九九(算数)

登録日:2018/09/19 Wed 22:31:52
更新日:2024/04/05 Fri 20:22:58
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「オッス!それでは恐縮でありますが、高度な数学の九九を披露させていただきます!」

「インイチがイチ!」
「インニがニ!」


……


「九九、八十八!!!」



概要

日本の義務教育である小学校

小学校に入学したばかりの一年生は数の数え方を経て一桁の足し算(加算)と引き算(減算)を学び、数に触れる。
二年生に進級すれば掛け算(乗算)割り算(除算)に二桁の加減算と内容が広がり、本格的な学習が始まる。
誰しもはじめは算数を経て、やがては数学という大海へと漕ぎ出すのである。


そんな小学二年生のお子たちを暗黒の淵に落とす悪鬼。
それが掛け算の暗記方法「九九(くく)」である。


計算というものは様々な方法がある。
例えば紙に書いたり、指を折って数えたり、おはじきのようなもので数えたり。
複雑な計算ならば文明の利器であるそろばんや電卓を使うという手もある。

だが九九は違う。
この悪魔は、掛け算を「覚える」という行為を要求してくる。
漢字を覚え、年号を覚え、植物の名前を覚えるかのように、計算結果を覚えさせられるのである。


無論、いちいち計算するよりも答えを瞬間的に記憶から取り出せる方が、速度は勝っている。
この先の複雑化が進む算数/数学では時間をいかに短縮できるかが勝負の分かれ目となり、九九を覚えずに数学に挑むなど、まるでグーとパーだけでじゃんけんを戦うようなものと言えよう。

故に小学二年生の遊びたい盛りの子どもたちは、涙を呑んで九九の暗記という行為に青春の貴重な時間を割かれるのである。


なお乗算をどこまで暗記するかは国や地域によって異なり、例えば数学大国として知られるインドでは20×20は最低ライン、ところによっては99×99まで覚えなければならないという。無理では?
他にもヤード・ポンド法の兼ね合いなどで12進数を覚える必要があったヨーロッパでは12×12まで教えていた時期があった。実際日本でも十二の段を覚えておくといろいろと便利。
九九とはややずれた話になるが、20までの整数の2乗(例:14×14など)は平方根絡みを始めとして使うことが多いので覚えておくと役立つ。

逆にアメリカなんかだと暗記するよりはさっさと先に進んだほうがいいということで、大人になっても九九をとっさに言えない人も少なくない。
もっとも、これは英語の数表記が語呂覚えがしづらいため完全に暗記しなければならないという事情もあるのだが。

日本の九九

九九、というだけあって日本では1×1~9×9までを暗記するのが一般的。
1×1~1×9を一の段、2×1~2×9を二の段のように、先の数を「○の段」と呼ぶ。
大抵の場合は学校教材や塾などで、歌うように語呂で覚える事が多い。そのため、とっさに思い出せなくともその段をはじめから唱えていれば自然と口ずさんでいることも。
学校などにもよるだろうが、先の数を後にかける数と同じ回数だけ足すと、先の数×後にかける数と同じ答えになるというそもそもの仕組みを解説したうえで九九に繋げていく教え方もある。

それでは早速、各段について解説する。アニヲタ諸兄もいたいけなロリショタ時代を思い返しながら読み進めてほしい。

  • 一の段
原初の「1」から始まるファーストステージ。後にかけた数がそのまま答えになるため、1から9まで数を数えられれば間違えることはほぼないだろう。たとえるなら重ね当てしか撃ってこない赤胴のオッサンみたいなもんである。
口で言う場合、例えば1×1ならば「インイチがイチ」というように、問と積の間に「が」を付けるのがポイント。後の段も、計算結果が1桁だとやはり「が」が付く。何故だ。
また、先の数は「イチ」ではなく「イン」と呼ぶ。何故だ。
最初なのだがいきなり謎が2つ。なんともよくわからない段である。
かける数と計算結果が同じというイレギュラーな段だからか、教科書では最後に習うことになる。

  • 二の段
続く戦いは「2
今後の人生で数え切れないほど使うであろう「倍」を初めて学ぶこととなる。
更に二桁の数も中盤から登場し、難易度は低いとはいえ世界の広さを感じさせてくれる。
この数もやはり問と積の間に「が」を付けるものの、「ニサンがロク」「ニシがハチ」ときて「ニゴジュウ」と突然消える、2号ライダーが如き神出鬼没さでこちらを惑わせてくる。
恐らく2桁になっても「が」をつけると「〇〇がじゅう~」となって発音しにくくなるのが原因だろうか。
あと「ニニンがシ」の「ン」ってどォこから来たんだろうなァ?(声:若本規夫

  • 三の段
ギアが一つ上がったかのように錯覚させられる「3」との戦い。
この戦いにコツはなく、ひたすら反復による暗記が求められる。いわば最初の難関。
基本的に「サン~」で統一されているのだが、中盤で「サブロクジュウハチ」と三河屋の御用聞きみたいな奴が出てきたりもする。
積の1の位に重複が一切ない点もなかなか厄介。1の位に重複があったらどこかで間違えている。
とはいえ3ずつ足していけば答えはすぐ出るので、例えば「3×3=9、だから3×4=“9に3を足して”12」といった感じで1つずつ把握してそれから覚えたほうが暗記より近道だったりすることも。

  • 四の段
縁ギが悪い数でお馴染みの「4」が登場。どこぞのワキガ臭いヤツは死ぬ思いをしながら覚えたと思われる。
2の倍数であるだけに、二の段の発展形ともいえ、比較的難易度は低め。
まだまだ戦いは前半である。「シシジュウロク」だかなんだか知らないが、ゴエモンインパクトに乗ったつもりでやっつけてやろう。

  • 五の段
シンプルオブベストな「5」が相手。さながら格闘攻撃しか使ってこないパワータイプ的なポジションで、5と10さえ覚えられればあとは簡単。
もっとも、扱う数自体はダイナミックになっており、戦いが折り返し地点に差し掛かったことを示唆させる。
しかし、その単純さ故に教科書では最初に習うことになる。

  • 六の段
2の三倍数にして3の倍数である「6」が登場。これらの応用としての存在であり、過去に学んだことを活かせば十分に対処できる相手。
いわばこれまでの戦いの総決算にして、次に待つ相手へのウォーミングアップとも言えよう。

  • 七の段
ラッキーセブンの「7」だが、九九においては最大の難敵100エーカーの森でいうところのフクロウとかトラ的な鬼畜魔球を投げてくる。
他の数と関わりが少ない孤高の数である「7」と、数の組み合わせからイメージしづらい積、そしてひたすら言いづらい「シチ」が立ちふさがる。
そこに加えて、三の段と同じく積の1の位に重複がないという隙のなさ。
何故比較的言いやすい「ナナ」ではなく、1と似ている「シチ」なのか。「シチシチシジュウク」とか文字で書いても口で読んでも言いづらいではないか。ついでに江戸っ子は「ヒチ」と間違えてしまう。
多くの戦士たちはここで躓き、涙を流したことだろう。

  • 八の段
4の倍の数である「8」が立ちふさがるセミファイナル。
地獄であった七の段に比べると難易度は下がるが、「ハチ」だったり「ハ」だったり「パ」だったり「ワ」だったりととにかく安定しなかった8がメインというだけあって、語呂も「ハチイチがハチ」から「ハチシチゴジュウロク」だったのが唐突に「ハッパロクジュウシ」と法則を破ってくる曲者。なんだよハッパって葉っぱか?
全体的なスケールもでかいため決して侮れない。戦いはまだまだ続くのである。

  • 九の段
日本の九九におけるラストステージ。
これまで各段のボスとして立ちはだかってきた「9」が総登場するロックマン的な戦いが繰り広げられる。
勝利の鍵は「九の段は1桁目と2桁目を足すと9になる」という絶対的ルール。
積の1の位を見ると、一の段とは逆に「9からスタートして1ずつ減っていく」のもわかりやすい。
「九九」そのものを名前に冠したラストボスを「ククハチジュウイチ」というトドメのロックバスターで打倒した時、長かった戦いに終止符が打たれるのである。
もっとも、最後の最後で詰めを誤り「ククハチジュウハチ」と高らかに宣言して討ち死にした者も少なくない。気を緩めてはいけない。





……まだ戦いを望むというのか?
いいだろう。此処からは「九九」の先の世界だ。

これ以後の段のボスはその段の数とする。

  • 十の段
九九の範囲から外れた、クリア後のボーナスステージ。
「10」という未知の敵が出現するが難易度は低い。
なんせ「ジュウイチがジュウ」「ジュウニがニジュウ」と一の段に毛が生えたレベルであり、邪悪なる七の段やラスボスである九の段を乗り越えた後では無双状態であろう。
「ジュウジュウがヒャク!」と肉を焼く油の音かなんかのような締めをもって、このステージは終わる。やったぜ兄貴! 夜は焼き肉っしょ!

  • 十一の段
難易度はまだ低め。なんせ「ジュウイチイチがジュウイチ」「ジュウニニがニジュウニ」と、一の段さえわかれば弱敵もいいところである。
だが、その中で君は気づくだろう。この先の戦いに、これまでの戦術は通用しなくなりつつある、と……。
立ちはだかるボスは「ジュウイチジュウイチ(11×11)がヒャクジュウイチ(121)」
……なんだこれは。1しか存在しないはずの数が2になった?ありえない。これまでの内容では、ありえないことだ。

  • 十二の段
真の意味のエクストラステージへようこそ。
これまでと違い、2つの桁の数の間を繰り上げて計算しなくてはいけない。日本の学生では「筆算」が許されるレベル。
汎用性が高い「12」という数故に、日常生活では割と使うのがこの段の厄介なところである。ダースとかヤード・ポンド法とか……。
もはや語呂合わせは武器にはならない。頼れるのは己の純粋な暗記力のみとなる。


此処から先の戦いはこの項目では記載しない。君の目で確かめてくれ!


豆知識

「四六時中」という言葉は九九の四六=4×6=24が元になっており、24時間ずっとという意味。
したがって一日が十二の刻で刻まれていた江戸時代までは二六時中(ニロクジチュウ)と言われていた。
よって四六時中を24時間刻みではない時代や世界の台詞に使うとツッコミを入れられる可能性があることを覚えておくといいかもしれない。

他にも九九の語呂合わせを使った言葉は古くは万葉集、現代ではお店の名前だったり作品タイトルやキャラクターの名前なんかにも使われており、日本人にとっては馴染み深いものとなっている。

九九にまつわるアニメ・漫画ゲームなどの人物など

私塾(=私立高校)男塾の頭脳担当。冒頭の九九は、彼が米国海兵隊訓練学校(アナポリス)の留学生たちを前に披露したもの。
血管を浮かべながら言い切ったものの、仮にも高校生なのに9×9=81を88と間違えている
だが富樫松尾たち同級生達は「いつ聞いてもさすがじゃのう」「今度は分数の掛け算に挑戦するらしいぞ」「あいつならやるかもしれん」と本気で感心していた。
基本的に一号生は主人公の剣桃太郎*1以外はバカしかいないのである。

なお後に関西における男塾にあたる風雲羅漢塾と競い合った際の算術対決では、羅漢塾代表のIQ250の天才・栗本が大学レベルの複雑な公式を解説する傍ら、田沢はxやyの混じった数式を見て「こ…これは奇怪な…!!な…なんで数学の問題に英語が…!?」と混乱していた。駄目だこりゃ。

ミナミの鬼と呼ばれる大阪最強の裏金貸し。
若き日の修行時代に元数学教授から一日目の課題として九九の暗唱を言い渡され、「九九なんか小学生でもできる」と言い返したところインド式初級の20×20までの九九だったというオチがついた。
銀次郎が成し遂げたかどうかは不明だが、覚えるまで寝させてもらえなかったのは想像に難くない。
法学や経済学に経営学、英会話などなど他の分野もこんな感じの超スパルタ式で、亡き両親の仇討ちのために銀次郎はこの地獄の修業の日々を5年以上も送ることとなる。

WEBサイト・カクヨムにて連載、富士見ドラゴンブックから書籍化されたライトノベルの主人公。
カクヨム版はセンター試験で全教科0点を取る高校生の田中龍一、書籍版では同程度の頭脳で年齢は小学五年生の田中竜一と設定が異なるが大枠は同じ。
ある理由で人々が自堕落になりすぎてしまい10まで数えられれば賢者扱いの異世界に迷い込み、九九を五の段まで言える頭脳をもって、魔王四天王を討伐する旅に出る。
出オチのような設定であるものの、彼も世界の人々も基本バカではあるが学習意欲はきちんとある。

コナミのアーケードゲーム「ボンバーガール」の主人公。所謂白ボンの女体化キャラ。
公式漫画において同じくコナミのアーケードゲーム「クイズマジックアカデミー」からのゲストキャラグリム・アロエが「マジアカと違っておバカさんばっかり」と煽ったところ、「ええとこみせたれ!」と怒ったモモコに応える形で「くくはちじゅうはちィ~~」とその頭脳を見せつけた。

元ネタはおそらく前述の田沢。しかし一応「インイチがニ、インニがニ」から始めて四の段までは言えていた田沢と違いくくはちじゅうはちを連呼しかしていないため、それしか知らない可能性すらある
仲間のオレンは富樫のごとくシロを褒め称え、クロは「かわいいなー!」とだけ叫ぶ始末*2

そんなシロ(と周りのアホども)を見たグリム・アロエは煽るどころか「うわうわうわうわ」とドン引きし、QMA世界に帰ろうとするも血涙と鼻血*3を流すモモコに「行かないで」と懇願されていた。
あんまりにもあんまりな凄惨な光景から、「メスガキはバカガキには勝てない」という方程式が生まれた*4。実際このあともグリム・アロエは何度もドン引きさせられることに…
なお「モモ以外はバカしかいない」こと自体が男塾ネタではないかとも一部で言われている。

まだ小学1年生ということで九九をよく分かっていないが、仕組みを簡単に説明されただけで少なくとも9×9までマスターしてしまった。
ちなみに本人の脳内では全部足し算で暗算するというある意味九九を暗記するよりすごいことがサラっと行われている。
なお本来は繰り上がりのある足し算も小2の範囲。
これに対しれんげ自身は「足したら掛け算できちゃった」と自分で驚き、更に「裏技」呼ばわりしていた。
言うまでもないが、

テレビ番組「アメトーーク」でのトーク中に数字に弱い事を指摘され、九九が出来ない疑惑が浮上。
「バカにするな!」と七の段に挑戦するが、早口で言ったがために途中で何度も噛んでしまい、後半にいくに連れてグダグダになっていく。
そして七の段を言っていたはずなのに「4×5=20」と言ってしまいメンバー達の腹筋を崩壊させた。
ちなみに同じ芸人の松本人志も九九が言えないと自伝で語っている*5

遊戯王OCGのモンスター群。
カラクリ人形をモチーフとした和風ロボのモンスターたちだが、名前が九九をもじったものになっている。漢字表記を見れば一目瞭然。
「サザンク(3×3=9)」「ナナシック(7×7=49)」など語呂の良い者から、「クイック9×1=9」「ハイパー(8×1=8)」「ムザンイチハ(6×3=18)」など格好いいの、「ニサム(2×3=6)」「ニニシ(2×2=4)」などなんか気の抜ける者まで色々。
職業?は忍者が多いが、守衛、武者、果てには商人や小町までいる。

バキシリーズの登場人物。若干15歳にして指定暴力団花山組の組長だが、スピンオフ「創面」では高校に通う姿も描かれている。
学校には真面目に通っているものの成績は芳しく無く、また夏休みの宿題もつい最終日までサボってしまった我等がハニャヤマだったが、腹心にして国立大卒のインテリヤクザである木崎の指導のもとなんとか片付けていた。「どうして毎日チョットずつ」「チョットずつ やらなかったんですかァァァ…ッッ」

……のだが
しちろくは しじゅーはち…だろ」「はい?」

数学に突入してしばらくした頃、何故か7×6を48と主張。
木崎の説得を受けるも男として一歩も引き下がることなく、そのまま朝を迎え、宿題を未提出となってしまった。




おう、いつ読んでもさすがじゃのう。アニヲタの書く項目は。
なんでも今度は追記・修正に挑戦するらしいぞ。
ウーム、あいつならやるかもしれんな。

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最終更新:2024年04月05日 20:22

*1 頭脳明晰で英語にも堪能。

*2 クロはおバカ説、百合的感情を抱くシロが何かするだけで喜んでる説、飼い犬的なんかが活躍して喜んでいる説がある

*3 柴田亜美のゲーム漫画「ドキばぐ」のパロディ。モモコの持ちネタ。

*4 これにより「バカガキ>メスガキ、メスガキ>わからせおじさん、わからせおじさん>バカガキ」の三つ巴が生まれたとかなんとか

*5 これは勉強している際に「九九も言えないのか!」と父親に殴られたことがトラウマになったとのこと