東研作(ゴルゴ13)

登録日:2018/10/15 (月) 22:39:10
更新日:2023/11/01 Wed 21:45:52
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これは命令だ………




ゴルゴ13』の単行本14巻、文庫版13巻に収録されたエピソード「日本人・東研作」にて語られる謎の人物。
なお、登場エピソードは1972年に発表された作品であり、項目内の『現在』とは1972年であるという認識で読んでもらいたい。

概要

ルーツものといわれるいくつかのゴルゴの出生に関する説において、最初にゴルゴ13の正体という疑惑が浮かび上がった人物。
世界的ジャーナリストであるマンディ・ワシントンはゴルゴ13のルールを探っており、彼はゴルゴそっくりな風貌の日本人『東研作』の写真を携えていた。

榊原千恵子という榊原商事の社長の妻は東研作の妹(29歳)であり、ワシントンが来日する2週間ほど前、ラスベガスを旅行中に事故死している。
ラスベガスに旅行に行けるほど裕福で裏の世界には無縁な人物だったこともあって夫からは隠し事をしない人間と思われていたが、兄のことはひた隠しにしていた。
彼女が持っていた兄の写真をワシントンが入手した事が、彼がジャーナリストの大山英雄を訪ねて来日するきっかけとなった。

子供の頃から銃を持って(アメリカ人と性的に乱れた関係を送っていたとはいえ)親を平気で撃ち殺すなど、冷酷な性格をしている。
命乞いをする仲間すら無表情で殺害できるその精神は、かつての仲間から「赤い血が流れていない」と評されていた。
一方で常識的な感性を持つ元I機関の浮浪者とは特に仲が良かったことから共に行動していたなど全く仲間意識を持たない人物と言う訳でもなかったようで、このことについて浮浪者は「互いに正反対な性格だったからかもしれない」と振り返っている。

経歴

かつての彼を知る者の証言から、以下のような情報が得られた。
東家に仕えた家政婦の女性の老婆(今では主人の一家がいない東家になぜ住んでいるのかは不明)や今では廃屋となった伊藤家に住んでいる浮浪者へと落ちぶれたが、かつて『I機関』で育成された工作員の男性の証言をまとめると以下のような年表となる。

  • 1938年、誕生

  • 1948年、母親と愛人のアメリカ軍将校を射殺。このとき彼は、まったくの無表情だったという。
(なお、父の候作は既に亡くなっており、母の行為は不貞ではない。家政婦に目撃されるほど節操がなかったのは事実だが)
この事件の後、伊藤忠政に引き取られ、I機関の育成を受ける。

  • 1957年、千恵子の写真に収まる。既に工作員であった彼がどのような経緯で写ったのかは不明。

I機関

戦後の日本で様々な裏工作を働いた組織。
主にCIC(極東軍事情報部)の指示で動いており、『赤狩り』の手先を勤めていた。
東研作が関わった仕事には、CIAの依頼による北京のソ連大使館員ボルゾフの暗殺などがある。
三億円事件はこの組織が起こしたものだという噂もある。

工作員には柔道、剣道、空手、レスリング、ボクシングなどあらゆる格闘術を叩き込み、
山でのサバイバル訓練や竹筒で水中を耐えるなど忍者のような訓練も行われた。
心理学、医学、薬学、世界中の言語、暗号法など諜報の知識も授け、それらをノートにとることは許されなかった。
東研作はこれらの訓練を一番の成績でこなした優等生だった。
特に射撃が上手く、射殺したスズメが地面に落ちる前に更に2発命中させることもできたという。
18歳のとき、東研作は脱走した訓練生を表情一つ変えず殺害した。

ボルゾフ暗殺当時(1961年)は23歳、現在(1972年)も生きていれば34歳である。
上記のような来歴と人物像を聞いたワシントンは、東研作とゴルゴ13は同一人物だと確信するに至る。

なお、東研作は共に機関による訓練を受けた仲間だった浮浪者はまともな感覚の持ち主で、脱走した仲間や罪もない人を殺すことに耐え切れず、精神を病んでいって酒びたりの日々を送っている。
「おれがこの屋敷以外に行くところがどこにあるというのだ!?」という台詞から、今後一生、過去を忘れることはできないのだろう。
I機関での生活はまともな人間が過ごせはアル中にもなるとワシントン達も納得していた。

東研作説の末路

人から人へと辿って襲撃されながらも情報を集めていき、浮浪者から東研作の人物像を聞いたワシントンは、ゴルゴ13=東研作説に確信を抱くが、その直後に襲撃者によって大山が心臓を撃たれて殺されてしまう。

ワシントンは大山のに責任を感じ、ペンの力でゴルゴの存在を暴き社会的に抹殺することで仇をとると誓った。
東京へと向かう新幹線の途中、名古屋駅でゴルゴ13が乗り込んできたことから自分のルーツを探る者を抹殺しにきたと悟ったワシントンは別の車両に逃げるが、そこでゴルゴを大山の殺害容疑で追っていた河野と再会。
河野の援助で、安全圏に逃げ延びることができたと思った直後、ワシントンは何者かに襲撃されて気を失った。

目を覚ましたワシントンはとある高層ビルの一室に連行されており、会長と呼ばれる人物が大山射殺の実行犯である。
『会長』の顔を見ると、ワシントンが暴いた武器密輸の黒幕がこの『会長』だと思い出すが、『会長』は、誤解でワシントンが自分のことを調べるために来日したのだと考えていた。
すると『会長』はワシントンの持っていた東研作の写真を見て既知の人物であるかのような態度を見せるため、ワシントンはゴルゴ13の写真を見せると共に、自分の来日の本当の目的を話した。

だが『会長』は、容姿面で似ていることは認めながらもゴルゴ13=東研作説を明確に否定する。
確信を持っていた仮説を否定されたことや生命の危機ということもあって焦りながら理由を教えるように懇願するワシントンに対し、6年前(1966年)のトルコにてKGBの依頼でスパイ活動中にCIA工作員の銃弾を全身に浴びて死んだことを伝える。
「彼の死を知った時は………自分の息子を死なせたように悲しかったものだ………」

『会長』が死因を知っていた理由を伊藤忠政がこの『会長』だからだとワシントンは推理し、彼は沈黙で答えた。
もうワシントンに用はないとして部下に指示をする『会長』だったが、その直後に『会長』の額に軽く数百メートルは離れた場所からの狙撃で穴があいた。
部下たちはワシントンを生かしておけないと射殺しようとするが、その前に警察がなだれこんで来たことで助かったが、通報がゴルゴの手引きであったことは明らかだった。
ゴルゴは来日してからワシントンを狙う『会長』のところまで道案内してもらえるように利用し、ワシントンのことを裏で保護していた。

その後、帰国への空港で河野との別れを済ませたワシントンはゴルゴを目撃するが、親友を失い傷心のワシントンは、ゴルゴを追うことはできなかった。

「ゴルゴ13……彼も東研作と似たような生い立ちなのだろうか……?
いや、もっと激しく波乱に富んだものかもしれない!
私の想像を絶するような…………やはり、謎の男か…………」

東研作はゴルゴだったのか?

関係者の口から語られる東研作の人物像や容姿はまさしくゴルゴ13を思わせるが、『東研作は死んだ』という証言により全ては終わる。
もっとも、それを証言した人物も死んだ場面を目撃したわけではないのだが。

ゴルゴが関与した中で最も古い事件は、1965年である。
東研作=ゴルゴ13だとしたら、1966年に『死ぬ』まではI機関の諜報員とゴルゴ13という二つの顔を持っていたことになる。
I機関から独立したがっていた東研作が、死を偽装して伊藤の手から逃れたという風に考えられなくもないが……。
とにかく、年齢設定的には大きな矛盾はないが、ゴルゴ13の出現時期などの時系列設定的には東研作の可能性は低いと見るしかないだろう。

ただし、仮にゴルゴ13=東研作とした場合、作中で親族や育ての親などは全て死亡しているため、ルーツ的な証拠隠滅は成し遂げられていることにはなる。

ちなみにワシントンはゴルゴ13が30代前半であるという推測のもとで東研作と年齢が一致すると言っているが、
そのこと自体が時の流れを感じさせる。

余談

  • 東研作の登場エピソードは、ゴルゴが初めて日本に上陸したエピソードでもある。
    そういった設定に加えて初の『ルーツもの』に加え下記の通り何度か登場するワシントンの初登場作品という事もあってか読者からの人気が高く、2002年の『リーダーズ・チョイス BEST13 of ゴルゴ13』では栄えある第1位に輝いて収録されている

  • 東研作を調べたワシントンはこの事件で友人を失うのだが、それでもゴルゴ13への興味は尽きなかったようで、数年後の『統計解析射撃』に登場した際にも「彼に関する事ならば地の果てまでも向かう」と宣言している。
    ところが、どういう理由かその後は一転してゴルゴと関わりたくないというスタンスを取り、以降は『ミステリーの女王]』や『毛沢東の遺言』と逆に彼に関わろうとする人間を止める役割になっている(いずれも失敗したが)。
    2000年代になると引退後の様子が『静かなる草原』『震える修権者』で描写されている。
    なお引退後のワシントンは明らかに老いた姿をしているのにゴルゴの容姿は変わらないという点はツッコミを入れてはいけない。





もういい……俺が記事を投稿したとき、俺と記事の関係は消滅してしまっている…………
わかったら好きに追記・修正してくれ…………

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最終更新:2023年11月01日 21:45