空を歪める」以外の影響はない。(それ、どこのディバイディングドライバー?)

このあまりに異質な機器は損傷のためか周囲の時空を歪めていたため、別個にSCP-2406-1として指定された。

時代を考えればギリシア火薬もオーバーテクノロジーだが、異常なヒューム値を「制御している」SCP-2406-1はどう考えても超兵器であり、「起動」が周囲の現実性に破滅的な結果をもたらすのは明らかなので、職員はサイト司令の承認がない限り、「起動」させてはならないことになっている。

恐らくだが、本拠地であるアディトゥムの異形の帝国の制圧に成功し、一斉に空間と現実性を湾曲させるこの力を発動して基準世界の現実から消し飛ばし、別次元へと追放したのではないだろうか。
MEKHANEの強力な現実改変兵器の暴発で丸ごと王朝を消し飛ばした例もあるので、ありえない話ではない。(なお、近年のサーキック作品における主流なヘッドカノンでは、アルコーンの支配を回避できないと悟ったイオンが、自ら帝都アディトゥムごと自身を異次元に閉じ込めたとしているものも多い)

他の巨像たちの機体が見つかっていないというのも、自分たちもろとも現実から消し飛ぶことを覚悟の上で発動させた他の同胞たちは無事に任務を成功させたのだろう。



今後もし再びこの兵器を使うような機会が…………、再び肉と機械による人類の命運を決める時が来たらとしたら

――――財団はどう決断するのだろうか。


追記・修正は右手に火炎放射器を、左手に現実改変機器を持ってお願いします。



SCP-2406 - The Colossus
by Metaphysician
http://www.scp-wiki.net/scp-2406
http://ja.scp-wiki.net/scp-2406
この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • SCP
  • SCP Foundation
  • SCP財団
  • SCP-2406
  • SCiP
  • SCPオブジェクト
  • 巨像
  • The Colossus
  • ロボット
  • 巨大ロボット
  • 壊れた神の教会
  • サーキック・カルト
  • MEKHANE
  • 燃えるSCP
  • 古代のパシフィック・リム
  • 古代メカニト
  • メカニト
  • Metaphysician

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年01月20日 19:20

*1 ナパームのご先祖様

*2 「ウラン鉱脈が地下水に浸される→その地下水が減速材となってちょうどいい感じに核反応が続く」という代表格が『オクロの天然原子炉]』要するに「ウラン鉱の塊を水に漬けて核反応を起こす」ものでちょっと不謹慎な話になるが、東海村で起こった「バケツで核反応」の事件が近いといやあ近い。

*3 アラル海が当時のソ連の灌漑プロジェクトで陸地化した

*4 帝国の名前がアディウムでその首都の名がアディトゥム

*5 同じ古代メカニトの文明である夏王朝ではMEKHANEは「父なる伏義」という男神として扱っているが、それ以外のメカニトの文献ではむしろMEKHANEを女神、ヤルダバオートを男神とする解釈の方が多い。単純に中国神話での伏義と女媧の役割に当てはめての認識と思われる